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気に入った物件を見つけても「内見に慣れていない」、「内見ではどのポイントをチェックすればいいかわからない」という点で、引っ越しで失敗しないために必要な内覧をすることに二の足を踏んでいませんか?
部屋探しで後悔し、短期間での引っ越しを繰り替えさないために、マンションやお部屋、特に賃貸向けの内見ではどんなポイントをどのようにチェックしておけばよいか?
2018年5月に実際に引っ越しを考えている300名にアンケートを行い、特に多くの方に聞かれた内容から、重要なポイントをお部屋の案内経験が豊富な宅建士がご説明します。最後までお読みいただければ、「内見も怖くない」と思っていただけると思います。
1.内見そのものに関する必要物をチェック!
内見で注意しなければならないことは、「そのお部屋であなたがどう生活するか?」をキチンとイメージすることです。仕事やショッピングなどのプライベートを基に、内覧の前にこれからのライフスタイルを一度考えてみて下さい。ライフスタイルを実現するために、内見時に計測などで必要なものはできるだけ持参しましょう。
1-1.住んでいるお部屋の家具のリスト(サイズ入り)+筆記用具
内見には新しい住まいに持ち込みたい家具のリスト(家具のサイズを記入したもの)を絶対に持っていきましょう。シンプルな一人暮らし用の間取りもそうですが『二人暮らしや家族用のお部屋では、内見時にどの部屋にどの家具が入るのか?』の確認が重要です。
階段やエレベーター、そしてお部屋にお持ちの家具が入るかどうかチェックした後、「どの物件で、どこに、どう入れるか」を書き留めるため、ノートとペンなどの筆記用具も必須です。もちろん、資料として渡される間取り図に書き込んでもOKです。
1-2.メジャー(3m以上図れるものが理想です。)
できれば、測定に使用する部分(目盛り)が金属製のものを購入してください。というのは、金属製のメジャーは柔らかくないので、ひとりでも計測しやすいですし、取り扱いが容易です。
1-3.方位磁石、アプリでもOK(日当たりや騒音・振動、傾きなど)
マンションの資料やWEBサイトに「南向き」と記載されていても、お部屋で調べたら、実際は「南西だった」ということは少なくありません。実際に住んだ時に、方位は日当たりに大きく関係するポイントですので、気になる方はしっかりチェックしてください。
ただ、日常生活で方位磁石とか使わないし、持ち歩かないと思います。そこで、実際の内見時にはスマホのアプリで「コンパス360」で検索してみてください。このアプリは1,000万人以上がダウンロードしており、多少傾ていたり、揺れていても正確に方位を示してくれるので、個人的にこれがおすすめです。
1-4.カメラ(スマホがあれば、大抵大丈夫ですが・・・。)
デジタルカメラやスマートフォンカメラで室内の、特に、あなたが気になる部分はしっかりと撮影して下さい。もし、キズや変色などがあったら、家賃交渉の道具や退去時の交渉に使えるので、ぜひ撮っておいてください。
この他、1日に何カ所も内見する場合、「どこのマンションがどんな具合だったっけ?」とか、後で思い出せなくなることもあります。そんな混乱を防止するため、カメラは必携です。
メモリにしっかり空き容量があることを確認し、充電もばっちり済ませて、内覧に出かけてください。必要なら、モバイルバッテリーも持参しておくと安心です。もちろん、スマホについているカメラでもOKです。
1-5.懐中電灯などのライト
設備のチェックのため、電気が通っていればベストですが、以前の入居者の退去時に電力会社との契約を解除している場合、電気がきていないことも少なくありません。
そんな中で部屋の隅々をしっかりチェックするために、懐中電灯などのライトを持参しておくと安心です。ペンタイプのLEDライトも売ってはいますが、狭い範囲しか照らしませんので、「昔ながらの懐中電灯」がとても便利です。
これもスマホで代替可能なので、スマホでライトの付け方などを内覧前に調べてみるといいと思います。その他内見時に使えるお勧めのアプリを建築士さんに聞いてまとめました、ご覧ください。
・ここ、大丈夫?
国土数値情報(GIS)を使って、あなたがいる場所で起こりうる災害情報を確認できるアプリです。正確な場所も検索できますが、まずは付近の情報をキチンと理解するのに使えると思います。
・自分の地盤
最近、地震が多いので気になる方も多いと思います。このアプリも自分の要る場所をGPSで調べ、地盤安心スコアを教えてくれます。液状化、地盤改良、浸水、地震による揺れ、土砂災害の五つをグラフで教えてくれるので、すぐに分かります。
・ラビーちゃんの不動産道具箱
(公社)全日本不動産協会のマスコット、ラビーちゃんと使ったアプリで、内覧で調べてほしいポイントがひとつにまとまっています。9つの機能を一つにまとめたアプリで、操作も簡単なので現場ですぐに使え、お勧めです。
1.アプリだけで、施設の距離と位置が分かるすぐそこAR
2.窓やドアの大きさが測れるメジャー
3.床の傾きを調べる水準器
4.日当たりの参考に方位が分かるコンパス
5.室内の明るさや日照を図る明るさ測定
6.幹線道路や線路等、騒音測定
7.夜の内覧、電気が切れている時に使えるライト
8.初期費用の計算や条件交渉に使える便利計算
9.図面の確認など、マイソクにも搭載され始めたQRコード
(公社)全日本不動産協会は本来、業者向けのサービスを提供していますが、これは誰でもダウンロードすればすぐに使えます。
念のため、アプリのマニュアルはコチラです。
おまけ、SUUMOが作った引っ越しダンドリアプリ
最後に引っ越しの一括見積りにつながる設計で、引っ越しまでにどこに連絡してとか、いつまでにこれを等コンパクトにまとめてくれています。一見とっつきにくいですが、忙しくて、何ごとも後回しにして、後悔したことがある方は引越に必要な申請などモレが無くなるのでおすすめです。
2.内見時にしっかりチェックしたいポイントはこの6つ!
内見は、マンションとあなたの希望する暮らしの「すり合わせの最終作業」です。引っ越し後の暮らしが今よりダウンしてしまわないように、次の点は特に重要なチェックポイントです。
2-1.設備の状態(特に水回りと電気関連)
バスルームやキッチンなどの水回り、コンロや換気扇など、生活に欠かせない設備がどこまで充実しているのか、設備はきちんと動作するかなど、内見時に丁寧にチェックしてください。
生活を支える設備は、電気で稼働するものが多くあります。その為、ブレーカーにも注目してください。一人暮らしならば、30Aあれば、特に問題なく暮らせます。
2-2.玄関、ドアや窓サッシ等の建て付け状況
ドアや窓を開閉するとき、きしみ音はしないでしょうか?また、音だけでなく、実際に開閉するときに抵抗感はないでしょうか?もし、このような問題がある場合、建物そのものが少々傾いている可能性も否定できません。そんな時は水準器アプリがおすすめです。昔、テレビで見たビー玉が転がってしまう部屋とか、これで一発です。
傾きによっては、最終的に窓が開け閉めできなくなることもあり得ますし、ことによっては生活しているだけで、お部屋の傾きでめまいのような状態となり、体調を崩す原因となってしまうことも考えられます。
2-3.カビや汚れなどもチェック
女性の住まいとして人気のマンションは、防犯面からも「基本的に閉め切り」が多いかもしれません。ただ、一日中締め切りの場合、お部屋に湿気がたまりやすい状態になっています。
特に、クローゼット(押し入れ)でカビ臭さを感じないか、内見時に扉を開け、しっかりチェックしてください。締め切っていると、湿気が溜まりやすいお部屋に置いた洋服やバッグなどはカビが生えてしまう可能性もあります。
その他に、気にならないけど、壁紙の汚れやフローリングの傷があれば、きちんとカメラで撮影しておきます。これらの写真は、本当にそのマンションに入居する場合には条件交渉に使えますし、何かのタイミングで退去する際、原状回復工事の費用負担などを決める時に、その汚れや傷が「だれがつけたものか」を証明するために重要です。もちろん、仲介してくれる不動産業者にも、内見時に一緒に確認してもらいましょう。
2-4.コンセントやテレビケーブルコンセントの位置
暮らしを便利にしてくれる家電製品、その数は年々増えています。どの場所でどんなものを使用するのかを想定して、内見時にコンセントの位置や数もチェックするといいと思います。
このポイントを外すと、延長コードが部屋のあちこちに必要となったり、コードに足を取られて転倒する危険性も・・・、現場でしっかり確認してみて下さい。
2-5.共用部分の清潔さや、物音のあり/なし
エレベーターや廊下など、他の人と共用する部分が清潔に保たれているかどうかは、重要なチェックポイントです。なぜなら、管理会社がしっかりしている、他の入居者のモラルが高いといった点を示唆するものだからです。
また、内見時、部屋の中で隣や上層階の物音がしないかどうかも要チェックです。もし、防音性が低いと感じられれば、そのマンションは避けたほうが安全です。引っ越し後にうるさくて、夜眠れないといったことが続く可能性がかなりあります。
2-6.携帯電話やWi-fiの電波は入るか?
コンクリートの建物は、電波を通しにくいという面があります。その為、窓に近いリビングでは通話/通信できるのに、部屋の奥の方には電波が入らない、では、重要な連絡事項を「取りこぼす」可能性があり、危険です。
>>コンクリート打ちっぱなしのデザイナーズマンションのチェックポイント
また、光回線などの固定回線を利用したいときは、そのマンションが対応しているかどうかもチェックしてください。
3.マンションそのものや周辺環境のチェックポイントはこの3つ
内見というと、部屋の内部を見ることを指します。ですが、お部屋を見るだけでは「ここで暮らすこと」をイメージしづらいかもしれません。では、マンションそのものについて、どこをチェックすべきかを解説します。
3-1.防犯面
特に女性の場合、「防犯」はとても大きなチェックポイントです。オートロックか、マンション専用のごみ捨て場があるか、防犯カメラなどの設備があるか、は基本でしょう。窓も需要なポイントです。向かいのビル(マンション)から丸見えだと、安心して、生活できません。
また、それらの設備がキチンと機能しているか?掃除などは行き届いているか?も内覧の時にサッと見てみて下さい。一見して、荒れている場合には住人の方にも荒れている方がいるかもしれません。
3-2.耐震性
耐震性は、住まいの安全面で最重要なチェックポイントといえるでしょう。いわゆる「新耐震基準」の建物は、1981年(昭和56年)以降に建てられたもので、震度6強以上でも倒壊しないような基準を採用しています。
3-3.周囲の環境
駅から近い、周囲に商店街などがあり生活に便利、という周辺環境は魅力的です。しかし、夜遅くまで営業している飲食店が多くある、集まる人たちがあまり好ましい印象でない場合、仕事帰りにヒヤヒヤしながら早足で帰宅、ということも考えられます。
昼間の印象だけでなく、できれば夜の環境もチェックしてください。引っ越しの失敗談に繁華街に近いマンションを借りた時に、帰宅途中に酔客が声を掛けて来たり、ゴミの放置だけでなく、ゲロなどもマンションの脇にしてあることがあり、土曜日の朝など気分が悪くなったと言っています。
その為、駅から近いことは大切ですが、どのような環境にあるマンションなのか、内覧時にキチンと確認しておいてください。
4.内見時のスケジュール
では、内見はどのように進むのでしょうか?ここでは、上手な内見の一連の流れをご説明します。
4-1.内見の予約
まず、スマホなどでマンションのお問い合わせをした仲介不動産業者に電話やメールで連絡をし、内見の日時を決めます。
ちなみに、店頭での部屋探しから始める場合、部屋探しに1時間ほど、3件程度の物件を見て回るのに約2時間ほどかかるのが一般的です。
※店舗からマンションまでの物理的な距離が通り場合には、2時間以上かかることもあります。
4-2.必要事項の記入
アンケート用紙(顧客情報用紙)に、あなたの個人情報や、賃料 /間取り/必要な設備などの希望条件を記入します。それを基に、担当者が「このようなお部屋はいかがでしょう?」と提案をしてくれますので、しっかりとあなたの希望を伝えてください。
4-3.内見へ
大体の場合、不動産業者の車で内見に向かいます。既に何度目かの場合、マンションや最寄り駅など現地で待ち合わせをすることもあります。車中や内見時には上手な世間話をしましょう。
「この物件の周辺にはどんな商業施設/病院がありますか?」
「夜の治安はどうでしょう?」
のように、自分が住んだ時のことを想定した質問をすると、必要に応じて車で案内してくれるはずです。内見時に手渡された間取り図(物件情報)と、実際の物件とをしっかり見比べ、異なる点があれば失礼とは思わず、きちんと質問を。入居後に後悔するより、先に正しい情報を得ることがとても大切です。
4-4.内見終了~検討へ
実際に内見を済ませたら、担当者の積極的な営業トークは基本無視し、その場では決めず、できるだけ「持ち帰り」にして検討しましょう。
※条件の交渉の可否など、その度合いを確認するのはいいかもしれません。
「すぐに埋まりますよ!」と営業マンに言われることもあるかもしれません。それでも、即決して後悔するのは好ましくはないでしょう。
もちろん、あなたが希望する条件の優先順位の上位のニーズを満たす物件で他に同じような条件のものが見当たらないときは、即決もアリかもしれません・・・ですが、仲介業者はあくまで「仲介」が仕事。あなたの決断に責任を取る立場にないことはシッカリ理解した上で決めてください。
5.失敗談から宅建士が考える後悔しない内覧方法まとめ
国立社会保障・人口問題研究所は人は一生で3~4回しか引っ越しや部屋探しをしないと発表しています。慣れない内見で「何をどうチェックすればいいのだろう?」と迷ってしまうのも当然です。私が思うポイントは「あなたがどんな暮らしがしたいか?」だと思います。その為、内見に臨む前に「ゆずれないもの/ゆずってもいいもの」の条件リストを作っておくと内見もスムーズに進みます。
担当者の中には、「仲介料が手に入れば・・・」というビジネスの基本的な考え方しかしない人もいます。あなたがその上を行くためには、あなた自身がどんな暮らしを求め、何をゆずれないのかを担当者にハッキリと伝えることです。
特に女性の場合、治安やセキュリティに関して、しっかりと考えていただきたいと思っています。そのため、不動産屋さんでの質問時に適当な回答しかできないような担当者にあたってしまったときは、ためらいなく、即座に断る勇気も持っていただきたいと思います。
最後に、内見時に持っていってほしい物やアプリについてはこちらにまとめています。その他、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法を建築士さんにレクチャーしてもらいました。【元弁護士と考える】シリーズ、告知義務の必要な事故物件を選ばないための賢い対策他以下の通りです。
>>【元弁護士と考える】事故物件を契約する前の告知義務?その確認方法や注意点は?
>>【元弁護士と考える】不動産屋からウソを教えられた時の対応は?
>>【元弁護士と考える】騒音、地震、虫などないと言われたのに、嘘だったら
>>【元弁護士と考える】仲介手数料の支払い無効裁判(2019年夏)
>>【元弁護士と考える】騒音や悪臭、ナンパ等『隣人トラブル』の対処と引っ越し代は?
その他、事故物件に関する記事はこちらです。
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その1)
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その2)
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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