期限の利益は『債務者が、返済日までにお金を返済すれば良いという権利』のこと

1.期限の利益の喪失について基礎知識

ローン破綻時の面談

住宅ローンの滞納が続くと、債権者から送られてくる期限の利益の喪失について、理解しやすくするため、順を追って解説します。

1-1.期限の利益とは

「期限の利益の喪失」を正しく理解するには、まず「期限の利益」について理解しておく必要があります。

期限の利益とは、債務者(住宅ローンでお金を借りている人)が、約束した返済日までにお金を返済すれば良いという権利です。

返済までの時間的猶予が与えられた、とも言い換えることができます。

例えば、3,000万円を借りた時に「3,000万円に達するまで毎月10万円ずつ返済すれば良い」と金融機関と約束をしたとします。

約束どおり毎月10万円返済している限り、金融機関から「やっぱり、来月中に3,000万円返してください」と言われることはありません。

なぜ「期限の利益」と表現するかというと、債務者は本来、住宅購入費用3,000万円を今すぐ支払う必要があります。

それを長期間に渡って(ある意味、引き伸ばして)支払うことができる=期限の利益を得ている、と考えられるからです。

約束した期限までに返済さえすれば、その期間まではお金は自由に他のことに使えますし、運用して利益を狙うことだってできます。

そのため「期限の利益」と表現されています。

1-2.期限の利益の喪失とは

期限の利益の喪失とは、期限の利益を失うということです。

返済に関する約束を破ったために、債権者(住宅ローンの場合は主に金融機関)に一括返済を求められることになります。

例えば、「3,000万円に達するまで毎月10万円ずつ返済すれば良い」という約束で住宅ローンを組んでおり、毎月10万円の返済を守らずに滞納してしまった場合。

滞納期間や金額が金融機関が定めた水準に達すると「期限の利益の喪失」として、3,000万円を返済するよう求められます。

これは民法第137条に定められた債権者(金融機関)の権利なので、債務者(住宅ローンを借りた人)は従うしかありません。

1-3.何回滞納すると期限の利益の喪失となるのか

住宅ローンでは通常、1回の滞納で期限の利益の喪失とされることはありません。

1-3-1.1回の滞納で期限の利益の喪失を主張されるのか?

正確には、1回の滞納で期限の利益の喪失を主張するよりも、複数回の滞納後に一括請求した方がメリットがあると債権者(金融機関)は考えているからです。

その理由としては、1回の滞納や遅延でいちいち一括返済を請求していると事務手続きなどの手間がかかるのと、何度か催促して利息を受け取った方が金銭的利益があるためです。

大抵は滞納期間や金額に一定の水準を設け、そこに達して初めて「期限の利益を喪失」とするような契約内容になっています。

1-3-2.滞納や遅延以外でも期限の利益は喪失します

また、滞納や遅延以外でも、下記の時は期限の利益の喪失となって一括返済を求められるので注意してください。

・虚偽の内容で契約した(住宅費用以外に住宅ローンで借りたお金を使った、年収を高く申告したなど)
・契約内容に違反した
・個人再生、破産等の手続きをした

1-4.期限の利益の喪失となっても一括返済できない場合

期限の利益の喪失となり、住宅ローンの一括返済を求められても対応できない場合、債権者(金融機関)は裁判所に競売を申し立てます。

住宅ローンを組む場合は大抵、債権者が住宅を抵当権に入れています。期限の利益の喪失によって、その抵当権を行使するということです。

債務者がそのまま何もしない場合、自宅は競売にかけられ、最終的には立ち退かなければなりません。

そして、競売にかかった手数料、さらに競売の売却益でも返済しきれなかった住宅ローンの残債の支払いを求められることになります。

なお、住宅ローン契約で連帯保証人を立てた場合は連帯保証人にも請求がいきます。

2.期限の利益喪失通知が届いたらどうする?

相楽 面談

ここまで書いてきましたが、期限の利益喪失通知が届いても、まだ自宅が競売にかけられるのを避ける方法があります。

2-1.期限の利益喪失通知が届いてから自宅を失うまでの流れ

住宅ローン返済の滞納、遅延が続き、債権者が定めた水準に達すると「期限の利益喪失通知」が届きます。

結論から言うと、通知が届いたら自宅を失う(競売にかけられる)まで4ヶ月程度、長くて6ヶ月程度しかありません。

住宅ローンの滞納をしてから、自宅を失うまでの具体的な流れは下記の通りです。

2-1-1.金融機関から催促がくる

住宅ローンを滞納すると、金融機関から督促が来ます。電話や手紙などの形が多いです。

この時点ですぐに金融機関に連絡し、支払い方法などについて協議すれば期限の利益の喪失とはなりません。

催促は絶対に無視せず、きちんと対応してください。

2-1-2. 期限の利益の喪失となる

住宅ローン滞納が続く(概ね6ヶ月程度)、催促を無視するなどすると期限の利益の喪失となります。

2-1-3. 住宅ローンの一括返済を求められる

期限の利益の喪失後、金融機関から住宅ローン残債の一括返済を求められます。

2-1-4. 自宅が競売にかけられる

住宅ローン残債の一括返済に応じられない場合、自宅は競売にかけられることになります。

2-2.期限の利益喪失通知が届いてからできる3つの対応

かなりギリギリではありますが、期限の利益喪失通知が届いてもできる対応が3つあります。

うまくいけば、自宅を失わずに済むので、諦めないでください。

2-2-1.期限の利益喪失通知の記載日までに滞納分を返済する

期限の利益喪失通知が届いた時点では、まだ期限の利益の喪失はしていません。

ですので、期限の利益喪失通知に記載されている日までに滞納分を返済すれば、なんとか間に合います。

もし、お金を工面できる場合には、まず期日通りに返済してください。

ただし、そのお金を工面するための新たに悪条件のローンを組んだり、消費者金融で借りるようなことがあっては状況が悪化するので、してはいけません。

このような状況な場合は、金融機関に連絡して欲しいと思います。

2-2-2.金融機関へ相談する

期限の利益喪失通知の記載日までに、滞納分を返済することが難しい場合は今すぐに金融機関に相談してください。

もう少し待ってもらえば返済できるのであれば、延長してくれる可能性もあります。

また、返済条件を譲歩してくれる可能性もわずかながら残されています。

とにかく、通知を無視したり、さらなる借金、滞納を重ねることだけはしないようにしてください。

2-2-3.債務整理を検討する

それでもどうしても住宅ローンの返済が難しい場合は債務整理を検討します。

任意整理、個人再生、自己破産などの方法がありますが、何を選ぶのが適切かはその人の状況によって異なります。

金融機関に相談の上、弁護士等への相談も必要かと思います。

何もしないでいると、自宅は競売にかけられてしまいます。

こうなると自宅を失った後も借金が残るケースが多く、生活がますます苦しくなるので、必ず相談することが大切です。

せめて任意売却で少しでも自宅を高く売り、借金を減らすようにして欲しいと思います。

その場合は、任意売却の知識や実績が豊富な不動産会社を探すと良いです。

担当 相樂

>>司法書士に聞いた、ローン滞納時に自宅に届く大切な書類まとめ

>>8カ月の滞納で、期限の利益を喪失し、自宅の債務整理を行った事例

▶関連用語:競売任意売却後順位の抵当権

私たち、アリネットは住まいのトラブルを減らすため、2000年以降、引っ越しを経験された方、累計6,700人超の方にアンケートを行い、様々な部屋探しの体験談や失敗談を集計し、分析してきました。

同様に、住まいのトラブルに関する最新の裁判判例を弁護士や司法書士と共に理解し、データ化しています。今後もこのようなデータを生かし、トラブルを予防し、より失敗や損失の少ない部屋探しを私たちは提供していきます。

有名私立大学卒業後、部品商社を経て、2011年より西東京、立川や吉祥寺エリアを中心に建物の工事・改修を行う。2013年より、同代表の相樂と共に不動産の売買、管理・賃貸仲介を始め、現在に至る。

2019年は茨城県の戸建てや板橋区の共同住宅などを仲介。同時に、東京渋谷区の民泊や麻布十番のシェアオフィス向けリノベーションやコンバージョン工事を行う。最近は、台風15号や19号に伴う火災保険の申請サポートやその後の改修工事を積極的に行う。

保有資格:宅地建物取引士、FP二級、防犯設備士、住宅ローンアドバイザー

馬場 紘司
株式会社リビングイン 共同代表

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相樂 喜一郎

この記事を書いた人

相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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