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こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す白金の不動産屋、(株)リビングインで住まいのトラブル相談・提案を担当している不動産鑑定士補兼住宅診断士の相樂です。
私たちは過去3年間、都内を中心に再開発地域のマンション価格や人口、乗降客数の推移を見てきました。
2022年の暮れにはいよいよ日銀の方針修正だけでなく、18歳までの子どもに月5,000円程度の給付検討もあり、今後も東京は買っていいマンションとそうでないマンションの選別が進みそうです。
購入を検討するお客さまにマンションの良し悪しを説明する際、『実際にマンションを購入するなら、他の地域』と比較して、どうなっているか?
すなわち、価格の高い安いは他地域や過去との比較で判断するのが最も良いと分かってきました。
*田端銀座商店街
ここからは2つの地域をピックアップして、マンション選びに大切なポイントを比較していこうと思います。
今回は、既に再開発が完了している田端と、今後注目の再開発が進んでいく西日暮里のデータを整理し、その将来性を見ていこうと思います。
1.人口や世帯数、年収の比較
*田端駅前の様子
北区に位置する『田端』駅は、正直、メジャー感に欠ける街ではあります。
でも、新海誠監督の映画「天気の子」の舞台として話題になったことを覚えている方もいるのではないかと思います。
実は、山手線内で最も家賃相場が安い駅として知られ、ワンルーム・1K・1DKの単身者向けのマンションの家賃相場は7.9万円(2023年5月時点)でした。
そんな田端駅周辺地区では大規模ではないものの、2010年から2013年にかけて都市再生整備計画が実施されました。テーマは、「歩いて暮らせる災害に強いまちづくり」です。
田端駅を中心として、南北に高低差があるため、日常生活の移動の利便性を改善するべく、田端ふれあい橋脇昇降施設新設工事などを行いました。
また、既設公園に防災施設が少なく、災害時の利用ができるよう、公園の整備も行いました。
実際に行ってみると分かりますが、綺麗になって、雰囲気も人通りも以前とは段違いに良くなっています。
*西日暮里駅前の様子
一方、『西日暮里』駅は日暮里、千駄木と三角形を成す位置にあり、それぞれ徒歩圏内です。JR山手線だけでなく、京浜東北線、東京メトロ千代田線、東京都交通局日暮里・舎人ライナーの接続駅と交通の便がよく、成田空港に直接アクセスできる環境です。
都心への利便性の割には荒川区ということもあり、今でも家賃が抑えられる穴場の駅だと言えます。
ワンルーム・1K・1DKの単身者向けのマンションの家賃相場は8.2万円(2023年5月時点)でした。
西日暮里駅は混雑を緩和させるため、1971年に新しく開業した駅です。そのためか、駅を降りて道灌山通りがすぐあるなど、あまり計画性のない駅前となっています。
そんな西日暮里駅ですが、『西日暮里駅前地区第一種市街地再開発事業』によると、2022年に駅周辺の再開発を着工し、2029年に地上47階、地下2階の複合施設が誕生する予定とのことです。
まずは、再開発が完了している田端駅と、2029年に向けて再開発が進んでいる西日暮里駅の、人口と世帯数推移のデータを比較していきます。
1-1.人口と世帯数の推移とその比較
北区、荒川区が発表した人口に関する統計データを基に、田端駅、西日暮里駅から徒歩15分圏内の世帯数と人口の推移を考察していきます。
データを確認すると、田端駅は2021年を境に若干数ではありますが、減少していることがわかります。
これはあくまでも予想ですが、田端駅周辺に大学が多く、コロナの影響で上京してくる学生や社会人の数が一時的に減ったことが原因として考えられます。今後、コロナ渦を経て、どれくらい数字が戻ってくるのか注目だと思っています。
一方の西日暮里駅は多少の増減はあるものの、世帯数、人口共にほぼ横ばいで推移していることがわかります。
田端駅と比べると、その利便性が上げられます。山手線だけでなく、京浜東北、千代田・都営日暮里・舎人ライナーなどが通っており、駅周辺の繁華性も田端と比べると圧倒的です。
1-2.駅徒歩圏の人口予測の比較
次に、各駅徒歩15分圏内の人口推計のデータを見てみます。
上記のグラフは『国土数値情報(H30国政局推計)/国土交通省』のデータを国際航業(株)が編集・加工した情報を元に作成されたグラフです。
データを確認すると、田端駅の2050年までの人口は、364人減少の予想となっています。
北区の年齢階層別人口推計を見てみると、2013年から2033年にかけて0-14歳の人口が5,179人減少する予想、それと対照的に65歳以上の人口が2,928人増加する予想となっています。少子高齢化の影響により、町全体の人口は徐々に減少傾向にあるようです。
一方、西日暮里駅はわずかですが、2,645人増加の予想となっており、手堅いエリアであることがわかります。
荒川区では、北区のような人口推計はありませんでした。そのため、あくまでも推測にはなりますが、田端駅と同様に少子高齢化は進みつつも、再開発事業の影響で、移住者が増加することを予想した結果の数値ではないかと考えられます。
1-3.駅徒歩圏の年収の比較
次に、田端駅と西日暮里駅の年収別世帯数の割合を比較していきます。
どちらの駅もほとんど同じ割合で、年収200万~500万年の世帯数の割合が60%を占め、一般家庭に愛されているエリアだと言えます。また、年収600万~1500万の世帯数も残り40%を占めており、どちらも比較的ゆとりのある世帯も住むエリアだとも言えます。
1-4.人数別世帯数の比較
上記のグラフは、田端駅と西日暮里駅の世帯数を比較したグラフです。
年収比較と同様、こちらもほとんど同じ割合でした。単身世帯が全体の50%以上を占めており、単身者から人気の高いエリアとなっています。
山手線の交通利便性や家賃相場が低いことが理由の一つとなっているかもしれません。また、下町の雰囲気も漂う環境が単身者に好まれているのかもしれません。
2.乗降客数の推移とその比較
*田端駅 ホームの様子
東京都交通局が発表している『各駅の乗車人員』のデータを基に、『田端駅』と『西日暮里駅』を利用する乗降客数の推移を比較していきます。
*参考:「国土数値情報(駅別乗降客数データ)」(国土交通省国土政策局)の数値を参考に作成
データを確認すると、2002年からコロナ禍前の2019年までの17年間で、田端駅の乗降客数は7,267人(約18%)増加しています。一方、西日暮里駅も、7,723人(約8%)と増加しています。
しかし、コロナ禍になった2020年に、どちらの駅も大きく乗降客数は減少しています。
年収200万未満の単身者が多いといったデータからも学生や外国人居住者が多かったのではないかと予想できます。コロナ禍の終息による、2023年以降の数値の変化にも注目していきたいところです。
また、西日暮里駅に関しては、2029年に再開発が完了すると、駅前の利便性を踏まえ、将来的に乗降者数が増加することも予想されるため、今後に注目です。
3.治安や地盤の安心は?
ここからは不動産を購入するうえで欠かせない、治安や地盤、災害の影響についてそれぞれのデータを比較していきます。
3-1.刑法犯の推移とその比較
*参照:警視庁
上記のグラフは、各エリアを管轄する滝野川署、荒川署が発表した、過去5年間における刑法犯の推移です。
まず、田端駅の過去5年間で発生した刑法犯は減少傾向でした。北区は飲み屋や繁華街が多く治安が悪いイメージもありますが、繁華街の無い田端駅は治安が良く、犯罪件数は減少し続けています。
一方の西日暮里駅も、刑法犯は減少傾向にありました。
荒川区『西日暮里駅周辺地域まちづくり構想(改定素案)』によると、荒川区では、JR西日暮里駅ガード下にギャラリーを設置するなど、高架下における防犯対策や地域の美化に取り組んでいるため、その効果が出ているのかもしれません。
3-2.地盤の安心比較
田端1丁目~6丁目までを見てみると、地盤の揺れに対し、3丁目が一番危険度が高いということがわかります。
一方で、田端6丁目の地盤が一番危険度が低いことがわかります。古くから形成された固結した地盤のため、地震の揺れに対し、比較的危険度が低い地域です。建物倒壊危険度の順位は東京都の中で1867位。1ヘクタール2.42棟と予測されています。
西日暮里1丁目~6丁目までを確認すると、一番危険度の低い地域は5丁目であることがわかります。逆に、1番危険度の高い場所は1丁目でした。
地盤が軟弱なのか、地震が起きた場合に揺れが増幅されやすい地域のため、建物倒壊危険度は都内で162位です。
4.賃料の推移と募集件数
ここからは、各駅の賃料の推移と募集件数に関するデータを比較していきます。
4-1.各駅の賃料推移
以下のグラフは、ライフルホームズが発表している賃貸マンションに関するデータを基に、直近5年間の『田端駅』と『西日暮里駅』に関する賃料の推移を比較したものです。
*参照:ライフルホームズ
データを確認すると、田端駅の標準的な物件の賃料は直近の3年間で3.76%程度上昇していることがわかります。これは東京都の変動率である3.64%と同程度の水準です。
この3年間の賃料上昇率を内訳でみると、初年度0.51%、2年目0.38%、3年目2.87%となっています。
*参照:ライフルホームズ
続いて西日暮里駅の標準的な物件の賃料は、直近の3年間で2.03%程度上昇していることがわかります。こちらも、東京都の変動率と同程度の水準です。
この3年間の賃料上昇率を内訳でみると、初年度-1.29%、2年目0.65%、3年目2.68%となっています。
4-2.各駅の賃貸募集件数
続いて、不動産情報サイトのSUUMOに掲載されている、各駅から徒歩15分圏内の賃貸物件の募集件数を、一人暮らし(1R、1K、1DK、1LDK)、二人暮らし(1LDK~2LDK)、家族(3DK~)と、間取り、タイプ別に比較していきます。
2023年5月15日時点のデータを確認すると、全ての間取りにおいて、西日暮里駅の方が募集件数が多く、お部屋探しの選択肢が広がりそうです。
5.マンション価格の推移と比較
*田端駅周辺のマンション
5-1.駅別中古マンション価格に関するデータの推移
東京カンテイが発表している、駅別中古マンション価格に関するデータを基に、直近5年間の『田端駅』と『西日暮里駅』に関するマンション価格の推移を比較していきます。
*参考:東京カンテイ
データを確認すると、田端は2020年のみ、下がっていますが、サンプル数の問題かもしれません。で、直近5年間で『田端駅』が45万円/坪(約19%)、『西日暮里駅』も34万円/坪(約14%)も上昇していることがわかります。
西日暮里は注目度の高い再開発事業が行われていることから、しばらくは上昇傾向が続いていくことが予想されます。
一方、田端駅は一旦再開発事業が落ち着いているため、今後価格がどのように変化していくか注目です。
5-2.マンション専業各社のファミリー物件の単価比較
このように堅調に推移している田端駅と西日暮里駅の住宅価格ですが、更にいくつかのマンションサイトを参考に、一般的なファミリー向けマンションの価格を調べてみました。
*一旦、ざっくり知るために築年数や最寄り駅までの距離は考慮外としています。
まず、大手仲介サイトであるホームズでは、直近3カ月間に募集を開始された物件を基に平均価格を出しており、70㎡前後の中古マンションの平均価格は、田端駅が6,132万円(290円/坪)、西日暮里駅が5,946万円(281万円/坪)でした。
次に、新築マンションの相場に強い、マンションエンジンでは、田端駅が平均価格5,203万円(246万円/坪)、西日暮里駅が平均価格5,161万円(244万円/坪)でした。
他にも、国土交通省の売買データを基に価格や相場を教えてくれるウチノカチでは、田端駅が平均価格3,210万円(246万円/坪)、西日暮里駅が平均価格5,608万円(265万円/坪)でした。
最後に、AIを使った評価で業界を引っ張っているソニー不動産では、田端駅が平均価格4,517万円(213万円/坪)、西日暮里駅が平均価格3,350万円(158万円/坪)でした。
ちなみに、どの相場も2023年4月時点の数字です。
上記を参考に、マンションエンジンの新築価格とその他3つのサイトの平均価格(田端駅4,619万円、西日暮里駅4,968万円))を単純に比較すると、中古マンションと新築では、田端駅が約11%、西日暮里駅が約4%の乖離がありました。
どちらも将来の家族構成や職場の変化など、万が一マンションを売る事になったとしても、個人的にねらい目だと思う、築10年程度の中古マンションを賢く購入する方が安心だと思います。
6.住宅街や商業地の地価の推移とその比較
次に、各駅周辺の地価を確認していきます。
以下のグラフは、商業地域に区分されている『北区5-18(田端駅)』と『荒川区5-60(西日暮里駅)』、住宅地に区分されている『北区-15(田端駅)』と『荒川区-12西日暮里駅)』のデータを基に、2013年から2022年までの価格を表したものです。
まず、田端駅周辺の商業地の地価推移を見ていきます。
2013年から着実に地価が上昇し、10年間で約18万円/㎡(35%)価格が上がっていることがわかります。
一方、西日暮里駅も10年間で約37万円/㎡(55%)価格が上がっています。
次に、田端周辺の住宅地の地価推移を見ていきます。
こちらも商業地と同じく2022年まで地価が上昇し、10年間で約14万円/㎡(33%)価格が上がっていることが分かります。
西日暮里駅も、10年間で約15万円/㎡(40%)価格が上がっており、どちらの地区も安定して上昇傾向です。
7.田端駅と西日暮里駅のマンションデータの比較まとめ
今回は、既に再開発が完了している田端駅と、今後注目の再開発が進んでいく西日暮里駅を比較してみました。
7-1.田端駅周辺の不動産は?
*映画『天気の子』のモデルにもなった南口周辺の様子
かつて文豪たちに愛された閑静な街並みの田端エリア。北区内の赤羽、王子駅に比べて、大規模商業施設がないため治安が良く、単身からファミリー層までが安心して生活できます。
2013年には、都市再生整備も行われ、ますます暮らしやすい町になりました。また、災害の面では川の氾濫の影響は受けませんが、過去の水害実績から大雨の際の内氾濫には注意が必要な地域があります。
*田端駅周辺の様子
住みたい沿線ランキング1位のJR山手線が使えて、田端駅は賃料相場が他駅より安いため単身者に人気のエリアです。
他にも、利便性と家賃相場の観点から、賃貸物件としても個人的には、注目のエリアだと思います。実際に行ってみると、山手線の内側は本当にきれいになってます。
7-2.西日暮里駅周辺の不動産は?
*谷中ぎんざ商店街
今、ちょっとしたブームとなっている『谷根千』へも徒歩圏内で、下町情緒が楽しめる『西日暮里』駅は、駅周辺には特徴がなく、穴場駅といったイメージです。
しかし、西口は少し歩けば閑静な住宅街が広がり、歴史を紐解くと、昔から桜やツツジが美しい地域であるため、「一日中過ごしても飽きない里」という意味の「日暮らしの里」と呼ばれたことが由来しているそうです。
実際に行ってみると、東口は飲食店や風俗店が多数集まり、やけに社交ダンス関係のお店があるなど、少し癖のある街並みが広がります。
*西日暮里駅周辺の様子
これまで、西日暮里は『西日暮里、再開発、中止』や『西日暮里、再開発、見直し』が多く検索されるなど、計画して発展していない駅前周辺でした・・・。
しかし、2022年、いよいよ整備が始まり、最先端の複合タワーが駅前に登場すると、穴場駅ではなく、成田国際空港へのアクセスの良さと既述の通り、交通の利便性も相まって、秋葉原級の大注目の駅に変貌するかもしれません。
ただ、地盤や水害には気を付けて、物件購入の際にはハザードマップをしっかり確認することが必要だと思います。
参考:幻冬舎ゴールドオンライン
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