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麻布十番・賃貸マンション、㈱リビングインの防犯設備士兼管理業務主任者の相楽です。
今回も前回同様、不動産絡みのトラブル案件を主に扱っていた弁護士先生と一緒に騒音やたばこ、ナンパ等入居後のトラブルについて、契約後に不安になって、ソワソワしないための事前確認や注意点を考えます。
賃貸マンションに入居後、近隣で騒音やベランダに長期間置いてあるゴミから虫や悪臭が発生したり、隣人からしつこくナンパされたりして迷惑を被るケース、脅すわけではないですが、女性の場合は特にありがちです。入居時に説明のなかった近隣トラブルが発生した時に契約を解除したり、大家や管理人さんに損害賠償請求したりできるのでしょうか?引っ越し代を出してもらえるのかも心配になりますよね?
今回は、入居後に近隣トラブルが発生したときの大家や管理人の責任、対処方法をご説明します。なお、トラブル関連の記事はアクセスが多く、実務でもよく聞かれるので、近隣トラブルに関する告知事項とその有無による損害賠償に関して、こちらにもまとめました。
1.騒音や悪臭は大家の告知義務違反になる?
賃貸物件に『雨漏り』や『過去に自殺が起こった』などの問題がある場合、賃貸人は賃貸借契約締結時に賃借人へ『告知』しなければなりません。最近、事故物件が映画になったりと、BUZZ WORDになっているため自殺や事件が起きた物件を事前に告知しないといけないというのはうっすら知っているかもしれません。ただ、雨漏りなども同様に契約前に不動産会社はあなたにそのことを伝えないといけません。
では、近隣住民による騒音や悪臭の迷惑行為についても、賃貸人は賃借人に告知しなければならないのでしょうか?これらの事情について、基本的には大家に告知義務はないと考えられます。なぜなら、賃貸物件を借りるときには賃借人は先に物件を通常『内見』します。その際に騒音や悪臭について気づくことができると考えられるからです。たとえば、1階に飲食店が入っていて虫や臭いが上に上がってくる場合や近隣で工事が行われていたり、電車が走っていたりして騒音がある場合、内見したら賃借人自身が問題を把握できるはずです。あえて賃貸人が告知しなくても賃借人は分かった上で契約に及ぶので賃貸人が告知しなかったからといって解約はできないのです。
現在、移動不要で時間をかけないでいいからと普及し始めているVR内見においては室内だけでなく、外観、エントランス、ポスト、自転車置き場、ゴミ置き場など使用状況だけでなく、お部屋の臭いや振動、騒音、傾き他入居後のストレスになりそうなことまで分かるようになるまではキチンと現地に行って、ご自分で判断されることを私たちはお勧めしています。
又は、有料になることが多いですが、内覧代行などの専門業者にキチンと調査をしてもらい、その調査に虚偽があった場合には引っ越し代金を請求できるくらいの姿勢でお引っ越しに取り組んだ方が良いと思います。ただし、賃貸人が内見を拒んだり、虚偽を述べたりして、契約させた場合には告知義務違反となる可能性があります。その場合には、賃借人は契約を解除して、賃貸人に損害賠償請求できます。
2.そもそも大家に告知義務がないトラブルも多い
実は、近隣トラブルの種類によっても、大家に責任が発生するものとしないものがあります。たとえば、『隣の住民がナンパしてきて困る』などの問題については、基本的に大家に責任はありません。隣の住民による迷惑行為は『物件の瑕疵(欠陥)』とは言いたがらないからです。
そもそも、大家に責任が発生しない事情に基づいて、契約の解除や損害賠償請求することは不可能です。また、隣室の住民も大家にとっては『お客様』ですから、大家が一方的に隣室住民を責める態度をとると、隣室の住民から大家に苦情が来てしまう可能性もあります。
>>色々な人が住むマンションは隣人トラブルになりやすく、騒音だけでなく、ゴミやタバコ、そして、駐車場での事件などもあります。トラブルに遭って、大きな揉め事にしないための対処方法などはこちらのページにまとめておきました。
3.賃貸・建物管理人の責任とは?
隣人によって迷惑をかけられる場合、一般的には『管理人』に苦情を述べるものです。管理人、すなわち、管理会社が一般的に多いと思います。管理会社にクレームを言っても迷惑行為がやまないとき、管理人に責任は発生するのでしょうか?
残念ですが、管理人にも責任は基本的には発生しません。
なぜなら、管理人は大家に雇われて物件の掃除や施設の管理などをするだけの人であり、『迷惑行為をやめさせる権利や義務』はないからです。同様に、大家には物件の瑕疵について告知義務がありますが、管理人には告知義務違反もありません。
4.トラブル発生時に大家に対して、請求できること
遠方からの引っ越しや上京時のお部屋選び、お部屋や周辺の状況を調べ切らずに引っ越し後に何かあったら、泣き寝入りするしかないのか?もちろん、大家さんに何も請求出来ないわけではありません。大家にとっても物件内で迷惑行為を繰り返されると退去者が発生するなどの支障があります。そこで、大家に隣室住民による迷惑行為を報告すると、大家が何らかの対応をするケースはよくあります。たとえば、騒音やナンパなどで困っていると報告したら、大家から相手に注意してもらえるでしょう。
また、隣室住民の行動が常軌を逸している場合や違法行為が行われている場合などには賃貸借契約のような継続的契約においては、大家が賃借人との信頼関係破壊の理論により、隣室住民との契約を解除して、隣室住民を退去させることも可能です。ちなみに、民法では当事者間の信頼関係を破壊するといえるほどに重大な背信行為がある場合に限り、契約を解除できると解されています。
この考え方のことを法律的に「信頼関係破壊の理論(背信行為論)」といいます。その為、入居後に隣室の住民の迷惑行為によって困ったときには、大家に対して損害賠償請求するのではなく、大家を上手に味方につけて相手に注意してもらったり退去を促してもらったりするのが得策だと思います。
>>一人暮らし向けのお部屋を探している女性から質問された『隣人トラブルを効果的に避ける方法』についてはこちらのページにまとめておきました。実際にあった内容を基に、参考になるようにまとめているので、これから引っ越しを考えている方の役にやつと思います。
5.近隣住民に対する請求について
近隣トラブルが発生したとき、近隣住民に対してはどのような請求ができるのでしょうか?
5-1.退去させることは可能か
迷惑な住民を『できれば退去させたい』と考える方もいるでしょう。しかし、『退去請求』は基本的に困難です。物件はあなたのものではありませんし、相手は賃料を払って正当な権利を持って居住しているので、退去させる法的な理由が認められないからです。大家が賃貸借契約を解除して退去請求しない限り、強制退去させることはできません。
5-2.損害賠償請求について
近隣住民による迷惑行為がひどいケースでは、相手に損害賠償請求が可能です。たとえば、相手が大音量でステレオを鳴らし続けるのでノイローゼになった場合などには、治療費や慰謝料を請求できる可能性があります。話し合い次第で、引っ越し費用も請求できるでしょう。一方、隣室の住民による行為が違法とまで言えない場合、損害賠償請求はできません。
5-3.刑事告訴できるケースもある
近隣住民による迷惑行為がひどい場合、相手に犯罪が成立するケースも。過去の判例で、大音量でステレオを鳴らされて隣人がノイローゼになった事案で『傷害罪』の成立が認められた事案もあります。犯罪が成立する場合、刑事告訴をすれば相手が逮捕される可能性があり、そうなれば被害はやむでしょう。
>>引っ越し後に分かった「隣人トラブル」の告知義務違反、不動産会社やオーナーに再度の引っ越しの損害賠償の請求は可否を弁護士に記事にしてもらいました。
6.近隣の状況を入居時にしっかり確認することが大切
入居後に隣人に問題があるとわかっても、基本的には大家に損害賠償請求できません。大家による自主対応を待つか、相手に直接申し入れをしたり損害賠償請求したりする必要があります。その為、入居後の面倒なトラブルを避けるために、内覧時や契約前にしっかりと周辺状況を確認し、問題点を洗い出しましょう。
内見時、近隣で騒音や悪臭が発生していないかをチェックしつつ、不動産会社に『隣人住民はどういう人か?』さりげなく聞いてみて、怪しい点がないか確認すると良いと思います。今後の物件探しや契約をするときの参考にしてみてください。
なお、4,600を超える引っ越しの失敗事例の中には事故物件の取り扱いなど、条件やお部屋の中身をあいまいなまま契約してしまう不動産会社の話がいくつもありました。
貸す側も借りる側も事故物件に関するキチンとした知識を持たないまま契約してしまい、あなたが後悔することがないよう、正しい知識を持った不動産会社でマンションなどの契約を行うことを個人的には強くお勧めしています。
隣人を含めた騒音トラブルに関する告知義務違反についての解説はこちらをご覧ください。また、『マンション内でのタバコに関するトラブル』を司法書士の西門と一緒にまとめました。2020年以降急速に増えた問題なので、一人で悩んでいる場合には読んでみて下さい。
【元弁護士と考える】シリーズ、告知義務の必要な事故物件を選ばないための賢い対策他
>>【元弁護士と考える】事故物件を契約する前の告知義務?その確認方法や注意点は?
>>【元弁護士と考える】賃貸契約後に『事故物件』と判明、解約や損害賠償できます?
>>【元弁護士と考える】不動産屋からウソを教えられた時の対応は?
>>【元弁護士と考える】騒音、地震、虫などないと言われたのに、嘘だったら
>>【元弁護士と考える】仲介手数料の支払い無効裁判(2019年夏)
>>【元弁護士と考える】賃貸マンションで「騒音トラブル」の告知義務はどこまで認められる?
その他、事故物件に関する記事はこちらです。
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その1)
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その2)
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
お世話になります 騒音などに告知義務はないとの事ですが、これでは賃借人があまりにも不利ではありませんか?
現に私も騒音、近隣トラブルなどはなかったかとの質問に聞いたことがないと嘘をつかれました。
現行法で対処できないのであれば、別の角度から罰する、若しくは次の入居者に告知しなければいけない義務を与えることはできませんか?
コメント、ありがとうございます。
騒音や隣人トラブルなどの告知義務は現状ないため、現実的には、賃借人が不動産屋を含め、オーナーに確認してもらうことになると思います。
もし、ここで嘘をつくような不動産屋やオーナーがいれば、消費者センターに本件相談した方がいいと思います。
お客様のために、極力調べるのも不動産屋さんの仕事の一部だと思うので。現に、重要事項説明書はマンションやお部屋を賃貸する場合にも作成・捺印が求められていますし。
現行法で対処できないのであれば、別の角度から罰する、若しくは次の入居者に告知しなければいけない義務を与えることはできませんか?
>>ここの部分は、弁護士さんに確認して、回答・対応を報告します。
騒音トラブル発生時の告知義務に関して、弁護士の方に確認しました。
【元弁護士と考える】賃貸マンションで「騒音トラブル」の告知義務はどこまで認められる?
次の入居者への告知義務となるケースもあるようです。
詳しくは上記、見てみて下さい。
民法第601条により賃貸人は入居者が平穏に生活できる環境を提供する義務がありますし、賃借人が他の賃借人に与える迷惑行為を放置してはいけない(排除する義務・責任)という判例もあると思います。
「4.トラブル発生時に大家に対して、請求できること」に記載されているように、迷惑行為が常軌を逸しており著しく明らかな場合は賃貸人又は管理会社(管理を委託しているなら管理会社)に義務・責任が発生すると思います。
3章で「『迷惑行為をやめさせる権利や義務』はない」と記載されていますが、4章の内容と矛盾しませんか?迷惑行為をやめさせないと平穏に生活できないのだから、迷惑行為をやめさせる義務があると思います。何か3,4章の内容でニュアンスが違う意図があるなら教えて下さい。
ヨーコさん、
コメント、ありがとうございます。
弁護士さんにきちんと確認し、回答・対応を報告します。
少々お待ちください。
ヨーコさん、
頂いた質問に関して、回答いたします。
1.まず、3章と4章は主体が違います。3章は「管理人(管理会社)」、4章は「大家本人(契約当事者)」です。管理人は大家から管理委託を受けているだけなので自ら妨害廃除請求や退去請求、損害賠償請求などはできません。
2.また、3章と4章では程度にも少し違いがあると思っています。4章は「常軌を逸したほどの明らかに違法な迷惑行為」を想定しています。3章はそれほどではなく、「証明が難しいかもしれないと言う程度のよくある迷惑行為」を含んでいます。
こういったニュアンスの違いから混乱させてしまいました。分かりづらかったようで申し訳ありません。ただ、コメント頂き、とても参考になりました。今後は主語や主体をキチンと表記し、説明していこうと思います。
非常に分かりやすい説明ありがとうございました。
こちらこそ、ご指摘頂きありがとうございます。
今後の参考になりました。
サクラと申します。
去年の話になってしますが、
私が新しい物件を探していたらたまたま
長年通っていた喫茶店のオーナーとバッタリ出会い、物件の話をしたらオーナー自身が物件を持っていると言い出し、物件を紹介されました。そのあとオーナーの知り合いの不動産家が入り契約という形になりました。しかし、そのあとすぐに、その物件の家と隣の家と土地の境界線とトラブルがあることが分かりました。
私は隣人トラブルには関わりたくないので
数ヶ月でまた別の物件に転居しました。
この場合、何か法的対処はできるのでしょうか?ご回答を宜しくお願いいたします。
サクラさん、
コメント、ありがとうございます。
弁護士さんにきちんと確認し、回答・対応を報告します。
少々お待ちください。
サクラさん、
本件、弁護士の方に確認しました。以下のコメントの一部です。オーナーに対しては現実的に難しいようです。
まず、境界線のトラブルということであれば、形式的にはそれは隣地オーナーと当該物件のオーナーとの間のもめ事であり、当該物件を賃借している人は本来関係ないと思います。
1.隣地オーナーから嫌がらせを受けていた場合には「自分は賃借人に過ぎないのでオーナーと直接話してください」と言ってもダメな感じでしたか?
その場合には、賃借人は(嫌がらせの内容によりますが、)、隣人に対しては賠償請求できる可能性があります。法的に言えば、以下のようなイメージです。
隣人に対して何か請求するのであれば、隣人から不法行為(嫌がらせ)を受けたことを証明すれば足ります。嫌がらせがあったこと自体の証明は簡単だと思います。
ただ、それが限度を超えていて、引っ越しせざるを得ない程度であったことまで証明しないと引っ越し費用等全額の請求は厳しいように思います。
2.次に、オーナーに対してですが、オーナー自身が「入居したら、隣人から嫌がらせを受けるであろう」と認識していたことを証明しないと「説明義務」があったと言えないように思われるため、なかなか主張立証が難しい気がします。
それでも、オーナーに対して何か請求したいのであれば、オーナーに説明義務違反があったことを主張しなければなりません。
ただ、オーナーとしては「あくまでも境界のもめごと、すなわち、オーナー間のもめごとであったので賃借人にまで嫌がらせをするとは予想もしていなかった」と反論されたら、それ以上の主張がなかなか難しいように思います。
もし、隣地トラブルのせいで借りる予定の物件の一部が実際には使えなかったということなら話は変わります。
そうであれば、明白な告知義務違反になり、引っ越し代金等を請求することは可能です。
そうでない場合、もちろん主張してみるのは可能ですが、上記の理由から裁判になったら・・・、ということを考えると証明がやや厳しそうな気がします。
オーナーとしても「自分自身の問題であり、賃借人が巻き込まれるとは思っていなかった」と言いかねないため、なかなか難しいようにも思いますので。
以上です。なかなかいい案が出てこず恐縮です…。
わざわざ、お時間かけていただきありがとうございました。
隣人さんはオーナーに対しては話し合いにはならないし、飽きれている感じでした。
わたしに対して愚痴を言うような状態でした。
私が出していた生活音で寝れないので睡眠薬を服用しているとか言ってました。
こちらも、そんな物件とは知りませんでしたから。
今思えば、最初の時にオーナーから周辺の方への挨拶リストの紙を渡されましたが、そこには何故かすぐ隣の家がありませんでした。
それをオーナーに質問すると雰囲気が悪くなり口数が減ってました。
いつも礼儀が大事と言っていたのでおかしいなと思いましたが、今思えば隣人トラブルを隠してたんだ思いましたね。
サクラさん、
ご連絡ありがとうございます。
東京の単身者用マンションでは、プライバシーの問題から隣人へのあいさつをしないのが
一般的になりつつありますが今回のようなケースでは、それが逆にあだになったケースででした。
弊社もこの問題に対して、なかなかいい回答を出来ず、申し訳ないです。
オーナーに対して、言うのが難しい場合、契約書など仲介をしてくれた
不動産屋さんに本件、直接相談することもありだと思います。
既にこれまでの経緯や状況を知っていると思うので、どのような対応を
取ればいいのか、又は取れるのか等キチンと教えてくれると思います。
以上です。何かの参考になれば、幸いです。
ありがとうございました。助かりました。
こちらこそ、ご指摘頂きありがとうございます。
今後の参考になりました。
また、何かあればご連絡ください。