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こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す白金の不動産屋、(株)リビングインで住まいのトラブル相談・提案を担当している不動産鑑定士補兼住宅診断士の相樂です。
私たちは過去3年間、都内を中心に再開発地域のマンション価格や人口、乗降客数の推移を見てきました。
2022年の暮れにはいよいよ日銀の方針修正だけでなく、18歳までの子どもに月5,000円程度の給付検討もあり、今後も東京は買っていいマンションとそうでないマンションの選別が進みそうです。
購入を検討するお客さまにマンションの良し悪しを説明する際、『実際にマンションを購入するなら、他の地域』と比較して、どうなっているか?
すなわち、価格の高い安いは他地域や過去との比較で判断するのが最も良いと分かってきました。
*中目黒のメインストリートに立ち並ぶ飲食店
ここからは2つの地域をピックアップして、マンション選びに大切なポイントを比較していこうと思います。
今回は共に再開発が続く中目黒と自由が丘のデータを整理し、その将来性を見ていこうと思います。
1.人口や世帯数、年収の比較
*再開発が完了した中目黒高架下の様子
目黒区東部に位置する『中目黒』駅は、東京メトロ日比谷線と東急東横線の2路線が乗り入れる、利便性の高さが人気の街です。
2016年に『中目黒駅周辺地域整備』の再開発が完了し、洗練されたお店が軒を連ねる新しい商業施設として、『中目黒高架下』がリニューアルオープンしました。
また、2020年12月には「中目黒駅前北地区市街地再開発準備組合」が発足し、東急ストアやその周辺エリア(上目黒1-20・21)を対象に、再開発が検討されています。
*再開発予定地
東急線『自由が丘』駅は、東急東横線と大井町線の2路線が乗り入れ、利便性も文句なし、住みたい街ランキングではいつも上位に食い込む、沿線屈指の人気エリアです。
『自由が丘』駅正面口改札から見て、駅前ロータリーの右側エリアを歩いてみると、閉店、移転の張り紙が目立ちます。
そこが、まさに再開発が予定されている「自由が丘一丁目29番地区」です。
鹿島建設とヒューリックが組み、地上14階・地下3階、高さ約60mの複合施設が整備される計画で、23年度工事着手、25年度竣工を予定しています。
まずは、共に再開発が続く両駅の人口と世帯数推移のデータを比較していきます。
1-1.人口と世帯数の推移とその比較
目黒区、渋谷区、世田谷区が発表した人口に関する統計データを基に、中目黒駅、自由が丘駅から徒歩15分圏内の世帯数と人口の推移を考察していきます。
データを確認すると、中目黒駅も直近5年間の間で多少の増減はあるものの、世帯数、人口共にほぼ横ばいで推移していることがわかります。
一方の自由が丘駅は、世帯数が294世帯、人口が935人と共に若干数減少していることがわかります。
後述しますが、こちらは街全体の高齢化が原因の一つだと考えられます。
1-2.駅徒歩圏の人口予測の比較
次に、各駅徒歩15分圏内の人口推計のデータを見てみます。
上記のグラフは『国土数値情報(H30国政局推計)/国土交通省』のデータを国際航業(株)が編集・加工した情報を元に作成されたグラフです。
中目黒駅の2050年までの人口は、2,211人増加の予想となっています。
中目黒駅周辺であれば、今の所、将来的な人口の減少を心配することはないように思います。
一方、自由が丘駅は2,373人減少の予想になっています。
正直、ほぼ変わりませんが、目黒区も自由が丘駅周辺の人口が2035~2040年頃をピークに減少に転じると予測されていること、徐々ではあるものの高齢化の進行が顕在化し始めていることを問題視しています。
このようなことから、今後の人口増加の為に鉄道網の強化や街の魅力の維持・更新、ビジネス交流人口の誘致などの対策が検討されています。
1-3.駅徒歩圏の年収の比較
次に、中目黒駅と自由が丘駅の年収別世帯数の割合を比較していきます。
中目黒駅は、年収200万円未満の世帯が自由が丘駅と比べて多く、約14.2%程度を占めることがわかりました。
家賃は高めの印象ですが、単身者が住みやすい街なのかもしれません。
一方、年収1,000~1、500万未満の世帯数を比べると、自由が丘駅の方が割合が高く、約11.2%程度を占めることがわかりました。
住まれている方の年齢的な所もあるかもしれませんが、この数値から自由が丘駅は経済的にゆとりある世帯から愛されるエリアであることがわかります。
1-4.人数別世帯数の比較
上記のグラフは、中目黒駅と自由が丘駅の世帯数を比較したグラフです。
年収比較のデータ同様、自由が丘駅に比べると、中目黒駅は単身者の割合が高いことがわかります。
渋谷駅へのアクセスや日比谷線など交通網の良さから働く単身者が多く住むため、それが数値に反映されていると考えられます。
自由が丘駅は2人以上の世帯が割合として高く、子育て真っ盛りのファミリー層や、子育てが終わり、リタイア後の落ち着いた暮らしを求めるご夫婦などが住んでいるイメージがあります。
2.乗降客数の推移とその比較
*自由が丘駅構内の様子
東京都交通局が発表している『各駅の乗車人員』のデータを基に、『中目黒駅』と『自由が丘駅』を利用する乗降客数の推移を比較していきます。
*参考:「国土数値情報(駅別乗降客数データ)」(国土交通省国土政策局)の数値を参考に作成
データを確認すると、2004年からコロナ禍前の2019年までの15年間で、中目黒駅の乗降客数は30,794人(約18%)増加しています。
一方、自由が丘駅も、35,158人(約29%)と大きく増加しています。
しかし、コロナ禍になった2020年に、どちらの駅も大きく乗降客数は減少しています。
コロナ禍の終息に向けて以前と同程度の数値に戻っていくのか、テレワークの普及により、終息後も以前ほどの数値まで戻らないのか、注目していきたいところです。
3.治安や地盤の安心は?
ここからは不動産を購入するうえで欠かせない、治安や地盤、災害の影響についてそれぞれのデータを比較していきます。
3-1.刑法犯の推移とその比較
*参照:警視庁
上記のグラフは、各エリアを管轄する目黒署、碑文谷署が発表した、過去5年間における刑法犯の推移です。
データを確認すると、どちらの駅も過去5年間で発生した犯罪件数は減少傾向でした。
2020年に大きく減少しているのは、新型コロナウイルスの感染防止のための外出自粛が要因と考えられます。
その他には、街をあげての犯罪対策推進や防犯機器の普及なども要因として考えられそうです。
3-2.地盤の安心比較
上目黒1丁目~5丁目までを見てみると、一番危険度が低いのは、1丁目だということがわかります。ただ、調べてみると軟弱な地盤であり、目黒川もあります。
過去の調査で危険度のランクは高い場所でしたが、高架下の再開発で街が整備されたこともあり総合危険度は良化しているようです。
倒壊危険度は1ヘクタール0.08棟と予想されています。
一方、1990年に地区計画が決定された上目黒4丁目地区は、東京ガス(株)が所有する敷地内の建て替えが完了した後、目立った動きはありません。
そのため、街の整備が進まず昔からの小さな住宅も残っているからでしょうか、上目黒4丁目は火災危険度が306位と要注意のエリアとなっています。
続いて自由が丘1丁目~3丁目までを確認すると、一番危険度の低い地域は自由が丘1丁目であることがわかります。
1番危険度の高い場所は自由が丘2丁目でした。他の地域に比べれば危険度は低いものの、自由が丘1丁目~3丁目の中では地盤が比較的ゆるく危険度が高いとのことでした。
購入に当たって、この辺りは十分に検討が必要です。
4.賃料の推移とその比較
ライフルホームズが発表している賃貸マンションに関するデータを基に、直近5年間の『中目黒駅』と『自由が丘駅』に関する賃料の推移を比較していきます。
*参照:ライフルホームズ
データを確認すると、中目黒駅の標準的な物件の賃料は直近の3年間で3.58%程度上昇していることがわかります。これは東京都の変動率である3.29%と同程度の水準です。
この3年間の賃料上昇率を内訳でみると、初年度-0.16%、2年目0.39%、3年目3.36%となっています。
*参照:ライフルホームズ
続いて、自由が丘駅の標準的な物件の賃料は直近の3年間で4.42%程度上昇していることがわかります。こちらも、東京都の変動率と同程度の水準です。
この3年間の賃料上昇率を内訳でみると、初年度1.17%、2年目0.73%、3年目2.52%となっています。
5.マンション価格の推移と比較
*自由が丘駅周辺のマンション
5-1.駅別中古マンション価格に関するデータの推移
東京カンテイが発表している、駅別中古マンション価格に関するデータを基に、直近5年間の『中目黒駅』と『自由が丘駅』に関するマンション価格の推移を比較していきます。
*参考:東京カンテイ
データを確認すると、直近5年間で『中目黒駅』が49万円/坪(約13%)、『自由が丘駅』が59万円/坪(約20%)上昇していることがわかります。
どちらの駅も、注目度の高い再開発事業が行われていることから、しばらくは上昇傾向が続いていくことが予想されます。
5-2.マンション専業各社のファミリー物件の単価比較
このように堅調に推移している中目黒駅と自由が丘駅の住宅価格ですが、更にいくつかのマンションサイトを参考に、一般的なファミリー向けマンションの価格を調べてみました。一旦、ざっくり知るために築年数や最寄り駅までの距離は考慮外としています。
まず、大手仲介サイトであるホームズでは、直近3カ月間に募集を開始された物件を基に平均価格を出しており、70㎡前後の中古マンションの平均価格は、中目黒駅が7,835万円(370万円/坪)、自由が丘駅が7,702万円(364万円/坪)でした。
次に、新築マンションの相場に強い、マンションエンジンでは、中目黒駅が平均価格8,834万円(417万円/坪)、自由が丘駅が平均価格11,688万円(552万円/坪)でした。
他にも、国土交通省の売買データを基に価格や相場を教えてくれるウチノカチでは、中目黒駅が平均価格8,977万円(424万円/坪)、自由が丘駅が平均価格8,017万円(379万円/坪)でした。
最後に、AIを使った評価で業界を引っ張っているソニー不動産では、中目黒駅が平均価格9,648万円(456万円/坪)、自由が丘駅が平均価格7,941万円(375万円/坪)でした。
ちなみに、どの相場も2023年4月時点の数字です。
上記を参考に、マンションエンジンの新築価格とその他3つのサイトの平均価格(中目黒駅8,820万円、自由が丘駅7,887万円))を単純に比較すると、中古マンションと新築では、中目黒駅が約12%、自由が丘駅が約47%もの乖離がありました。
将来の家族構成や職場の変化など、万が一のマンション再販を踏まえ、個人的にねらい目だと思う、築10年程度の中古マンションを賢く購入する方が、万が一のことを考えて安心だと思います。
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6.住宅街や商業地の地価の推移とその比較
次に、各駅周辺の地価を確認していきます。
以下のグラフは、商業地域に区分されている『目黒区5-3(中目黒駅)』と『目黒区5-10(自由が丘駅)』、住宅地に区分されている『目黒区-9(中目黒駅)』と『目黒区-6(自由が丘駅)』のデータを基に、2013年から2022年までの価格を表したものです。
まず、中目黒駅周辺の商業地の地価推移を見ていきます。
2013年から着実に地価が上昇し、10年間で約19万円/㎡(27%)価格が上がっていることがわかります。
一方、自由が丘駅も10年間で約38万円/㎡(41%)価格が上がっています。
次に、中目黒駅周辺の住宅地の地価推移を見ていきます。
こちらも商業地と同じく2022年まで地価が上昇し、10年間で約29万円/㎡(44%)価格が上がっていることが分かります。
自由が丘駅に至っては、10年間で約27万円/㎡(31%)も価格が上がっており、どちらの地区も安定して上昇傾向です。
7.中目黒駅と自由が丘駅のマンションデータの比較まとめ
今回は共に再開発が行われ、さらに注目度が増していくと予想される、中目黒駅と自由が丘駅を比較してみました。
7-1.中目黒駅周辺の不動産は?
*中目黒のメインストリートに立ち並ぶ飲食店
中目黒はコロナ禍であっても、洗練されたカフェやアパレルショップが新しく出来、立ち並ぶ一方、昔ながらの商店街も存在し、新旧ミックスしながら変化を続け、他にはない魅力ある独自のカルチャーが醸成されています。
今回、実際に現地を歩き、これからも若い世代にとって魅力あるスポットであり続けるのではないかと感じました。
*中目黒駅周辺 山手通りの様子
目黒区の人口や2050年までの駅周辺の人口予測を見ても、減少する予想はされておらず、これから動き出す再開発により更に移住者は増加すると考えられます。
土地の値段が一時的に下がっているデータも出ているため、今後動き出す再開発完成前に不動産を購入すれば、時間を掛け、値上がりが期待できそうです。
7-2.自由が丘駅周辺の不動産は?
*飲食店街の様子
美味しいスイーツ店やお洒落な雑貨屋さん、路地裏には個性的な店舗、百名店に老舗店と、幅広い層に愛される街が『自由が丘』です。
一方、細い路地に飲食店が密集し歩行者が通行しにくいなどの問題や、街に滞在する人の高齢化も目に付くようになってきました。
そんな中、駅前の街並みが変わろうとしています。老舗店は移転しリニューアルするなど、馴染んだ風景がなくなるのは残念にも感じてしまいます。
ただ、確かに今回の再開発が起爆剤となって、更に存在感を増すきっかけになるのではないかと期待もできそうです。
*自由が丘デパート
今回の再開発で気になるのは、自由が丘では珍しい昭和レトロな佇まいの『自由が丘デパート』の行く末です。
こちらは開発予定地には入っておらず、今後も今の形で存続するそうです。
しかし、空いた空間も目立つようになってきました。
こちらも相乗効果で更に個性を深めた場所に生まれ変われば、ますます『自由が丘』駅周辺は人々の興味を惹き続ける魅力溢れた街として、価値を高められるのではないでしょうか。
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