個人民事再生は『借金の減額や返済計画を立て直すための債務整理の一つ』のこと

1.個人民事再生についての基礎知識

老後に生活・ローン破綻

住宅ローン以外の返済を減らす、個人民事再生の基礎知識について解説します。

1-1.個人民事再生とは?

個人民事再生とは、裁判所の判断により主に借金の減額や返済計画を立て直してもらう債務整理の方法の一つです。

その内容は「民事再生法」に定められ、「個人再生」とも呼ばれています。

1-1-1.個人再生のスケジュールについて

まず、裁判所が債権者の意見を聞いた上で認めれば、個人民事再生認可を下します。

次に、返済総額を減額、そしてその返済総額を原則3年〜5年の分割払いで返済できる返済計画を立てることになります。

ケースバイケースですが、減額幅は最大で9割程度まで認められることもあり、債務者の経済的更生を図ることができます。

似たような手続きに「自己破産」がありますが、個人民事再生では自己破産のように、財産処分をする必要がありません。

就業・職業の制限(資格制限)もないので自由度は高いですが、その代わり返済義務が残るというわけです。

1-1-2.住宅資金特別条項とは?

また、住宅ローン支払い中でも「住宅資金特別条項」を使うことで、自宅を手放すことなく、その他の借金を整理できるというメリットもあります。

ですので、住宅ローンを利用していて自宅は手放したくないが、返済が厳しいので住宅ローン以外の借金を減額したい、返済負担を軽減したいという時に、個人民事再生が選択肢となります。

1-2.個人民事再生の手続きの種類は2つ

個人民事再生の手続きは「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」により、2種類あります。

まず、それぞれについて解説します。

1-2-1.小規模個人再生手続

小規模個人再生手続は、個人事業主や小規模事業者を対象とした手続きです。

とはいえ実態は、サラリーマン等の給与所得者の利用も少なくありません。

利用条件は下記の通りです。

・借金などの総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下であること

・将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあること

引用:裁判所HP

小規模個人再生では、債務額を最大9割程度減額することができます。

もちろん債務総額や財産、収入の見込み等によりますが、生活を立て直すのに十分な内容だと思います。

なお、債権者から一定数の反対があると、個人再生手続の認可が下りないことがあります。

1-2-2.給与所得者等再生手続

給与所得者等再生手続はサラリーマン等の給与所得者を対象とした手続きです。

「小規模個人再生手続」の利用条件に加えて、「収入が給料などで、その金額が安定していること」が必要になります。

ただし、給与所得者等再生手続では可処分所得の2年分以上は返済しなければなりません。

そのため、一般的に「小規模個人再生手続」よりも個人再生手続後の総返済額が高額になりがちです。

1-2-3.債権者の反対があっても認めれる?

一方で、給与所得者等再生手続きは要件さえ満たせば、債権者の反対があっても認可されるというメリットがあります。

ですので、個人再生手続の利用を検討する場合、まずは大きな借金減額を狙って小規模個人再生手続の利用を考えます。

そこで、債権者からの反対が考えられる場合に、給与所得者等再生を考える、という手順を踏むケースが多いと思います。

この辺り、個別の事情がかなり絡んできます。その為、文章だけでは分かりづらいと思いますので、LINE公式での個別面談など行っています。

1-3.個人民事再生に必要な費用と書類

個人民事再生に必要な費用と書類について解説します。

1-3-1.個人民事再生に必要な費用

個人民事再生に必要な費用は、代理人弁護士を依頼するかどうかで大きく変わります。

それぞれのケースで、裁判所に納めなければならない手続費用は下記の通りです。

・代理人弁護士がいる場合:30,000円程度

・代理人弁護士がない場合:215,000円程度

ただ、代理人弁護士を立てる場合は、この他に弁護士費用(報酬)が必要となり、結局、相場は50〜60万円ぐらいになると思います。

ただし、住宅ローンを利用しているかや借金の総額等により多少異なるので、まずは法テラス等や無料相談を利用してみるのが良いと思います。

なお、代理人弁護士を立てない場合には、公平中立な立場の「個人再生委員」が裁判所によって選任されます。

個人再生委員によって、申立人(債務者)の財産や収入の状況が調査されたり、申立人が作成した再生計画案に対して必要な勧告を行ったりします。

1-3-2.個人民事再生に必要なと書類

個人民事再生で裁判所に提出する申立書類は次の通りです。

・申立書

・陳述書

・債権者一覧表

・添付書類(源泉徴収票、給与明細、財産目録、戸籍謄本、住民票など)

引用:裁判所HP

1-3-3.個人再生委員とは

個人再生委員は、裁判所が選任する公平中立な機関で、主に次の職務を行います。

原則的に、申立人に代理人弁護士がいない場合についてのみ選任されます。

・申立人の財産及び収入の状況を調査すること

・申立人が作成する再生計画案について、申立人に対し必要な勧告を行うこと

2.個人民事再生における「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」について

ローン破綻時の面談

個人民事再生における「住宅資金特別条項」とは、「住宅資金貸付債権に関する特則」のことで、通称「住宅ローン特則」と呼ばれています。

民事再生法196条以下に定められた制度です。

個人民事再生手続は、自己破産のように自宅を処分する必要がありません。

住宅ローンの支払いを続け、自宅を手放さずに、住宅ローン以外の借金のみ減額したいという場合に「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用することができます。

ただし、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用したい場合には、事前に住宅ローンを組んでいる金融機関に相談し、許可をもらう必要があります。

また、住宅ローンについては借金を減額することができません。ただ、金融機関との話し合いにより、リスケジュールは応じてもらえる可能性があります。

3.個人民事再生のメリット・デメリット

馬場さん

個人民事再生を利用するメリット・デメリットをまとめました。

3-1.個人民事再生6つのメリット

個人民事再生を利用する6つのメリットは以下の通りです。

・必ずしも財産の処分をしなくて良い→結果、住宅を手放さずにその他の借金を減額できる。

・最大9割程度の借金減額ができる→生活の立て直しがしやすい。

・減額後の債務は3年〜5年の分割払いで返済可能→日々の生活の圧迫が少ない。

・資格制限がない→仕事、職業は自由に選べ、転職等もできる。

・免責不許可事由があっても利用可能→借金の理由を問われない。

・裁判手続のため、決定には強制力がある→決定した内容について債権者が意見することはできない。

3-2.個人民事再生6つのデメリット

個人民事再生を利用する6つのデメリットは以下の通りです。

・10年間ブラックリスト(信用情報機関の事故情報)に登録される→新たな借金、クレジットカードの利用等はできない。

・官報に公告される→個人民事再生したことが、人にバレる可能性がある。

・認可の条件が厳しく、申し立てが必ずしも認められない。債権者の反対に遭う可能性がある。

・申立人(債務者)は基本的に自分で手続きを進める必要がある。

・財産状況等、手続に必要な情報を債権者に開示、提供しなければならない。

・個人民事再生手続で決定した再生計画通りに返済できないと再生計画は取消となり、元の借金全額を支払う義務を負う可能性がある。

再生計画の取り消しもあるため、その他のローンを含め、どのように返済するのが最も効率的なのか、この辺りは個別性が強いため、LINE相談などで時間を取り、説明させて頂きます。

担当 馬場

>>【司法書士監修】任意売却以外のローン整理方法は?任意整理、特定調停、個人民事再生、自己破産?

▶関連用語:リースバック親族間売買親子間売買

私たち、アリネットは住まいのトラブルを減らすため、2000年以降、引っ越しを経験された方、累計6,700人超の方にアンケートを行い、様々な部屋探しの体験談や失敗談を集計し、分析してきました。

同様に、住まいのトラブルに関する最新の裁判判例を弁護士や司法書士と共に理解し、データ化しています。

今後もこのようなデータを生かし、トラブルを予防し、より失敗や損失の少ない部屋探しを私たちは提供していきます。

有名私立大学卒業後、部品商社を経て、2011年より西東京、立川や吉祥寺エリアを中心に建物の工事・改修を行う。2013年より、同代表の相樂と共に不動産の売買、管理・賃貸仲介を始め、現在に至る。

2019年は茨城県の戸建てや板橋区の共同住宅などを仲介。同時に、東京渋谷区の民泊や麻布十番のシェアオフィス向けリノベーションやコンバージョン工事を行う。最近は、台風15号や19号に伴う火災保険の申請サポートやその後の改修工事を積極的に行う。

保有資格:宅地建物取引士、FP二級、防犯設備士、住宅ローンアドバイザー

馬場 紘司
株式会社リビングイン 共同代表

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相樂 喜一郎

この記事を書いた人

相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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