物件紹介サイトなどで「デザイナーズマンション」と表記されている物件はおしゃれで、開放的。明るいイメージのマンションが多く、とても魅力的に見えます・・・ですが、そもそも「デザイナーズマンション」とは何を指すのか?は、とてもあいまいです。不動産業界内でも“定義”はありません。
今回の記事では、コンクリート打ちっぱなしマンションを「デザイナーズマンション」と位置づけ、このような建て方のマンションで内見時にどこをチェックすればよいのかを建築士さんと共にしっかりとお伝えしたいと思います。
元々は、小田急線『永福町』駅にある打ちっぱなしのデザイナーズマンションの一階を借りたシステムエンジニアの友人の一言がこの記事を書くきっかけになりました。「東京で頑張ろうと気張って、渋谷へのアクセスを踏まえ、駅近のおしゃれなデザイナーズマンションを借りた。でも、引越し初日から虫が酷く、窓を開けたことが無い・・・。換気も上手に出来ないから風呂場とベッドの横に結露とカビが酷い。で、エアコンは常に動いてて、風呂場とトイレの換気扇を24時間つけっぱなしで室内干しで・・・」と言う話を聞きました。
部屋って、見た目だけで選んでしまうと後々ややこしい事にと思い、その方の次の引っ越し先は周辺環境がよく、虫とカビ対策が取れている部屋を紹介させて頂きました。マンション自体の見た目は落ちたものの、家賃は下がり、窓も開けられ、今は快適な生活が送れ、今でも会うたびに感謝されます。
引っ越し経験が少ない方や遠方からの引っ越しで、ご自身で十分に確認できない方など、写真映えするデザイナーズをおしゃれだけで契約し、失敗することのないよう、最後まで読んでみて下さい。もしも、読んでも良くわからないというときは、専門家に内見を依頼することも大切です。先ずは、デザイナーズマンション内見に必要な情報をお伝えします。
1.デザイナーズマンションも、近年賃料が安くなっている!?なぜ?
最近、コンクリート打ちっぱなしの「デザイナーズマンション」とされる物件を多く目にしませんか?築年数が古くても、壁紙や壁板をはがしてしまうことで、コンクリート打ちっぱなしのデザイナーズマンション風のリフォームができてしまいます。つまり、「はがしただけ」でおしゃれに見え、人気が出てしまう、という訳なのです。
コンクリートの建物は頑丈で大きな窓が作りやすいので、開放感(明るさ)を確保できると“重宝されている”向きはあります。また、その頑丈さゆえに、壁や仕切りも少なくできるので、ひとつの部屋(スペース)を大きく取れるのも特徴です・・・ですが、おしゃれに見えるデザイナーズマンションが安く貸しに出されているとき、そこには落とし穴があるかもしれません。その原因の多くは、コンクリート打ちっぱなしという構造のところから来ています。
デザイナーズマンションに憧れ、半地下の部屋に住んでみたら、えらい事になってしまった女性の一人暮らしについて、インタビューを行いまとめました。もし迷っていら、参考にしてみて下さい。
2.デザイナーズに騙されない、必ずチェックすべきポイント7つ
コンクリート打ちっぱなしの建物はおしゃれではありますが少々「クセ」があります。それについてご説明します。内見時にご自身でチェックしてみてください。
2-1.遮音性が高いので、気づかれない「防犯性」に注意
コンクリートの建物は遮音性が高いので「生活音が漏れにくい」という特徴があります。それ自体はとてもよいことではありますが、特に女性にとって、防犯面での心配となってしまうかも・・・。あまり考えたくはありませんが、泥棒に入られてしまっても周りの住人に気づいてもらえない、というケースもあるんです。
2-2.窓が大きい・天井が高いと、電気代がかかるかも
コンクリートはとても蓄熱性が高いものです。そのため、夏は暑く、冬は寒い面があり、冷暖房の電気代がかかってしまうことがデメリットです。ですが、断熱施工されていれば、問題は少ないでしょう。他にも、窓の大きさと天井の高さが問題になることがあります。デザイナーズマンションとされる建物は、窓が大きい、天井が高いこともよくあります。その分、室内の開放感はありますが、窓が大きいので、ければ太陽光を室内に取り入れやすくなります。しかし、天井が高ければ室内容積が大きくなり、エアコンの効きが悪いという結果につながることも・・・。
そして、大きな窓には大きなカーテンが必要です。市販の一般的なサイズのカーテンではカバーしきれず、オーダーしなければならないこともあります。また、物件によっては天井にカーテンレールそのものがなく、どうやってプライバシーを守ればいいのか?と頭を抱えてしまうことも少なくないのです。結果的に、南向きならば夏はより暑く、北向きならば冬はより寒いというデメリットだらけのお部屋となってしまう事もあります。その為、内覧時にはカーテンレールの有無はキチンと確認して下さい。
2-3.水周りは特に念を入れてチェック
水周りは日常生活に欠かせないとても大切な設備です。ホテルのように、いわゆる「3点ユニット(バス/トイレ/洗面が1箇所にまとまっている)」が採用されていると、お友達や彼氏お客様をなかなか呼びにくくなるべなくなるでしょう。他にもそして、水周りにまつわる配管にもチェックの目を光らせてください。
本来なら壁板や天井板などに隠れているはずの配管がむき出しになっていないでしょうか?最近流行りはやりの「インダストリアル」な感じで一見おしゃれではあるのですが、何らかの災害、上階に住んでいる人の住まい方によって、水漏れしてしまうことも充分に考えられるのです。
2-4.家具の搬入/設置ができるか、収納は充分か?
デザイナーズマンションと呼ばれる建物はときに「三角形の部屋」、「半円形の部屋」など、独自性を持っています。確かにおしゃれなのですが、いざ住むとなるといかがでしょう?不整形のお部屋に、お持ちの家具はきれいに配置できる出来ますかでしょうか?
内覧時やサイトでお部屋の写真を見る時、お部屋を何もない状態で見ると、すっきりと美しく見えるのがコンクリート打ちっぱなしの魅力です。でも、そこであなた自身がどう暮らすのかを内見時にしっかりイメージすることが本当にとても大切なんです。例えば、実際にベッドや収納ダンスなどを置いてみると、一気に生活感が出てきて、お部屋が狭く感じてしまう事もあります。そもそも収納やベッドが入らないってことも引っ越しあるあるです。
さらにまた、エレベーターや階段を使って、手持ちの家具や、これから購入しようと考えている家具がスムーズに搬入できるかも確認したいポイントです。非常階段から入れようにも、折り返しでダブルベッドのクッションなどがつっかえてしまうとか・・・。
ちなみに、せっかくコンクリート打ちっぱなしのおしゃれなマンションでも、収納はクローゼットではなく、昔ながらの二段の押入れだったりすることもありますので間取りをみて、実際どのような生活や使い方があるのか、注意して下さい。
念のため、不動産鑑定士補の相樂がリモートワークで自宅時間が増えた友人から「オフィスにも行くけど、デザイナーズマンションに住みたいんだけど、どう思う?」に対して、デザイナーズマンション選びの注意点やポイントをこちらのページにまとめました。
2-5.ひび割れはないかを確認
コンクリートは、時間がたつほどクラック(ひび割れ)が生じて、それが大きくなってしまうという特徴があります。特に玄関ドアなど、開け閉めによって衝撃が生じてしまう部分には要注意です。なぜなら、ひび割れ部分から雨水などの水分が入り込み、中の鉄筋を錆びさせ、最悪の場合その錆びが膨れ上がりコンクリートを破壊してしまう「爆裂」という現象がおき、大きな手入れが必要となってしまうこともあるんです・・・。
通常、手入れはマンションの持ち主やマンション管理組合にかけあい、実施することになりますが、ドアの開閉ができなくなってしまえば、もはや「住む場所」ではなくなるでしょう。というのも、修理に長期間かかるとなれば、一時的に他の場所に仮住まいしなければならなくなってしまいます。これでは、日常生活もままなりませんよね・・・。安心して暮らすことが出来ない。
2-6.コンクリート打ちっぱなしのマンションは「結露」が心配
木造の建物は日本の気候に合っており、多湿のときは木材が湿気を吸い、湿度が低いときは木材が湿気を吐き出すという特徴があります・・・ですが、コンクリート打ちっぱなしのお部屋は、その効果はありません。気密性も高いので、室内にたまった湿気はずっと部屋の中で漂い続けます。その為、特に冬場、石油ストーブ(石油ファンヒーター)で暖房をしようと考えている場合はご注意を。石油ストーブ(石油ファンヒーター)やガスヒーターは、燃焼時に水分を発する特徴があります。それが、結露につながり、それが基でカビの生え、咳が出たり、肌荒れ等の原因になることがあります。
一方、エアコンの暖房は乾燥が進んでしまいます。結露やカビの危険性は減りますが、冬場独特の問題「風邪」や「インフルエンザ」対策となる湿度は、50~60%とされています。あなたがお部屋でエアコンを使う場合には、加湿器と組み合わせ、上手に湿度管理をしなければなりません。
逆に、何もしなくても湿度が高く結露しやすいデザイナーズマンションも存在します。それは「新築のデザイナーズマンション」です。なぜなら、コンクリートの建物は、完成してから5年目位までコンクリート内の水分を発しつづけながら、ゆっくりと締まり固まるという特徴があるのです。この面から考えると、水分が残っている新築のマンションで結露やカビが発生しやすいことは特に覚えておきたいことのひとつです。
2-7.インターネットは使いやすいか?
インターネットを室内で利用するとき、無線LAN(W-Fi)を使うことが多くなっています。セキュリティ面から考えれば、LANケーブルとパソコンをつなぐのが一番よいのですが、タブレットやスマートフォンなど、Wi-Fi前提の電子デバイスの方が多いのが現状です。そんな時。そのとき、やはり便利なのはやっぱりWi-Fiですよね。お部屋まで光回線が入っていたとしても、自室内に電波を飛ばすWi-Fiルーターを設置するときは注意をしてください。コンクリートはWi-Fiの電波を通しにくいという“難点”があるのです。室内にWi-Fiルーターを置く予定がある場合は、設置予定場所から一番遠い部屋まで電波が通るかを考えなければなりません。ですが、内見時にそれがわかるか、というと調べようがないのも本当のところですよね。
ただ、色々と書いてきましたが、最近はあまり心配することではなくなってきました。今、Wi-Fiルーターの電波を中継する子機も売られています。ルーターから一番遠い部屋までの間にいくつかのコンセントがあれば、そこに中継器を設置すればよいのです。この場合は「コンセントの位置と数」に注意を払えばよい、ということなんです。ただ、これが携帯電話(スマートフォン)や契約中のポケットWi-Fiとなれば話は別です。電波が入らなければ、ネットどころか、電話すら通じないのですから・・・。
過去の失敗談ですごく気に入ったおしゃれなマンションの一階を契約され、引っ越した直後にインターネットが使えないと、この件で苦情をした経験がある人がいました。結局、引っ越しを行った後でどうにもならなったようですが・・・。その為、大きめのマンションなどコンクリート造のマンションを内見時は手持ちのスマートフォンやポケットWi-Fiを持参し、電波の入り具合はどうか、電話したりしてみて、お部屋の隅々まで電波が来ているかどうか確認してみてください。
3.デザイナーズマンションの内覧時の確認点まとめ
コンクリート打ちっぱなしがおしゃれなデザイナーズマンションですが、「コンクリート打ちっぱなし」ならではの注意点も多くあります。多くの物件に住んだことのある“引っ越しマニア”でもない限り、「ここはチェックポイントだ!」とわかる方はそう多くはないと思います。たまたま住んだマンションが良かっただけのケースも多々あります。
今回の記事では内見時にチェックすべきこと、自分が実際に住むことをイメージしておかなければならないポイントについてお話ししましたが、ご理解いただけたでしょうか。仕事やプライベートが忙しく、内見に割く時間がない、チェックポイントはわかっても具体的にどうチェックすればよいかわからないという時は、専門家のアドバイスを得るのはとても大切なことです。もし心配な方は一度、相談なさってはいかがでしょうか?
あなたの大切な人生と平穏が守られますように、これからも私たちは引っ越しの失敗談をベースに、賃貸の専門家集団として、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して、結果と原因のみ、記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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