目次
賃貸マンションを相続した場合、家賃収入を得ながら保有し続けるか、それとも売却して資金を手に入れるかの判断に迷っている方は意外と多いと思います。
どちらの選択肢にもメリットとデメリットがあり、家族の状況や資産状況に応じ、判断が求められます。
本記事では、相続した賃貸マンションを売却する際のプロセスと、家賃収入を得る際の収益シミュレーションを比較し、それぞれの選択肢について詳しく解説します。
売却する場合の不動産市場の動向や、賃貸運用のために必要な管理費用、さらに税務面での影響なども考慮し、最適な資産活用方法を提案します。
賃貸運用か、売却か、迷った際の判断基準や専門家のアドバイスを活用するためのポイントも紹介します。
ぜひ、ご参考にしてください。
専門家の知識や事例を活かして、ベストな判断ができるように、わかりやすく正確な情報をお届けします!
1.相続した賃貸マンションの選択肢 – 売却か賃貸か?
相続した賃貸マンションは、そのまま賃貸経営を継続するか、売却するかの選択肢があります。
どちらを選ぶべきかは、物件の状況や相続人の事情によって異なりますが、以下の点を考慮しながら慎重に判断することが重要だと思います。
1-1.マンション売却のメリットとデメリット
相続した賃貸マンションを売却するメリットは、現金化できることと、経営・運営の手間から解放されることです。
特に、空室が多いマンションや築年数が経過した物件、大規模修繕が必要な場合、売却による資金回収を検討する価値があると思います。
一方、デメリットとしては、譲渡所得税や売却手数料がかかることが挙げられます。
例えば、相続後の所有期間が5年以内の場合、短期譲渡所得として39.63%の税率が適用されます。
そのため、税金負担が大きくなる点に注意が必要です。
売却時の注意点として、以下の事項を確認しておきましょう。
- 物件所有期間による譲渡所得税の違い
- 相続税の取得費加算の特例の適用条件
- 共有名義の場合、全員の同意が必要
- 収益物件売却に強い不動産仲介会社の選定
1-2.賃貸運用による家賃収入のメリットとリスク
相続した賃貸マンションを継続して運用するメリットは、安定的な家賃収入が長期で見込めることです。
ただし、以下のようなリスクも考慮する必要があります。
- 空室率の上昇による収入減少
- 大規模修繕等の費用負担
- 物件の老朽化による家賃相場の低下
- 賃借人とのトラブル発生
これまでの建物管理の経験から、賃貸経営を続けるべきかどうかを判断するには、
毎月の収支状況と大規模修繕の時期を確認することが重要だと思います。
財務諸表を基に、家賃収入から諸経費を差し引いた収支がプラスであり、修繕積立金が十分にあれば、賃貸経営を続けるという選択肢もありえます。
一方、収支がマイナスで修繕費用の捻出が難しい場合は、マンションの売却を検討する必要が出てきます。
1-3.家族の将来に向けた最適な選択肢
相続した賃貸マンションの活用方法は、相続人の年齢や家族構成、将来設計によっても異なります。
もし、あなたが若い世代であれば、長期的な賃貸経営で資産形成を目指すのも一案です。しかし、高齢の相続人の場合は、管理の手間を考えると売却が望ましいかもしれません。
また、空室の数や各物件の築年数、立地から収益性を見極めることも大切です。
物件の特性を活かした戦略を立てることで、収益性を高めて有利な条件で売却できる可能性があります。
一方、東京の都心部など、賃貸需要が見込める立地であれば、リフォームを行って家賃増額を狙うのも有効的です。
2.家賃収入を得るために必要な準備と注意点
相続した賃貸マンションを売却せず、家賃収入を得る選択肢もあります。
しかし、賃貸経営を続けるためには、いくつかの準備と注意点があることを理解しておく必要があります。
ここでは、賃貸管理に必要な費用と時間、空室リスクや修繕費の負担、そして賃貸運用で得られる収益シミュレーションについて詳しく解説します。
2-1.賃貸管理に必要な費用と時間
賃貸経営を続けるには、物件の管理に一定の費用と時間が必要となります。
具体的には、入居者募集や契約手続き、家賃の回収、建物の点検・修繕、トラブル対応などが挙げられます。
これらの業務を自身で行う場合、時間的な負担が大きくなります。
一方、管理会社に委託する場合は、管理費用が発生しますが、専門的な知識と経験を持つ会社に任せることで、安定的な運営に繋がります。
管理費用の相場は、以下の通りです。
- 募集時の仲介手数料:1ヶ月分の家賃
- 管理報酬:月額家賃の3〜5%程度
- 更新手数料:新賃料の0.5〜1ヶ月分
- 契約事務手数料:5,000〜20,000円程度
これらの費用を踏まえた上で、収支シミュレーションを行い、賃貸経営の採算性を見極めることが重要です。
2-2.空室リスクや修繕費の負担
賃貸経営では、空室が発生すると家賃収入が得られなくなるリスクがあります。
特に、建物の老朽化や周辺の賃貸需要の低下などにより、入居者が集まりにくくなる可能性もあるため注意が必要です。
また、建物の経年劣化に伴い、定期的な修繕や大規模なリフォームが必要になります。
修繕費用は賃貸経営の大きな負担となるため、修繕計画を立てて積立金を準備しておくことが賢明です。
国土交通省の調査によると、マンションの大規模修繕の平均工事金額は以下の通りです。
築年数 | 工事金額(平均) |
---|---|
10〜15年 | 約1,500万円 |
15〜20年 | 約2,000万円 |
20〜25年 | 約2,500万円 |
このような費用負担を考慮し、長期的な視点で賃貸経営の収支バランスを見極める必要があります。
2-3.賃貸運用で得られる収益シミュレーション
賃貸経営の収益性を判断するには、適切な収益シミュレーションが不可欠です。
シミュレーションでは、家賃収入から空室率や管理費、修繕費、税金などの諸経費を差し引いた金額が、実質的な収益となります。
例えば、以下のような前提条件で試算してみましょう。
- 物件価格:5,000万円
- 総戸数:20戸
- 平均月額家賃:8万円
- 想定空室率:10%
- ローン金利:2%、35年返済
この場合の年間収支は以下の通りです。
項目 | 金額(年間) |
---|---|
家賃収入 | 1,920万円 |
空室損失 | ▲192万円 |
管理費等 | ▲384万円 |
ローン返済 | ▲198万円 |
修繕積立金 | ▲192万円 |
税金等 | ▲400万円 |
収支 | 746万円 |
この試算では、家賃収入がローン返済額を上回り、年間746万円の手残りとなっています。
もし、空室率が高まると、ローン返済額が家賃収入を上回る可能性もあり、年間の手残りがマイナスになってしまいます。
このように、物件の条件や借入金の状況により、賃貸経営の収益性は大きく変動します。
そのため、条件を現実的に設定したうえで、慎重に収支シミュレーションを行い、状況に応じた判断を下すことが求められます。
3.マンション売却を選ぶ場合の流れと重要ポイント
相続した賃貸マンションを売却する場合、手続きの流れや不動産市場の見極め方、税務面での注意点などを理解することが重要です。
ここでは、売却を選択する際の具体的なステップと押さえておくべきポイントについて解説します。
3-1.売却手続きのステップと注意点
もし、マンションの売却することを決めたら、まず、共有名義の物件であれば、全員の同意を得ることが必須です。
また、遺産分割方法によっては、売却時だけでなくリフォームや修繕の際にも過半数の同意が求められ、手続きが複雑化する可能性があります。
次に、収益物件の売却実績が豊富な不動産仲介会社に依頼をしましょう。
賃貸経営が目的の不動産は、購入者も投資家です。
そのため、利回りや周辺環境、建物状況を明確に提示し、魅力的な物件としてアピールするためのサポートが得られる仲介会社選びが重要です。
投資用不動産の売却経験が多い不動産仲介会社に依頼するのが個人的にはお勧めです。個人投資家のリストを持っている事が多く、マンションを直接紹介でき、早く・高く売れる可能性が高いからです。
他にも、売却時には、物件所有期間による譲渡所得税の違いにも注意してほしいです。
- 所有期間5年超で長期譲渡所得(税率20.315%)
- 同じく、5年未満で短期譲渡所得(税率39.63%)
ただ、相続の場合、親がマンションを保有していた期間と合わせることが可能なため、譲渡税負担の計算を行い、売却するタイミングを検討してください。
3-2.不動産市場の状況を見極める方法
売却を検討する際は、築年数や立地から収益性を見極めることが重要です。
特に、築古の物件は改修の必要性があり、収益性に影響を与えます。
事例1:築54年、杉並区荻窪の区分マンション
- 物件状況:築50年超で旧耐震基準、老朽化や管理状態に不安あり。
- 戦略:退去時のリフォーム費用の出費を避け、賃借人が住んでいる内に売却。銀行融資がつきにくい中、投資用として高い収益性をアピール。
- 結果:3,500万円で売却に成功。
一方で、インバウンド需要や賃料増収の機会を活かす方法も検討の余地があります。
事例2:築30年、港区南麻布の民泊投資マンション
- 物件状況:港区の利便性が高い立地に位置する築古物件。賃料の約2.5倍となる民泊収入が期待できるインバウンド需要を活用。
- 戦略:表層改修を行い、民泊運営に転用。3年後に収益性を証明した状態で売却。
- 結果:当初予想の1,900万円を上回り、2,800万円で売却に成功。
このように、周辺エリアの需要や観光客の増加により、家賃収入を増やす方法も視野に入れながら、不動産市場の状況を見極めることが大切です。
3-3.売却時の税務面の考慮点と節税対策
相続した不動産を売却する場合、相続税の一部を取得費に加算することで、譲渡所得税を軽減できる特例があります。
ただし、特例の適用には、相続後3年10ヶ月以内に売却する必要があるため、売却を検討している場合は慎重にタイミングを計画する必要があります。
また、確定申告において特例を申請するため、税理士等のアドバイスを得ながら計画的に申告書類を整備することが重要です。
マンション売却を選択する際は、以下の点についても検討してください。
- ローンの残債有無の確認
- 団体信用生命保険の加入状況確認
- 連帯保証人の有無と対応方針
- 相続放棄や限定承認の検討
ここまで書いてきた通り、賃貸経営の継続か売却かの判断は難しい課題です。
そのため、専門家の意見を参考にしながら、収支や市場動向、税務面からも総合的に見極めていくことが肝要です。
4.賃貸運用と売却の比較 – どちらが有利か?
相続したマンションの活用方法として、賃貸経営を継続するか売却するかの選択肢があります。
どちらを選ぶべきかは、物件の収益性やリスク、管理の手間など、様々な要因を総合的に考慮する必要があります。
ここでは、賃貸運用と売却の比較に焦点を当て、判断のポイントを詳しく解説していきます。
4-1.収益性の比較とリスク評価
賃貸経営の収益性を評価する際は、家賃収入から諸経費やローン返済額を差し引いた、毎月の収支を確認することが重要です。
財務諸表をもとに、固定資産税やメンテナンス費用等の詳細な経費一覧を把握し、安定的な家賃収入が見込めるか分析しましょう。
また、築年数が経過した物件は、10~15年サイクルで必要となる大規模修繕の時期と、そのための積立金の有無も確認が必須です。
修繕資金が不足している場合、賃貸経営の費用負担が増える可能性が高くなります。
一方、売却を検討する際は、物件の築年数や修繕状況、周辺の賃貸需要等を総合的に判断する必要があります。
空室が多い、賃料相場が低下しているなど、賃貸経営のリスクが高い場合は、売却による資金回収も選択肢の1つといえます。
賃貸管理の実績が豊富な管理会社や、相続税・譲渡所得税に詳しい税理士等の専門家に相談し、複数の視点から経営の可否を見極めることをおすすめします。
4-2.家賃収入と売却益のシミュレーション
賃貸運用と売却、どちらが有利かを判断するには、将来的な収支見通しを立てることが不可欠です。
家賃収入については、想定入居率や周辺相場をもとに、中長期的な収益をシミュレーションしてください。
もし、ローン残債がある場合には、ローン返済額を差し引き、修繕費用も加味した上で、手元に残る利益を試算します。
売却益については、物件の価値を左右する築年数や立地、設備等を総合的に評価した上で、適正な売却価格を算出することが重要です。
売却時には、譲渡所得税や仲介手数料等の諸費用も発生するため、これらを差し引いた実質的な手取り額を計算に含めてください。
立地や需要次第では、築古でも、リフォームや用途変更により収益性を高められる可能性があります。
4-3.資産管理の手間とリターンのバランス
賃貸経営は、家賃収入を得られる一方で、入居者対応や設備トラブル等、日常的な管理業務が発生します。
自身で管理する場合の手間と、管理会社に委託する場合の費用対効果を見極めることが大切ですです。
労力やストレスに見合った収益が見込めるか、慎重に判断して下さい。個人的には、先ずは賃貸経営を続けてみて、ダメそうだったら、売却に切り替えるくらいでいいと思っています。
一括売却は、多額の現金化が可能である反面、物件所有期間による譲渡所得税の違いや、相続税の取得費加算の特例など、税務面の検討が欠かせません。
売却益をどのように運用・活用するかについても、中長期的な資産形成の視点から、メリットとデメリットを比較検討することが求められます。
昨今のインバウンド需要など、エリアの特性を活かした収益力の向上策を模索することで、資産価値を高める選択肢も生まれます。
5.最終判断に向け、専門家のアドバイスを活用する方法
相続した賃貸マンションの運用方法や売却を検討する際、専門家のアドバイスを適切なタイミングで取り入れることが重要です。
ここでは、不動産会社や税理士との連携方法、相談すべきタイミング、そして信頼できる専門家を見つけるためのポイントについて解説します。
5-1.不動産会社や税理士との連携方法
相続した賃貸マンションの運用や売却を検討する際、不動産会社や税理士と連携することが重要です。
不動産会社は、物件の査定や売却戦略の立案、適切な売却価格の設定などを行います。
繰り返しにはなりますが、仲介会社を選ぶ際は、収益物件の売却実績が豊富な会社を選ぶことで、利回りや周辺環境、建物状況を明確に提示し、購入者にとって魅力的な物件としてアピールするためのサポートが得られます。
一方、税理士は相続税や譲渡所得税の計算、節税対策などについてサポートしてくれます。
例えば、相続した不動産を売却する場合、相続税の一部を取得費に加算することで譲渡所得税を軽減できる特例があります。
先述した通り、この特例の適用には相続後3年10ヶ月以内の売却が条件となるため、慎重に計画する必要があります
不動産会社と税理士が協業している事があるので、相談の際に税理士を紹介してもらい、税理士のアドバイスを得ながら、計画的に申告書類を整備することが高値売却のために重要だと思います。
5-2.賃貸運用や売却の際に相談すべきタイミング
色々な方の感想を聞いてきた中で、相続した賃貸マンションの運用や売却を検討する際、できるだけ早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
特に、以下のようなタイミングで相談することが効果的です。
- 相続税の申告期限(被相続人の死亡後10ヶ月以内)までに、物件の評価額や収益性、売却方法などを検討したい場合
- 賃貸経営を継続するか、売却するかの判断に迷っている場合
- 築年数が古く、大規模修繕が必要な物件を相続した場合
- 空室率が高く、家賃収入が安定しない物件を相続した場合
というのも、早めに専門家に相談することで、適切な運用方法や売却戦略を立てることができます。
また、相続税の申告期限までに売却する場合、譲渡所得税の特例を適用できる可能性があるため、税理士に相談することをおすすめします。
5-3.信頼できる税理士など専門家を見つけるためのポイント
相続した賃貸マンションの運用や売却を検討する際、信頼できる専門家を見つけることが重要です。
以下のようなポイントを参考に、適切な専門家を選びましょう。
- 豊富な実績と経験を持つこと
特に、収益物件の売却や相続税対策の実績が豊富な専門家を選ぶことが重要です。 - 丁寧で分かりやすい説明をしてくれること
専門用語を使わず、分かりやすく説明してくれる専門家を選びましょう。 - 相続人の状況や要望をしっかりと聞いてくれること
相続人の状況や要望を理解し、それに合わせたアドバイスをしてくれる専門家が理想的です。 - 信頼できる評判や口コミがあること
知人や友人からの紹介や、インターネットの口コミサイトなどで、専門家の評判を確認することも大切です。
信頼できる専門家を見つけることで、相続した賃貸マンションの運用や売却に関する不安や疑問を解消し、適切な判断を下すことができます。
6.相続した賃貸マンション、売却するべきかまとめ
ここまで、相続した賃貸マンションの運用方法や売却を検討する際の判断基準や注意点、そして専門家との連携方法などを詳しく解説してきました。
物件の特性を活かした戦略を立てることで、収益性を高めて有利な条件で売却できる可能性や、賃貸需要が見込める立地であればリフォームを行って家賃増額を狙うなどの選択肢もあります。
また、相続した賃貸マンションの活用方法は、物件の状況や相続人の事情を総合的に判断する必要があります。賃貸管理会社や税理士など専門家の意見を参考にしながら、家族にとって最適な選択をすることが重要です。
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