流行りのIT重説とは?従来との違いやメリット・デメリット、法律的な注意点は?

こんばんば、六本木で取引の不安ゼロを目指す不動産屋、(株)リビングインで建物管理やトラブル解決を担当している不動産鑑定士補兼宅地建物取引士の相樂です。

今回は、最近増えてきた自宅で契約できるオンライン契約、IT重説に関して、その違法性や入居者として注意すべき点に関して、元弁護士の福谷さんとその辺り、一緒に考えました。以下、それぞれ個別に見ていきます。

宅建建物取引業法では、マンションやアパートを借りる時には契約時に不動産業者から宅地建物取引士の資格を持った人から「重要事項説明」を受けなければいけません。重要事項説明は不動産業者が必ず行わねばならない法律上の義務ですし、入居者にとっても対象物件の安全性や契約条件に間違いがないかを確かめるための大切な手続きです。

実は、最近制度が改正され、重要事項説明を「オンラインシステム」を利用して行っても良いことになりました。これを世間では簡単に「IT重説(重要事項説明)」と言い、LINEやZOOM、SKYPE等を使って、自宅で説明を受け、契約する流れが便利で利用者が増えてきています。

移動による時間短縮のため、多くの不動産会社がIT重説を導入してきており、今後賃貸借契約を締結するときにはIT重説を受ける機会があると思います。この記事では、法律的な部分を含め、IT重説と従来の方法との違い、メリットやデメリット、注意点などを解説します。

1.重要事項説明とは

重要事項説明とは、不動産業者が賃貸や売却の媒介依頼を受けたとき、契約当事者に物件や契約に関する一定の重要事項を説明することです。重要事項説明は「宅地建物取引業法」という法律に定められている不動産業者の義務です(宅地建物取引業法35条)。

重要事項説明の目的は、当事者が不動産の売買や賃貸において予想外の不利益を受けないためです。不動産業者が説明しなければならない事項は非常にたくさんあり、たとえば不動産業者名や所在地、免許番号、物件の詳細情報、インフラ整備状況、家賃や管理費等の費用、契約期間などを告げなければなりません。『法律に書かれていないことでも重要なことは調査して告げる必要がある』と考えられています。

2017年10月から、この重要事項説明に既述の「LINE」や「スカイプ」、「ZOOM」などのオンラインシステムを利用できるように制度が変更されています。これがIT重説です。

2.従来の重要事項説明とIT重説の違い

重要事項説明は、従来「必ず対面にて」行う必要がありました。オンラインシステムで重要事項説明を完結することは認められていなかったのです。しかし、昨今ではさまざまな分野において便利なオンラインシステムの利用が広まってきています。不動産取引における重要事項説明のシーンでも利便性を高めるため、オンラインシステムを導入しようという動きが起こりました。

そこで国土交通省が社会実験を繰り返した結果、新しくIT重説が認められ、オンラインで重要事項説明を行えるようになりました。従来の重要事項説明の場合には、不動産業者の担当者が対面で重要事項を読み上げて説明します。

しかし、IT重説の場合には実際には対面せずに、スカイプやZOOM、LINE電話などを使って面談します。このことで、離れた場所においてもお互いの負担を減らして重要事項説明を実施できるようになりました。IT重説を行う際には、安定したネットワーク環境とウェブ会議の環境が整っている必要があります。また、現段階で利用されていなく新規で登録する場合には、ZOOMやLINE等アカウントの登録方法などの知識が最低限必要になります。

ここで、国土交通省は「賃貸取引に係るIT重説の本格運用の開始について」という件で5つの“遵守すべき事項”を提示しています。

  • 双方でやりとりできるIT環境の整備
  • 重要事項説明書等の事前送付
  • 重要事項説明書等の準備とIT環境の確認
  • 宅地建物取引士証の提示と確認
  • IT環境に不具合があれば中断

これらは絶対に守られなければならない事項のため、電波が悪く途切れるといった事態が起これば中断する必要が出てきます。他にも、“遵守すべき事項”と併せて、“留意すべき事項”も提示されています。

  • IT重要事項説明を実施についての同意
  • 相手方のIT環境が安定性の確認
  • 説明の相手方の本人確認
  • 必要に応じて内覧の実施
  • 録画・録音した場合の対応
  • 個人情報保護法に関する対応

これらは遵守よりも軽めの留意、いわゆる注意事項として分類されていますが、いずれのも守らなければならない事項になります。五つ目の勝手に録画・録音する行為は、流出することが無ければ違法にはなりませんが、同意を得た上で録画する方が好ましいと言えます。

3.IT重説のメリット

3-1.いちいち不動産業者の店舗に行かなくていい

IT重説を利用すると、契約者はいちいち重要事項説明を聞くだけのために、不動産業者の店舗に行く必要がありません。以前は、不動産会社が遠方の場合でも何度も足を運ぶ必要がありましたが、IT重説が始まってからは移動時間や交通費の負担が大幅に軽減されました。

3-2.スケジュールを調整しやすい

不動産屋に行かなくても自宅でオンラインシステムにより、重要事項説明を受けられるので、重要事項説明を受ける日程調整もしやすくなります。そのため仕事や育児で平日に十分な時間が取れない方や、子どもの送り迎えなどで家を留守に出来ない方でも、少しのすきま時間を活用して重要事項説明を受けることができるためストレスフリーで契約を進めることが出来ます。

3-3.落ちついた環境で説明を受けることができる

何より不動産の店舗に行って説明を受けるわけではないため、自宅など比較的リラックスした状態でしっかりと説明を受けることが可能です。

店舗にいる場合、他の誰かに聞かれていないかな?こんなこと聞いても恥ずかしくないのかな?ということで質問を遠慮されるケースもありますが、IT重説であれば、一対一で話しができるのは最大のメリットだと思います。

4.IT重説のデメリット

4-1.勘違いが起こるおそれがある

目の前で担当者が説明してくれるわけではないので、身振りや口調等が伝わりにくく勘違いが起こりやすくなります。わからないことがあっても質問しにくく、そのままスルーされてしまうおそれもあります。

4-2.相手の人柄や雰囲気が伝わりにくい

オンラインシステムを介してしまうと、不動産業者の人柄や雰囲気が伝わりにくくなり、対面では気づけた問題に気づかない可能性があります。

4-3.通信環境の悪化、トラブル

スカイプやZOOMなどのオンラインシステムでは、通信環境が不安定になって突然途切れるなどトラブルが発生する可能性があります。トラブルが原因で重要事項説明がなかなか終わらなかったり、中途半端にされてしまったりするリスクも考えられます。

たくさん立ち並ぶビルや住宅街、山間部にお住まいの場合のインターネット環境では、十分な通信速度が伴わないこともあり、通信が不安定になることも考えられます。このようなことが起きると、前述の“遵守すべき事項”に該当するため、終了する必要が出てきます。事前に速度チェックなどを行う事前準備をしてください。

4-4.名義貸しやなりすましのおそれ

オンラインシステムの場合、対面で免許などが提示されないので宅建業の免許確認が不十分となりやすい問題があります。宅建業の免許を持っていない人が不動産屋になりすまして重要事項説明を行ったり、名義貸しが行われたりする不正行為が懸念されます。また、なりすまし防止のためにも写真で名前が一致しているかどうかの確認を行い、宅地建物取引士の名前と番号をしっかりと読み上げるようにしてください。

4-5.ITツールの準備に手間がかかる

少し面倒なのがIT重説を受けるための準備です。IT重要事項説明を行う上で必要なものとして、パソコンやタブレット端末を使用することが前提となります。パソコンをお持ちでも、カメラやマイクの機能が備わっていなかったりインターネット環境が不十分だったりすると、準備するのに時間がかかります。

スマートフォンを利用してのIT重説でも問題はありませんが、画面が小さいためできればパソコンやタブレットなどの大き目の画面の方が好ましいと思います。

4-6.静かな環境である必要がある

説明を受けている間はマイクとスピーカーは繋がっています。説明を受けているときに隣で子どもが走り回ってドタバタしていると、説明をする宅建士にもそのまま音が伝わり、説明がしづらくなるケースも考えられます。

また、お客様自身の集中力も途切れてしまい、「何か言っていたけど、まあいいか。」と大事な説明を聞き漏らしてしまうことに繋がることも考えられます。自宅で受けるにしても子どもがいるのであれば誰かに別室で預かってもらうなどで対策を講じる必要があります。

5.IT重説の注意点

5-1.IT重説が適用されるのは賃貸のみ

2020年1月の現時点では、IT重説が適用されるのは不動産の「賃貸借契約」のみです。金額が大きく、その後の生活に大きな影響を与える可能性がある不動産の「売買契約」の場合、現在でも必ず対面での重要事項説明を要求されます。ちなみに2019年10月から2020年9月の1年間で、売買取引に関する社会実験も実施されていますので、売買でIT重説が出来る日も遠くなさそうですね。

5-2.事前の重要事項説明書の送付・受取が必要

重要事項説明の際、契約者は「重要事項説明書」を見ながら、説明を受ける必要があります。そこでIT重説を行うとき、不動産業者は必ず「事前に」重要事項説明書を契約者へ送付しなければなりません。

もしも、事前に重要事項説明書を送付せずに、契約書の写しを使って、IT重説をしようとする不動産業者があれば、違法行為をしている可能性が高くなります。そういった申出は絶対に受けるべきではありませんし、そのようないい加減な不動産業者とは契約しない方が得策と言えます。

5-3.事後に署名押印が必要

IT重説を受けた場合、説明が終わった後に契約者が重要事項説明書に署名押印して不動産業者へ一部を渡す必要があります。店舗へ持参しても、郵送で送ってもかまいませんが、「説明を受けただけで手続きが済むわけではない」ので注意が必要です。

このように「IT重説」とはいっても、「事前に書類を受け取っておく必要」がありますし、「説明後に重要事項説明書に署名押印して戻す必要がある」ので、「オンラインですべて完結する」わけではありません。ただ、依然のように時間をかけて移動し、不動産会社で契約を行う必要がなくなったため、不動産会社及び賃借人双方にメリットが大きい変更だと思います。

6.IT重説の流れ

6-1.接続テストを行う

ネットワーク環境が不安定な状態で接続を行う場合、声が正常に聞き取れずIT重説が成り立たないということも考えられます。事前に正常に作動するかのチェックを行ってください。テストする項目として、音声が認識されているか、カメラに映った映像がフリーズしないか、スピーカーから音が正常に出ているかを確認してください。

6-2.事前に書類の送付

契約者に事前に重要事項説明書の原本をもらっておく必要があります。郵送、もしくは自宅に印刷が可能な環境が整っていればメールにデータを添付して受け取ることも可能です。余裕を持ってIT重説を行う前日には書類は揃っているように準備が大切です。契約者はバタバタの契約で急かされないように、余裕を持った行動をしてください。

6-3.IT重説実施

ここまで準備が出来たら、ようやくIT重説が開始です。宅地建物取引から免許の提示があり、登録番号を確認できたらスタートになります。番号がはっきり見えるかどうか、読み上げをお願いされる場合がありますので、案内に従って進んでください。

6-4.契約者から書類返送

無事、IT重説が終了して不明な箇所も無くなったら、もらった書類に記入押印して業者に返送をします。記入漏れや押印漏れがないか、今一度確認をしてください。郵送でのやりとりの場合は、一般的な契約よりも郵送をする期間分のタイムロスがありますので、より慎重に確認を行うようにしてください。

7.IT重説の注意点まとめ

2017年10月以降、多くの不動産業者がIT重説のメリットを強調して利用を勧めています。上記に挙げたようなデメリットや注意点もありますが、たくさんのメリットもあります。そのため、IT重説を使って、契約をする際にはプロセスと契約書の内容を充分に注意して、進めて下さい。

今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して、結果と原因のみ、記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。

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相樂 喜一郎

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相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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