(株)リビングインでマンションのテナント・賃貸管理を中心に行っている宅地建物取引士兼防犯設備士の相樂です。アルコープやアールコープ、聞き慣れない言葉かもしれません。
昔はマンションにアルコープがないのが当たり前でした。例えば、こんな感じです。最近、デザイナーズやちょっとした分譲マンションを中心にアールコープ付きのお部屋や物件が増えてきました。そこで本記事では、いつも設計を見てもらっている一級建築士の先生と一緒に、アールコープの特徴やメリット・デメリット、使い方などを一人暮らしや家族向けに解説します。
1.アールコープとは
アルコープ(アールコープ、アルコーブ)とは、一般的に「マンションにおいて、共用廊下から各住戸の玄関前部分までの空間のこと」を言います。(本来の意味とは多少異なるものの)玄関ポーチと言うこともあります。アルコープ自体の説明はこちらに写真付きでまとめています。
一般的には、アルコープは廊下からくぼんだ形で玄関ドアが設置されます。アルコープの空間の広さはマンションにより異なりますが、1畳ほどであることが多いです。アルコープがあることで共用廊下から玄関ドアまでの間に距離ができるため、玄関ドアを開け閉めする際に、
・お部屋の中が丸見えにならないので、プライバシーが守られる(具体例・写真を追加しました)
・玄関ドアが共用廊下部分にはみ出さないので、事故や通行人の邪魔にならない
といったメリットがあります。
しかし、近年では多くの方がプライバシーを重んじるようになってきたため、アルコープを設置するマンションが増えてきています。ただ、アルコープは、厳密には各住戸の専有部分ではありません。そのため、アールコープ内に私有物を置いてよいかどうかはマンションにより異なります。
もし、私有物を置くことができるマンションであれば、通勤用の自転車を置く、ガーデニングを楽しむ、ベビーカーを置くといった使い方ができます。
間取り図をご覧になったことがある方は、この「アルコープ(アルコーブとも言います)」や「サービスバルコニー」という表記をご覧になった方もいらっしゃると思います。今回は若干の意味合いの違いも説明したいと思います。
2.アールコープのメリット・デメリット
アールコープのメリット・デメリットについて、前述の内容を含めて改めて詳しく解説しました。
2−1.アールコープのメリット
・お部屋の中が丸見えにならない
・プライバシーが守られる
・廊下で通行人の邪魔にならず、事故等も起こりにくい
・スペースに余裕があり、高級感が生まれる
・玄関のくぼみにより凹凸のある外観でオシャレに見える
このようにアールコープのあるマンションのメリットは主に「プライバシー」と「見栄え」の2点です。
2−2.アールコープのデメリット
・共有部分なので、勝手に物を置いたりできない
・アールコープのスペースを取っている分、お部屋が狭くなる、割高になるといったことがある
偏見が入っているかもしれませんが、アールコープが設置されるマンションは基本的にしっかりとした設計や管理が行き届いた、新築もしくは築浅の物件が多いので、家賃に関して大きな差は出ません。
3.アールコープの使い方
建築士:アールコープの使い方に関しては、まず『管理規約』管理規約を確認してください。アールコープはマンションのエントランスや廊下などと同じく、共用部であり、基本的には私有物を置くなどの専有は認められていません。しかし、マンションによっては規約上問題がなかったり、『専用使用権』として管理組合で一部専有が認められていたりするケースがあります。
もし、検討しているマンションがアールコープ付きの場合には、荷物を置いていいのか等シッカリと担当に確認して下さい。「アルコープ、濡れた荷物置ける!」と思って、借りた場合、実際には「傘や荷物は玄関の外に置かないでください」と言われると、考えていたのと異なるとなりますので。
本項では、規約上、常識の範囲で一部私物を置いても問題のないマンションと仮定して、アールコープの使い方を家族向け、単身者向けそれぞれについて解説します。
3−1.家族向け賃貸用分譲マンションの場合
長く都心のマンションを扱っていますが、特に家族向けの賃貸用分譲マンションでアールコープが付いているケースが増えてきました。プライバシーへの意識が高まったことに加え、その利便性で注目や人気が高まっている証拠です。家族向けのマンションのアールコープでは、以下の物を置いてスペースを有効活用しています。
・ベビーカー
・幼児用の三輪車、ストライダー(キックバイク)
・自転車
・傘立て
・ボールなどのおもちゃ
・プランターや鉢植え
主に子供向けの道具や外遊びグッズの置き場所として活用されています。
3−2.単身者向け賃貸マンションの場合
単身者向けの賃貸マンションでは、急激とまではいかないものの新築や高級マンションを中心に以前よりはアルコールを採用している物が増えてきています。
・傘立て
・プランターや鉢植え
・自転車、スポーツバイク
自転車やスポーツバイクについては、アルコープが広めの場合に限りますが、自宅の前に置ける安心感があります。唯一、アルコープの一部専有で気をつけなければならないことは、物を置きすぎないということです。特に何かあった時の避難、安全面を考えると、自身はもちろんマンション住民の命に関わるので、節度を持って利用してください。
また、廊下にはみ出す汚れた物や匂いの酷いもの(たとえ植物であっても)などは、近隣住民とのトラブルの元になるので、その辺りも十分な注意が必要です。さらに、オートロックのマンションであっても、高価な物は室内に置かないようにしてください。
3−3.掃除をする際の注意点
アルコーブの清掃に関しては共用部と定められているマンションが多いため、基本的には管理人さんや業者にしてもらうようになります。ですので、玄関をオシャレに飾って個性を出すことはいいですが、管理規約に触れないようにすることが大切です。
また、清掃の際にも邪魔だと判断されると、一切物を置けなくなるという措置を取ったマンションも実際にありますので、あくまでも“みんなが使う場所”という意識を持って、アルコープを利用するようにしてください。
ワンポイントアドバイスですが、アルコーブ内にどうしても気になる汚れがあって磨きたいと思った場合でも、管理人さんや業者に任せることをお勧めします。というのも、自ら良かれと思ってブラシで床を擦ったことにより、自分や他の住戸の玄関ドアに水や洗剤が付いて錆が発生して思わぬトラブルに発展したことが過去にありました。
4.サービスバルコニーとの違いは?
最後に、「サービスバルコニー」と混合しやすい方が多いので触れておきます。これはなんだと思いますか?小さめのバルコニーのことです。よく取り入れられているのが、キッチン横に小さめのサービスバルコニーが設置されていると、臭いのある生ごみやペットボトル、缶、瓶などを仕分けして、収集日まで保管できるというメリットがあります。
特に、新築マンションを購入する際、モデルルームを見る以外は間取り図から生活をイメージする必要があり、資源物の置き場所まで考えていなかったという方も少なくありません。可燃ごみの置き場所はどうするのか?資源物の置き場所はどうするのか?ということを考えることが失敗しない物件選びにも繋がります。
最後は、注意点を並べてしまいましたが、使い方次第ではより快適、オシャレで、楽しい空間を作れるのもアルコープの魅力です。念のため、アルコープの単語自体の説明はこちら。その他、男性を中心に読んでもらっている記事、20,30代の内に実践してほしい、お引っ越しをきっかけに効率よく成長できる部屋選びとライススタイルはこちら。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して、結果と原因のみ、記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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