C.解決事例(お客様の声)

マンションの隣人による煙草の悪臭を解決するには?

繁忙期の終わった4月と10月はトラブルの相談件数が一気に増えます。先日、マンションの隣人からの煙草の悪臭に関し、以下のような相談を受けました。

1.隣人からの煙草の悪臭に関しての相談です。

1-1.隣人の煙草の悪臭による賃貸契約解約の場合、契約金等の請求が可能ですか?

賃貸契約のマンションにおいて、隣人の部屋から私の部屋まで漂ってくる煙草の臭いに悩んでおります。隣の部屋の住人がヘビースモーカーで、隣人の室内で吸った煙草の臭いが換気ダクト等を通じてこちらまで入ってきていると思われ、私の部屋が頻繁に(1日に2〜3回ほど)煙草の臭いで充満します。

ですので、共有部分には該当しません。なお、共用部分(ベランダ)での喫煙につきましては管理会社を通して注意していただき、辞めていただきました。

こちらの希望としましては、可及的速やかに賃貸契約を解約したいと望んでおります。そこで、現在の賃貸を契約するにあたって掛かった費用(引っ越し代、仲介手数料、礼金など)およびこれから発生する費用(引っ越し代など)を管理会社、仲介会社、隣人などに対して請求することは可能なのでしょうか?

1-2.告知義務違反に対する請求は可能なのでしょうか?

また、ヘビースモーカーの隣人は私が引っ越してくる5〜6年前から住んでいるため、私の1つ、2つ前の住人も同様の苦情を持っていた可能性が高いのですが、その事実があった場合、それを事前に私に伝える必要性があったという側面から、仲介会社や管理会社に責任を訴えることはできたりしないものなのでしょうか?

2.区役所や各種協会に確認した私たちの回答です。

今回のケースでは、契約上違法ではないため、請求に応じてもらえる可能性、告知義務違反に対する請求、どちらの請求も厳しいです。

2-1.賃貸契約解約の場合、契約金等の請求に対する回答損害賠償や慰謝料が認められるケースもあります。

隣人の室内(専有部分)での喫煙自体は賃貸借契約上、契約違反に該当せず、それを理由に解約、引っ越しする場合の費用に関してはあくまで自己都合ということになり、請求したとしても応じてもらえる可能性は極めて低いです。

しかし、以下の判例の通り、受動喫煙により著しく健康を害し、損害賠償や慰謝料が認められたケースもあります。万が一、受動喫煙による体調不良を起こしている場合は、病院で診断書を頂いてみてください。

【判例抜粋】平成24年 名古屋地方裁判所判決 第7078号

(判示事項)マンション内の原告の居室の真下に居住する被告が、被告の居室ベランダで喫煙していることから原告の居室内に煙草の煙が流れ込み、原告が体調を悪化させ、精神的肉体的被害を受けたとする事案。

(判決)自室のベランダで喫煙を継続する行為は、原告に対する不法行為になることを認め、原告に生じた精神的損害に対する慰謝料を5万円とした。

2-2.どうしても納得できない場合は弁護士へ相談

弁護士への相談費用が心配であれば、無料で法律相談が受けられる法テラスに相談したりすると良いと思います。そして、最終的な解決手段は裁判しかありません。

正直、裁判というとハードルが高いように思えますし、費用も時間もかかるイメージがありますが、少額訴訟であればわずか1日で決着をつけることができます。

少額訴訟は60万円以下の少額な金銭の支払いについてのみ提訴ができて、費用も実費で数千円程度しかかかりません。かなりお手軽な裁判ということになります。少額訴訟をちらつかせると、請求に応じる事も多いので是非参考にしてみてください。

2-3.告知義務違反に対する請求に対する回答まずは、下記の宅建業法をご確認ください。

【宅建業法35条】宅建業者は、売買・賃貸の契約が成立するまでの間に、書面を交付し、買主・借主に対し、取引主任者をして一定の重要な事項の説明をさせなければならない。

【宅建業法47条1項】宅建業者は、その業務に関して、宅建業者の相手方等に対し、重要な事項について故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはならない。

宅建業法35条の規定事項は宅建業法上、重要事項として調査・説明しなければならない最低限の説明事項です。宅建業法35条で説明義務がある規定事項以外に、取引の相手方等が重大な不利益をこうむるおそれのある事実を故意に告知しなかったり、虚偽の説明をすることを禁止しているのが宅建業法47条となります。

宅建業法35条の規定事項の中に隣人の喫煙に関する事項は含まれないため、本件を争うのであれば47条についてとなります。しかし、まず、たばこの臭いというもの自体が重大な不利益をこうむるおそれのある事実に当たるかも微妙なラインです。

また、前提として管理会社が以前からたばこのにおいに関する事実を把握していたことを証明する必要があります。万が一苦情が来ていたとしても、管理会社は隠すでしょうし、そうなったら前の入居者に直接確認するしかありませんが現実的ではありません。

3.今後、このようなトラブルに遭わないために

特に賃貸契約の場合、実際は住んでみないとわからないトラブルが多いのが実情です。共同住宅でタバコの臭気被害に悩まされている方は少なくありません。

一般的に、揉め事を避けるため、近隣トラブルを抱え込む方もいらっしゃいます。そのような中で少しでもトラブルを減らすために、部屋探し際に、実際に自分の目で現地を見る事は大切だと思います。今回のタバコの臭いに関する対策としては、内覧時に窓を開け、室内の空気を室内に入れ、吸っていれば防げたトラブルかもしれません。

ポイントは、担当者ではなく、自分で窓を全て開けてみて、おかしい所が無いかをチェックする事です。例えば、タバコだけでなく、隣人のベランダにゴミが溜まっているなど。高級なマンションでも生活がルーズな人はいます。その為、見た目が奇麗な状態であっても、最低限のチェックポイントは見てから決めて下さい。

加えて、上記でもお伝えした通り、契約後の費用請求は叶わない事例が大半でトラブルの初期段階できちんと対応しなかった方が関係のこじれた相手に危害を加えられるケースも少なくありません。

そのため、近隣トラブルに巻き込まれた際は、早急に対応することが重要です。また、専門家のアドバイスを仰ぎ、嫌がらせの客観的証拠を揃えることが最も重要です。

特に、遠方からの引っ越しの方や部屋探しの経験が少ない方は後悔・失敗が統計的に多いので、オンライン内見だけにとどめず、慣れるまでは最終的なお部屋の決定は自分の目で・耳で・鼻で調べてからの方が圧倒的に後悔が少ないと思います。

ご期待に沿えず大変心苦しいのですが、少しでも参考になれば幸いです。念のため、これまでの相談事例を基に、遠方への引っ越しや部屋探しの経験が少ない方向けに、トラブルを未然に防ぐ三つの注意点をこちらにまとめておきました。

ーーー

あなたの大切な人生と平穏が守られますように、これからも私たちは引っ越しの失敗談をベースに、賃貸の専門家集団として、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。

今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。

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大和田 豊

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大和田 豊

事例を参考に失敗の少ない不動産取引を目指し、2012年以降90件以上の不動産取引を経験。現在はコロナウイルスの影響を受け、ローン返済に悩んでいる方向けに、生活の早期の改善に向け、債務整理に注力。宅地建物取引士、任意売却取扱主任者、住宅ローンアドバイザー。>>その他詳しい実績はこちら

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