B.豆知識(相場、法律)

部屋探しを急いでても、マンション1階は止めておいた方が良いですか?

こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す六本木の不動産屋、(株)リビングインで建物の管理とトラブル解決を担当している不動産鑑定士補兼宅地建物取引士の相樂です。

私たち、アリネットは2000年以降、引っ越しを経験された方、累計4,600人にアンケートを取り、様々な体験談を集計してきました。今回は引っ越しの失敗やトラブルについての回答の中から、家賃が安いからと選びがちな一階の部屋について、その防犯や日当たりなどの実情と盲点になりやすいデメリットを解説します。

特に、引っ越し経験の少ない人は家賃や手数料の安さで選びがちなので、後々後悔しないため、1階のメリットを含め、その善し悪しぐらいは理解しておくといいと思います。

「女性は1階部屋はやめて、2階以上に住んだ方が良い」

「1階は安いけれど、防犯面が心配…外の人と目が合うかも」

「虫が湧くし、ゴミ捨て場の異臭がずっと酷いよ」

など、1階の部屋については「安いけれど、2階以上の部屋よりもメリットは少ない」という声がよく耳にされます。男性ならば1階でも良いのか、防犯に強い1階部屋は無いのか、虫や異臭、騒音などの実情はどうなのか、本記事では1階の部屋について徹底解説いたします。

女性は住む家にお金を掛け、男性は家よりも食事にお金を使うとニュースで読みました、念のため。

1.1階の部屋のイメージ

「1階の部屋」は一般的に防犯面や日当たりに関して、あまり良くないイメージがあると言われています。実際、巷では1階の部屋についてどのようなイメージが持たれているのでしょうか?

1-1.セキュリティが不安(防犯面の弱さ)

まず、なんといっても「1階はセキュリティが不安」というイメージです。女性、特に学生など若い女性に関しては両親から「1階はやめておけ」と言われ、2階以上の部屋を探す人が多く、1階には防犯面の不安がつきものです。

一般的には、不審者がすぐに入れるから、外に干している洗濯物を盗まれるから、というイメージでセキュリティが弱いと言われています。

1-2.陰になり日当たりが悪い

1階というと、なんとなく周りの建物の陰になり、日当たりが良くないというイメージがあります。最近は戸建てでも2階にリビングを配置して十分な日当たりを確保するよう工夫された物件も多く出ています。

しかし、1階だとどうしても建物が多いエリアは日当たり確保が難しくなります。そのため、1階は日当たりが悪くジメジメしている、というイメージを持たれがちです。窓の近くは日が当たりますが、物理的に部屋の奥の方まで日が当たらず、昼間でも照明を付ける暮らしでも大丈夫という方は一階の部屋でもいいと思います。

1-3.比較的安い家賃

ここまで書いてきたように1階は防犯面が2階以上よりも劣り、他にも日当たりの悪さや湿気など様々なデメリットがあることから、家賃が階上よりも安く設定されている、というイメージもあります。角部屋や最上階が比較的高め、というイメージであるように、1階は「ちょっと安め」というイメージがあります。

1-4.足腰の悪い人には良い?

エレベーターを利用すれば何階に住んでいてもさほど変わらないようにも思えますが、やはり「1階=階段などがしんどい足腰の弱い方向き」というイメージは根強いようです。

エレベーターが故障したり、メンテナンスなどで動かなかったりした時も、1階ならば階段を使わずに出入りができるので安心です。重い荷物を運ぶのも一階の方が楽だと言われています。

2.1階の部屋はどんな人に向くのか?

どんな部屋にも「向き・不向き」があります。なぜなら、人それぞれ、重視するポイントや、生活リズム、年齢や体調、家族構成、仕事などが異なるため、部屋に求めるものも違ってくるからです。

一般的な「最上階が良いらしい」や「角部屋が良いらしい」というイメージが先行してしまい、そのイメージに引っ張られて「なんとなく良い部屋だと思った」という曖昧な理由で部屋を選んでしまうと、意外なデメリットに気付き住みにくさを感じるという可能性もあります。

自分にはどのような部屋が合っているのか?部屋の条件として考慮とすべき点は何なのか、逆に、妥協できる点はどのようなポイントなのか、しっかり見極めることが重要です。

本記事では、1階の部屋のメリットやデメリット、トラブル事例、判例などを詳しく紹介しますので、よく読んでご自身の重視ポイントと照らし合わせて1階の部屋との相性を見極めてください。

3.不動産屋が言いたくない1階の部屋のメリット・デメリットまとめ

ここまで色々と書いてきましたが、1階の部屋にはメリットもデメリットも沢山あります。セキュリティが弱い、日当たりが悪い、などのネガティブなイメージが先に立ちやすいですが、1階には1階なりのメリットがあります。お部屋を決めてしまう前に、1階のメリット、デメリットをしっかり理解してください。

3-1.1階の部屋のメリット

1階の部屋のメリットを6点にまとめました。安さだけでない1階ならではのメリットを確認してください。

3-1-1.入口からの導線が短く階段もエレベーターも不要

1階は足腰が弱い高齢者向け、というイメージがあるように、マンションやアパートの入口からの自室への導線が短く、外出先からすぐに帰宅できるメリットがあります。

エレベーターがあれば足腰が悪くても問題ないように思えます。しかし、エレベーターには「待ち時間」や「移動時間」がつきものです。部屋を出てからエントランスに到達するまでの時間に、このエレベーター時間が加算されます。ただ、意外とロス時間が長いのが気になる人は少なくありません。

特に、通勤や通学時にギリギリに家を出る人にとって、このロス時間が命取りになることもあります。一方、1階に住んでいれば部屋を出てすぐに建物から出られます。

エレベーターがついていない物件では2階以上の住人は階段を使わなければなりませんし、エレベーターがついていても故障したりメンテナンスで止まってしまったりすると階段を使わなければならないのもストレスになります。

3-1-2.2階以上の部屋よりも家賃が安め

1階の部屋のポジティブなイメージの代表格は「家賃が安い」ことです。デメリットが目立つ分、人気がないため、入居してくれる人を確保するために、同じ建物の2階以上の部屋よりも家賃が安く設定されているところもあります。

ただ、セキュリティがしっかりとしている物件や1階の部屋に付加価値がついている部屋(シャッターが付いている、間取りが広め、風通しや日当たりが良いなど)に関しては家賃が安くなっていないこともあります。その都度、相場を見つつ、考えていく必要があります。

家賃が階上の部屋と比べて安くなっていないにも関わらず、1階のデメリットが解決できていない部屋はこのデメリットを引き合いに出し、家賃交渉をすることが可能です。絶対にやった方が良いと思います。特に、複数の部屋を同時に募集しているマンションやアパートは条件を交渉するチャンスだと思います。

3-1-3.空き部屋が多い傾向にあり入居しやすい

人気の部屋は2階以上、最上階などに集中するため、1階はどちらかというと入居者が見つからず、空き部屋が多い傾向にあります。部屋探し中に「こちらのマンションですと、1階でしたらまだ空きがあります」と言われることも多いですが、それでも「いや、2階以上が良いです」と断る人は少なくないため、1階でもOKとしておくと空き部屋を見つけやすくなります。

また、早く入居者を見つけたいという心理も働くため、家賃交渉でも有利になることがあります。

3-1-4.自分の足音や階下への生活音を気にせず生活できる

マンションやアパートなど、1つの建物に複数の住居が入っている物件につきものなのが「ご近所同士の騒音トラブル」です。特に、「足音」はトラブルの主たる原因の1つとなっており、階上の住人の足音が気になって眠れない、うるさくてストレス、という声が聞かれます。

最上階に住めば、階上の住人の足音が聞こえないため、騒音ストレスに悩む心配が無いというメリットがあります。ただ、人によっては「聞こえてくる足音はさほど気にならないが、自分が出している足音や生活音が隣人や階下の人に聞こえるのが気になる」というストレスを抱えていることもあり、こういった方は「自分の足音や生活音を気にしなくて良い」部屋に住んだ方が良いのです。

その点、1階は階下の住人がいないため、自分の足音を気にする必要はありません。

生活音については隣人にはある程度気を遣わなければなりませんが、足音のストレスが無くなるだけでかなりのストレス軽減になります。特に、小さな子どもがいる家庭では、この足音問題は非常に深刻なので、セキュリティ面がクリアできれば1階に住むことも選択肢に入れても良いと言えます。下階の人を気にして、消音マットを二重に敷くことも無くなります…。

3-1-5.夏は日陰になり、涼しく過ごせることが多い

「日当たりが悪い」と言われがちな1階ですが、これは裏を返せば「夏の直射日光を避けられる」というメリットになります。周囲の建物の陰になる部屋は日陰となって夏の暑い日差しを受けることなく涼しく快適に過ごすことができます。他にも、風通しが良い部屋であれば、窓を開けておけば日陰で冷まされた風が通り、更に快適なひと時を過ごすことができます。

3-1-6.災害時に逃げやすく被害も少ない

1階は建物の入口と自室の導線が短いため、災害時にすぐに逃げ出すことができます。いざとなれば、ベランダから外に逃げ出す事も出来ます。また、土台の真上に作られている部屋なので、他の階と比べ、地震などの災害の被害を受けにくく安心して暮らせるという点もメリットとなります。

過去、熊本や神戸等、大きな地震で1階部分が丸々潰れた…というニュースがありますが、こういった現象はそもそも建物自体が古かったり、粗悪な造りの建物で起こることなので、しっかりと建築基準を満たした建物であればその心配はありません。

3-2.1階の部屋のデメリット

1階の部屋のデメリットは、セキュリティや日当たりに関するものが目立ちますが、他にも結構沢山あります。今回は失敗談を基に7つにまとめました。リスクを分からない内に誤って、選ぶことが無いよう、よく読んでしっかりと理解してください。

3-2-1.防犯面が弱く、セキュリティが甘い

1階の部屋のイメージにも直結する「セキュリティの弱さ」は、1階の最大のデメリットとなります。

入口からの導線が短いことは、住人にとって便利である反面、不審者にとっても便利で侵入しやすいです。また、正規の入口ではないところからも侵入しやすく、部屋そのもののセキュリティがしっかりしていないと不安がつきものとなります。

お部屋を選ぶ前に、建物の防犯設備状況や周辺の事件事故数、交番の位置などを把握しておいた方が良いと思います。

3-2-2.日当たりが悪く、湿気が酷い

建物の周辺に別の建物があると、1階の日当たりが悪くなることが多いです。周辺に何も無ければ1階であっても十分な日当たりを確保できます。しかし、都心部など土地が潤沢に無いエリアではそのような建物は稀です。

狭い場所にいくつもの物件が並んでいる場所では、1階の日当たりは期待できません。

日当たりの悪さは、「明るさが確保できない」ことだけではなく「湿気がちになる」ということも引き起こします。湿気が酷くなると室内にカビが生えて嫌な臭いが出ます。

3-2-3.虫が多く出る傾向にある

2階以上の部屋より、1階の部屋の方が圧倒的に虫が湧きやすいというデメリットもあります。虫が嫌いな方は玄関や廊下にも虫が来ると思います。避けた方が無難です。

特に、あまり大きな声では言えませんが、ゴキブリのような嫌われ者が多く出る傾向にあります。他にも、クモやアリなど、羽根の無い虫は1階の方が出やすいです。周辺に飲食店や空き地、雑木林、田畑、川などがある場合は特に要注意です。

3-2-4.洗濯物や生活の様子を見られがち

1階は、道路と同じ高さになるため、部屋の中やベランダの様子が丸見えになるという点も、セキュリティ、プライバシーを守るという観点から考えると不安な要素になります。女性の下着泥棒の被害も、ほとんどが1階の住居で起きています。

洗濯物を見ると住人の情報が洩れてしまうため、老人の一人暮らしだからと空き巣や強盗に入られたり、女性の一人暮らしだからと襲われたり、といった犯罪に繋がってしまうケースもあります。

女性で1階に住む場合は男物の下着を一緒に干すと良いと言われているように、外に洗濯ものを干す場合は何らかの対策をするのが賢いです。もしくは、洗濯物は完全に部屋干しして対策するしかありません。

3-2-5.冬は底冷えするような寒さが特徴

1階は夏、あまり暑くならず比較的快適に過ごせます。しかし、冬はとても寒くなります。下がピロティになっている2階の部屋なども下階が寒いため、冬場は冷えます。

冷気は主に下に溜まりますので、地表近い1階はどうしても寒くなってしまいます。その上、日当たりが悪いことが多い1階の部屋は自然光で温かくなることがないため、1日中底冷えするような寒さが続きます。

そのため、エアコンを一年中、つけっぱなしにしたり、ストーブやこたつがフル稼働となったり、とにかく何らかの寒さ対策が必須になります。電気代やガス代がかかってしまい、生活費が高くなるのもデメリットとなります。

3-2-6.道路など周辺環境の音が入ってきやすい

1階は道路などと同じ高さにあるため、予想通り、街中の音が入ってきやすいことから、周辺環境の騒音に悩まされる可能性があります。

大きな道路に隣接している、線路がすぐ近くにある、歓楽街の中にある、居酒屋が集まっているエリアにある、など、騒音が発生しそうな場所の物件だと、外からの騒音トラブルがストレスとなることがあるため、要注意です。

3-2-7.位置によってはゴミ置き場の近くなどで臭いに悩まされることも

1階にはマンションやアパートのゴミ置き場が設置されているため、部屋の位置によってはゴミ置き場の臭いが漂ってくることがあります。

もちろん、きちんとゴミ置き場を隔離して、どの部屋にも臭いが届かないように工夫している物件も多いですが、中には風向きやゴミの内容によって臭いが届いてしまい、不快な思いをするというケースもあります。

内見時など、1階で部屋を探す時、ゴミ置き場の位置もしっかりと確認しなければなりません。同時に、駐輪場の位置なども確認しておいた方が良いと思います。常に人が来るところは、どんな人が前を通るのか気になりやすいので、お勧めできません。

特に、夏の生ごみの臭いはとても不快なので、このストレスは絶対に避けなければならないことです。

3-3.1階の部屋ではない部屋との違いまとめ

1階の部屋のメリット、デメリットを紹介しましたが、他の部屋との違いを端的にまとめました。

  • 家賃が比較的安い傾向にあるが、セキュリティが弱く防犯面が不安
  • 夏は日陰となり涼しいが、冬は日が当たらず底冷えするような寒さとなる
  • 部屋の中やベランダの様子が外から丸見えとなるため洗濯物が干しづらい
  • 周辺環境によっては虫が発生することも
  • エレベーターや階段を使わずに済み建物入口から自室への導線が短く災害時も逃げやすい
  • 階下に響く足音を気にする必要は無いが、周辺の音が入ってきやすい

メリットとデメリットは表裏一体であり、良い面があれば悪い面もあるのが1階の部屋の特徴です。

4.実際に、1階の部屋に引っ越した4人のトラブル

これまで様々な部屋に引っ越したお客様からアンケートを取り、それぞれの部屋の特徴やトラブル、良かったことや後悔したことなどを集計してまとめています。そんなアンケートの中から1階の部屋に引っ越して後悔したことやトラブルの事例の一部をご紹介いたします。

4-1.事例1:防犯が弱い怖さ

1件目の事例は防犯、セキュリティに関するものです。マンションの中をのぞいている変質者がいました。1階のベランダの外から部屋を見ている人を見て怖かったです。(弊社引っ越しアンケートより)

やはり、1階の部屋に住んだ人の中には「怖い思いをした」という人がいるようです。気のせいかもしれない…と思っても、人の視線を感じること、人の気配を感じることは、意外と恐怖心を煽られたり、ストレスに感じたりするものです。

実際、空き巣や強盗、押し入りなどの犯罪に合うリスクも1階は他の階よりも高いので十分に気をつけなければなりません。

4-2.事例2:日当たりの悪さ

2件目の事例は日当たりの悪さについてです。先の事を考えて、安めの物件で抑えたので立地が悪かったです。マンションの1階で周囲に他の建物に囲まれていたので昼間も電気を点けなければ暗いのが難儀です。(弊社引っ越しアンケートより)

日当たりの良い物件であれば、日中は電気をつけなくても自然光だけで十分な明るさを確保できますが、日当たりが悪いと日中であっても薄暗く1日中電気をつけていなければなりません。

日中は仕事に出ているから関係無いと思っても、日当たりが悪いせいで室内が陰気じみてカビが生えやすくなったり、日中に部屋が温められずにずっとうすら寒いような状態となったりして、何かと不便や不快感を覚える人も少なくありません。

4-3.事例3:湿気に悩まされた

3件目の事例は湿気問題です。1階のアパートに住んだ時は風呂場にすぐカビが生えて掃除が大変でした。また、冬物のスーツもカビだらけになっていた事が有り何着か破棄した事が有ります。クリーニング代も相当高かったです。(弊社引っ越しアンケートより)

この方はカビに悩まされたと言っていますが、日当たりが悪くジメジメしがちな1階は、2階以上の部屋よりも室内にカビが生えやすい傾向にあります。除湿器なども活用して適切に除湿し、適度に換気をおこない、風通しを良くしてやることである程度の湿気やカビは防げますが、手間やお金がかかってしまいます。

4-4.事例4:様々な1階の難点を感じた

4件目の事例は、冬の寒さや騒音、洗濯物など様々な1階の問題点についての後悔です。費用を少しでも抑えるために1階のマンションにしたのですが、冬はとても寒かったです。また、道を歩いている人の話し声や車の音が聞こえてきましたし洗濯物が干せなかったので2階以上にすれば良かったです。(弊社引っ越しアンケートより)

まるで、1階のデメリットを全て受けてしまったようなコメントですが、実際に冬は寒く、周辺の音が気になり、洗濯物を干す場所に困る(外干しができない)など、様々な問題に直面する可能性があります。

5.1階の部屋を選ぶときの注意点

1階の部屋にはメリットもデメリットもあるため、そのメリットの方を重視して1階に住みたいと思う方もいるかと思います。そんな時にはデメリットの影響を大きく受けないために次に紹介する注意点を意識して部屋選びをしてください。

5-1.とにかくセキュリティはしっかりチェック

犯罪に巻き込まれたり、恐ろしい目にあったりしないように、セキュリティはしっかりとチェックしてください。「自分は若い女性じゃないから大丈夫っしょ」という思考は非常に危険です。男性でも、若くなくても、犯罪に巻き込まれるリスクは誰にでもあるからです。

マンションそのものに入るためにエントランスにロックがあるのか、部屋のドアは二重ロックなのか、外側から侵入できるような造りになっていないか、よく確認することが何よりも重要です。

5-2.日当たりや風通しが良いかどうか見極める

1階のデメリットの代表格、日当たりや風通しの悪さですが、周辺の建物や窓の向きによってはある程度の日当たりを確保できる部屋もあります。

どの方向に窓がついているか、窓の前に高い建物は立っていないか、日中の日当たり具合はどうか、確認することで日当たりのストレスを軽減することは可能です。

できれば、内覧は日中、最も日当たりが良くなる時間を選び、実際の部屋の中の明るさや温かさを確認しておくのが良いです。

5-3.周辺環境はとても重要!騒音や虫被害の可能性を潰す

周辺環境のチェックは、日当たりを遮る高い建物の有無だけでは不十分です。大きな道路、線路、飲食店、飲み屋など、周辺がどのような環境かによって騒音レベルが違ってきます。

歓楽街や飲み屋街の物件だと夜中に酔っ払いが騒いでうるさくなる可能性があります。また、道路や線路も車や電車の音が耳について気になるということが想定されます。

騒音だけでなく、周囲に飲食店や雑木林、田畑、河原などがあると虫が発生しやすくなります。虫は2階以上よりも1階に入り込みやすいため、虫嫌いの方は十分注意してください。

5-4.洗濯物を干す時のシミュレーションはお忘れなく

1階の部屋での生活で最も気がかりなのが洗濯物です。外に干すと通り道から丸見えになることがありますし、そうでなかったとしても下着など、見られたくないものを外干しするのは気が引ける…という人もいます。

外にいる人の死角になるような場所にベランダがあれば外干しが可能になりますので、部屋の構造や周辺環境をよく見て洗濯物を干すことをシミュレーションしてください。

もしくは、室内に洗濯ものを干せるような物干し竿が設置されている(あるいは設置できる)のかどうか、風呂場で洗濯物の乾燥ができるかどうか、など外干ししない場合はどのように洗濯物を干すかきちんと考えて部屋を検討してください。

5-5.角部屋の方がセキュリティは不安

一般的に、角部屋には良いイメージがあり、開放感がある、広い間取りが多い、隣の部屋が1つしかないため騒音トラブルが少ない、などという利点があります。

もちろんこれらのメリットは1階の角部屋においても同じです。ただし、セキュリティという観点では1階の角部屋は他の部屋よりも不安が大きくなります。なぜなら、外部から不審者が侵入して来る際に最も入りやすいのが角部屋だからです。

角部屋の方が外から観察もしやすいですし、空き巣や強盗の下見もしやすいです。犯罪リスクを気にする、建物のセキュリティが心配という場合、角部屋は避けた方が安心だと思います。それが分からずに、角部屋だから・・・と選ばないように気を付けて下さい。

6.1階の部屋で起きた判例は?

一般財団法人不動産適正取引推進機構には、住宅の様々な判例についての記録が残っています。その中で、1階の物件で起きた判例を一部紹介します。

6-1.コバエ発生による判例

ビルの1階部分をコールセンター事務所として使用していた賃借人が日常的にコバエが発生したのは、賃貸人の賃貸借契約上の義務違反に当たるとして、債務不履行に基づく損害賠償等を求めました。本事案において、賃貸人には賃貸借契約上の債務不履行があったとして、損害賠償責任を認め、賃借人の請求を一部認容しています。

平成24年6月26日:東京地裁

1階には虫が発生しやすいというデメリットがありますが、裁判にまで発展してしまったケースもあります。入居するタイミングできちんと説明しなかったり、意図的に重要事項を伝えなかったりした場合には訴えることができます。

6-2.邸宅侵入罪の判例

公務員宿舎である集合住宅の1階出入口から各室玄関前までの部分及び門塀等の囲障を設置したその敷地が刑法130条(邸宅侵入罪)の客体に当たり、各室玄関ドアの新聞受けに政治ビラを投函する目的で立入った行為を同条の罪に問うことができ、そのことは憲法21条(表現の自由)に違反しないとされた事例です。

平成20年4月11日:最高裁

「邸宅侵入罪」というと、まさに犯罪そのものですが、こちらのケースではそれほど悪質なものではなく、政治ビラを投函するために侵入したというものでした。ただ、これが空き巣目的や強盗、ストーカーになってくると恐ろしさが一気に上がります。

7.1階の部屋はどんなものなら許せるか?

1階の部屋を選ぶにあたり、注意すべき点を挙げました。しかし、それでは、どのような1階の部屋ならば安心して入居することができるのか、トラブルの少なかったおすすめの1階部屋の条件についてまとめます。

7-1.セキュリティがしっかりしている部屋

何をおいても、セキュリティは最重要事項として絶対に妥協しないことをおすすめします。セキュリティがしっかりしている部屋であれば、1階でも犯罪に巻き込まれたり怖い目にあったりするリスクを大幅に下げられます。

セキュリティがしっかりしている部屋というのは、ドアロックが2重構造、カギが複雑な形、内側にちゃんとチェーンがある、窓にも鍵がついている、簡単に割れない2重ガラスやワイヤー入りガラスになっている、などです。

アパートやマンションの入口にもオートロックなどの鍵がかかっているとなお安心です。建物の入口以外の外部から侵入できないような建物構造になっていることも重要なチェックポイントとして見逃さないようにしてください。窓のシャッターなどは最近増えています。

7-2.ベランダが道路に面しておらず、死角になっている部屋

洗濯物をどこに干すか問題はかなり深刻な問題ですが、ベランダが道路に面しておらず人の目に触れないところにあれば、外干しができます。ベランダ先の砂利庭なども防犯面を考慮した作りになっています。

部屋干しでも構わないという人はそこまで神経質にならなくても良いですが、やはり部屋干しには独特な「部屋干し臭さ」がつきものです。また、浴室乾燥は電気代もかかるので、可能であれば、気持ちよく、外干しできる部屋をおすすめします。

7-3.周辺に高い建物が無く日当たりや風通しが良い部屋

都市部ではなかなか難しい条件ですが、周辺に高い建物が無く、日当たりを確保できて風通しが良い部屋ならば文句なしです。

すぐ近くに高い建物が建っていても、窓からはちゃんと日差しが差し込んでくるような部屋であれば、日当たり問題も少しは解決できます。

日当たりが微妙であっても風通しが良ければカビの発生を抑えることができるので、せめて風通しの良い部屋を選ぶようにしてください。

7-4.周辺に雑木林や田畑が無く虫が発生しにくい部屋

虫が苦手なら、周辺に雑木林や田畑、また飲食店などが無い環境の部屋をおすすめします。虫が発生しやすい周辺環境だと、どうしても1階部屋に虫が侵入してきやすくなります。

もちろん、建物構造や部屋の構造が気密性に優れていて虫の侵入を許さないようなものであればそれほど心配することではありません。しかし、少しでもリスクを下げたければ周辺環境にも気を遣って探すことを勧めます。

7-5.目の前に大きな道路や線路などが無く比較的静かな部屋

1階は外部の音を取り込みやすい特徴があるため、周辺に大きな道路や線路が無い場所を推奨します。また、歓楽街、飲み屋街にも注意が必要です。

夜間、あるいは日中も、比較的静かで大きな音がしないような環境であれば1階でも快適に過ごせることができます。

7-6.セキュリティ重視なら角部屋ではなく中部屋が良い

1階の場合は、角部屋の方が不審者の侵入リスクが高く、犯罪の下見もしやすいという理由から、セキュリティを重視したければ1階の場合は角部屋よりも中部屋の方が安心です。

角部屋には、開放感がある、騒音トラブルのリスクが低い、などのメリットがありますが、1階に限って言えばセキュリティが弱くなるためあまりおすすめできません。

ただし、建物の構造上、もしくは敷地の構造上、角部屋だからといって侵入リスクが上がるようなことがない物件であれば、角部屋でも安心して暮らせます。

7-7.自分の生活音を気にするならば角部屋も悪くない

上述の通りですが、角部屋には角部屋ならではのメリットがあります。隣り合う部屋が1部屋しかないため、隣の住人に聞こえているかもしれない生活音などを気にするストレスが半減します。

自分の生活音を気にしてのびのび暮らせないのは嫌だと思う人には、角部屋もおすすめします。ただし、セキュリティがしっかりした部屋かどうかは最低限確認するようにしてください。

8.1階の部屋のまとめ

ここまで、1階の部屋のメリット、デメリット、トラブル事例、判例など、細かく解説しました。最後に1階の部屋についてまとめます。ご自身が部屋に求めるもの、部屋選びで重視したいポイント、どのような生活を送りたいか、何を気にしているか、といった点と照らし合わせて検討してみてください。

8-1.分析を踏まえ、1階の部屋をおすすめしたい人

これまでの分析を踏まえて、1階はどんな人に向いているのか、どんな人におすすめしたいのか、という点についてまとめます。

  • 階下に響く足音が気になる人(小さなお子さんがいる、自宅でジャンプするようなトレーニングをしたい、消音機能付きの電子ピアノを弾きたい(ペダルの音が階下に響くため)、など)
  • 可能な限り家賃を抑えたい(ただしセキュリティチェックは忘れずに)
  • 急ぎで入居したいため、空いている部屋を手っ取り早く紹介してほしい
  • 階段やエレベーターを使わずに生活したい

主に、これらの特徴に当てはまれば1階をおすすめできます。夏に比較的涼しくなるとはいえ、湿気がこもりやすいのも1階の特徴ですし、やはり1階はどうしてもデメリットの方が目立ちます。その為、上の4つの特徴に当てはまらないのであれば、できれば2階以上の部屋を探すのが良いと言えます。

8-2.どんな1階の部屋なら住んでいいのか

デメリットが目立つ1階の部屋ですが、それでも1階の部屋に住みたいという場合は、次のような条件をなるべくクリアしている部屋を選ぶよう心掛けてください。

  • セキュリティがしっかりしている(詳細は上記)
  • ある程度日当たりを確保できるか、風通しが良い
  • 周辺環境が比較的静か
  • (虫が苦手な方は)周辺環境に飲食店、雑木林、田畑などが無い
  • ベランダが人目につかないところにある

セキュリティに関しては、「1階だからしょうがない」と安易に諦め、妥協したりせず、しっかりと安心して住める物件を探した方が損をしないと思います。特に、治安の悪いエリアでは最近は男性でも危ない目に遭うリスクが高いため、十分に気を付けなければなりません。比較的治安が良いエリアであっても、危険はどこに潜んでいるか分かりません。安心して暮らせる部屋を選ぶに越したことはありません。

自分の身は自分で守ること、これが基本中の基本です。部屋探しを失敗して恐ろしい目に遭わないように、最初からリスクはなるべく減らしておくのが得策です。私たちは豊富な実例を基に、予想される部屋探し、部屋選びの失敗を事前にお客様と共有することにより、後悔しない部屋探しをご提案いたします。

9.トラブルを避けるための部屋探しチェックリスト

考え込んでいる女性

これまでのトラブル相談やアンケートの事例を参考に、簡単なチェックリストを作りました。

もし、いくつか、該当するようなら、慎重にお部屋探しをされることをお勧めします。

□ 延線沿い等エリアを広げ、自分に合う部屋を探したい
□ 自分に合ったお部屋の条件や優先順位が分からない
□ オンライン内見や広告を見て、お部屋を決めたい
□ 部屋探しの経験が2回以下で相談し、お部屋を決めたい
□ 家賃や初期費用等予算の決め方が分からない
□ 契約や引っ越し後のトラブルは絶対に避けたい
□ 自分のペ-スでゆっくりお部屋を探したい
□ 仲介手数料無料や返金保証が付いている方がいい

もし、3つ以上当てはまる方は慎重に部屋探しを進めて下さい。というのも、トラブルが続くと、仕事や私生活だけでなく、健康も害してしまう事もあります。

また、気になるようなら、LINEで出来る部屋探しの条件簡易診断もやってみて下さい。3つの質問で、部屋探しに必要な具体的な注意点や対策をご提案しています。

恵比寿や広尾、麻布十番など東京都心のデザイナーズマンションの内見予約や住まいの無料相談はこちらのページから物件や希望の日時を送って下さい。その他、退去時に管理会社と揉め、原状回復費用をムダにしないため、契約者さま限定の入居確認時の保存フォームを作りました。

部屋探しに関する疑問や心配事を誰に相談すればいいかわからないという方は弊社までご相談ください。私たちや専門家が間に入ること解決できた経験や知識をまとめた冊子を無料でお渡しします。また、無料相談ではできる限りの一旦の対策方法などご提案しています。長年の実務経験で培った知識や経験を生かし、あなたの力になります。ぜひ気軽にご連絡ください。

今後もあなたの大切な人生と平穏が守られますよう、4,600件を超える引っ越しの失敗談を基に住まいの問題解決のトップランナーとして、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。その他、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法を建築士さんにレクチャーしてもらいました。

ーーー

あなたの大切な人生と平穏が守られますように、これからも私たちは引っ越しの失敗談をベースに、賃貸の専門家集団として、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。

今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。

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相樂 喜一郎

この記事を書いた人

相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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