B.豆知識(相場、法律)

アンケートを参考に一人暮らしで二面採光の角部屋は怖い?寒い?メリットは?

こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す六本木の不動産屋、(株)リビングインで建物の設備やそれらの改修を担当している、防犯設備士兼宅地建物取引士の馬場です。

私たち、アリネットは住まいのトラブルを減らすため、2000年以降、引っ越しを経験された方、累計4,600人超の方にアンケートを行い、様々な部屋探しの体験談や失敗談を集計し、分析してきました。

時間がない、部屋探しの経験がない方ほど、他人の失敗から効率的に学び、自分に合った部屋を探して下さい。

今回は、後輩にお部屋の案内時に聞かれた「角部屋、二面採光って、どう思います?」に答えるため、アンケートや判例を基にそのメリット・デメリットを分析していきます。

個人的には、カビや換気のしやすさを考え、単一採光より、二面や三面採光等の方がお勧めです。

1.二面採光とは

「二面採光」とは、一般的には「2つの窓がついている」部屋を指します。

特に、方角については決まりが無く、例えば南側に窓が2つ並んでいる場合であっても「二面採光」とされています。しかし、私たちはこの「二面採光」は「2方角」からの採光ができる部屋を指すこととして、説明していきます。

つまり、南側に窓が2つ並んでいる部屋ではなく、東側と南側の2方角に窓がついている部屋を「二面採光」と本記事内で定義づけることとします。マンションやアパートにおいて、角部屋ではない部屋ではどうしても1方角にしか窓をつけられません。

従って、本記事内で定義する「二面採光」の部屋は、必然的に「角部屋」の部屋となります。

1-1.角部屋だからといって、二面採光とは限らない

ただし、角部屋だからといって必ずしも二面採光とは限りません。角部屋でも窓が少なく1ヵ所にしかついていない物件があります。建物の構造の問題だったり、単純にデザインの問題だったり、理由は様々ですが、二面採光ではない角部屋があることも頭に入れておいてください。

すなわち、隣はスペースなのに壁になっていて、窓がない角部屋もあります。その為、家賃等経済条件は中間部屋と同じ場合があります。

2.二面採光の部屋のイメージ

二面採光の部屋(=角部屋)は、一般的に良いイメージです。「角部屋」と聞くと「へぇ~いいねぇ」と言われることが多いのは、「日当たりが良い」というイメージがあるからと言えます。逆に「良い部屋=家賃が高い」というイメージもあるようです。ここから、ひとつひとつ細かく解説していきます。

2-1.日当たりが良い

二面採光の角部屋は多くの人が「日当たりが良い、気持ちいい」と言うイメージを持っていると思います。これは至極当然のことで、窓が1つよりも2つ、しかも2方角についていれば部屋に差し込む日差しは断然多くなります。

実は、窓がついている方角や向き、周辺環境によっては、窓が多いからといって必ずしも日当たりが良いわけではないです。ただ、それでも一般的には、「二面採光の部屋=日当たりが良い」というイメージが定着しています。

2-2.明るく開放感がある

二面採光で窓が多いと開放感が得られるイメージがあります。日当たりと開放感は微妙に異なるもので、例えば窓が北側についていて日当たりがそれほど良くなくても、外の景色が見えるという意味では開放感が得られます。

カーテンを開けておけば、空間そのものを広く感じられるというのも、二面採光の角部屋には開放感があるイメージにつながっています。

2-3.角部屋だと値段が高くなる

角部屋には「日当たりが良い」というポジティブなイメージがあります。しかし、一方で「家賃が高い」というネガティブなイメージもあります。

「良い部屋は高い・人気の部屋は高い」というイメージがあるため、角部屋、特に東側や南側など良い方角に窓がついている二面採光の部屋は高いというイメージがつきやすいです。

3.不動産屋が言えない、二面採光の部屋のメリット・デメリット

角部屋の全てが二面採光とは限らないと前述しましたが、本記事のテーマは「二面採光」の部屋ですので、「二面採光の部屋」のメリットとデメリットを解説していきます。

3-1.二面採光の部屋のメリット

二面採光のメリットはほぼ一般的なイメージの通りで、一番は「日当たりが良い」という点になります。他にも色々とメリットがありますので、以下の通り、4つにまとめました。

3-1-1.日当たりが良い

既述の通り、二面採光の部屋の最大のメリットは日当たりが良いという点です。ただ、これには注意が必要で「方角」が重要になってきます。これについて、後ほど「注意点」で詳しく解説します。

窓がついている方角としては、南向きが最も人気で、次いで東向き、西向き、北向きの順となっています。例えば、東と南に窓がついていれば、朝日が部屋に差し込み、昼過ぎごろまで部屋にずっと日差しが当たっていることになります。その為、良い二方角に窓がついていれば、間違いなく日当たり良好となります。逆に、北と西側だと、冬場など午後少し当たるくらいです。

日当たりが良いと、部屋が明るく、暖かくなるだけでなく、太陽光による殺菌効果が期待できます。「日中は家に居ないから日当たりは気にしない」という方もいますが、不在時に太陽光でしっかりと室内を殺菌することでカビや臭いを抑制できます。

日当たりが住まいにどれくらい大切か、こちらのページにまとめておきました。忙しく、これから部屋探しをする方など、ムダな部屋を見に行くなどしないよう、方位や採光に迷ったら、確認してみて下さい。

3-1-2.風通しが良い(解放感・換気力)

二面採光の部屋は2方角に窓がついているため、窓を開けると空気の通り道ができて風通しが良いのが特徴です。

1方角にしか窓がついていないと、玄関のドアを開けたり、換気扇を回したりしなければ空気の通り道ができず換気がしづらいのです。しかし、2方角に窓があれば窓を開けるだけで換気がスムーズにできます。

コロナ禍で換気の重要性が見直されている昨今ですが、ウイルス対策だけでなく風通しを良くすることでカビの発生を予防することもできます。

3-1-3.開放感がある

2方角に窓がある部屋は開放感があります。このメリットは窓の方角を問わず、どの方角に窓がついていても感じられます。

窓の大きさにもよりますが、大きい窓が2つ付いている必要はありません。

比較的大きめな窓が1つと、別の方角に小さな窓が1つついているだけでも開放感が得られます。

特に、ワンルームは部屋が狭く圧迫感があるため、大きい窓や複数の窓によって、開放感を演出することで部屋が広く感じられます。閉所恐怖症でシャワールームの扉が閉められない私は二面採光の部屋は絶対おすすめしています。

3-1-4.騒音が気にならない

これは二面採光ではなく角部屋のメリットですが、本記事の二面採光の部屋は全て角部屋になりますので、メリットに加えます。角部屋については以前こちらのページにまとめておきました。角部屋か、中間部屋で悩まれている方は見てみて下さい。

角部屋はその名の通り棟の端にある部屋なので、隣の部屋が1つだけになります。両隣に住人がいると生活音が気になりますし、自分自身が立てる生活音にも気を遣います。

その点、角部屋は片側にしか隣人がいないため、騒音リスクが半減します。自分の生活音も、例えばテレビを隣の部屋から遠ざけて置くことにより、隣人のことを気にせずに暮らせます。

特に、木造や築20年以上のアパートを検討している方は角部屋、そして、階段と接していない部屋の方が良いと思います。

3-2.二面採光の部屋のデメリット

二面採光のデメリットはイメージでは「角部屋=高い」というものだけでしたが、実は結構あります。ひとつひとつ紹介しますので、部屋選びの参考にしてください。

3-2-1.日当たりが良すぎて熱がこもる

メリットとして「日当たりの良さ」を挙げました。が、実はこれはデメリットにもなり得ます。日当たりが良いということは太陽光が差し込み部屋を照らし、暖めるということです。

冬場には太陽光の熱が有難いと感じても、夏には「暑い……」と感じることが容易に想像できます。

日当たりの良い部屋、特に2方角に窓がつき、日当たりの良い時間が長い部屋は熱がこもります。夏の暑さが凄いことになるリスクがあるということです。

また、窓の方角が西の場合も注意が必要です。

西日です。

夏の西日は非常に熱っぽく、うだるような暑さを届け、室内に籠るため、南、西の2方角に窓がついている場合も要注意となります。

さらには、熱だけでなく「日焼け」もデメリットとなります。太陽光が当たりすぎて、カーテンやソファが焼けてしまい、色がくすむリスクがあります。

これらの「熱」や「日焼け」を防ぐ対策としては、カーテンをしっかり取り付けることです。特に、遮光カーテンを設置することで日差しを防ぐことができます。他にも、大切な家具を奥に配置している方もいるようです。

3-2-2.外気の影響を受けやすい

窓が多い部屋の特徴として、外気の影響を受けやすいということが挙げられます。

窓の隙間やサッシの部分から、どうしても外気が漏れ入ってしまうのです。また、壁の素材よりも窓のガラス素材の方が熱を通しやすく、これが外気の影響を受けやすい一因にもなっています。

つまり、夏は暑く、冬は寒くなりやすいのが特徴です。

さきほど、二面採光の部屋は熱がこもりやすいと述べました。しかし、冬場の太陽光の温もりは確かに得られます。しかし、太陽が沈んでしまうと、とたんに部屋が寒くなってしまいます。

昼間は良くても、夜は急激に冷え込み、しかも外気の影響の方が強く暖房がなかなか効かないという事態に陥る可能性があります。

このデメリットの対策も有効なのがカーテンです。

厚手の遮光カーテンをしっかりと設置することでガラス面が通す外気の影響は大幅にカットできます。

しかし、窓の隙間やサッシから漏れ入る外気はシャットアウトしきれないため、ある程度は覚悟が必要です。

3-2-3.値段が高め

一般的なイメージにもありましたが、二面採光の部屋(=角部屋)は値段が高めになります。

なぜなら、角部屋ではない部屋(中間部屋)と比べると日当たりが良い、騒音が気にならないなど、角部屋や二面採光ならではのメリットがあるため、当然価値が上がり人気が出るためです。

安さを重要視するのであれば、快適な生活を少し我慢して中部屋を選ぶという選択もありです。しかし、少し高くても快適な生活が送りたければ、多少の値段の高さには目をつぶるしかないかもしれません。

3-2-4.家具配置が難しい

窓が多いことは日当たりが良い、風通しが良い、などのメリットが目立ちます。が、意外と盲点なのが「家具配置が難しい」というデメリットです。

ワンルームに窓が複数ついていると、

  • ここにベッドを置きたいのに窓に引っかかる
  • ここにデスクを置きたいのにカーテンが邪魔
  • 窓が邪魔をして納得いくレイアウトがなかなか決まらない

といった悩みが出てきます。窓の大きさや高さによっても、レイアウトのしやすさが変わるため、一概に「窓が多い=家具配置が難しい」とは言えないのですが、その可能性が高くなることは覚えておいてください。

3-2-5.外の音が聞こえやすい

窓が多い分、その分外の音が聞こえやすくなっているということです。特に、幹線道路に面している物件や踏切の近くの物件の場合は救急車のサイレンや電車の音が室内に入ってきやすい特徴があります。

音を気にして角部屋にするにも関わらず、車の騒音などで悩まされてしまっては本末転倒です。内見するときには、構造や角部屋か否か、隣はどんな入居者なのかを確認することも大事な項目です。

しかし、ベランダやバルコニーがあれば一度外に出たり窓を開けたりして、外からの音をどれほど拾うのかをチェックすることをオススメします。

3-2-6.プライバシー確保が難しくなる

窓が多くなると、カーテンを取り付ける必要がありますが、夜になるとカーテンを閉めていても光が漏れてしまいます。そのため、在宅中かどうかが外から見て分かりやすくなるといったデメリットがあります。

そのため、人通りの多い通りに面したマンションやアパートで二面採光を採用していると、信号待ちの車や通行人に見られやすくなるため、プライバシーの観点ではデメリットと言えると思います。

4.実際に、二面採光の部屋に引っ越した3人の失敗談

アリネットでは、これまでご利用いただいたお客様に過去の引っ越しのアンケートを取り、成功体験談や失敗談、部屋探しのアドバイスなどを頂いています。その中から、二面採光の部屋、そして角部屋の失敗談を3例紹介します。

4-1.事例1:夏は暑く、冬は寒い

1つめの事例は夏の暑さと冬の寒さに困ったという方の失敗談です。

南西の角部屋でワンルームだったため、夏はとにかく暑かった。暗くなってから帰宅して玄関ドアを開けると、中から熱気のかたまりが出てくるような感じだった。

また、狭い部屋に大きな窓が二面あり、しかも雨戸もないことから、冬場はだいぶ冷えた。採光面を重視するのも大事だが、冷暖房効率も忘れてはいけないと思う(弊社アンケートより引用)

「南西」という方角が痛手となってしまった事例です。夏の西日はかなりきついため、熱がこもってしまったものと思われます。

窓の大きさのせいで冬は冷えたとのこと、窓の位置や大きさを甘く見てはならないということが分かります。

4-2.事例2:冬の寒さがこたえる

2つめの事例は冬の寒さが堪えたという方の失敗談です。

引っ越した物件は角部屋だったので風通しが良かったです。ただ、冬になるとその風通しの良さが仇となりました。暖房をかけてもなかなか暖まらず失敗したなと思いました(弊社アンケートより引用)

冬に外気の影響を受けてとても寒い思いをされたようです。ただ、「風通しが良かった」ということは間違いないので、換気をしっかりしたいならば角部屋は良いと言えます。

冬の寒さ対策として、先ほど言及した「厚手の遮光カーテンを設置する」という方法がありますが、他にも窓の造りやガラスの素材について確認することも大切です。詳しくは下の「注意点」で解説します。

4-3.事例3:西日がきつい

3つめの事例は西日のきつさを実感した方の失敗談です。2階の角部屋で日当たりはよかったが、西日がきつかった(弊社アンケートより引用)

とてもシンプルなアンケートですが、西日がきつかったことがひしひしと伝わってきます。やはり、窓の方角は非常に重要な「決め手」となりそうです。

5.二面採光の部屋を選ぶときの注意点

二面採光の部屋を選ぶときには、下記の4点について注意して選んでください。日当たりが良すぎる物件や外気を通しやすいというデメリットは遮光カーテンをしっかりと設置することである程度対策はできます。ただ、部屋の構造や窓の造りそのものにも着目すべきです。

5-1.窓の方角は要チェック

窓がどの方角についているのかは非常に大事です。理想は「東・南」です。朝日が部屋に差し込み、昼過ぎ頃まで太陽の光が当たるため、非常に明るく快適な毎日を送れます。

逆に、「南・西」や「西・北」といった配置はおすすめしません。

というのも、「南・西」ですと、昼前頃から夕方まで日当たりが強くなり、いわゆる「西日」の熱がこもりやすくなります。また、「西・北」ですと、西日だけが差し込み、北側はほとんど採光できずに寒々しい雰囲気となり、折角二面採光の部屋なのに、その恩恵を十分に受けられません。

「東・北」の窓配置も、朝日は差し込みますが、やはり北に窓があると採光の期待ができず、外気の影響ばかり受けてしまい冬場はとても寒くなります。

5-2.家具配置などのレイアウトを内覧時に考えておく

寝具はベッドにするのか、布団を敷くのか、デスクはどんなものを設置するのか、どこに何を置きたいか、といった部屋のレイアウトについては事前に頭の中で設計をしておくのが賢いと思います。

そして、内覧に訪れた際に自分の部屋のレイアウトを当てはめてみて「窓が邪魔だ」と感じるかどうか検証してみてください。

布団を敷く場合は窓の位置や高さはそれほど影響しませんが、ベッドの場合は窓に被ってしまう恐れがあります。

デスクもちゃぶ台のような低いものならば、窓の影響はほとんど受けません。しかし、しっかりしたデスクを設置したければ、窓が邪魔にならないかどうかチェックすべきです。

また、内覧の際には窓の高さや大きさ、位置について計測してメモを取っておくことを勧めます。メジャーを持っていき、間取り図などに書き込んでみてください。

そして、帰宅後に持ち込もうと思っている家具の大きさを図ったり、購入しようと思っている家具の大きさと照らし合わせたりしてください。

5-3.窓の造りがしっかりしているか確認

窓が多い部屋の問題点のひとつが外気の影響を受けやすいという点でした。もともと、窓そのものが外気の影響を受けやすいのですが、それでも窓の造りやガラスの素材によって影響の度合いが変わります。

建付けが悪くガタガタしていたり、すきま風が入ってきたりするような窓はやめた方が良いです。冬のすきま風は圧倒的に身に応えます。

逆に、気密性の高い(=割れにくい)ガラスを使用している窓は、比較的外気の影響を受けにくいためおすすめです。

5-4.周囲に騒音の元となる要因が無いか

角部屋は隣人との騒音トラブルなどのリスクが低い代わりに外の騒音の影響を受けやすい特徴があります。近くに歓楽街があったり、飲み屋街があったり、夜間も出入りが激しい駐車場があったりすると騒音に悩まされる可能性があります。周囲の情報もしっかり確認してください。

高速道路や大きな国道が目の前を通っていると、夜間でも大型トラックが通りますので結構うるさいです。同様に、線路も電車は真夜中には通りませんが、結構遅くまで運行していますし、朝も早いです。車や電車の騒音についても可能性を考えて部屋探しをしてください。

5-5.将来的に周辺に高い建物が建つ可能性の有無

二面採光の部屋を決める際には、必ず「日当たり具合」を確認して下さい。その際、周辺に高い建物が無く、開けた土地がある場合は要注意です。

この次の判例でもいくつか紹介しますが、後から高い建物が建ったせいで日当たりが悪くなりトラブルに進展するケースが多く、日当たり重視で部屋を選んだのに目の前に高いマンションが建ち急に日当たりが悪くなったということも起こっています。

比較的新しくて低めな建物が既に建っている場合は幾分か安心です。要注意ポイントは「開けた土地」がすぐ近くにあるかどうかです。

6.二面採光の部屋で起きた判例は?

ここまで二面採光の部屋における失敗談は紹介しましたが、実際トラブルになったり裁判沙汰になったりしたケースはあるのかどうか、調べてみました。

「二面採光の部屋だから」という理由で裁判になったトラブルはありませんでしたが、「日当たりを遮る物件が後から建ってしまった」という理由で裁判沙汰になったトラブル事例が見つかりました。

二面採光の部屋を希望する多くの人が「日当たり」を重視しています。その「日当たり」が後から悪くなってしまった場合、納得いかないのも無理ありません。

実際の判例を2例紹介しますので、参考にしてみてください。

6-1.判例1:隣地に新たなマンションが建設

平成23年(判決は平成25年6月6日)、神戸地方裁判所の判例で、事件の概要は以下の通りです。

ーーー

被告からマンションを購入した原告が、被告が隣接する南側の土地に新たなマンションを建設し、著しく日照が悪くなったことを理由に、マンション建築の差し止めと、慰謝料を請求。

しかし、マンションは完成してしまっていたため建築差し止めは棄却。慰謝料については、被告側が説明義務を全うしなかったとして相当額の慰謝料支払いが命じられた。

ーーー

分かりやすく、かなり嚙み砕いてみました。こちらの事件は、概要で説明した通り、購入したマンションの南側に新しいマンションが建ってしまい、日当たりが非常に悪くなってしまったという訴えが起きたというものでした。

もう少し詳しく解説すると、日当たりが悪くなったとはいえ、受忍限度を超えたとは見なされず、日当たりの目安となる基準もクリアはしていたため、訴えられた側は慰謝料請求の義務はないと主張したそうです。

しかし、被告側に説明義務があったにも関わらず、それを怠ったという点が考慮され、相当額の慰謝料支払いが決定した、というあらましでした。

6-2.判例2:隣地に24階建てマンションが新築

平成22年(判決は平成24年3月27日)、大阪地方裁判所の判例で、事件の概要は以下の通りです。

ーーー

20階建てマンションの居住者たちが、隣接する土地に24階建てマンションが新築されたことにより、日当たりや眺望が阻害されたとして損害賠償を求めたものの、棄却された

ーーー

かなり端的にまとめていますが、こちらの事件は要するに「後から高い建物が建ってしまい日当たり阻害や眺望阻害が起きても損害賠償が認められなかった」というケースになります。

もともと住民たちが住んでいた20階建てマンションと、新しく建った24階建てマンションは同じ会社が手掛けたものとして、住民たちは「説明義務違反があった」と主張したそうですが、これは認められませんでした。

6-3.判例から読み解く注意点

二面採光の部屋を選ぶ際に、日当たりや眺望を重視した場合、近くに高い建物が建ってしまうと、日当たりも眺望も阻害されるリスクがあります。賃貸はすぐに引っ越し出来るのでそれほど大きなインパクトにはなりません。しかし、分譲等購入していると日当たりや眺望の悪化は絶対に避けたいところだと思います。

トラブルになり、裁判沙汰にまで進展してしまったケースでも、これが慰謝料や損害賠償の対象として認められるケースと、棄却されるケースがあります。どちらかというと棄却されてしまうケースの方が多いので、文句を言っても住環境は改善されないものと思っていた方が良いです。

仮に、慰謝料や損害賠償が支払われたとしても、部屋の日当たりや眺望が良くなるということはありませんので、同じ場所に暮らし続けるとなるとストレスが溜まることが予想されます。

こういったトラブルに巻き込まれないためにも、マンションや戸建てを購入する場合、注意点で述べた通り、周辺に高い建物が建ちそうな空き地などが無いかどうか、事前にチェックしておくことが非常に重要です。

7.どんな二面採光の部屋なら良いのか?

ここまで、二面採光の部屋について、メリットやデメリット、失敗談や注意点などについて見てきました。それでは、実際、どのような二面採光の部屋ならば住んでも良いのか、その点についてまとめます。今回は特に、一人暮らしでワンルームや1Kのお部屋を探している際、注目すべきポイントについて述べます。

7-1.東と南に窓がある部屋

注意点でも述べましたが、二面採光の部屋の場合、2つの窓がどの方角についているかは非常に重大な問題です。

おすすめは「東・南」に窓がある部屋です。

朝日から昼過ぎまでの日差しを部屋に取り入れることで、部屋が明るくなりますし、暖かさも十分に得られます。殺菌効果も抜群で部屋のカビや臭いを予防する上でも非常に良い採光方角です。

特に一人暮らしのワンルームであれば、寝室としてもその部屋を利用しますが、朝日を浴びることで目覚めがスッキリするという利点もありますので、東側に窓がついている部屋は二面採光の部屋の中でも特におすすめです。

7-2.窓や壁の構造がしっかりしている部屋

窓が多い、大きいことによりデメリットとなってしまう「暑さ・寒さ」の問題を最小限に抑えるために、窓や壁の素材や構造がしっかりしている部屋を選ぶと良いです。

勿論、遮光カーテンをしっかり取り付けることである程度外気の影響を防ぐことができますが、隙間風が入り込まないような造りになっているかどうか、窓そのものの造りにも注目すべきです。

7-3.周囲に騒音の可能性が無い部屋

注意点でも、周辺環境をチェックすること、と述べましたが、周囲に騒音の元となるものが無い部屋がおすすめです。

特に夜間に騒音が発生するかどうか、その点はしっかり見極めて部屋を選んでください。飲食店(特に飲み屋)が無いこと、線路や大きな道路が無いこと、出入りの激しい駐車場が無いこと、などが「静かな周辺環境」の目安です。

他にも、エレベーターや階段と隣り合わせではない方が音は伝わりづらく、おすすめです。

7-4.家具配置しやすい間取りの部屋

一人暮らしのワンルームで、窓が2つ以上ついていると、その高さや大きさによっては家具配置が難しい場合があります。

窓が比較的高い位置についていれば、家具を配置する際に邪魔にならず好みのレイアウトを実現できます。

理想的な窓のつき方としては、一方角には比較的大き目な窓がメインとしてついていて、もう一方角には出窓のような小さめな窓が高めな位置についている、というものが挙げられます。

内覧で実際に見た時に家具をどうやって配置するか考えて、間取りやレイアウトに納得いくかどうか判断してください。

8.二面採光の部屋のまとめ

今回は、二面採光の部屋について詳しく細かく解説してきました。最後に、二面採光の部屋はどのような人に向いているのか、そして、どんな二面採光の部屋なら住んでいいのか、という点について僕らなりにまとめます。

8-1.分析を踏まえた上で筆者が二面採光の部屋をおすすめしたい人

様々な分析を踏まえて、二面採光の部屋を勧めたい人はどのような人なのか、まとめます。

・家賃よりも日当たりの良さや住環境を重視したい人

・閉塞感が苦手でワンルームでも開放感のある部屋で暮らしたい人

僕もそうですが、内見等ご案内する際にも二面採光の部屋は絶対におすすめしています。換気の良さや明るい二面採光の部屋は家賃が多少高くても、日当たりや開放感を重視して快適に暮らしたい、という人に向いています。

短期間での引っ越しを繰り返し、ムダなお金を使うより、なるべく長く住める部屋を見つける方が圧倒的に節約でき、賢いと思います。

8-2.どんな二面採光の部屋なら住んでいいのか

二面採光の部屋にはメリットもデメリットもありますが、デメリットが少なくメリットの恩恵を多く受けられる部屋の特徴をまとめます。

  • 窓の方角は「東・南」がベスト
  • 窓の造りや壁の構造などがしっかりしていて外気の影響を受けにくい部屋
  • 周辺環境に騒音の元となる要素が無い
  • 近くに高い建物が建つ予定が無い(あるいは建ちそうな空き地などが無い)
  • 家具配置がしやすい間取り、レイアウトになっている

これら5点をクリアしているかどうか、二面採光の部屋探しの際には是非チェックしてみてください。失敗できない引っ越しほど、他人の失敗から効率的に学び、自分に合った部屋を賢く探してみて下さい。最後に、体験談を基に、内見後すぐに申し込んでしまったケースをこちらのページで説明しておきました。

9.内見時の確認・チェックリスト

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。ご紹介した内容が将来の失敗やトラブルを防ぐ一助となったら、嬉しいです。

実際に引っ越しを一回経験してみると分かりますが持ち物や事前準備は当日、現場でぼーっとしないために本当に大切です。

特に、部屋探しの経験が2回以下の方から『内見時にどこを確認すれば良いか?』はよく聞かれます。その為、これまでのアンケートや失敗談を参考に無料で使えるチェックリストを作りました。ぜひ、内見時に使ってみて下さい。

4,600件の失敗談を基に作った内見時のチェックリストはこちらのページです。人気のある他社の内見チェックリストも同様にまとめています。他にも、今回同様、最近、お客様に聞かれた「内見の申し込み後のキャンセルって、罰金ありますか?」についてはこちらのページにまとめました。

10.トラブルを避けるための部屋探しチェックリスト

考え込んでいる女性

これまでのトラブル相談やアンケートの事例を参考に、簡単なチェックリストを作りました。

もし、いくつか、該当するようなら、慎重にお部屋探しをされることをお勧めします。

□ 延線沿い等エリアを広げ、自分に合う部屋を探したい
□ 自分に合ったお部屋の条件や優先順位が分からない
□ オンライン内見や広告を見て、お部屋を決めたい
□ 部屋探しの経験が2回以下で相談し、お部屋を決めたい
□ 家賃や初期費用等予算の決め方が分からない
□ 契約や引っ越し後のトラブルは絶対に避けたい
□ 自分のペ-スでゆっくりお部屋を探したい
□ 仲介手数料無料や返金保証が付いている方がいい

もし、3つ以上当てはまる方は慎重に部屋探しを進めて下さい。というのも、トラブルが続くと、仕事や私生活だけでなく、健康も害してしまう事もあります。

また、気になるようなら、LINEで出来る部屋探しの条件簡易診断もやってみて下さい。3つの質問で、部屋探しに必要な具体的な注意点や対策をご提案しています。

私たちは、2012年より地域に根付いた不動産屋として、住まいのトラブルに特化し、住宅ローンの返済だけでなく、騒音や隣人、契約トラブル等のトラブルを解決してきました。

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ここに記載出来ない内容で困っている方もいると思います。もし、あなたが現在トラブルに悩まされているのであれば、トラブルが大きくなる前にお近くの専門家に相談することをお勧めいたします。信頼できる先がすぐに見つからない場合、弊社の無料相談にご連絡ください。

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念のため、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法をレクチャーしてもらいました。最近流行っているカスタマイズ賃貸についても、こちらにまとめました。不動産トラブル専門の弁護士による、契約直後の事故物件発覚時の告知義務違反等の対応についてはこちらのページにまとめました。

>>賃貸マンションの騒音問題を避けたい方向け、内見前の構造や間取り確認と引っ越し後の対策まとめ

>>マンションの内見後に入居申込をしたが、罰金無しでキャンセルはできますか?

今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。

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大和田 豊

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大和田 豊

事例を参考に失敗の少ない不動産取引を目指し、2012年以降90件以上の不動産取引を経験。現在はコロナウイルスの影響を受け、ローン返済に悩んでいる方向けに、生活の早期の改善に向け、債務整理に注力。宅地建物取引士、任意売却取扱主任者、住宅ローンアドバイザー。>>その他詳しい実績はこちら

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