空き家の売却を考えるとき、どこから手をつければいいのか悩むことがあると思います。
長年誰も住んでいない物件だからこそ、リフォームの要否や税金の問題、相続登記など注意すべき点が多々あります。
そこで今回は、空き家の売却をスムーズに進めるための基本ステップや、トラブル回避のポイントを整理し、紹介します。
1. 必要書類の整理方法
空き家を売却する際には、段取りを明確にしながら計画的に進めることが大切です。
ここではまず、売却に必要な書類と情報をどう整理すれば良いのか解説していきます。
これらを押さえておくことで、あとから不備が見つかったり、手続きに時間がかかったりするリスクを抑えられます。
相続した物件や長年放置していた空き家で以前実際にあったのは、昔のこと過ぎて資料が無くなっていたり、法定相続人が複数にわたったりすることがあり、意思決定が複雑化している事がありました。
そのため、最初の段階で徹底的に準備を進めることが肝心です。
1-1.売却に必要な書類とは?
空き家を高く売却するためには、書類面での確認と整理が不可欠です。
必要書類が不足していると、買主から足元を見られ、価格だけでなく、売却活動自体が円滑に進まない事があります。
また、記載内容に誤りがあるまま手続きを進めると、後から修正が必要になりスケジュールが大幅にズレる場合があります。
最悪な場合は、買主から金額を請求される事です。
そこで、以前上手く行った方法から、以下のような書類を揃えておくと安心です。
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- 登記簿謄本
法務局で交付を受けられます。物件の権利関係や面積などの情報を確認する際に必須です。
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- 固定資産税納税通知書
市区町村から毎年送付される書類です。固定資産税や都市計画税を把握するために重要です。
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- 建築確認済証・検査済証
新築や増改築の際に発行される確認書類です。古い物件や増築部分がある建物では特にチェックが必要です。
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- 土地測量図や境界確定図
隣地との境界トラブルを防ぐために役立ちます。古い物件だと境界がはっきりせず、紛争の原因になる場合があります。
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- 耐震診断やリフォーム履歴
耐震診断やリフォームを実施した場合、その記録があると買主の安心感につながります。
書類をそろえる過程で忘れがちな情報としては、管理会社との契約や建物の修繕履歴が挙げられます。
マンションの場合は管理組合の規約や修繕積立金の額を提示することが求められるケースがあります。
また、戸建ての場合も浄化槽や給排水設備の修繕経緯、シロアリ防除施工証明書などの書類があれば、スムーズに話が進みやすいです。
1-2.書類の準備の必要性
僕が担当した空き家の売却事例だと、登記簿以外にも十分な書類を準備していたことで早期に買主が見つかったケースは珍しくないです。
例えば、東京都練馬区で空き家になる実家を売却した例では、売主が築年数をはっきりさせるために古い図面まで用意していたことが功を奏し、買主との交渉がスピーディにまとまりました。
一方で、三重県の方でやったケースでは、必要な書類が見つからず役所や法務局で取り寄せを行い、その分だけ売却活動のスタートが大幅に遅れたケースもあります。
特に、相続したばかりの空き家だと、ご両親が書類をどこにしまっていたのかわからなかったり、相続人同士の共有名義の場合で話し合いが進まなかったりすることがありました。
そのため、まずは権利関係や建物の仕様に関する書類が「あるか」、「ないか」を明確にて、足りない書類は法務局や区役所・市役所で早めに取得することを心がけてください。
1-3.情報を整理する方法
必要書類を保管する際には、ひとまとめのファイルやバインダーを活用すると便利です。
表紙に目次をつけ、何がどこに収められているのかわかるようにしておくと、担当の不動産会社や司法書士とのやり取りがスムーズになります。
また、デジタル化されている書類がある場合も、あわせて印刷しておくと、現場での打ち合わせ時に役立ちます。
1-4.重要書類はまとめておく
さらに、建物の図面や管理費の支払い状況など、売却時に提出を求められやすい資料をまとめておくことも早期売却のカギになります。
買主は不安要素が少ない物件に対して前向きに検討し、高値を出しやすいため、修繕履歴など物件のコンディションを客観的に示せる情報を多く持っておくと有利です。
空き家だからこそ、内覧に来た買主に対してリフォームやリノベーションの具体的なプランを提示しやすいという利点があります。
その一方で、建物の老朽化や設備の劣化が進んでいることも多いため、どの程度の補修やリフォーム歴があるかを明示しておくと信用度が高まります。
実際に売却の契約が近づいてきた際に、不動産会社から提出を求められる書類が増えることがあります。
付帯設備の有無や状況、境界の確認など、最初の段階で整理を怠ると細かなトラブルのもとになります。
特に水回り設備やガス設備などの使用状況については、空き家期間が長いほどわからない点が増えがちです。
最終的に、売主が責任を負う場合もある(契約不適合責任)ため、わからない事項は担当者や専門家に確認したり、調査を依頼したりすると安心です。
1-5.家族で物件を共有している場合
家族で共有している物件の場合、誰がどの書類を管理しているか明確にすることも大切です。
後で揉めない様、全員が納得した上で売却活動に移行するために、権利関係や書類の取り扱いは慎重に進めたいです。
1-6.不明点は専門家に相談を
相続や登記の問題は状況によって異なるため、個々のケースに応じた対応が不可欠です。
そのため、書類の整理を進めながら、不明点や不安点があれば不動産会社や専門家に相談してみてください 。
2.税金や法的手続き
書類や情報を整理したら、次は税金や法的手続きの確認です。
特に、相続した物件や長年放置していた空き家の場合、法定相続人が複数にわたったりすることがあるため、最初の段階で徹底的に準備を進めることが肝心です。
2-1.税金と特例や減税措置
空き家を売却すると、さまざまな税金や法的手続きが関係してきます。
代表的なものとしては以下があります。
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- 譲渡所得税
物件の譲渡による利益に課される税金です。取得費用や譲渡費用などを引いて計算するため、当初の購入時や相続時の状況を詳細に確認しなければなりません。
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- 住民税(譲渡所得に関するもの)
譲渡所得が出た場合には住民税の課税も考慮が必要です。
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- 印紙税
売買契約書などの契約書類を作成する際に発生します。
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- 登録免許税
不動産の名義変更や抵当権抹消などで納付を求められます。
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- 相続税(相続した空き家の場合)
既に相続時に納めたものの評価額に変更があるかどうか、チェックが欠かせません。
これらの税に関して、相続で得た空き家を売却する場合には、特例や減税措置が適用されるケースも存在します。
例えば、譲渡所得の特別控除制度や空き家特例などが話題になることがあるため、税理士や不動産会社に相談しながら進めると安心です。
また、建物が老朽化しており、倒壊の危険性がある空き家として自治体に指定されている場合には、固定資産税や都市計画税の優遇措置がなくなる可能性もあります。
そうした特別なケースでは、売却時の税金の扱いに影響が及ぶことがあるため、役所での確認が欠かせません。
2-2.法的手続きについて
法的手続きは、共有名義の物件を売る際の同意書類や抵当権抹消の手続きなど、多岐にわたります。司法書士に頼むような仕事が多いです。
書類に記載されている名義と実際の所有者情報にズレがないか、登記が古いままの状態になっていないかを司法書士にしっかり確認してもらう事が重要です。
もし、相続登記が未了のままだと、他の相続人との話し合いが難航し、売却自体が進まない恐れがあります。
そうした場合にも、やっぱり司法書士のサポートを得るのが一般的です。
なお、相続登記は2024年4月1日から義務化され、最悪、罰金があります。
2-2-1.事前に把握することが重要
売却後にかかる費用や必要手続きが、どの程度あるのかを事前に把握しておけば、資金計画とスケジュール設定が容易になります。
例えば、印紙税や登録免許税は契約や登記のタイミングで発生する費用です。
契約直前に、慌てて郵便局やコンビニエンスストアで収入印紙を買い求める状況を避けるためにも、必要な分は早めに確保しておくと安心です。
色々と揃えるのが面倒なので、担当者に準備してもらうのも一考です。
2-2-2.物件の状況によっても手続きが変わる?
また、建物を解体して更地にしてから売りに出すのか、リフォームして一定の付加価値をつけて売るのかなどによっても、税金や手続きの内容が変わる可能性があります。
実際、解体費用が売却手続きを完了するまでにどの程度負担となるか、あるいはリフォームした場合にどれくらいの上乗せ価格で売れるのかを試算しておくことで、より具体的なプランが立てやすくなります。
解体を選択した売却事例では、空き家をそのまま残すよりも早期売却に繋がったという声もあります。不動産業者が買いに来るケースが多いです。
しかし、一方で思いのほか解体費用が高くて、利益が圧縮された方もいます。
以上のように、売却準備の基本ステップとして、まず書類や情報を整理し、税金や法的手続きに関する確認を行うことが必要になります。
3.売却活動前の重要な準備ポイント
空き家の売却をスムーズに進めるためには、事前に押さえておきたい要点があります。
事前の段取りをしっかり固めることで、買主との交渉を円滑に進めやすくなり、結果的に納得感の高い取引を実現しやすいです。
特に、長期間放置していた空き家や相続問題が絡むケースでは、不動産会社の選択や契約形態の把握に時間をかける方が、後々のトラブルを防ぎやすいです。
ここでは、不動産会社との契約内容の確認や合意事項について説明し、続いて付帯設備表や手付金に関する具体的な準備方法を解説します。
3-1.不動産会社との契約の種類
空き家を売りに出すと決めたら、信頼できる不動産会社を選ぶことが大きなカギです。
不動産会社によって、実績や得意分野、サポート体制が異なりますので、複数の会社を比較検討したうえで、自分の物件に最も合ったところを探す方が良いと思います。
不動産業界は会社も担当も出入りが激しいので、最初の段階では、口コミや業歴で判断するのが最もシンプルで良いと思います。
また、契約を結ぶ前には、どのような契約形態で進めるのかをしっかり確認する必要があります。
売却の媒介契約には大きく分けて、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の三種類があります。
契約形態 | 特徴 |
---|---|
専属専任媒介契約 | 不動産会社を一社だけに限定して売却を依頼する形態です。
売主自身が見つけた買主と契約する際にも、依頼した不動産会社を通さなければならない点が特徴です。 |
専任媒介契約 | 不動産会社を一社に限定しますが、売主自身が見つけた買主と直接契約することは可能です。
媒介契約期間中に定期的な販売活動報告を受けられるケースが多いです。 |
一般媒介契約 | 複数の不動産会社に売却を依頼できます。
ただし各社の活動を管理する手間が増えることがあります。 |
3-1-1.専属専任、専任媒介契約のメリットとデメリット
専属専任や専任媒介契約を選択すると、不動産会社の営業努力を期待することができます。
しかし、他社に依頼することができないため、売主自身が買主を見つけた場合でも、専属専任だと会社を通さなければならないという制限がある点は注意したいです。
3-1-2.一般媒介契約のメリットとデメリット
一方、一般媒介契約を選ぶと多方面への情報発信が期待できるメリットがありますが、担当者のモチベーションにばらつきが生じたり、物件情報が重複してインターネット上に掲載されたりするリスクもあります。
3-2.不動産会社の選び方
不動産会社を選ぶときには、次のようなポイントをチェックすると安心です。
- 過去の売却実績
同じ地域や物件種別でどれくらいの成約事例があるかを確認します。 - 担当者の対応
丁寧な説明や迅速なレスポンスが期待できるかを面談時に見極めるのが大切です。 - 販売戦略の提案
インターネット掲載やチラシの作成、物件の魅力を引き立てる工夫などを具体的に提示してくれるかを確認します。
契約内容を取り決める際には、仲介手数料や宣伝費などの費用面のほか、売却活動中のこまめな報告や連絡手段についても確認しておいたほうが良いです。
事前に連絡のタイミングや報告の方法(メール、電話、対面など)を決めておけば、予期せぬ不安を抱えずに済みます。
また、リフォームやハウスクリーニングを行う場合の費用負担や進行管理を、どのように行うのかも事前にすり合わせておくことが重要です。
3-3.気を付けなければならないことは?
続いて、空き家を売却する際に、押さえておくべき注意点を解説します。
3-3-1.内覧の手順を確認しておく
空き家だと売主がその場にいないことが多いため、不動産会社に鍵を預けるケースがあります。
その際は、どのように鍵を保管し、内覧予約が入ったときにどのような手順で物件を見せるのかを相談しておくと安心です。
3-3-2.事前の取り決めはより細かく
相続した物件を売る場合は、依頼者自身が現地に行くのが難しいこともあるため、より細かく取り決めをしておくとトラブルを防ぎやすいです。
青森でやった事例では、売主が高齢で頻繁に現地に行けないため、代理人として売主の娘さんが不動産会社とやり取りしたケースがあります。
そのときは郵送やオンラインミーティングなどを活用し、必要書類の準備を進めました。
こうした工夫を不動産会社に提案してもらうためにも、契約内容や連絡手段の検討は綿密に行いたいです。
3-3-3.疑問があったら遠慮なく担当者に相談
契約書の中には、細かな注意事項や定めが入っている場合があります。
後から「聞いていなかった」とならないよう、疑問点や不明点は遠慮なく相談して解決すると安心です。
3-3-4.口頭での取り決めは避ける
また、個人的に、契約内容に反する行為や、買主との折衝内容が曖昧なまま進むことがないよう、すべてを文字に落とし込んだ形で確認することをお勧めします。
電話とかで、言った言わないの議論をあとからやるのは本当に面倒です。
3-3-5.オプション費用を事前に合意していた事例
参考として、板橋区王子エリアの売却事例では、通常の契約に加えて物件内の家具処分をオプションとして依頼されました(https://atliving.net/topic/case/sell-ouji-2/)。
そうしたオプション費用の負担区分についても契約段階で合意しておくと、円滑に売却活動を進められます。
契約形態やサービス内容に納得したうえで、不動産会社と信頼関係を築くことが、空き家売却の成功に直結しやすいです。
3-4.付帯設備表とは?
空き家を売却するときには、どの設備や家具類が付帯するのかを明確にしておく必要があります。
そこで作成されるのが付帯設備表と呼ばれる書類です。
給湯器やエアコン、照明、カーテンレール、浴室乾燥機など、物件に備え付けられている設備で買主に引き渡すものをリストアップして示します。
使えると思っていた設備が実際には故障していた、あるいは不要だと思って外してしまったなどのトラブルが起きないよう、売り手と買い手の間で事前に合意を得るのが目的です。
特に長く使っていなかった空き家の場合、設備が動作するかどうかを確認していないケースが多いです。
例えば、エアコンが故障していたり、給湯器が著しく劣化していたりすることがあります。
一方で、取り外すには費用がかかるため、「使えるならそのまま残してほしい」と考える買主もいます。
ただ、個人的には、使えるのか不明なケースが多い為、トラブルにならないよう残置物として扱い、買主の責任と負担で対応するとしてしまう事が多いです。
3-4-1.付帯設備表を作成する際の注意点
こうしたやりとりをスムーズにするためにも、付帯設備表を作成するときには以下の点を押さえたいです。
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- 設備の動作確認を事前に行う
全自動洗濯機や換気扇などもチェックしてみてください。
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- 撤去するか残すかを明確にする
特に古いエアコンやガスレンジなどは判断に迷いやすい設備です。
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- 隠れた欠陥の有無を報告する
設備トラブルは契約後のクレーム対象になりやすいです。
3-4-2.付帯設備によるアピール
付帯設備表は、売買契約時に買主との間で取り交わされる重要書類です。
付帯設備によるメリットをしっかりアピールすれば、物件の魅力が高まることもあります。
例えば、すでに設置されているエアコンがまだ新しく、省エネ性能が高いといったポイントは買主にとっての購買意欲に結びつきやすいです。
一方で、使い物にならない古い家具や家電製品が放置されていると、内覧時の印象が下がる可能性があります。
そうした場合は処分してしまうか、必要に応じて業者に回収してもらうことも検討する必要があります。
2024年に板橋で売却した区分マンションの事例ですが、20万円掛け、室内の設備を撤去しました。
それでも、売主的には一年以上、売れなかった物件が、高く売れたので非常に喜んで頂きました。
3-5.手付金について
次に手付金についてです。
物件の売買契約を結ぶとき、買主から売主へ支払われる手付金は、契約の証拠金としての意味合いがあります。
一般的には、売買金額の一部(概ね物件価格の一割以下の場合が多い)として設定されることが多いですが、地域や物件によって慣習が異なることがあります。
仮に手付金を受け取った後で契約を解除すると、相手方に手付金を倍返ししたり放棄したりすることが法律で定められています。
3-5-1.トラブル無く扱うには?
手付金をトラブルなく扱うためには、契約書に手付金の額と支払い条件、解除に関わる条項などをしっかり明記する必要があります。
実際、空き家売却の事例として、千葉県松戸で売却を検討していた事例では、買主が比較的高額な手付金を設定したケースもありました。
その結果として、売主の本気度は高まり早めに契約が進みましたが、もし売主都合のキャンセルとなった場合には、違約金として手付金を放棄するリスクも大きくなります。
このように、手付金は取引の安全性と引き換えにリスクを背負う側面もあり、金額の設定には慎重な検討が必要です。
不動産会社や司法書士とも連携しながら、相場や一般的な慣行を踏まえて決定するとより安心です。
3-5-2.受け取り方法も事前にすり合わせを
手付金を現金で受け取るか、振り込みにするかについても事前に取り決めておいたほうが混乱を避けられます。
近年は振り込みや電子決済システムを活用するケースも増えているため、自身の都合に合う方法を検討してください。
3-6.発生するお金の取り扱い方
さらに、売却価格や手付金の取り扱いに関しては、税金面の影響も無視できません。
譲渡所得が生じる場合や、相続後の空き家に適用される優遇措置を利用できるかどうかで、最終的に手元に残る金額が変わってくることがあります。
税理士に相談しながら、手付金の設定や入金タイミングを考慮するのも一つの方法です。
これらを総合的に踏まえたうえで、売却活動前の段階で付帯設備表と手付金の扱いを具体的にイメージしておくと、売買契約時に戸惑わずに済みます。
契約直前になって「エアコンは取り外すべきだったか」「家具を残す約束をしていなかったか」などと混乱することがないよう、売却活動開始の前段階で不動産会社の担当者と方針を固めておく方が良いと思います。
4.契約から引き渡しまでの具体的な手順
空き家の売却においては、売買契約の締結から決済、そして物件引き渡しの段階までが大きな山場です。
ここまで準備してきた書類や不動産会社との合意事項をどのように活かし、契約時のトラブルを回避するかがポイントになります。
ここでは契約を結ぶタイミングでどのような書類を用意し、何を確認すればいいのかを整理し、決済当日の具体的な流れや注意点を解説します。
4-1.売買契約の締結とその内容
空き家の売却において、売主と買主の間で合意が成立すると売買契約を交わします。
この契約書は、不動産会社の担当者が作成するケースが多いですが、売主自身も内容をしっかり把握しておくことが大切です。
契約書にサインしてしまうと、後から修正するのに手間がかかったり、相手方の了承が得られずにトラブルになるリスクが生じます。
したがって、契約書を受け取ったら必ず全部のページを読み込み、疑問点を洗い出しておくことを強く推奨します。
特に、特約のページはよく読んでください。
4-2.売買契約書の内容
売買契約書に盛り込まれる主な項目は以下の通りです。
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- 物件の表示
登記簿上の地番や家屋番号、面積のほか、建物の構造などが明記されます。
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- 売買代金
代金の総額と支払い条件(手付金、中間金、残代金)が設定されます。
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- 引き渡し時期
具体的な日付や条件付きの物件であれば条件が示されます。
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- 契約解除に関する事項
手付金の放棄や倍返しなど、解除時の扱いがここで定められます。
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- 付帯設備表や物件状況確認書
設備や境界、修繕履歴など、物件に関する重要情報が含まれます。
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- 特記事項
融資特約や瑕疵担保責任(契約不適合責任)の範囲など、補足説明が必要な項目が載る場合があります。
4-3.契約前に絶対に確認すべきポイント
契約書にサインをする前に必ず確認したいポイントとして、以下の点が挙げられます。
- 売買代金と支払いスケジュール
いくらの手付金をいつ受け取り、残りの金額をいつ支払うのかを明確にしておきます。買主が住宅ローンを利用する場合は、融資承認が得られる時期と支払いタイミングをリンクさせることが多いです。 - 引き渡し条件と物件の現状
空き家の場合は設備が故障していないか、不要な家具が残っていないかを明確にします。契約書の特記事項に「現状有姿で引き渡す」と書かれるケースもありますが、どこまでが含まれるのかは売買双方で合意を得ておく必要があります。 - 契約不適合責任の期間と範囲
売主にとっては、後から出てきた不具合に責任を負う期間がどれだけ設定されているかが重要な論点です。空き家であれば、建物を長期にわたって使用していないぶん気づけていない不具合がある可能性があります。 - 契約解除に関する特約
手付解除やローン特約の有無を確認します。買主のローン審査が通らなかった場合など、どのように契約を解消するのかを事前に把握しておけば、いざというときに慌てずに済みます。
空き家の売買では、買主が内覧時に十分な時間を取れないことや、リフォームを前提としている場合が多いことから、「現況での引き渡し」を条件に契約するケースがよく見られます。
ただし、現況引き渡しだからといって売主が何も責任を負わないわけではないため、契約書の特約事項として細かく調整することが求められます。
特に屋根の雨漏りやシロアリ被害などの重大な欠陥に関しては、売主が把握しているかどうかで責任の範囲が変わってきます。
知らなかった欠陥なら免責になる場合もあります。
しかし、知っていたのに告知していなかった場合は、損害賠償を求められるリスクがあるため注意が必要です。
4-4.重要事項説明とは?
契約時には同時に重要事項説明を受けることが一般的です。
重要事項説明とは、不動産会社が宅地建物取引業法に基づき、宅地建物取引士の資格を持つ人が買主や売主に対して、物件や取引条件を口頭で説明する手続きのことを指します。
重要事項説明の内容は、契約書に書かれていることと重なる部分も多いですが、法律や条例に関する説明なども含まれているため、念入りに確認するのがおすすめです。
特に空き家の場合は、使用していない設備や建物の老朽化リスクなどが重要事項に含まれているかチェックしておきたいです。
重要事項説明に不備があると、後から損害賠償を請求される可能性もあるため、売主にとっても他人事ではありません。
不動産会社が説明を行う際には、疑問点があればその場で質問し、一つ一つクリアにする方が良いと思います。
4-5.決済当日の流れ
決済日は、空き家売却の最終段階としてとても重要です。
契約時に設定された決済日に、売主と買主、そして場合によっては不動産会社の担当者や司法書士が集まり、一連の手続きが完了します。
ここでのポイントは、トラブルなく残代金を受け取り、物件の鍵や関連書類を買主に引き渡すことです。
決済当日は短時間で複数の手続きや確認作業が行われるため、どのような順序で進むかを把握しておくと安心です。
人によっては初めての経験になるため、事前にしっかり段取りを確認し、必要な書類や印鑑を確実に持参するよう準備が欠かせません。
実際の流れを踏まえながら、必要な書類や注意点を整理します。
決済当日には、通常以下のようなステップを踏むことが多いです。
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- 売主・買主・司法書士・不動産会社担当者が金融機関などに集合
決済場所としては銀行の応接室や不動産会社の会議室などが選ばれやすいです。
買主が住宅ローンを利用する場合は、ローンを借り入れる金融機関で手続きを行うことも一般的です。
また、売主自身が遠方に住んでいるなどの事情がある場合は、事前に代理人を立てるといった対応が必要になることがあります。
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- 最終確認と登記関係手続きの準備
司法書士が登記申請に必要な書類を確認し、名義変更や抵当権抹消の内容を最終チェックします。
空き家の場合、すでに抵当権が外れているケースもありますが、過去にローンを組んでいた痕跡が残っていないかを念のため確認すると安心です。
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- 残代金と諸費用の支払い
買主が融資を受ける際は、ローン会社から残代金を支払うための振り込みが行われます。
売主は入金を確認し、同時に仲介手数料などを不動産会社へ支払う場合もあります。
振り込みと現金の授受を併用するケースもありますが、大金を持ち運ぶリスクを避ける意味で振り込み対応が主流です。
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- 必要書類の受け渡しと署名捺印
事前に確認した売買契約書や付帯設備表の最終版を用意し、登記申請に必要な委任状などに署名捺印します。
住民票や印鑑証明書、登記済証(登記識別情報)などを忘れずに持参することが重要です。
古い登記済証しか手元にない場合や相続登記手続きが完了していない場合などは、司法書士に相談したうえでどの書類が必要になるかを事前に確認しておきましょう。
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- 鍵や物件関連資料の引き渡し
鍵を渡すのは実質的に物件を引き渡したことを意味するので、残代金が入金されているかを確認してから渡すことが通常の流れです。
空き家は長期間放置されていることが多く、スペアキーが複数あるケースがあります。
スペアキーも含めてすべて揃えておくのが好ましいです。
また、付帯設備の取り扱い説明書や保証書、リフォーム記録の書類などがあれば一緒に渡すと買主に喜ばれます。
以上がおおまかな決済当日の流れです。
5.決済に際して注意すべきポイント
ここからは、決済時、特に注意しておきたい項目をさらに詳しく見ていきます。
5-1.残代金の着金は必ず目視で確認を
まず、残代金の受け取りに関しては、振り込みの場合でも必ず売主の口座に着金していることを目視で確認することが基本です。
金額が記帳された通帳をキチンと確認して下さい
入金確認のタイミングが不透明だと、権利証や鍵を渡したのにお金が入ってこないというリスクがあります。
近年はインターネットバンキングやATMで即時に確認できる方法が普及しており、比較的スムーズに着金をチェックできます。
しかし、大きな金額の取引の場合は金融機関の営業時間やシステム障害の可能性も考慮する必要があります。
念のため、紙の振込明細書やオンラインの振込完了画面など、証拠となるものを見せてもらうケースも見受けられます。
5-2.登記手続きの段取りを把握
次に、司法書士による登記手続きの段取りを把握しておくと、トラブルを防ぎやすいです。
空き家は、長期間にわたり名義が変わっていない状態で保有されているケースや、相続登記がされていなかった物件などもあるため、手続きが複雑になることがあります。
その場合は、事前に必要書類の再発行を依頼したり、共有者全員の実印や印鑑証明を用意したりしなくてはいけないことがあるため注意が必要です。
決済の場で登記申請を行ったら、すぐに登記情報が変更されるわけではなく、法務局が受理してから完了まで数日を要するケースがあります。
登記完了後に司法書士が登記識別情報を取得し、買主へ渡す流れが一般的です。
ここで登記の不備が見つかると、手続きが滞り引き渡しの時期がずれたりする可能性があるため、早め早めに書類を整えることが肝心です。
この辺りは決済日が決まったら、司法書士と事前に確認し、進めて下さい。
5-3.公共料金や管理費の精算
空き家ならではの注意点として、公共料金や管理費の精算が挙げられます。
戸建てであれば、水道光熱費が滞納されている状態だったり、マンションや管理組合に加入している物件であれば、管理費や修繕積立金が滞納されているケースもあり得ます。
決済当日に、日割り計算で精算することが多いですが、契約上の取り決めによっては翌月以降にまとめて清算となる場合もあるため、事前に不動産会社へ確認すると安心です。
特に、マンションでは管理費等を長期未納のままにしておくと、買主が管理組合との間でトラブルになる可能性があります。
売り手が残りの滞納分を支払うのか、決済日を境に買主が負担するのかなどは、契約書の特約や、口頭での合意の有無によって変わってくるため注意が必要です。
5-4.鍵交換の費用負担者を決めておく
また、鍵の引き渡しに関しては、昔の鍵が大量に残っている場合や、近所の人に合鍵を預けていたというケースがあります。
鍵が外部に存在しているのを見落としていると、買主がその後安全面で不安を抱く可能性があります。
不安を取り除くために、新しい鍵への交換を買主が行うことが多いですが、あらかじめ話し合って費用をどちらが負担するかを決めておくとスムーズです。
防犯面を重視する買主であれば、玄関だけでなく窓や勝手口の鍵交換も視野に入れて検討することがあります。
売主としては、古い空き家なら使用していないドアや倉庫の鍵なども含め、すべての情報を伝える方がいいと思います。
5-5.最終確認をしっかり行う
さらに、決済前の最終内覧(最終確認)を実施する場合もあります。
買主が実際に物件を訪れ、契約通りの設備が残っているかや、想定外の不具合が生じていないかなどをチェックする機会です。
空き家の場合、長期間放置されているうちに雨漏りが悪化したり、害虫被害が進んだりする恐れがあるため、最終確認をしっかり行うのが理想的です。
もし決済直前に重大な不備が発覚すると、契約を延期したり修繕費用をどう負担するかで揉めたりする可能性があります。
内覧の日時は売主、買主、不動産会社の都合をすり合わせて設定されるので、スケジュールを余裕を持って調整するとスムーズです。
6.空き家の売却準備まとめ
今回は、空き家の売却を成功させるために押さえておきたい準備や手続きについて解説してきました。
必要書類の整理や税金、法的手続きの確認はもちろん、不動産会社との適切な契約や買主への誠実な対応が、スムーズな売却において重要なポイントであることがお分かりいただけたかと思います。
特に、相続した物件の場合、権利関係の明確化や登記の確認が早期に求められます。売主に成りすます地面師の話などあり、最近この辺りがとても細かく言われるケースが多いです。
また、物件の魅力を正しく伝えつつ、設備の状態や老朽化についても買主と共有することで、信頼関係を築きやすくなります。
不動産会社や専門家と連携しながら、焦らず計画的に進めることが成功への近道です。
この記事を参考に、空き家の売却準備を進める際の一助となれば幸いです。
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