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麻布十番・賃貸マンション、㈱リビングインでお部屋の紹介やその後のトラブルなどアフターフォローを担当している宅地建物取引士兼ファイナンシャルプランナーの馬場です。
入居申込時の虚偽報告について、前回同様、不動産絡みのトラブル案件を主に扱っている元弁護士先生と一緒に深堀していきます。
入居後に管理会社やオーナーにバレないか不安でソワソワ落ち着かない生活をしないための事前確認や注意点を考えます。今回はより詳しく知るために、実際に保証会社で働いている方にもヒアリングしてみました。
ちなみに、入居審査について、必要な物や期間など、一般的な情報はこちらのページにまとめておきました。
賃貸仲介をしていると、賃貸マンションにどうしても入居したいと審査に通るために嘘をついてしまう方が一定数います・・・。たまに、どうしても協力してほしいとせがまれることもあります。入居者からだけでなく、客付けの不動産会社から言われることがあります。信じられないと思いますが真顔で言ってくる人、結構います。
例えば、フリーランスや水商売の方などが「会社員」を装うために、アリバイ会社に頼んで在職証明書を発行してもらうケースもあります。在職確認の電話をしてもキチンと在職していると対応してくれます。このように、入居審査で虚偽の書類を提出したり、嘘をついたりすると、違法になるのでしょうか?契約自体はキャンセルすることになるんでしょうか?
賃貸の入居審査で収入や在職証明などについて、嘘をついた場合の本人や不動産業者、アリバイ会社の責任について解説していきます。ちなみに、公文書は免許証やパスポート、保険証や住民票の事で、最高10年の重い刑罰があるようです・・・。
1.入居審査の嘘とアリバイ会社について
一般的にフリーランスや水商売などの収入が不安定な人は、保証会社を含め、賃貸物件の入居審査に通りにくくなっています。例えば、大手不動産会社が管理している物件は審査に時間が掛かり、特に、審査が厳しい気がします。
そこで、このような仕事の方は自分で申込書に嘘を書いたり、「アリバイ会社」を利用して、会社に勤務していることにしてもらったりするケースがよくあります。中には、不動産仲介会社が成功報酬欲しさに嘘に協力・斡旋するケースもみられます。
1-1.アリバイ会社とは?
アリバイ会社とは、入居審査の際に勤務先のフリをして、在職証明書や内定通知書などの書類を発行したり、在職確認の電話に出たりする専門の業者です。利用者はお金を払い、アリバイ会社やその関連会社に勤務していることにしてもらって、アリバイ会社から「給与明細書」などの書類を出してもらい、それを賃貸人や管理会社、保証会社に提出します。
また、在職確認の電話の際、アリバイ会社の電話番号を指定しておくと、アリバイ会社がかかってきた電話に対応するので、勤務先が実在すると思わせることができます・・・。このように、アリバイ会社は賃貸審査で嘘をつくための専門会社といえます。
2.入居審査で嘘をついた場合の責任
では、賃貸マンションへの入居審査で嘘をつくと、本人や不動産会社、アリバイ会社にはどのような責任が法的に発生するのでしょうか?
2-1.本人が自分で嘘をついた場合
2-1-1.自分で申込書に嘘を記入した場合
自分で申込書に嘘の収入などを書いた場合、理論的には詐欺罪になる可能性もありますが、実際には問題になるケースはほとんどないでしょう。後で、大家にバレると賃貸借契約の解除を主張される可能性がありますが、きちんと家賃を払っている限りは解除までは認められないと考えられます。
2-1-2.自分で勝手に会社名の在職証明書を作成
一方、自分で勝手に勤務してもいない会社名を使って、在職証明書や内定通知書などを作成すると「私文書偽造罪」が成立します。それを大家に提出すると「偽造私文書行使罪」となります。たとえば、トヨタに勤めていない方が「トヨタ」による在職証明書や内定通知書を作成したケースでは、犯罪になるので注意が必要です。
2-2.アリバイ会社を使った場合
2-2-1.アリバイ会社が在職証明書や内定通知書などの書類を作成
アリバイ会社が在職証明書や内定通知書などの虚偽の書類を作成した場合にも、大家に知られると契約解除を主張される可能性があります。ただ、アリバイ会社が「アリバイ会社に勤務している」という内容の在職証明書や内定通知書等の書類を発行しても「文書偽造罪」にはなりません。
なぜなら、偽造とは「自分以外の人の名称を使って文書を作成すること」だからです。そのため、アリバイ会社がアリバイ会社名で書類を発行しても偽造ではありません。ちなみに、家賃保証会社の方にこの辺り、ヒアリングしてみました。
・JIDの場合
『在職証明に関して、すべてではありませんがアリバイ会社のブラッ
バレたら、退去に向けて交渉が始まってしまうため、何が何でも家賃をキチンと払い続けることになります。僕だったら、毎日ハラハラしながら、暮らしたくないので、無理はせず、真っ当な部屋に真っ当な手続きを踏んで入居すると思います、きっと。
・4csの場合
『社内データベースで法人の照らし合わせるを行い、明らかに不正が考えられうるケース等は審査時に察知出来るよう行
管理会社と言う体でヒアリングさせてもらったので、最終局面…すなわち、家賃の保証は明渡まで。そして、室内の荷物などの動産類の搬出や明渡訴訟を行った際の手続き、弁護士費用まで保証しているようです。
2-2-2.アリバイ会社が公的な書類を偽造
アリバイ会社が「保険証」や「パスポート」などの公的な書類を偽造すると「公文書偽造罪」となります。公的機関に勤務していることにするために、官公庁名で源泉徴収票等を発行した場合も同じです。
偽造した文書を大家に提出すると「偽造公文書行使罪」が成立します。このように、公的書類を偽造すると犯罪になるので注意が必要です・・・当たり前ですね。
2-2-3.アリバイ会社が在職確認の電話に出る
在職確認のため、アリバイ会社の電話番号を指定して対応してもらった場合も、文書偽造の罪は成立しません。ただ、後でバレたときの契約解除トラブルのリスクは発生します。家賃を滞りなく払っている限りは表面化しないかもしれません。でも、滞納したらすぐに退去を求められる可能性は高いと思います。
2-3.不動産会社が嘘に協力した場合
2-3-1.不動産会社が自社に勤務していることにした場合
既述の通り、不動産仲介会社が、自社に勤務していることにして、在職証明書等の書類を発行した場合には偽造にはなりません。ただし、入居後の解除等のトラブルにつながる可能性はあります。
2-3-2.不動産会社が公文書を偽造
一方で、不動産会社が保険証や官公庁名義の源泉徴収票等を作成すると、公文書偽造罪や行使罪が成立します。不動産会社さんにもこの辺り、ヒアリングしてみました。場所によって、私文書偽造をしてくる人が居るようです。基本的には怪しい場合には審査でハネているようです。
また、内見を基本的に業者立ち合いにしているのは入居審査のことも考えて行っているようで、ウソをつく場合、何かしらほころびが出るいるようです。それを見逃さないようにします。また、仲介業者や申込書を見れば、怪しいのはすぐわかるようです。なお、引越し後にばれた時・・・相手と状況によります。
内見時に不動産業者一社ではなく、二社も同席して、内見・・・、部屋の確認に行っているのに自分が品定めされているようです。その為、ウソをつかなくても、内見時は部屋に合った格好で行く方がいいかもしれません。高級物件なのにカジュアルすぎると、中小企業を比べ、審査が厳しい大手不動産会社が管理している物件は跳ねられるかもしれませんね。
3.連帯保証人が嘘をついた場合
虚偽の収入を記載して連帯保証人になってもらった場合、後でバレた時に、別の連帯保証人の差し入れを要求されます。ただ、連帯保証人が嘘をついたとしても、これまで同様に家賃をきちんと払っている限り、契約を解除される心配はないでしょう。
4.詐欺罪の成立について
入居審査で嘘をついたら「詐欺罪」になるのでしょうか?理論的には、詐欺罪の成立要件を満たすと考えられます。ただ、賃貸借契約の場合、住宅ローンやキャッシングなどと違ってお金を引き出す契約ではなく違法性が弱いと思われ、現実に詐欺罪で逮捕される可能性は極めて低いといえるでしょう。
一方、住宅ローンやキャッシングなどで収入について嘘をつくと、本人やアリバイ会社が逮捕される可能性があります。現実に、アリバイ会社が逮捕された事例もあるので注意が必要です(2011年、インターネット関連会社の役員が北海道県警に逮捕された事例)・・・悪い事はバレます。絶対やらない方がいいです。
審査に落ちるようなら、家賃を下げるなど、部屋探しの条件を調整した方がいいと思います。嘘をついてまで頑張って入った部屋があったとしても、バレた時の社会的な損失の方が大きいと確信しています。
5.不法行為になる可能性について
アリバイ会社を使って賃貸人や管理会社をだまし、契約すると「不法行為」と評価される可能性があります。自分で申込書に嘘を書く程度であれば、違法性がさほど大きくないと考えられますが、アリバイ会社を使って偽の書類を作成して在職確認したら、手口が巧妙で悪質です。
さらに、大家さんに損害が発生した場合、賃貸借契約を解除されるだけではなく、原状回復費用などの賠償金も求められる可能性が高いので入居審査は正直に対応しましょう。
6.アリバイ会社との共犯について
もし、アリバイ会社が文書偽造罪等で逮捕される場合、その利用者にも「共犯」が成立する可能性があります。ほとんどの利用者がそうだと思いますが、事情を知って違法なアリバイ会社に依頼すると、重い刑罰が科されるおそれがあるので注意しましょう。
7.入居審査で嘘をついた時の対応、まとめ
結論として、賃貸借契約でアリバイ会社を使っても、逮捕される可能性は極めて低いです。そして、家賃をキチンと払い続けていれば、契約を解除されるケースが少ないと思います。しかし、厳密には悪意があり、詐欺罪が成立しますし、悪質なアリバイ会社(悪質以外ありませんが・・・)を利用すると、文書偽造の罪が成立する可能性もあります。
8.トラブルを避けるための部屋探しチェックリスト
これまでのトラブル相談やアンケートの事例を参考に、簡単なチェックリストを作りました。
もし、いくつか、該当するようなら、慎重にお部屋探しをされることをお勧めします。
□ 延線沿い等エリアを広げ、自分に合う部屋を探したい
□ 自分に合ったお部屋の条件や優先順位が分からない
□ オンライン内見や広告を見て、お部屋を決めたい
□ 部屋探しの経験が2回以下で相談し、お部屋を決めたい
□ 家賃や初期費用等予算の決め方が分からない
□ 契約や引っ越し後のトラブルは絶対に避けたい
□ 自分のペ-スでゆっくりお部屋を探したい
□ 仲介手数料無料や返金保証が付いている方がいい
もし、3つ以上当てはまる方は慎重に部屋探しを進めて下さい。というのも、トラブルが続くと、仕事や私生活だけでなく、健康も害してしまう事もあります。
また、気になるようなら、LINEで出来る部屋探しの条件簡易診断もやってみて下さい。3つの質問で、部屋探しに必要な具体的な注意点や対策をご提案しています。
これまで8年近く賃貸マンションの紹介・仲介を実務でやってきた感想としては、入居審査に通りたくても嘘の申告は避けて、お部屋のグレード下げたり、保証会社などを使って安心して入居できる物件を探しで住んだ方が長く住むことが出来ます。
結果的に時間的にも金銭的にも得すると思っていまいます。いつバレるかドキドキのストレスを抱えながら、毎日楽しく過ごすことはなかなか厳しいと思います。これまでのアンケートの回答を踏まえ、入居審査が不安な方向けに、保証会社の基準や提出資料の性質について、こちらのページにまとめました。
最後に、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法を建築士さんにレクチャーしてもらいました。他にも【元弁護士と考える】シリーズ、告知義務の必要な事故物件を選ばないための賢い対策他以下の通りです。
>>【元弁護士と考える】事故物件を契約する前の告知義務?その確認方法や注意点は?
>>【元弁護士と考える】不動産屋からウソを教えられた時の対応は?
>>【元弁護士と考える】騒音、地震、虫などないと言われたのに、嘘だったら
>>【元弁護士と考える】仲介手数料の支払い無効裁判(2019年夏)
>>【元弁護士と考える】騒音や悪臭、ナンパ等『隣人トラブル』の対処と引っ越し代は?
その他、事故物件に関する記事はこちらです。
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その1)
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その2)
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あなたの大切な人生と平穏が守られますように、これからも私たちは引っ越しの失敗談をベースに、賃貸の専門家集団として、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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