相続放棄した不動産は売却できる?流れと大切な注意点3つと事例

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相続放棄した不動産は売却できる?流れと大切な注意点3つと事例

作業中の相楽

相続放棄をすると、相続人は遺産を一切受け取らないという選択をしたことになります。

しかし、相続放棄をした場合でも、不動産を売却することができるか、という疑問が生じることが多いです。

実際、相続放棄後はその不動産の処分に関して、注意すべき法的手続きや制約が存在します。

本記事では、相続放棄をした後の不動産売却が可能なケースとその流れ、そして注意すべきポイントについて詳しく解説します。

専門家の知識や事例を活かして、状況に応じたベストな判断ができるように、わかりやすく正確な情報をお届けします!

1.相続放棄とは?不動産への影響とその基本知識

打ち合わせの様子

相続放棄とは、亡くなった方の財産を一切引き継がないことを指します。

負債がプラスの財産より多い場合に選択されるケースが多く、相続放棄により、土地の維持管理費や固定資産税の支払い義務がなくなります。

しかし、相続放棄はすべての財産に対して行われ、土地や建物だけを放棄することはできません。

1-1.相続放棄の定義とその影響

相続放棄をすると、次順位の相続人に権利が移行します。手続きは相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申請する必要があります。

もし、自身で行う場合は5千円程度、司法書士や弁護士に依頼する場合は3万円~5万円の費用がかかります。

1-2.相続放棄した場合の不動産の処分権

相続放棄をした場合、相続権は次順位の相続人に移行します。

第一順位は子供、第二順位は祖父母、第三順位は兄弟姉妹であり、同順位の相続人が複数いる場合、全員が放棄したときに次順位に相続権が移行します。

相続人全員が放棄すると、家庭裁判所が選任する相続財産清算人が不動産の管理や売却を行います。

場合によっては「相続土地国庫帰属制度」に基づき国へ帰属させることも可能ですが、審査と費用が必要です。

1-3.相続放棄が不動産売却に及ぼす影響

相続放棄をしても、次順位の相続人が財産管理を引き継ぐまでは管理義務が残ります。

同居していた相続人などが管理を行う必要があり、建物の崩壊などによる損害賠償の責任を負う可能性もあります。

また、先代名義の土地を相続放棄する場合、まず相続登記を行う必要があります。

令和6年4月1日から相続登記が義務化され、未登記の土地には過料が科される可能性があるため注意が必要です。

相続放棄ができなくなる主なケースとして、相続放棄の期限である3ヶ月を過ぎた場合や、相続財産の一部を使用、または売却してしまった場合があります。

2.相続放棄後に不動産を売却する流れとは?

相続放棄後に不動産を売却するためには、所有権の帰属先を明確にし、売却条件を満たす必要があります。

ここでは、相続放棄後の不動産売却の流れについて、重要なポイントを解説します。

2-1.相続放棄後の不動産の所有権と管理者

相続放棄後、財産は次順位の相続人または相続財産清算人に引き継がれます。相続財産が国庫に帰属する場合もあります。

2-2.不動産を売却できる条件と手続き

相続放棄後に不動産を売却するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 相続放棄の手続きを期限内に完了すること。
    • 相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申請が必要。
  • 相続登記を完了していること。
  • 相続人全員が相続放棄した場合は、相続財産清算人が売却を担当すること。
  • 「相続土地国庫帰属制度」を利用して土地を国に帰属させる場合は、一定の要件を満たすこと。
    • 審査が必要で、審査費用や負担金が発生する。

2-3.売却に関わる法的手続きと書類準備

相続放棄後の不動産売却には、いくつかの法的手続きと書類準備が必要となります。

  • 相続放棄の手続きに必要な書類
    • 共通書類(申請書、戸籍謄本など)
    • 亡くなった方との関係に応じた追加書類
  • 相続登記に必要な書類
    • 戸籍謄本
    • 住民票
    • 印鑑証明書
    • 登記識別情報
    • 相続人全員の同意書や委任状(必要に応じて)
  • 不動産売却に必要な書類
    • 売買契約書
    • 重要事項説明書
    • 固定資産評価証明書
    • 登記簿謄本
    • 本人確認書類
    • 印鑑証明書
    • 譲渡所得税の申告書

3.相続放棄後の不動産売却における注意点

計算をする女性

相続放棄後に不動産を売却する場合、いくつかの注意点があります。

3-1.売却時に発生する税金や費用

相続放棄後に不動産を売却する際は、譲渡所得税や登録免許税、不動産取得税など、各種の税金が発生します。

譲渡所得税は、売却価格から取得費(購入価格)と譲渡費用(仲介手数料など)を差し引いた金額に対してかかる税金です。

ただし、相続開始から3年以内に売却する場合は、『相続税の取得費加算』の特例を受けられる可能性があります。

これは、相続税の課税価格を取得費に上乗せできる制度で、譲渡所得税を大幅に抑えられるメリットがあります。

このほか、司法書士報酬や測量費用、建物の修繕費や残置物の撤去費用など、売却にあたって一定の費用が発生することも念頭に置く必要があります。

3-2.相続放棄後に残る債務処理の影響

被相続人に借金などの債務があった場合、相続放棄をしても、その債務は消滅しません。

債権者は、相続放棄後の不動産に対して強制執行をかけることができます。

したがって、債務超過の状態で相続放棄をした場合、不動産を売却しても、代金は債務の弁済に充てられ、手元に残らない可能性があります。

そのため、債務処理の見通しを立てた上で、慎重に売却を検討する必要があります。

3-3.遺産分割協議が必要な場合の対処法

被相続人の不動産を売却するには、相続人全員の同意が必要です。

複数の相続人がいる場合は、『遺産分割協議』を行って、不動産の帰属を決める必要があります。

遺産分割協議が整わないと、不動産の売却はできません。

協議が難航する場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てる方法があります。

調停では、調停委員が相続人同士の間に入って話し合いを進め、合意形成を図ります。

それでも解決しない場合は、家庭裁判所が『遺産分割審判』を下し、遺産の分け方を決定します。

円滑な遺産分割のためには、相続人同士のコミュニケーションを密にし、早めに方針を固めておくことが大切です。

4.相続放棄した不動産の売却を成功させるためのポイント

相続放棄した不動産を売却するには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

ここでは、売却手続きをスムーズに進める方法、専門家との連携の重要性、適切な価格設定の方法について解説します。

4-1.売却手続きのスムーズな進め方

相続放棄した不動産の売却手続きを円滑に進めるためには、まず相続人全員の合意形成が不可欠です。

相続人間で意見の相違がある場合は、話し合いを重ねて合意点を見出すことが大切です。

また、相続登記が済んでいない不動産の場合は、売却前に相続登記を完了させておく必要があります。

さらに、売却に必要な書類を事前に準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。

必要な書類を事前に揃えておくことで、買主との交渉もスムーズに進められるでしょう。

4-2.専門家との連携の重要性

相続放棄した不動産の売却は、一般的な不動産売却よりも専門的な知識が必要とされます。

そのため、不動産仲介業者や弁護士、税理士など専門家の協力を得ることが重要です。

不動産仲介業者は、適切な売却方法の提案や買主の紹介、売買契約の締結など、売却全般をサポートしてくれます。

弁護士は、相続人間の調整や法的な問題の解決に役立ちます。

税理士は、譲渡所得税や相続税などの税務面でのアドバイスを提供してくれるでしょう。

このように、専門家と連携することで、売却手続きを円滑に進め、トラブルを未然に防ぐことができます。

4-3.不動産市場で適切な価格を設定するためのヒント

相続放棄した不動産を売却する際、適切な価格設定は非常に重要です。

価格設定が高すぎると買主が付かず、安すぎると売却損失が発生してしまいます。

適切な価格を設定するためには、以下のようなポイントを押さえておきましょう。

  1. 近隣の類似物件の売却価格を調査する
  2. 不動産鑑定士に価格査定を依頼する
  3. 物件の状態(築年数、間取り、設備など)を考慮する
  4. 周辺環境(利便性、学区など)を考慮する
  5. 売却時期(市場の動向)を考慮する

特に、不動産鑑定士による価格査定は、客観的な価格の目安を知るために有効です。

また、物件の状態や周辺環境など、物件の魅力を最大限にアピールすることで、高値での売却が期待できます。

売却時期についても、不動産市場の動向を見極めながら、需要が高まる時期を狙うのが得策と言えます。

5.相続放棄後にトラブルを避けるための対策

悩む男性

相続放棄は相続財産の負担から解放される一方で、様々なトラブルに巻き込まれるリスクもあります。

ここでは、相続放棄後に起こりうる問題を未然に防ぐための対策について解説します。

5-1.法的リスクを回避するための準備

建物の安全性確保や手続きの期限厳守が重要です。

法的リスク回避のための準備
  • 建物の現状を写真や動画で記録
  • 必要な修繕を実施し、建物の安全性を確保
  • 相続放棄の手続きを期限内に完了
  • 弁護士や司法書士に相談し、適切な手続きを行う

5-2.相続放棄による遺産の管理者への対応方法

相続財産管理人は、相続財産の管理や債権者への支払いを行います。

相続放棄者は、管理人に対して財産の状況や先代の債務などの情報を提供し、円滑な財産管理に協力することが求められます。

また、管理人から連絡があった場合は、速やかに対応することが重要です。

5-3.トラブル発生時に相談すべき専門家とその対応方法

相続放棄に関するトラブルが発生した場合、弁護士や司法書士といった専門家に相談することが不可欠です

例えば、債権者から支払い請求を受けた場合や、他の相続人との間で紛争が生じた場合などです。

専門家は、法的な観点から問題を分析し、適切な解決策を提案してくれます。

トラブルが発生した際は、早期に専門家に相談し、その指示に従って冷静に対応することが大切です。

トラブル発生時の対応
  1. トラブルの内容を整理し、必要な資料を準備する
  2. 弁護士や司法書士に相談し、法的なアドバイスを受ける
  3. 専門家の指示に従って、冷静に問題に対処する
  4. 相手方との直接の交渉は避け、専門家を通じてコミュニケーションを取る

6.相続放棄後の不動産売却に専門家のアドバイスを活用する方法

相続放棄後の不動産売却は、法的な手続きや税務面での注意点など、複雑な問題が絡むため、専門家のサポートを受けることが重要です。

ここでは、司法書士や弁護士、不動産会社との連携方法や、専門家に相談する際のタイミングとポイントについて解説します。

6-1.司法書士や弁護士によるサポートの必要性

相続放棄の手続きには、申請書類の作成や家庭裁判所への提出など、専門的な知識が必要とされます。

また、相続人全員が相続放棄した場合、相続財産清算人の選任など、さらに複雑な手続きが発生します。

こうした状況で、司法書士や弁護士の専門的なアドバイスを受けることで、手続きの漏れや間違いを防ぎ、円滑に進めることができます。

さらに、相続放棄後の不動産売却では、境界線の確定や契約不適合責任の免責など、法的な問題が発生する可能性があります。

司法書士や弁護士は、こうした問題に適切に対処し、売却における法的リスクを最小限に抑えるためのサポートをしてくれます。

6-2.不動産会社との連携と売却活動の進め方

相続放棄後の不動産売却では、不動産会社との連携が欠かせません。

不動産会社は、物件の査定や価格設定、広告・販促活動、購入希望者との交渉など、売却に関するあらゆる業務を担当します。

特に、相続放棄された不動産は、長期間の空き家状態や老朽化などにより、売却が難しいケースが多いため、経験豊富な不動産会社選びが重要となります。

売却活動を進める際は、不動産会社と緊密に連携し、物件の状況や売却目標を共有することが大切です。

また、不動産会社からのアドバイスを積極的に取り入れ、物件の魅力を最大限に引き出す工夫を行うことで、高値売却の可能性が高まります。

6-3.専門家に相談する際のタイミングとポイント

相続放棄後の不動産売却では、早い段階から専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄の手続きには期限があり、また、放棄後も一定期間の管理義務が発生するため、迅速な対応が求められます。

司法書士や弁護士、不動産会社と早期に連携することで、手続きの遅れや管理義務の懈怠を防ぐことができます。

専門家に相談する際は、以下のポイントに注意しましょう。

  • 相続財産の詳細(不動産の種類、場所、価値など)を整理する
  • 相続人全員の意向を確認し、相続放棄の合意形成を図る
  • 相続放棄の手続きに必要な書類を準備する
  • 不動産売却の目的や希望条件を明確にする
  • 専門家の経験や実績、報酬体系などを比較検討する

こうした準備を整えた上で、複数の専門家に相談し、適切なサポートを受けられる体制を整えることが、相続放棄後の不動産売却を成功に導くカギとなります。

7.まとめ

メンバー

今回は、相続放棄をした場合の不動産売却が可能なケースやその手続き、必要な書類、税金、そして専門家のサポートについて詳しく解説しました。

相続放棄後の不動産売却には、相続放棄の手続きやその後の管理に関する注意点が多く、法律的な制約を把握することが重要です。

そのために、慎重な手続きと専門家のサポートが欠かせません。

本記事を参考に、必要な準備を整え、スムーズで安心な売却を実現していただければ幸いです。

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参考文献

https://www.oag-tax.co.jp/souzokuzei/column/abandonment-of-land-inheritance-12060/

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相樂 喜一郎

この記事を書いた人

相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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