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こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す六本木の不動産屋、(株)リビングインで建物の管理や住まいのトラブル解消を担当している不動産鑑定士補兼管理業務主任者の相樂です。
今回は先日の火事以降、オーナー様から相談の多かった、隣の家や空き部屋が火事になった時、損害賠償は出来るのか?について、司法書士の先生と一緒に説明していきます。
0.はじめに
3月1日午前5時頃、東京都江東区大島(都営地下鉄大島駅西側)の住宅地で発生した火事は、計11棟もを焼いてしまう大惨事となりました。周辺の道路は封鎖され、朝の通勤ラッシュとも重なり、あたりは騒然としていたようです。
東京消防庁によると、火元は2階建ての空き家とみられるとのこと。放火など事件なのか、事故なのかはまだはっきりとしていませんが、空き家はしばしば火元となりやすいです。
空き家で火災が起きると、人が住んでいる住宅と違い、火事に気づくまでに時間がかかること、原因が判明しにくいことから、被害も大きくなる傾向にあります。
さらに、2月には世田谷区の多摩川河川敷で4件もの火事。しかもこちらは不審火、放火の疑いとされています。加えて、栃木でも9日もの大規模な山火事がありました。人気のない山から発生した火事は住宅地近くまで延焼し、300世帯以上に避難勧告が出ていたそうです。
これらの事例のように、空き家や空き部屋、所有者が不明(いない)ようなところで火事が起きて、周りも焼けて自分も被害を受けた場合。補償されるはされるのでしょうか?
結論から言うと、基本的に火災によって受けた被害は賠償されません。
賠償されないというより、火元となった場所の所有者に賠償義務がないのです。所有者が火災保険に入っていても、賠償義務はありません。ご自身の入っている火災保険で対応する事になります。一方、賠償ではないものの、火元の所有者からお金がもらえるケースもあります。そこでこの記事では、主に下記3点について解説します。
・なぜ、もらい火で被害を受けても賠償されないのか?
・被害を受けて お金をもらえるケース、もらえないケースの違いは何か?
・近くに空き家や空き部屋などがある場合のリスクや対策
1.空き家・空き部屋から出た火事の被害は賠償される?
最初に述べた通り、空き家・空き部屋から出た火事の被害に遭っても賠償されません。その背景や危険性を解説します。
1-1.空き家で火事やもらい火の被害にあっても賠償されない
賠償されない点について、当社の保険代理店にいるファイナンシャルプランナー(以下、FP)に確認しました。
相楽)江東区の空き家で火事があり、周りも沢山焼けてしまったようです。このような場合、火事を起こした空き家のオーナーの火災保険で、他の家の被害も負担(カバー)できるのでしょうか?
FP)火災保険でカバーされるのは自分の建物だけです。特約をつけておけば、隣家に払う見舞金は出ます。
相楽)それは、もらい火で焼けてしまった人は辛いですね・・・。もらい火の被害に遭った人たちは、結局、各自、自身の火災保険で対応することになるのでしょうか?
FP)火災保険はそもそも、もらい火の時のためにあると考えた方が良いです。一軒当たりの敷地が大きく、隣家と距離があるアメリカと異なり、長屋文化が残る日本では、隣の家を延焼させても責任が問われないことになっています。これは日本特有のルールです。
相楽)ということは、空き家が近くにあったら、周りのみんなで対応しないといけない世の中ということですね。
FP)はい、空き家からのもらい火で空き家の所有者の保険は使えないので、自身の火災保険を使うしかありません。ただし、火元が工場など事業性のあるものだと別の話になります。
相楽)なるほど。凄く参考になります。とにもかくにも、近くに空き家がある場合、もらい火などに備えて、火災保険に加入するなどリスクマネジメントが必要ですね。ゴミ屋敷対策も踏まえ、役所に早速連絡した方が良さそうな。
1-2.火事の原因1位は放火。東京都内の出火の約30%
総務省消防庁「令和元年版消防白書」によると、日本における火災の原因第1位は「放火及び放火の疑い」と言います。2018年の1年で、日本で起きた火災は37,981件。そのうち、「放火及び放火の疑い」が4,761件と、およそ12.5%にものぼります。
単純に365日で割ると、1日約13件の「放火及び放火の疑い」で火災が発生しているということです。なお、放火による火災での死者は233人。「放火及び放火の疑い」により、5日間で約3名もの尊い命が奪われている現実があるのです。
さらに、「放火及び放火の疑い」について興味深いのは、東京や大阪など大都市の方が多いということです。
空き家や人気(ひとけ)の少ない地方の方が多いイメージがあるかもしれませんが、東京、大阪、神奈川、埼玉、愛知という大都市圏で多く発生しています。少し古いデータですが平成24年の統計では、東京都内で起こった火災の約29.3%が「放火及び放火の疑い」でした。
他の大都市圏でも概ね、火災の原因の30%前後が「放火及び放火の疑い」となっています。後半に「鬱憤を晴らすために放火した」事件の判例を紹介しますが、放火の背景にはストレス社会も大きく影響しているのかもしれません。
1-3.もらい火に遭っても賠償を受けられない理由
もらい火に遭っても、住宅のオーナーから賠償を受けられない、オーナーの火災保険でカバーされない理由には、日本特有の事情があります。
1ー3-1.明治32年に作られた法律が生きている
自分の所有物(空き家・空き部屋)で火災が発生し、周辺に被害を与えた場合の責任については、「失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)」に定められています。「失火責任法」は、今から100年以上も前の、明治32(1899)年に定められた法律ですが、令和の現代でも生きています。
「失火責任法」により、過失によって発生させた火災は原則、民法上の損害賠償責任を負う必要がありません。そのため、もらい火の被害に遭っても、オーナーに賠償を求めることができないのです。
「失火責任法」ができた背景として、日本では長屋の木造建築が多く、一度火事が起きれば延焼は免れなかったからです。火事が起こるたびに賠償責任が発生すれば、人々の生活がままならなくなるため、賠償責任を免れるという法律ができました。
ただし、空き家・空き部屋、住んでいる住宅にかかわらず、管理状態が悪く重大な過失があったと認められれば、賠償を請求されることもあるようです。かなり稀なケースのようですが。。。
1ー3-2.空き家の出火で賠償責任が発生するケース
上で述べたように、管理状態が悪い場合は「重過失」があったとして賠償責任が発生するケースがあります。個別の事件ごとに判断されるため、「このケースは全て賠償責任が発生する」とは言い切れないのですが、空き家を放置していてネズミが配線をかじって火災を起こし、それが証明された場合などは賠償責任が生じるかもしれません。
とはいえ、こうしたことを証明するには時間も手間もかなりかかるため、もらい火の被害をうけた側が現実的にそこまでできるのか、というとできる人は限られると思います。
1ー3-3.オーナーが加入している火災保険や地震保険では補償されない
火災を発生させたオーナーが火災保険や地震保険に加入していても、もらい火の被害者に対して補償はされません。これらの保険は、自然発生的なものや天災、もらい火を受けたなど、偶発的な事柄によって被害を受けた際に補償されるものだからです。
1ー3-4.「個人賠償責任保険」も空き家では適用外
一般的に、他人に与えた損害に対して補償する「個人賠償責任保険」があります。しかし、これも空き家の火災が原因の場合は適用外になります。火災保険の特約で「個人賠償責任保険」をつけているケースも多いと思いますが、これはあくまでも人が現に住んでいる住宅に対しての保険です。
その為、空き家では適用されません。空き家で起こったトラブルに対して責任を負うには、後に説明する「施設賠償責任保険」という保険にオーナーが加入している必要があります。主に大家さん向けで、建物が原因の損害に対して補償される保険です。ただし、「施設賠償責任保険」でも保険会社によっては空き家では加入できないことがあります。
1ー3-5.賃貸の場合、失火責任法が適用されない
ここでちょっと恐ろしい話をします。もしあなたが家や部屋を借りているならぜひ読んでください。火事を起こして周辺に被害を与えても、「失火責任法」により基本的には賠償義務はない、という話をしてきました。ただ、これには例外があります。
「原状回復義務」です。
原状回復義務とは、賃貸した住宅や部屋を返す際には借りた状態に戻して返さなくてならない、という決まりです。つまり、借りた住宅や部屋がもらい火の被害に遭った場合でも元の状態に戻さなくてはなりません。
もしできなければ、大家さんに賠償しなければならないのです。だから、賃貸の場合であっても、火災保険には必ず加入してください。賃貸借契約時や契約の更新時に火災保険の契約が義務づけられているのはそのためです。
1ー4.もらい火でお金がもらえるケース
「失火責任法」によりもらい火の被害に遭っても賠償責任されません。が、お金がもらえるケースもあります。
1ー4-1.空き家オーナーが「類焼損害」、「失火見舞」に加入している
空き家のオーナーが「類焼損害」や「失火見舞」といった補償がついた火災保険に加入していた場合、もらい火の被害者に対して見舞金が支払われる可能性があります。ただし、一律で決まった金額が支給というケースが多いので、被害が大きい場合は全然足りないかもしれません。あくまで「見舞金」という名目であるという認識が必要です。
また、空き家の場合は火災保険加入そのものへのハードルが高いため、補償が受けられるケースは少ないと考えられます。あまり大きな期待はしない方がいいです。
1ー4-2.空き家オーナーが「施設賠償責任保険」に加入している
空き家オーナーが「施設賠償責任保険」が加入している場合、もらい火の損害が補償される可能性があります。こちらも空き家の場合は加入自体のハードルが高いため、オーナーがそこまでして加入しているかはわかりません。
また、最初は人が住んでいる状態で加入し、途中で空家になった場合は、適用外となることもあり、この辺りはオーナーの意識の高さも影響するので、多大な期待は避けてください。もらい火はあくまで自分で対策が必要です。
1ー4-3.火元が工場など事業用の建物だった場合
業務上、火を取り扱うような工場、飲食店などの場合は失火責任法が適用されず、損害賠償責任を負う可能性があります。またガス爆発も失火責任法の適用外なので、ガス爆発が原因の火災も、損害賠償責任を負う必要性が出てくる可能性が高いです。
とはいえ、法的に賠償責任の義務があっても、無い袖は振れません。建物のオーナーやテナントがきちんと火災保険に加入しておらず、資金もなければ、本来もらうべきお金がすぐにもらえないこともあります。
他にも、火災保険に加入していても、使用者に重大な過失があったり、サビ・腐食、ネズミや虫食いが原因の火災も補償されない可能性もあります。事業用の建物からのもらい火だから、簡単に補償を受けられると考えるのは危険です。
2.火災以外も!空き家・空き部屋で起こる問題
火災は甚大な被害に繋がりやすいですし、命や住まいなど大切なものを失う可能性もあります。しかし、火災以外にも空き家が原因の問題は多数あります。寄せられることの多い問題をピックアップしました。
2-1.隣からずっと音がする
「誰も住んでいないはずなのに音がする・・・」、気持ちが悪いですし、何より気になりますよね。空き家・空き部屋から音がする原因はケースバイケースですが、下記のようなことがあります。
・動物や害虫の住処になっている
・浮浪者やホームレスが出入りしている
・犯罪に使われている(参考:放置しているマンションの空き部屋でも掛かってくる費用や判例やトラブルとその対策まとめ)
・水漏れや設備が故障している
・放置された家財が壊れた
水がチョロチョロと流れるような音でも、深夜や毎日だとかなりストレスが溜まるので、対策してほしいものです。
2-2.匂いがする
匂いも見えないだけに被害を受ける方はたまったものではありません。匂いの原因も様々ですが、音がする原因と共通している部分も多いです。
・動物や害虫の住処になっている
・浮浪者やホームレスが出入りしている
・水漏れや下水など設備が故障している
・放置された食品やゴミなどが腐っている
テレビで定期的に「ゴミ屋敷」が取り上げられますが、心の拠り所としてゴミを溜め込んでしまう人は一定数いるようです。そのまま亡くなり、身内がいない、もしくは片付けるのにもお金がかかるので、遺族や管理者が放置。。。ということも少なくありません。
2-3.動物や害虫の住処になる
空き家の場合、猫やネズミ、イタチ、テンなど野生の動物が住みつくこともあります。糞尿による匂いや建物設備の腐食・劣化、鳴き声による音などの問題のほか、配線をかじって火事の原因となることもあるのでかなり危険です。
小動物は繁殖ペースが早いので、見つけた場合は早めにオーナーや管理会社に伝えて対策してもらった方がいいと思います。
東京でも動物が住み着く事があります。特に、ねずみや猫が住み着き、臭いが酷い時がありました。このような状態になる前に、事前に役所に空き家又はゴミ屋敷の連絡をしておいた方が良いと思います。ちなみに、役所は直ぐには対応してくれないことが一般的です。その為、被害が大きくなる前に、キチンと連絡しておいた方が良いと思います。
2-4.間違えてドアを開けられそうになる
空き部屋の隣に住む人から多く聞くのが「間違えてドアを開けられそうになる」という恐怖体験です。空き部屋と確かめるためなのか、単に間違えただけなのかわかりません。
が、本当によく聞きます。単純に怖いですし、音や気配が気になりますし、一瞬でも鍵をかけ忘れないようにしたいです。
2-5.不審者やホームレスが勝手に住む
管理状態が悪い場合、浮浪者やホームレスなどが出入りしていることがあります。夜寝るだけ、雨避けだけ、など不定期だったりします。ずっといると向こうもリスクがあるので気をつけているのかもしれません。
また、長期間空き家になっていた住宅が不良の溜まり場になり、シンナーが使われて警察沙汰になった、なんて話もありました。。。
3.空き家・空き部屋の苦情はどこに言えばいい?
放置された空き家やマンションの空き部屋の問題やトラブルを何とかしてほしい時、誰にいえば良いのでしょうか?
隣人はもちろん、異臭・不審者などで対応を迫られた管理会社、修繕費や管理費の滞納で困っている組合などの立場からも解説します。
3-1.隣人→管理会社
マンションの空き部屋の隣人の方で困ったことがあったら、まずは管理会社に言うのがいいと思います。そもそもオーナーが誰かわからないことが多いですし、直接言うと角が立つこともあるので、基本的には管理会社に相談してください。
管理会社がいない場合は、オーナーに直接連絡を取るか、以下の通り、「3-4.オーナーに連絡がつかないなら警察もあり?」、「3-5.オーナーに連絡がつかないなら弁護士もあり?」で紹介する方法になります。
3-2.管理会社→オーナー
隣人から相談を受けたり、問題が起こった場合、管理会社はオーナーに連絡を取ります。ただ、管理会社が変わったり、長期間空き部屋だったりすると、連絡が取れないこともあります。
元々住んでいた人がオーナーと仲が悪かったり、相続でたまたま手に入れた物件だったりすると、名義変更されずに放置されるなどするケースも多いです。
3-3.組合→オーナー
マンション管理組合が抱える問題は、空き部屋のオーナーに連絡することになります。しかし、これもまた古いマンションだと、名義人が知らないうちに死亡していたり、売却や相続等でオーナー不明になっていたり、ということも多く、スムーズにいかないことも少なくありません。
3-4.オーナーに連絡がつかないなら警察もあり?
最後の手段で警察!と考えるかもしれません。しかし、残念ながらほとんどの場合、解決しません。空き部屋トラブルではないものの、例えば、2021年2月に東京中野区のマンションで30代男性が亡くなる事件がありました。
9日午前10時すぎ、中野区中央のマンションの管理人から、「30代の男性が心肺停止です」と通報がありました。男性(30代)は病院に運ばれましたが、死亡が確認されました。
警視庁は部屋にいた40代の男を傷害の疑いで緊急逮捕し、事件の経緯などを調べています。取り調べに対し男は、「ウイスキーのびんで頭を殴った」と容疑を認めているということです。捜査関係者によりますと、この2人をめぐるトラブルとみられる相談が、以前、警視庁に寄せられていたということです。
引用:
入居者のトラブルが起きていると分かってても、動かない警察の典型例です。民事不介入の原則があり、刑事事件が起きないと、警察は動けないというのが背景にあります。とはいえ、死んでから動いても、もうどうしようもありません。法律上仕方はないのですが。。。ストーカー事件も同じです。被害がないと、本当に何もやってくれません。
残念ですが、このマンションはまさに事故物件となってしまい、オーナーだけでなく、他の入居者も全員この事件の被害や損害を受ける事になってしまいました。事故物件が気持ち悪い人は直ぐに引っ越していくと思います。結局、管理会社や警察がもっと早く対応していればと思うと残念過ぎます。
ちなみに、事故物件となった時の引っ越し代金など、損害賠償請求が出来るのかについて、こちらにまとめました。
3-5.オーナーに連絡がつかないなら弁護士もあり?
オーナーに連絡がつかない、だけど警察は頼りにならない。こんな状況で弁護士を考える人もいるかもしれません。例えば、空き家・空き部屋を不審者が占拠しているようなケースでは弁護士の力が必要かと思います。
しかし、このパターンでは本来、オーナーが弁護士に依頼するべきであり、近隣住民がお金や時間をかけて相談すると言うのは、よほどの状況を除いて現実的でないです。
ちなみに、オーナーが分かっていて、「苦情を言いたいが、空き家のオーナーが認知症など意思疎通ができない」といったケースでは弁護士へ依頼しても良いと思います。
ただし、いきなり個別に弁護士事務所に行くのは、金銭的に不安だと思うので、「●●弁護士会」のような所に相談してみてください。東京弁護士会だと、最初の面談は30以内無料、その後の相談は30分あたり5,000円とのことです。
3-6.オーナーに連絡がつかないときは司法書士もあり?
弁護士より少し身近な存在として司法書士がいます。空き家・空き部屋関連で司法書士が得意とするところは、建物のオーナーが死亡して、固定資産税が未納になっているケースで相続人を探したり、裁判所の許可を受けて売却したりといったことです。
また、近隣住民が「空き家から瓦が落ちて危ない」、「庭から伸びてきた枝が敷地外にはみ出していてケガをした」といったケースでも、司法書士に依頼できます。損害賠償責任訴訟を起こしてもらう(損害額が140万円以内の場合)、訴状を作成してもらうなどです。他にも、迷惑を被っている旨を内容証明で送ってもらうのも良いと思います。
4.空き家・空き部屋放置で起こった事件と判例
空き家・空き部屋に関する事件・判例をまとめました。結論から言うと、本当に放火が多いです。
4ー1.空き家に放火して懲役3年
令和2年2月23日のよる、北九州市戸畑区にある空き家に放火して全焼させた事件です。放火の理由はなんと、生活困窮の鬱憤を晴らす目的でした。なんとも身勝手な動機で憤りを感じますが、生活困窮しているくらいですから、当然賠償等もできないと思います。
オーナーはもちろん、もしもらい火などあったら、自分でなんとかするかないということです。空き家や空き部屋が周りにあるなら自衛してください。
4ー2.空き家に放火して罰金10万円
平成30年9月9日の夜,岡山県津山市の空き家が放火され、全焼した事件です。弁護人が,被告人が侵入や放火した事実はないと主張しました。結果、被告人が親友、放火したと認定できず、罰金10万円となりました。
ちなみにこの空き家は平成5年頃から、火災が発生した平成30年頃までの25年にわたって、定期的に家の中に入って管理する人がいなかったそうです。このように、空き家や空き部屋は犯罪や事件の温床になります。。。
4ー3.3件の放火事件を起こし懲役7年
平成29年4月24日の朝、静岡県袋井市の空き家と隣接しており人が住んでいた住居まで全焼させた事件です。この事件の被告人の動機も、「不快な過去の出来事を思い出して生じたモヤモヤ感を消すため」という身勝手なものでした。
さらにこの被告人は平成30年1月12日の昼頃にはある企業、1月27日午前中に神社で放火と、合計3件の放火事件を起こし、懲役7年に処せられました。人の命こそ奪わなかったものの、常習性があり、非常に迷惑です。
5.空き家・空き部屋に迷惑している近隣住民がした方が良い対策
空き家・空き部屋に関連した問題やトラブル、事件、判例などを紹介してきました。残念ながら、普通の近隣住民ができる対策は少なく、自己防衛するしかないのが現実です。自衛の方法を紹介します。
5ー1.火災保険に入る
日本全国で1日約13件も起きている「放火及び放火の疑い」による火災と、そのもらい火から身を守るには、自分が火災保険に入るしかありません。「4.空き家・空き部屋放置で起こった事件と判例」でも紹介したように、空き家・空き部屋は放火の対象としてよく狙われます。
つまり、あなたの住まいの近所に空き家・空き部屋があれば放火され、もらい火の被害を受ける可能性があるということです。
しかし、もらい火で被害を受けても「失火責任法」により、賠償してもらえません。運良くお金がもらえても見舞金程度。もらい火に備えて火災保険に入るしかないのが日本の現状です。
なお、賃貸では借主はオーナーに対し原状回復義務があるので、たとえ、もらい火であっても原状回復させなければなりません。ですので、火災保険への加入は必須です。
5ー2.管理会社や行政に早めに相談する
空き家や空き部屋の管理状態が悪い、迷惑を被っているということがあれば、一刻も早く管理会社や行政に相談してください。行政に関して特にすぐに動いてくれるといったことは少ないかもしれませんが、「相談した」という事実が、何かあったときに役立ちます。できれば、一個人ではなく、近隣の複数世帯と協力して「地域で訴える」とより効果的です。
とはいえ、管理会社がない・わからない、近隣住民との協力が難しいケースもあるかと思います。そのような場合は、次に紹介する司法書士を利用してみるもの手です。
5ー3.司法書士に内容証明を送ってもらう
火災保険に入った、管理会社や行政に相談した、それでも解決しないなら、司法書士に内容証明を各所に送ってもらってください。オーナー、管理会社、役所の3か所に送ります。キチンと記録を付け、送ることが大切です。手間やお金がかかるのが悔しいですが、何かあってから受ける被害より断然小さいと思います。
これらの対策をしてなお、解決しない、不安やストレスを感じるのであれば、最終的に引っ越しするしかないと考えています、残念ですが。。。
6.空き家・空き部屋に迷惑している近隣住民向け対策まとめ
空き家・空き部屋が原因のトラブルは後を絶ちません。音や匂いがする、知らない人が出入りしているといった内容のほか、もっとも怖いのが放火による、もらい火です。もらい火が恐ろしいのは下記の理由によります。
・日本では「失火責任法」により、火事の原因を起こして延焼させても賠償する義務がない。
・お金をもらえるのは、建物のオーナーが「類焼損害」「失火見舞」「施設賠償責任保険」に加入しているという限られたケースのみ。
・もらい火であっても、賃貸の家や部屋を火事で損傷させたら、原状回復義務を負わなければならない。
火事を含め、住まいのトラブルで気をつけておきたいのは以下の点です。
・警察はことが起こってからしか動けないので、早めに管理会社やオーナーに対策を依頼する。
・後々、事件が起こってしまった場合に備えて、内容証明などで訴えた証拠を残しておく。
・結果、自分の身は自分で守るしかない。
最後に、空き家・空き部屋の近隣住民がした方が良い具体的な対策をまとめました。
・自分で火災保険に入る
・管理会社や行政に早めに相談する
・司法書士に各所に内容証明を送ってもらう
もらい火だけでなく、『引っ越し後に分かった隣人トラブルに関して、不動産会社に告知義務違反などで損害賠償は出来るのか?』、この問いについて、弁護士さんと話ました。先日、空き家トラブルに困っているオーナーさんや賃借人の方を踏まえ、現状や対策についてインタビューを行いました。空き家に困っている方向けですが、困りそうな方も是非見てみて下さい。
ちなみに、騒音については家にいることが多く、
世田谷区の方で実際にあった騒音に関する相談を参考に、
これまで、8年間300件近い住まいのトラブルの相談を受けた中でもさまざまなケースがありました。
ここに記載していない内容で困っている方もいると思います。もし、あなたが現在トラブルに悩まされているのであれば、トラブルが大きくなる前にお近くの専門家に相談することをお勧めいたします。信頼できる先がすぐに見つからない場合、弊社の無料相談にご連絡ください。これまで多くの住まいの問題を解決した経験や知識を活かし、あなたの力になれると思います。ぜひ気軽に無料相談までご連絡ください。
私たちは今後もあなたの大切な人生と平穏が守られますよう、4,600件を超える引っ越しの失敗談を基に住まいの問題解決のトップランナーとして、専門家と協力し、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。念のため、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法をレクチャーしてもらいました。最近流行っているカスタマイズ賃貸についても、こちらにまとめました。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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