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麻布十番・賃貸マンション、㈱リビングインの防犯設備士兼不動産鑑定士補の相楽です。
今回も、前回同様に不動産絡みのトラブル案件を主に扱っていた元弁護士の福谷さんと一緒に、不動産屋から賃貸借契約時に間取りや設備、建物の構造について嘘の説明をされたとき、契約前に見抜く方法と契約後に気づいてしまったときの対処方法を一緒に考えていきます。
告知義務の有無の基準に関して、国土交通省が先日出したガイドラインを弁護士さんと話し合いました。まだ、案の段階で、これから本決まりですが、こちらのページにまとめておきました。
担当を信じて契約したのに、記載が間違っていた、又はわざと異なることを書いていた場合など、予想外の不利益やストレスを受けてしまいますよね。たとえば、実際に入居してみたところ、不動産屋から聞いていた間取りや設備、環境と異なっていたらどうすれば良いのでしょうか?
失敗事例を調べていくと、同棲解消や事件・事故、急な転勤等お引っ越しを急いでいた場合、進学や就職、転職を機に上京等遠方へのお引っ越しの場合など、繁忙期と重なる時が多く、良い物件がすぐになくなってしまいます。
その為、東京、そしてお部屋までの移動時間やコストを考慮し、お部屋を見ずに決めてしまい、引っ越し後に聞いていた内容と違うことで、後悔される方がたくさんいました。
1.不動産業者には「重要事項説明義務」がある
不動産仲介業者が借主に嘘をついたら、「重要事項説明義務違反」になる可能性があります。重要事項説明義務とは、不動産の売買や賃貸を仲介する不動産会社が契約当事者に対し、対象不動産についての一定の重要事項を告知しなければならない義務です。宅建業法35条にお客様に説明すべき内容が列挙されています。
また、条文に書かれている事項だけではなく、それに準じる重要な事項についても告知しなければならないと考えられています(東京地裁平成13年6月27日など)。その為、間取りや設備、建物の構造について、もし不動産会社が嘘をついた場合、それらの事項が重要事項説明義務の内容に入れば、不動産会社に責任が発生します。
2.間取りや設備、建物の構造は説明義務の範囲内に入る可能性が高い
賃貸物件を借りるとき、建物の間取りは賃借人のあなたにとって非常に重要な事項です。宅建業法35条では「飲料水、電気ガス排水などのインフラ設備」の整備状況について、賃借人に説明しなければならないと定められています。
もちろん、建物の基本的な構造も賃借人にとってはとても重大です。よって、これらについては不動産業者に説明義務があるものと考えられます。
一方、さほど重要ではない細かい設備仕様の違いの場合などには説明義務違反にならない可能性もあります。契約時の目的がキチンと達成できるのか、これが基準になってくると思います。
3.内見時に気づいていたら、損害賠償請求できない可能性がある
間取りや建物の基本的な設備の中には、賃借人が内見したときに判断できる事項があります。実際に内見を行って、自分の目で建物を見て納得して契約した場合、物件を紹介された当初に不動産屋から聞いていた間取りや設備と多少異なっていたとしても契約の解除や損害賠償ができない可能性があります。
これは現況主義として、不動産屋さんが配布する資料に小さな字で書いてあることがあります。ただ、内見ではわからないような建物の構造的な問題や重要な設備の欠陥を隠されて契約させられた場合には、不動産会社や賃貸人に責任が発生するでしょう。
4.不動産屋に騙すつもりがなくても、責任が発生する可能性がある
ところで、不動産屋に騙すつもりがなく、賃貸人から言われたことを鵜呑みにしてそのまま借主に伝えた場合はどうなるのでしょうか?
不動産会社には重要事項の調査義務があるので、何の調査もしなかった場合には調査義務違反として、損害賠償請求の対象となる可能性があります。
5.あなたが契約前に嘘を見抜く方法
間取りや設備、建物の構造について虚偽説明や欠陥があると再度の引っ越しなども必要になって不利益が及ぶので、できれば契約前に騙されないように対処したいところです。そのためには、以下のようなことに注意しましょう。
5-1.内見時にしっかり確認する
まずは内見時に自分の目でしっかり物件状況を確認しましょう。間取りや設備状況が不動産屋の説明と一致しているか見て、違っていたらその場で不動産屋に質問をして正します。誤魔化そうとしているそぶりがあるなら、信用できないのでその不動産業者とは契約しない方が良いでしょう。
5-2.図面や説明書を提示してもらう
物件に関する図面や登記簿等、各種調査報告書などの書面を示してもらい、不動産屋の説明と一致しているかどうか確認します。特に建物が未完成の場合、完成時の状況を示す図面や説明書をきちんと開示してもらいましょう。
5-3.重要事項説明の内容を確認して保存する
契約時に不動産会社から重要事項説明を受けると重要事項説明書が交付されます。その内容をきちんと理解し保存しておきましょう。内容が違っていたら後で証拠にして争う証拠になります。
5-4.引っ越しや入居時にお部屋の状況を確認して保存、連絡する
契約や支払い後に、カギを受け取ったらお部屋に入ることが出来ます。その時点で聞いていた内容と違う場合には写真など記録を取っておきましょう。
引っ越し時などにも同様に状況を確認し、自分がイメージしていたものと同じか、異なる部分がもしあれば、担当者と共有して下さい。記録や共有せずに入居してしまい、後から、又は退去時に元から、○○であったなどと伝えても取り合ってくれない場合が多々あります。ポイントは契約直後や入居直前です。
6.契約後に嘘が発覚したときの対処方法
6-1.契約解除と損害賠償請求
事故物件の場合など、告知事項なしで契約後に実は・・・などの重大な嘘が発覚したら、契約を解除して不動産会社や賃貸人に損害賠償請求を行うことが出来ます。
仲介手数料の返還を求めたり、新居への引っ越し代や新居の敷金礼金等の費用を出してもらえたりする可能性があります。損害賠償請求を自分で進めるのが難しい場合には、弁護士に相談して対応してもらいましょう。
6-2.消費生活センターに相談する
自分一人ではどうしたら良いかわからないけれど、いきなり弁護士に相談に行くのはハードルが高いと感じる方は、まずはお近くの消費生活センターや国民生活センターで相談してみましょう。
基本的な対処方法を教えてもらえますし、必要に応じて弁護士に相談に行くようにアドバイスしてもらえます。
6-3.宅地建物取引業保証協会に苦情を申し出る
宅地建物取引業保証協会は、多くの宅建業者が加入している団体です。いわゆる「ハトのマーク」の団体というと思い浮かびやすいかも知れません。
加入する宅建業者と顧客との間でトラブルが発生したときには、その宅建業者について調査を行います。ほとんどの宅建業者はこちらの「全国宅地建物取引業保証協会」に入っているので、苦情を寄せて対応を促しましょう。
6-4.国土交通大臣または都道府県知事に情報提供する
宅建業の資格を与え、管理するのは国土交通大臣または都道府県知事です。どちらから認可を受けているかは不動産会社によって異なります。不動産会社から迷惑をかけられた場合、監督機関である国土交通大臣または都道府県知事に情報提供すると、相手業者が行政処分を受ける可能性があります。
お部屋の間取りや設備、建物の構造などの重要事項について、嘘をつくような悪質な不動産業者とは契約しないのが一番です。
万一、騙されたときには消費者センターや弁護士に相談したり宅地建物取引業保証協会に苦情を申し入れたりして、お引っ越しに伴う、不利益や不要なストレスをなるべく小さくするようにしてください。
7.トラブルを避けるための部屋探しチェックリスト
これまでのトラブル相談やアンケートの事例を参考に、簡単なチェックリストを作りました。
もし、いくつか、該当するようなら、慎重にお部屋探しをされることをお勧めします。
□ 延線沿い等エリアを広げ、自分に合う部屋を探したい
□ 自分に合ったお部屋の条件や優先順位が分からない
□ オンライン内見や広告を見て、お部屋を決めたい
□ 部屋探しの経験が2回以下で相談し、お部屋を決めたい
□ 家賃や初期費用等予算の決め方が分からない
□ 契約や引っ越し後のトラブルは絶対に避けたい
□ 自分のペ-スでゆっくりお部屋を探したい
□ 仲介手数料無料や返金保証が付いている方がいい
もし、3つ以上当てはまる方は慎重に部屋探しを進めて下さい。というのも、トラブルが続くと、仕事や私生活だけでなく、健康も害してしまう事もあります。
また、気になるようなら、LINEで出来る部屋探しの条件簡易診断もやってみて下さい。3つの質問で、部屋探しに必要な具体的な注意点や対策をご提案しています。
不動産業者のウソではありませんが、報告しなかった告知義務違反について事件・事故物件以外にもあります。例えば、入居直後に気づいた隣人トラブルが告知義務違反になるかどうか、また、騒音トラブルが告知義務違反になるのか、そして、オンライン内見で引っ越しを決めた場合の告知義務について、弁護士に確認しています。この手のトラブルはルールが変わった時や繁忙期などの忙しい時期によく起きています。例えば、洪水や大雨発生時のハザードマップを用いた説明に関しても2020年8月末から義務化されています。この辺りも今後事件発生時には問題になるかもしれません。念のため、契約前にご自身でキチンと確認しておいてください。
【元弁護士と考える】シリーズ、告知義務の必要な事故物件を選ばないための賢い対策他
>>【元弁護士と考える】事故物件を契約する前の告知義務?その確認方法や注意点は?
>>【元弁護士と考える】賃貸契約後に『事故物件』と判明、解約や損害賠償できます?
>>【元弁護士と考える】騒音、地震、虫などないと言われたのに、嘘だったら
>>【元弁護士と考える】仲介手数料の支払い無効裁判(2019年夏)
>>【元弁護士と考える】騒音や悪臭、ナンパ等『隣人トラブル』の対処と引っ越し代は?
その他、事故物件に関する記事はこちらです。
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その1)
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その2)
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あなたの大切な人生と平穏が守られますように、これからも私たちは引っ越しの失敗談をベースに、賃貸の専門家集団として、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
宜しくお願い致します。
早速ですが、去年購入した中古住宅ですが、内覧の時二階の天井に雨漏りの様なシミがあり、その説明は事実雨漏りがありましたが、既存の瓦で吹き替えと云われました。その後も何度も同じ話をされ、屋根は全面吹き替えという事で購入に至りました。物件説明書にも書かれています。しかし不動産会社は、今さら全面吹き替えはできないと云われ困っています。
弓削様、
お世話になっております。
契約条件で、売主であった不動産会社が屋根の全面吹替を行うとなっているのに、当改修が出来ないと言っているのでしょうか?
もし、本当に出来なくても、同じ効果のある工事を行う義務があります。
金額が大きくなる話なので、弁護士による訴訟となっても勝てる話だと思いますが、その辺り、いかがでしょうか?
トラブルが発生しており、本ページを拝見させて頂きまして大変参考となりました。
2年ほど前、投資用区分マンションを購入したのですが資産整理のために売却活動をしようとしております。
不動産会社に売却依頼をかけたところ、購入時の図面と異なり、バストイレ別ではなく、バス・トイレ・洗面が一緒の3点ユニットバスであることが判明致しました。不動産会社は仲介形態でなく、売主形態となります。
そのため、売却にあたって買主希望社が現れても銀行融資が伸びず、売却活動がうまくいっておりません。
不動産会社に問い合わせたところ、担当者は既に退職している、および販売チラシに物件設備としてバス・トイレ別と明記してあったにも関わらず、「販売チラシにも”図面と現況が異なる場合は現況を優先と致します”と記載があるはず」、とのことで取り合ってくれません。今時、3点ユニットなど人気が非常に低いです。
この場合、どのような対応が取りえるのでしょうか?
ご連絡ありがとうございます。
販売チラシはあまり効力が無いので、重説記載の内容の方が大切になると思われます。
ただ、週明けに都庁と宅建協会に内容を確認し、再度ご連絡させて頂きます。
その際、必要であれば、一緒にやっている弁護士にも確認し、ご回答いたします。
以上です。少々お時間を頂けると幸甚です。
相樂
ありがとうございます。重要事項説明書には具体的な設備の記載が無く、うがった目で見ると販売チラシで買主や銀行評価が下がる3点ユニットは隠し、後でクレームが来た際に逃げられるように重要事項説明書には間取り・設備は記載しない方法をとったのかな、うまく騙されてしまったのかなと勘繰ってしまっております。実際売却活動を始めたのですが購入希望者が出たのですが、3点ユニットバスのため、銀行評価・融資額が伸びず、断念という買主希望者が直近いらっしゃいました、、、
かしこまりました。明日、情報を整理し、回答させて頂きます。
いくつか、追加で教えて下さい。
1.購入時の売主は個人や一般法人ですか?それとも、不動産会社でしょうか?
2.契約時に渡される付帯設備や物件状況確認書などに記載はありませんか?
以上です。引き続きよろしくお願いいたします。
相樂
ご丁寧かつ早速のご返信ありがとうございます。
1. 購入時の売主は、宅建事業者の不動産会社です。
2. 契約時には付帯設備や物件状況確認書がそもそもなく、重要事項説明書にも記載がないため、当時初めての不動産購入であったため、知識がなく、うまくやられてしまったのかな?とうがった目で当時の資料を改めて見てしまいます。
一点、教えて下さい。
本件、購入時はオーナーチェンジで売主である不動産会社は謄本と賃貸借契約書の日付的に中を見てないと言う理解でよろしいでしょうか?
また、売主の不動産会社と物件を紹介してくれた仲介会社は同一ですか?それとも、別会社でしょうか?
以上です。明日の確認に向け、ご教示頂けると助かります。
相樂
そうですね、売主である不動産会社は中は見ていない形と思われます。
売主の不動産会社と物件を紹介した仲介会社は同一となります。
かしこまりました。
これまで頂いた情報を基に確認し、再度ご連絡いたします。
以上です。引き続きよろしくお願いいたします。
相樂
お世話になっております。
本日、いくつかに連絡し、確認しましたが、現状頂いているお話ですと残念ですが、売主の宅建業者に不法行為は見当たらないように感じます。
重要事項説明書にも記載なしとなると、もしそうだとしても故意に騙したとも言い難く、現況優先の旨が特約などに入っている可能性もあります。
他にも、訴訟時も証明しずらく、勝てる可能性が低いと思われます。
「販売チラシ」と現況が異なっていたとのことで、その「販売チラシ」が広告として世間に流通していれば公正取引協議会で広告の不当表示として違法行為になることがあります。
ただ、現況優先の旨が記載されていると、不当表示かどうかも怪しくなってきます。
もし、売主業者を罪に問いたい、損害賠償請求をしたいなどであれば、弁護士を入れて民事訴訟をされた方が良いです。上記の通り、本当に証明できるのかがポイントになります。
今回の売却に関して、個人的に思うところはメールで送ります。
以上です。引き続きよろしくお願いいたします。
相樂