マンションの隣部屋が事故物件に、引っ越し他損害賠償の請求は出来るのか?

こんにちは、不動産取引の不安ゼロを目指す(株)リビングインで、建物の管理・修繕を見ている防犯設備士の馬場です。

マンションに住んでいると時として、隣人との関係でトラブルに巻き込まれることがあります。そうなってしまうと、家に帰っても心が休まらず、余計なストレスを抱えながらの生活を強いられる羽目になります。霊感が強い人等、特に気にされる方が多いのが実感です。 その最たるケースが「住んでいるマンション内で死人が出る(事故物件)」ということです。

これまで14年間、不動産管理会社に勤務する中でそういった事件に2度、遭遇しました。今回はその事件の処理に対応した経験を踏まえ、このページでは「住んでいたら、お隣が事故物件になったケース」、「所有していた物件の入居者が死亡したケース」について説明します。

この情報を知らず、現場の対応・処理に当たったり、いやだからと言って何も考えずに引っ越してしまうと面倒な事後処理に巻き込まれたり、せっかく引っ越したのに知らぬ間に事故物件に住んでいたという事態を引き起こしかねません。

以下、事故物件が身近で発生した際にとるべき対応、処理を丸投げするための対策、知っておくべき情報についてまとめました。念のため、部屋探しの際に、スマホで出来る事故物件の確認はこちらのページにまとめておきました。参考にしてみて下さい。

1.事故発生時の補償は?

この2ケースはそれぞれ「自害・自殺」と「発作からの孤独死」という死因でした。

部屋から発している異臭に管理人が気付き、カギ職人と警察官、当社のスタッフが合鍵でドアを開け、遺体を発見したというケースです。 両隣の住民に当社から懇切丁寧に状況を説明しました。その時に、補償金などはお渡ししません。

また、そのお部屋は賃貸物件であり、所有されているオーナー様がいました。オーナー様にしてみれば、事故の発生は「寝耳に水」の非常にかわいそうな事態でしたので、全面改修後、当社が借り上げる形で家賃の保証をしました。

家賃保証制度(サブリース)は数年に一度、相場の家賃に合わせて見直しを入れるのが通常です。つまり、家賃保証制度を利用していても、一般的には時間の経過と共に家賃は下がるということです。誤解を招きやすく、クレームが多い制度でもあります。

事故物件のお部屋に関しては「温情判断」ということで、特例的に当時のままにしてあります。いうなれば、「老朽化の影響を受けず、かつての高い家賃が取れている状態」です。結果だけ見れば、オーナー様は得をしているということもできるでしょう。

2.事故発生時の損害賠償

同じマンションに住む住民の中には、不審がり、不気味に感じる人もいれば、嫌がりながらも、あまり気に留めない人もいました。このような事件直後もマンション全体の入居率が極端に落ちることもなく、通常通りに稼働していました。住民から損害賠償を要求されることも全くありませんでした。入居者の皆さんからしてみても、「だれが悪いわけでもない事故」という風にとらえられたのかもしれません。という判断の様でした。

おひとりさまが増え、これから増える孤独死に関して、民事訴訟専門の弁護士に依頼した事故発生時の損害賠償について、こちらのページにまとめておきました。他にも、入居後、マンションの隣人の孤独死が発覚した時の引っ越し等の相談先やその際の注意点について、司法書士に聞いたページはこちらにまとめました。

3.事故物件からどうしても引っ越したい

基本的には、入居者(賃借人)は「借地借家法」という法律で最も手厚く守られている立場なので、契約途中でも引っ越しは可能です。嫌がらせのような特約でもない限り、解約予告後はいつでも退去可能です。 ただ、「即日退去」は可能でも「即日契約解除」は基本的にあり得ません。即日契約解除がOKになってしまうと、入居者、オーナーの双方に思わぬ損害が生じることがあるからです。 例えば、急に入居者に契約解除をされてしまい、その時に現金を持ち合わせていなかったら、オーナーは部屋の修繕をすることができません。

同じように、急にオーナーから出ていくように言われても、住む場所がない入居者は路頭に迷ってしまうことになります。 このような事態を防ぐために、賃貸借契約を結ぶときは「解除するならあらかじめ教えてね」といった趣旨の特約を結ぶのが普通です。その為、当社では契約解除を希望する際は「入居者は1カ月前申告」、「所有者は3カ月前申告」というルールを一般的に設け、契約しています。

即座に引っ越しがしたいという場合、契約解除になるのは申し出をしてから1か月後。つまり「出て行ってもいいけど、あと1カ月家賃は払ってください」という状態になります。こういった契約の内容は、不動産会社ごとで異なるので、詳しい内容については賃貸管理会社に問い合わせてみると良いでしょう。

4.事故発生後の売却価格

事故が発生した場合、基本的に売却価格は下がると思っておいたほうが賢明です。その理由は以下の通り、2つあります。

・銀行が融資をしたがらない。

・家賃評価が下がる。

・今後の収支予測が難しく、利回りも悪化する。 

4-1.銀行が融資したがらない。

事故物件は入居者が付きにくいと判断され、融資しない銀行もあります。つまり、「ほしい人がいてもお金を借りられない」という状況が増えます。物件を買うときには、ローンを利用する人が圧倒的多数を占めます。そうなると、売却の状況は一気に厳しくなります。「売り抜くために、値下げに踏み切る。」かわいそうですが、断腸の思いで値下げに踏み切るオーナー様がいたことは事実です。

4-2.家賃評価が下がり、利回りが悪化する

不動産の価格を決めるのは「収益力」、つまりは「家賃」と「期待利回り」です。期待利回りは安定しているほど、良化し、下がる傾向にあります。その不動産が「いくら稼げる能力があるか」を基準に、一般的な投資家は物件を選びます。

この算出方法は投資用だけでなく、住まい用の不動産にも用いられます。「事故物件」ということがネックになり、家賃評価が下がるといったケースは珍しくありません。そうなると必然に売却価格にも影響を及ぼしてしまいます。過去に2度このような事例に遭遇しました。

・すでに買取契約を済ませてから、事故物件になった。

・家賃が下がらなかった。  

4-3.買取契約後、事故物件に…

この部屋のオーナー様は、かねてより売却を希望されていたので不動産会社が買い取る形で買取契約を結びました。しかし、不動産の決済、所有権が移転するまでは場合によっては3~5カ月を要します。その間に入居者が亡くなられたのです。不動産会社は売買価格を下げるため、瑕疵担保免責で当物件を購入していました。

その為、民法上の規定で手付金を放棄することによって、不動産会社が一方的に契約を解除して、白紙にすることもできました。しかし、それではあまりに理不尽ということで契約通りその会社が買取り、そのまま会社の資産として保有を続けることで決定しました。その時、買取価格を下げたりすることはありませんでした。

4-4.家賃が下がらなかった

これは私が会社の先輩に聞いた話です。信じられない方もいるかもしれませんが、事故物件という事実を全く気にしない人は、世の中に一定数います。例えば、お笑い芸人のカズレーザーさんも事故物件に住んでいたことあるそうで一時期テレビで話題になっていました。「特に気にならない」、「安い家賃で済めるならいい」という発想です。 さらに、この話はここで終わりません。

「2年を過ぎれば、賃貸借契約締結時に”事故物件”だということを告知しなくてもいい」というルールがあるのです(期間は判例により異なります)。そうなると、不動産会社側からすれば「余計なことは言わないでおこう」という発想になります。 つまり、事故から2年を経過した後には普通の部屋と同じ条件で募集できるということです。

そのため、事故物件だと知らず、部屋を借りている人は日本中にたくさんいるはずです。「家賃を下げなくても、人が住んでいる」というエビデンスも取れるため、売却価格に影響が出なかったというケースも実際にあります。ただ、契約には信用責任と瑕疵担保責任があり、瑕疵担保責任はたとえ、知らなくても一定期間、問題の責任を取る契約です。その為、事故の発生がある時は瑕疵担保責任を負わない旨の契約をしておいた方が良いと思います。

5.事故の発生時の対策

今回、ご説明した「住んでいたら隣が事故物件になった」という事を回避する方法は有りません。日本中、どこでも起こり得ます。処理はすべて管理会社に丸投げし、いやならすぐに退去するということが被害を最小限にとどめる唯一の得策かもしれません。 前記した「2年間の告知義務」というルールは、事故物件を回避するうえで最も危険な落とし穴です。知らぬ間に事故物件に住んでいるという事態を招くだけでなく、下手したら事故物件を避け、引っ越した先が事故物件だった、という最悪のケースもあり得ます。

そうならないための対策は「どんなに気に入った物件でも、住む前に大島てる(事故物件情報公開サイト)で調べてみる」ということです。サイトの評判はまちまちですが、豊富かつ確実な情報が載っています。現在建っている建物だけではなく、かつてそこに存在した建物の事故情報まで載っているほどです。

ただ、大島てるではマンションの号室までは特定できないので、どうしても気にされる方は直接不動産会社に聞いてみて下さい。告知義務はありませんが、契約関係者として、質問に対して答えるのは当然の責務でしょう。他にも、近くの警察や交番にも聞いてみると良いと思います。これがシンプル、確実、かつ無料なベストの方法だと思います。

ちなみに、事故発生後の悪影響の有無も本当に大切な事だと思います。悪影響の有無を見極めるために、夜間にマンション等の稼働や照明の点灯状態を確認するのが良いと思います。事故の悪いうわさや悪影響が本当にある場合には、マンションの稼働は落ち、管理もあやふやになることが多いので、共用廊下などの照明が交換されていない事があります。

6.事故発生時の相談先

6-1.建物管理会社や賃貸管理会社へ連絡する

もし、孤独死などの事故が発生してしまった場合、私の経験上、「建物管理会社」や「賃貸管理会社」に連絡をするのが一番良いです。自分の見ている物件で人が死んでいるわけですから、管理会社にしてみれば「事故」というよりは「事件」です。もちろん、現場の確認には警察は基本的に介入します。

6-2.警察に連絡する

しかし、もし死体を見つけてしまっても、自分では通報しないほうが良いでしょう。なぜなら、自分で通報すると、事情聴取などを引き受ける形になるからです。そういう余計なストレスを回避するためには、警察ではなく、管理会社に連絡し、警察と一緒に鍵を開けてもらうようにして下さい。

「実際に現場で処理に当たるのは建物管理会社になります。ただ、部屋の鍵を持っているのは賃貸管理会社」というケースが良くあります。なので、あらかじめ両方に連絡しておいたほうがスムーズにいくでしょう。

6-3.司法書士や行政書士はどうか?

ちなみに、こういったケースについて知人の行政書士に聞いてみたところ、そういった相談を受けることはないとのことでした。 ただ、気を付けなければならないのは行政書士は事務所によって専門分野が全く異なるということです。

私の知人は「環境法令」が専門の事務所であるため、そういった相談は来ないということです。もちろん、宅建業法や借地借家法の分野に長けた行政書士もいます。行政書士に相談する場合はその行政書士の専門分野をしっかり把握しなければなりません。

6-4.民事裁判なら、弁護士に相談

ただ、死亡した方の親族から賠償金などをとりたいのであれば、行政書士には相談してもほぼ意味はありません。なぜなら、民事裁判は行政書士の専門外だからです。そのため、相談するなら、弁護士に相談することになるでしょう。

同時に、「賃貸管理会社」と「建物管理会社」の違いにも注意してください。事故物件を発見した際の問い合わせるのは「建物管理会社」です。マンションの管理人室やエントランスに看板を掲示しているマンションも多いので、一度確認しておくと良いでしょう。 事故物件に対する感じ方は人それぞれですが、女性のほうが不穏に感じる方が多く、霊感がある人や風水にこだわる人は強い拒否反応をしまします。

しかし、だからと言って突発的に引っ越しをしたり、物件を売却をしてしまうと、引っ越した先がまた事故物件だったり、売却時に値段を叩かれて、損してしまったりします。そうなってしまっては後悔したり、またストレスを感じながら過ごさなければならなくなります。 そのため、この記事では事故物件に遭遇した時の対処法、事故物件を避けるための必要な作業について紹介しました。

もし、事故物件に遭遇することになったら、この記事に書いていることを思い出して、余計なストレスを回避してください。事故が起きたとしても、焦らず、トラブルに強い専門家に相談しつつ、今後どうするか進めるようにして下さい。実際に事故物件に遭った3名の方にヒアリンを行いました。告知義務やその対策、隣で事故が起きてしまった時などまとめたページはこちらです。

念のため、まだ案の段階で、これから本決まりですが、告知義務の有無の基準に関して、国土交通省が先日出したガイドラインを弁護士さんと話し合いました。こちらのページにまとめておきました。

最後に、国土交通省が事故物件の告知義務について、やっとガイドラインを出したので私たちなりの理解を含め、その内容をこちらのページにまとめておきました。よっぽどのことが無いと、契約後のキャンセルは出来ない部屋探しの経験が少ない人など、慎重に進めて下さい。

また、これまでの相談事例を基に、遠方への引っ越しや部屋探しの経験が少ない方向けに、トラブルを未然に防ぐ三つの注意点をこちらにまとめておきました。

今後もあなたの大切な人生と平穏が守られますよう、4,600件を超える引っ越しの失敗談を基に住まいの問題解決のトップランナーとして、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。その他、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法を建築士さんにレクチャーしてもらいました。弁護士に聞いた不動産会社へ事故物件や告知事項の確認方法についてはこちらのページにまとめました。

今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。

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馬場 紘司

この記事を書いた人

馬場 紘司

事例を基に後悔のない取引を目指し、2013年以降40件以上の不動産取引を経験。現在は投資や居住用の不動産を中心に売却価格を上げるリノベーションなど建物の改修に注力。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー2級、住宅ローンアドバイザー。>>その他詳しい実績はこちら

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