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こんにちは、住まいのお悩み無料相談、アリネットで住まいのお悩み相談を受けている不動産鑑定士補の相樂です。
2022年4月に50代の男性からホームページ経由で相談のあった小田原市の戸建てを事例に、
「空き家になる実家をいつ売るべきか?」
について、今回、説明します。
実は、お父様が生きてる内に実家を売り、現金を相続する場合と、戸建てを相続してから、売却する場合など、空き家の対処にはいくつかパターンがあり、それぞれで相続税や譲渡所得課税など、経済効果が異なります。
結果的に、小田原市の戸建てのケースでは相続が発生する前に実家を3,300万円で売却することができました。
というのも、そのお金をお父様が施設に入るために使ったからです。
2012年から10年近く、住まいに関する色々な相談を受けてきて、最終的には金額の大小ではなく、『どの方法が最も揉めずに、家族が幸せでいられるか?』が大切だと個人的には思っています。
ここから、当時質問されたことを参考に、建物や利用状態により、様々な特例があり、個別性が強いので、一旦一般論を説明し、使える特例も一緒に説明していきます。
後述しますが、10年以上、今のご自宅に住んだ方が自宅の売却を検討する場合、税金の特例や控除を併せて、利用することができます。
1.お父様が生前、自宅を売却し、現金をお子様に相続する場合
元々、お父様が自宅として、お一人で暮らしていました。
しかし、生活に不自由するようになり、お子様である相談者様がたまに介護に行くぐらいでは対応しきれないと判断し、2022年の春、今後の実家の対応について、どうしたらいいかと、ご連絡を頂きました。
既に、相談者様はご自宅を購入し、家族と暮らしており、お父様やご自宅の件をどうするべきか、一人で悩んでおられました。
今回のように、生前に自宅を整理するケースのご相談は増えています。
空き家になった実家の雑草や害虫など、残った家族に迷惑を掛けない様、終活が知られるようになってから、実家の対応についての相談は増えています。
先ず、お父様がご自身で自宅を売却する場合、マイホームの特別控除3,000万円が適用できます。
更に、税率も軽減税率が適用されます。
このケースでは、売買価格3,300万円から3,000万円を控除して、譲渡所得は300万円。
所得税と住民税、復興特別所得税が約15%が適用され、税額は45万円になりました。手元には3,255万円もの現金が残りました。
そこから介護施設に入るための1,200万円を控除しても残り、2,055万円がお手元にのこります。
将来、お父様が無くなり、現金2,055万円を相続する場合でも相続税の基礎控除3,000万円+法定相続人一人当たり600万円を考慮して、合計3,600万円まで課税遺産額はゼロのため、相続税は掛かりません。
譲渡所得課税と相続税を合わせた納税額の合計は55万円と、かなり圧縮することが出来ます。
このケースでは、お父様の取得時の金額が分からず、みなし簿価5%で165万円を簿価として、計算しました。
もし、取得時の価格が分かるようであれば、もっと税金を減らす事ができたかもしれません。
残念ながら、購入の書類は何もなく、閉鎖謄本等も調べたのですが、簿価を調べる事は出来ませんでした。
※マイホームを譲渡した場合の軽減税率
ちなみに、今回の様に自宅を10年以上所有している場合、3,000万円の特別控除以外に、譲渡所得が6,000万円まで所得税の15%が10%程度に下げることができます。
>>自宅の売却時にいつでも使える3,000万円の特別控除など、こちらのページにまとめています。
2.実家を空き家にしたまま相続し、タイミングを見て売却する場合
相続後の売却を考える場合、まず、土地・建物の評価額がポイントになります。
と言うのも、一般的に相続税評価は周辺相場より、安くなるからです。
もし、3,300万円が相場であれば、ざっくり、80%と見て、2,600万円ぐらいが相続税評価額となり、記述の基礎控除を踏まえ、課税遺産額はゼロのため、相続税は掛かりません。
ちなみに、相続後に空き家となった実家を売る場合、取得費や所有期間はお父様のものが引き継がれ、相続税額が取得費に加算されます。
ここでのポイントは、
『お父様の購入金額がいくらだったのか?』
ですが、小田原市の場合もそうでしたが、多くの場合、契約時の資料が残されていないと思います。
その場合、みなし簿価として、売買金額の5%となり、譲渡に伴う課税金額は3,300万円×(100%‐5%)×15%≒470万円となり、手残りは約2,830万円になります。
ケース1と比べ、圧倒的に税金を払うことになります。
但し、相続で空き家を引き継いだ場合、以下のような一定の条件を満たす場合には特例を受けることが出来ます。
- 相続から3年経つ、年の12月31日までに売却する事
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物
- 建物が耐震基準を満たしている事
- マンションでない、戸建てである事
- 相続前、被相続人以外住んでいる人がいなかった事
- 売却まで誰にも貸していない事
- 売買価格が1億円以下である事
結果的に、他のケース同様、上手くやれば、一銭も税金を支払うことなく、実家を売却することが出来ます。
空き家売却の特例について譲渡所得から3,000万円の控除があり、大半の戸建てはこれを使えば、売却時の税金を支払う必要はないと思います。
但し、上記の通り、相続後3年以内だったり、譲り受けてから空き家のまま売却する必要があるなど、一定の条件があります。
3.実家を賃貸住宅として、運用し、相続後、タイミングを見て売却する場合
これまでのケースとは異なり、売却するタイミングは異なるものの、空き家になる実家を一旦、賃貸運用後に売却する方法があります。
こちらは賃貸運用が入っている為、税理士さんが作ってくれる相続税の節税対策で教えてくれる『単に実家を売るだけ』のシミュレーションとは異なってきます。
賃貸・建物管理を行っている私たちの強みを生かす事が出来、後述しますが、ケース3の『運用後に空き家として、売却する方法』は実際に私たちが提案し、これまで何回かやってきた経験があります。
3-1.先ず、相続の発生前、空き家になった時にどうするかを決めます。
賃貸に出す場合、土地は相続人が賃貸事業を承継した場合、小規模宅地の特例で評価額を5割減に出来ます。
また、貸家にした場合、その相続税評価額は借地権・借家権の割合で減額されます。
※地域によって、借地権割合が異なりますが、小田原の時は60%でした。
このケースは相続発生前なので、施設に入る費用や相続税の支払いや生活費などそれほど困っていない、すぐに何かしたいわけではないのでしばらく売らず、状況を見て、ベストのタイミングを図りたい慎重な方向けの方法です。
3-2.小田原のケースを参考に、その経済効果をシミュレーションしてみます。
先ず、貸家部分の評価額は3,300万円の60%で課税価格は1,980万円になるため、基礎控除を考えると相続税は掛かりません。
次に、15万円で賃貸出来た場合、10年間運用した場合、1,800万円の経済効果があります。途中、設備の交換やリフォームを含め、500万円ぐらい払ったとしても、1,000万円以上の得します。
最後に、3,300万円で売却した場合、みなし簿価の5%であったとしても、譲渡に伴う課税金額は3,300万円×(100%‐5%)×15%≒470万円となり、手残りは約2,830万円になります。
結果的に、空き家になってから10年間賃貸運用を行い、売却したケースでは3,800万円ぐらいの経済効果になります。このような運用などを任せる先がキチンとあれば、戦略として、とってもいいと思います。
ケース3の小田原市の戸建てはお父様が介護施設に入る資金を作るため、実家の売却を選択されました。
3-3.空き家になる実家を賃貸住宅として運用したケース
しかし、他にも板橋区と豊島区、渋谷区でそれぞれ、空き家になった実家を賃貸住宅として、貸し出した後、不動産相場を見つつ、売却した事例があります。
3-3-1.板橋区にある戸建て
80代になる所有者の方が介護施設に入るタイミングで売りに出ていた3階建ての木造住宅を2015年に購入し、シェアハウスとして約5年間運用後、2020年に中国人投資家に売却しました。
>>板橋区の戸建ての運用と売却の詳細はこちらです。
3-3-2.豊島区にある戸建て
相続で譲り受けた戸建を賃貸住宅として、貸し出し、アベノミクスにより、土地価格が上がった段階で自宅として、売却しました。
>>豊島区の戸建ての運用と売却の詳細はこちらです。
3-3-3.渋谷区にあるマンション
相続で譲り受けた区分マンションを賃貸住宅として、貸し出し、アベノミクスやコロナバブルを経て、シェアルームのまま、売却しました。
>>渋谷区の区分マンションの運営と売却の詳細はこちらです。
なお、相続により、譲り受けた不動産の売却の場合、その保有期間は前所有者が取得した時から計算し、短期・長期譲渡所得の計算を行います。
他にも、実家を売却する場合には、以下のような特例を組み合わせ、費用を下げることができます。
- 3,000万円の特別控除
- 所有期間が10年超の軽減税率
- 特定のマイホームの買換え特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 取得費加算の特例
>>この辺り、物件一つ一つに個別性が強いため、心配な方は個別にご連絡ください。
状況を踏まえ、対策などアドバイスをさせて頂きます。
>>念のため、私たち、アリネットのグーグル上の口コミはこちらのページにまとめてあります。
4.実家に引っ越し、相続後、タイミングを見て売却する場合
なかなかあるケースではありませんが、念のため、説明しておきます。
小田原のように既にご家族と一緒に別の所でご自宅を購入している場合、自宅を売ってまで実家に引っ越すのは容易ではないと思います。
ただ、賃貸で近くに暮らしている場合、一生家賃を払い続けるのかと考えると現実味があると思います。
トータルでのバランスを考え、奥さまやお子さまの学校に影響がない場合は選択肢として考えてみてください。
一旦、ご自宅として、リフォームを行い、住むことになると思います。ずっと先の将来のことになりますが、売却と途中の家賃を踏まえ、計算してみます。
例えば、家賃が15万だった場合、10年住めば、1,800万円の経済的なメリットがあります。
途中、500万円のリフォームを行ったとしても、1,000円以上のメリットがあります。
その後、売却した場合にはケース1の時のように3,000万円の控除もあるため、ほとんど税金は掛からず、現金をお子さまに残すことが出来ます。
5.空き家になった実家をどうするのが最も税金は減るのか?
これまで、四つのケースを説明してきました。それぞれ適用の為に必要な条件があります。
マスコミの影響か、実家が空き家になると、相続税の事を多くの方が気にされます。
ただ、税法は変わり、厳しくなりましたが、相続税を支払う必要のある家族は少数派です。
例えば、お子様がいれば、基礎控除が3,600万円もあるので、実家の相続税評価額がそこまでいたらない場合が多いです。
もし、お金や時間に余裕があるなら、一旦、貸したり、ご自身での利用を考えた方がこれまで見てきた通り、単純に売却して終わりにするよりは経済的なメリットがあると思います。
もちろん、一方で手間も掛かるのでお近くの専門家などに相談して、状況を踏まえ、どうするか決めるのが良いと思います。
小田原やこれまでのケースを踏まえ、実家が空き家になった場合の簡単なチェックリストを作りました。
- マンションではなく、戸建て
- 現在、空き家で誰も住んでいない
- 売却後、すぐにお金を使う先がある
>>上記に当てはまるようなら、相続後、空き家としての売却を検討しても良いと思います。
- すぐに使う先がない
- 引っ越しに家族から承認がもらえそう
- 今、賃貸住居に住んでいる
>>上記を満たす場合には、賃貸に出したり、自身で住むことを検討しても良いと思います。
2012年以降、私たちはこれまで都内を中心に20件近い、空き家問題を相談者様と一緒に解決に導いてきた経験や豊富な知識があります。
そのため、『どのような交渉・提案を行えば、金融機関にはどう話すか?』などの助言を行うことができます。
これから空き家になってしまう実家の運用や対処を考えるの方は、ぜひ『LINE公式の無料相談』や『電話相談』からお問合せください。
私たちの場合、たらい回しなく、実務担当が直接対応いたします。
>>これまでうまく行った解決事例はこちらのページにまとめてあります。
念のため、私たち、アリネットのグーグル上の口コミはこちらのページにまとめてあります。
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