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不動産屋からこの部屋は「騒音はなくて地震にも強く、虫も出ない」と騙されたら?

麻布十番・賃貸マンション、㈱リビングインの宅地建物取引士兼ファイナンシャルプランナーの馬場です。賃貸物件を選ぶとき、家にいる時はリラックスできるようなるべくうるさくない場所が良いですよね。

日本は災害が多いので建物の耐震性も重要ですし、ゴキブリなどの虫が出たら、気持ち悪いし、怖いので虫が絶対に出てこないような物件をとお客様にお願いされます。今回も不動産トラブルを専門対応していた元弁護士の福谷さんとその辺り、一緒に考えました。以下、それぞれ個別に見ていきましょう。

不動産屋からは「ここは隣人や幹線道路からも離れているので静かで・・・、地震にも強い構造で・・・、虫もこれまで出たことがありません。」などと言われていたのに、実はうるさかったり、耐震性が不足していたり、虫が出てきたりしたら、契約を解除したり損害賠償したりできるのでしょうか?

1.騒音問題について

不動産屋から「騒音は全くない」と聞いていたのに、実は近くの道路をバイクや自動車が走る音がする、工事の音がうるさいなどのケースでは、不動産会社の説明義務違反になるのでしょうか?騒音について不動産会社からの説明が不足していても、基本的に損害賠償請求したり契約を解除したりできない可能性が高くなります。なぜなら、賃借人は物件を内覧する際、近隣から聞こえる音について判断できるはずだからです。

たとえば、幹線道路や線路、学校や幼稚園、商業施設の近くであればある程度音が聞こえるのは予想できます。きちんと内見をして、自分の目と耳で状況を確認した場合には、ある程度音がすることも受け入れて契約したと考えられるのです。ただし、不動産会社や賃貸人が内見を拒んだり、妨害したりした場合や壁の構造や材質について嘘をついて「壁がしっかりしているので音はまったくしません」などと虚偽説明があった場合などには、責任追及できる可能性があります。

ちなみに、トラブルを避け、言った・言わないの議論にならないように、口頭ではなく、なるべくメールやLINE等後で確認できる状態で質問する方が良いと思います。

2.耐震性について

建物の耐震性について虚偽説明があった場合、不動産会社に責任が発生するのでしょうか?耐震性は建物の基本的な構造に関わる重大な事項であり、不動産会社はきちんと現況を確認して賃借人に説明すべき義務を負うと考えられます。たとえば、耐震診断を受けていないのに「耐震診断を受けてパスしている」と嘘をついた場合、耐震偽装されている建物を調査もせずに「耐震性はクリアしている」と言って紹介した場合などには不動産会社に責任が発生します。

その場合には、契約解除や損害賠償請求できる可能性があり、支払い済みの仲介手数料の返金を求め、引っ越し費用や新居の敷金礼金などの費用の負担を求めることができます。ただし、過去に建てられた建物で建築当時の耐震基準を満たしている場合、現在の耐震基準に一致していないというだけで解除や損害賠償請求することはできません。耐震対応の工事を行ったなど嘘をつかれたら解除や損害賠償できる可能性があります。

3.虫の被害について

建物内に「これまで虫が出たことがない」と聞いていたのに、入居したらゴキブリなどの虫が現れた場合、不動産会社や賃貸人に責任を問えるのでしょうか?虫については、どの程度の被害が起こったかによって考え方が異なります。たとえば「ゴキブリが1匹、2匹出た」という程度であれば、通常の建物であれば致し方ないと考えられ、契約の責任追及は困難です。

契約時に大家や不動産屋が「絶対に虫は出ないと保証する。虫が出た場合には契約を解除されてもやむを得ませんし損害賠償もします」などと確約して契約書に書いていれば話は別ですが、通常はそのようなことは考えられません。

一方、室内にシロアリがわいていて物件の一部が朽ちているなどの被害が発生しているのに説明がなかったケースでは、建物に「瑕疵(欠陥)」があると言えるので、契約の解除や損害賠償請求も可能になります。

4.不動産屋に騙されないための対処方法

契約後に騒音や耐震性不足、虫の被害などに気づいたら、後から解決するのは正直大変です。騙されないためには、内見時にしっかりと物件内や周辺環境を確認することが重要です。たとえば、近くに大きな道路や線路、学校や幼稚園などの施設があれば、ある程度の音が伝わるのは予想できることです。近隣環境によっては虫の被害を避けがたい場所もあるでしょう。そういったことを自分で判断して契約するかどうか決めましょう。

耐震性については不動産会社に耐震診断が行われているかどうか聞き、建物の耐震性を示す施工時の資料、耐震診断書などの書類を提示してもらうなどして、自分の目でも確認することが可能です。

5.契約後に気づいたら

契約後に不動産会社の嘘に気づいた場合、そのことで契約の解除や損害賠償請求が可能か検討すべきです。たとえば少々音がうるさい、虫が出た程度では責任追及は難しいでしょうし、耐震偽装などの悪質なケースでは損害賠償請求できる可能性があります。もし、自分で判断できなければ、お近くの弁護士に一度相談してみましょう。弁護士からアドバイスを受けながら、自分で不動産会社や大家と交渉しても良いですし、自分で交渉するのが難しければ弁護士に交渉や裁判を依頼することもできます。

いきなり、弁護士に相談するのは気が引けるという方は、お近くの消費生活センターや国民生活センターに相談してみてください。担当員からアドバイスをしてもらえます。「不動産屋にだまされた」と思ったとき、黙って泣き寝入りするのは得策ではありません。まずは、自分にどのような権利が認められるのか、またどう対応するのが最善か知るため、センターや弁護士などの専門家の知識を頼ってみてください。

これまで8年近く賃貸マンションの紹介・仲介を実務でやってきた感想としては、事故物件を気にする又は聞かれることが多くなってきたと思います。仕事でもなるべく調べてから紹介するようにしており、個人的にもどのような事件や事故があったのか、気になるので選ばないようにしています。

対策としては、物件名や地域名+事件や事故で検索したり、担当の人に以前のトラブルなどを聞いておくことは凄く大切な事だと思い、実行しています。最後に、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法を建築士さんにレクチャーしてもらいました。他にも【元弁護士と考える】シリーズ、告知義務の必要な事故物件を選ばないための賢い対策他以下の通りです。

>>【元弁護士と考える】事故物件を契約する前の告知義務?その確認方法や注意点は?

>>【元弁護士と考える】不動産屋からウソを教えられた時の対応は?

>>【元弁護士と考える】騒音、地震、虫などないと言われたのに、嘘だったら 

>>【元弁護士と考える】仲介手数料の支払い無効裁判(2019年夏)

>>【元弁護士と考える】騒音や悪臭、ナンパ等『隣人トラブル』の対処と引っ越し代は?

その他、事故物件に関する記事はこちらです。

>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その1)

>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その2)

>>事故物件を紹介されたりしないかと不安で・・・

今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して、結果と原因のみ、記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。

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大和田 豊

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大和田 豊

事例を参考に失敗の少ない不動産取引を目指し、2012年以降90件以上の不動産取引を経験。現在はコロナウイルスの影響を受け、ローン返済に悩んでいる方向けに、生活の早期の改善に向け、債務整理に注力。宅地建物取引士、任意売却取扱主任者、住宅ローンアドバイザー。>>その他詳しい実績はこちら

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コメント

  • コメント (4)

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  1. アバター
    • 江野澤ルーク
    • 2020年 11月 26日 7:34am

    大東建託の賃貸の1階に住んでいるのですが最初の説明時に防音対策されているという事で説明を受け、内見した際もうるさくはなかったのですが実際住んでみると2階の方の足音などが部屋に響いてとても迷惑しています。
    大東建託に問い合わせて何度も注意を促して貰っているのですが対応が遅かったり、こちらも注意はしておりますとの事で一向に改善されません。
    この場合、最初に防音対策していると説明してるので損害賠償請求をする事は可能なのでしょうか?

    • atliving
      • atliving
      • 2020年 11月 26日 8:39am

      江野澤さん、

      コメント、ありがとうございます。
      今日、明日中にきちんと確認し、回答いたします。
      少々お待ちください。

    • atliving
      • atliving
      • 2020年 11月 26日 10:00pm

      江野澤さん、

      お世話になっております。
      騒音に関する告知義務違反や仲介契約時の債務不履行による契約解除に関して、現地内覧時に気づかず、防音対策もされていると説明があった場合は以下の対応ができると思います。

      1.音の判断は現実的に個人差があるため、損害賠償を請求することは非常に難しく、マンション内のトラブルには警察や管理会社も民事不介入になっています。
      2.次に、管理会社が取りうる対応ですが掲示や手紙、電話、訪問し、指摘するくらいしかできません。もし、足音がする場合にはその音を記録し、管理の担当者に聞かせてみ下さい。
      3.もし、それでも管理会社やオーナーが対応をしてくれない場合には都道府県庁に連絡をしてみて下さい。

      なお、過去の東京地裁で判例で似た事例がいくつかありました。参考になれば幸いです。
      1.東京地裁(平成26年11月5日)

      区分所有建物の占有者が出す騒音に関し、マンションの管理者が、その他区分所有者等に迷惑を及ぼす行為をしているとして、区分所有法57条に基づき、区分所有建物の外側に60デシベル(以下「デシベル」を「dB」と表記する。)を超える音量の騒音を出すことの差止め等を求めるとともに、占有者の行為が不法行為を構成するとして、民法709条に基づき、騒音測定器のリース料相当額及び弁護士費用相当額の合計額の支払を求めた事案において、占有者に対して、午後10時から午前6時までの間、占有する区分所有建物の外側に60dB以上の騒音を出すことを禁止するとともに、騒音測定器等のリース代等の支払いを命じた事例

      2.東京地裁(平成23年5月19日)

      居室を賃借した借主が、隣家が飼育する犬の鳴き声による騒音のため生活環境に重大な過失があるなどと主張して、仲介業者に対しては仲介契約の債務不履行解除による原状回復請求権に基づく支払い済み仲介手数料の返還を、貸主に対しては民法611条1項の類推適用に基づく賃料減額を、それぞれ求めた事案において、賃借人主張の犬の鳴き声は社会生活上受忍すべき限度を超えたとは言えず、本件居室に瑕疵があるとも言えないとして、賃借人の請求をいずれも棄却した事例

      3.東京地裁(平成22年1月20日)

      隣室の騒音・貸室に汚れがあるなど、多くの問題があったにもかかわらず、対処せず管理全般を怠ったことは建物賃貸人の債務不履行であるとして、建物賃借人が損害賠償等を求めた事案において、建物賃借人の主張それぞれを検討した結果、理由がないとしてその請求全部を棄却した事例

      上記より、証拠をキチンと示すことが大切だと思います。その為、音の記録とその大きさを計測してみて下さい。共にスマートフォンのアプリで出来ます。

      以上です。今後の参考になれば、幸いです。

    • atliving
      • atliving
      • 2020年 11月 26日 10:15pm

      江野澤さん、

      お世話になっております。
      もう一件、東京地裁で判例がありました。以下、ご確認ください。
      この方は機材などを購入し、騒音を測定していたようです。
      ーーー

      東京地裁判決 平成19年10月3日

      《要旨》
       マンション上階に住む幼児による騒音が、直下の住民に精神的苦痛を与えたとして慰謝料請求が認められた事例
      (1) 事案の概要
       Xは、平成8年7月、マンションの一室を購入して、妻と共に居住していた。Yは、平成16年2月頃Xの住戸の上階の住戸を賃借して居住した。
       Yの居住開始後、その長男(当時3~4歳)が室内を走り回ったり、跳んだり跳ねたりする音(以下「本件音」という。)がひどくなった。
      管理組合は、Xの申入れに基づいて、日常の生活音について配慮することを求める書面を各戸に配布するなどし、Xは、Yの住戸を訪ねて話し合ったり、管理会社や警察に相談したりするなどしたが、解決には至らなかった。
       そこでXは、機材を購入し、騒音を測定したうえ、Yに対し、騒音の差止め及び損害賠償を請求する旨の調停を求めたが、不成立となった。Xは、不法行為による損害賠償請求権に基づいて、慰謝料200万円等の支払を求めて提訴した。

      (2) 判決の要旨
       (ア)本件音は、Yの長男が廊下を走ったり、跳んだり跳ねたりするときに生じた音である。本件マンションの重量床衝撃音遮断性能は、LH-60程度であり、日本建築学会の建築物の遮音性能基準によれば、集合住宅の3級すなわち遮音性能上やや劣る水準である。そのうえ、本件マンションは、3LDKのファミリー向けであり子供が居住することも予定している。
       (イ)本件音はほぼ毎日Xの住戸に及んでおり、その程度は、かなり大きく聞こえるレベルである50~65db程度のものが多く、深夜に及ぶことや、長時間連続することもあった。Yは、長男をしつけるなど工夫し、誠意のある対応を行うのが当然であり、Yがそのような工夫や対応をとることに対するXの期待は切実なものであったと理解できる。
       (ウ)Yは、床にマットを敷いたものの、その効果は明らかでない。一方、Xに対しては、これ以上静かにすることはできないなどと申入れに取り合おうとせず、その対応は極めて不誠実なものであった。そのため、Xは、やむなく訴訟等に備えて騒音計を購入して本件音を測定するほかなくなり、精神的にも悩み、Xの妻には、咽喉頭異常感、不眠等の症状も生じた。
       (エ)以上の諸点、特にYの住まい方や対応の不誠実さを考慮すると、本件音は、一般社会生活上Xが受忍すべき限度を超えているものであったというべきであり、Xの苦痛に対する慰謝料としては、30万円が相当である。
      (3) まとめ
       マンション内での騒音等をめぐり隣人等との間で紛争に発展することがあるが、本件では、被害者の苦痛の程度、加害者側の被害回避努力への対応等を総合考慮して慰謝料等が認められた。

      以上です。今後の参考になれば、幸いです。

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