麻布十番・賃貸マンション、㈱リビングインの防犯設備士兼不動産鑑定士補の相楽です。
今回も前回同様、不動産絡みのトラブル案件を主に扱っている元弁護士先生と一緒に事故物件の告知事項について、契約後に不安になって、ソワソワしないための事前確認や注意点を考えます。
告知義務の有無の基準に関して、国土交通省が先日出したガイドラインを弁護士さんと話し合いました。まだ、案の段階で、これから本決まりですが、こちらのページにまとめておきました。
あなたが賃貸住宅を借りて、新生活を送るとき、マンションが『事故物件』ではないか、安心して暮らすために注意が必要です。
賃貸マンションに入居した後に「実は以前に自殺者が出てるんです・・・」などと聞かされたら、ショックでそれ以上、住みたくなくなりますよね。不動産業界では、以前に事件や事故が起こった物件を一般に「事故物件」と呼びますが、大家や不動産会社はどこまで事故物件の告知義務が認められるのでしょうか?今回は、事故物件となってしまった賃貸マンションの告知義務の範囲や事故物件を契約してしまわないための対処方法を解説します。
一級建築士の先生に内覧時に現地で使える不快な事故物件の6つの見分け方をレクチャーしてもらいました。
>>【一級建築士監修】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法
1.そもそも事件・事故物件とは
事件・事故物件とは、過去に自殺者が出たり犯罪行為が行われたりして「居住者に心理的な負担となる物件」です。過去に殺人や自殺があった場合、たとえその物件に「水漏れ」や「傾き」などの物理的な欠陥がなくても、通常の人は「住みたくない」と感じます。このように、通常の人にとって精神的な負担となる欠陥がある物件を「事故物件」といいます。事故物件に該当するのは、以下のようなものです。
・過去に自殺者が出た
・過去に殺人が行われた
・過去に自然死が発生し、長期間放置された
・過去に放火が行われた
事故物件なのにこれらの事実を告げられなかった場合、大家や不動産仲介業者は「告知義務違反」が認められます。 知らずに入居したあなたは契約の解除や損害賠償請求をできる可能性が大いにあります。
ちなみに、オーナーや管理会社、単身者向けのマンション人でいる方向けに隣の部屋で事故が起きてしまった時の連絡先やその際の賃料、不動産価格への影響についてはこちらのページにまとめました。
2.事故物件の告知義務の範囲
ただ、事故物件であっても、全てのケースで告知義務が発生するわけではありません。 例えば、以下のような実際に事件が起こっていたケースでも、告知義務違反にはなりませんでした。
2-1.自然死の場合、基本的に告知義務は無い
賃貸物件の場合、過去に「自然死」があっても告知義務が認められにくくなっています。犯罪行為や自殺が発生していた場合には、不動産仲介業者や大家に告知義務違反を問える可能性があります。
しかし、特に単身者用のマンションなどでは「老人の孤独死(病死を含む)」などは知らされなくても、基本的には解除や損害賠償ができません。実際、2階建ての木造住宅の一室で契約の半年以上前に自然死があった事案で、告知義務を否定した裁判例が過去にあります(東京地裁平成18年12月6日)。
2-2.隣室の事故は告知義務違反にならない
借りた部屋ではなく、隣室が事故物件だったというケースもあります。たとえば、入居した部屋の隣で過去に自殺者が出た場合などです。基本的に、事故物件扱いとなって告知義務が発生するのは借りた部屋内で事件や事故が発生した場合に限られます。
その為、隣室や上下階が事故物件であっても大家や不動産仲介業者に告知義務は無く、解除や損害賠償請求は難しいと考えましょう。裁判例でも、対象となった部屋以外での自殺については告知義務がないと判断されています(東京地裁平成19年8月10日)。
2-3.事故発生後の期間
告知義務が発生しても、一定の期間が経過すれば、義務が消滅すると考えられています。賃貸借契約で過去に自殺者が出たケースでは自殺後2~3年で告知義務がなくなります。
なお、ニュースになるような殺人が行われた場合には精神的な負担が大きくなるので、もう少し長い期間告知義務が存続する可能性があります。実際、1年数か月前に自殺があったことを聞かされずに、マンションを賃借したケースで、告知義務が認められた裁判例があります(大阪高裁平成26年9月18日)。
2-4.別の入居者の介在
過去に自殺者などが発生して2~3年が経過していない場合でも、その部屋にいったん別の入居者が入ったら告知義務がなくなります。なぜなら、別の人が住むことで、物件の持つ心理的な問題が薄まると考えられるからです。
裁判例でも自殺が起こった直後の入居者へは告知義務が認められています。 しかし、その次の入居者には告知義務がないと判断されています(東京地裁平成19年8月10日)。
上記の要件を検討して、あてはまるようであれば、不動産仲介会社や大家に損害賠償請求ができますし、契約の解除も可能となります。
3.事故物件を契約しないための予防方法
いったん事故物件を契約してしまったら、気味が悪く、日々ストレスが溜まり、あなたの成長の妨げになる可能性が高まります。 又、短期間の引っ越しなど、将来的に引っ越しなどのコストも発生してしまいます。 そのため、できるだけ問題のある物件を契約しないため、以下のように対応しましょう。
3-1.不動産仲介会社へ確認
お部屋の検索・問い合わせ時又は、不動産会社から物件を勧められたとき「マンションやこの部屋で過去に自殺や犯罪などの問題が発生していませんか?」とメールだけでなく、直接聞きましょう。不動産仲介会社には告知義務があるので、知っていれば伝えなければなりません。
また、入居者が「事故物件かどうかを気にしている」とわかれば、仲介業者としても注意深く調査を行うでしょう。このことで、事故物件を紹介されるリスクを低減できます。
3-2.家賃がなぜか異様に低い物件に注意
相場よりもなぜか家賃が低い物件にも注意が必要です。そういった物件では過去に自然死などの問題が起こっている可能性があるからです。不動産会社に「なぜ家賃が低いのか?」、「事故物件ではないのか?」、又は「自然死などの問題が発生したことがないか?」確認しましょう。
3-3.ネットで情報収集
不動産仲介会社からの情報だけでは不安なので、自分でもネットなどで情報検索してみましょう。たとえば、対象エリアの過去の殺人事件や放火、火災などの事件について検索してみると、問題を発見できる可能性があります。もしも、不動産会社が重大な情報を隠していたことが発覚したら、その業者に仲介を依頼するのをやめて、別の業者に物件を紹介してもらうと良いでしょう。
3-4.物件内覧時の対応
部屋選びで一番大切なところです。 物件を内覧する際に注意深く観察しましょう。 たとえば、「近い時期にその部屋だけリフォームされている場合」などには、事件や事故が起こっている可能性があるので不動産会社に理由を尋ねましょう。他にも、売買等のタイミングではなく、最近になって、マンション名が急に変更されている場合にも要注意です。もし、内覧時に近隣の居住者と顔を合わせたら、入居を検討していることを伝えた上で、聞ける範囲で情報を集めましょう。
一級建築士の先生に、内覧時に現地で使える不快な事故物件の6つの見分け方をレクチャーしてもらいました。
>>【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法
3-5.重要事項説明、契約時の対応
契約書を作成する段になって、不動産会社から重要事項説明を受けるときには、署名押印する前に「この物件は事故物件ではないですよね?」、「自然死も3年以上前の自殺なども発生していませんよね?」と念押ししましょう。できれば、重要事項説明書や契約書に「事故物件ではないことを保証する」などの一文を入れてもらえるともっと安心できます。
引っ越しは時間や費用が掛かるだけでなく、あなたの成長を早め、人生を決める大切なイベントです。そのため、可能な限り、確認し、完全に納得できてから、重要事項説明書や契約書に調印・捺印すると良いと思います。
事故物件は、居住に際して現実に不便があるわけではありません。しかし、入居後に知ると、大変な心理的ストレスの要因となります。今回ご紹介した対処方法を実践して、可能な限りトラブルを避けましょう。
事件・事故物件ではありませんが、入居直後に気づいた隣人トラブルが告知義務違反になるかどうか、また、騒音トラブルが告知義務違反になるのか、そして、オンライン内見で引っ越しを決めた場合の告知義務について、弁護士に確認しています。この手のトラブルは忙しい時期によく起きています。洪水や大雨発生時のハザードマップを用いた説明に関しても2020年8月末から義務化されています。この辺りも今後事件発生時には問題になるかもしれません。念のため、契約前にご自身でキチンと確認しておいてください。
【元弁護士と考える】シリーズ、告知義務の必要な事故物件を選ばないための賢い対策他
>>【元弁護士と考える】事故物件を契約する前の告知義務?その確認方法や注意点は?
>>【元弁護士と考える】不動産屋からウソを教えられた時の対応は?
>>【元弁護士と考える】騒音、地震、虫などないと言われたのに、嘘だったら
>>【元弁護士と考える】仲介手数料の支払い無効裁判(2019年夏)
>>【元弁護士と考える】騒音や悪臭、ナンパ等『隣人トラブル』の対処と引っ越し代は?
その他、事故物件に関する記事はこちらです。
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その1)
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その2)
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
この記事へのコメントはありません。