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六本木の不動産屋、株式会社リビングインの住宅ローンアドバイザー兼宅地建物取引士の馬場です。
今回も任意売却取扱主任者兼宅地建物取引士の大和田と共に、マンションの管理費や修繕積立金を滞納したら、どうなるか?そして、滞納を回避する方法について、対策をまとめました。
現在、自分の住んでいるマンションで理事をしていますが、毎月、管理費や修繕積立金を滞納する方がいます。管理会社が弁護士に依頼し、内容証明を送ったり、現地訪問をすることでこれまでは回収できていますが、今回は現在の傾向をデータでも見てみます。
ちなみに、区分所有法59条 競売では『区分所有者が義務違反者である場合、行為の停止等の請求や使用禁止によっては効き目がないという場合には、最も強力な手段として、区分所有権の競売請求』が認められています。
というのも、先日、都内の高層マンションにお住まいの50代後半のご夫婦が相談に来店されました。他の方同様、長引く自粛や海外との取引が滞り、旦那様の勤務先の業績が思わしくない。
ニュースでもよく聞くようなボーナスが大幅にカットされ、毎月の給与も数%減少。高校に行く子供の受験勉強代。さらに、築30年を迎え、管理組合からの連絡があり、大規模修繕が必要になったマンションの管理費や修繕積立金が4月から上がる。あと、15年程度残っている住宅ローンと合わせると、苦しく、今後、とても払っていける状態では無くなってしまったようです。
購入当初は予想も出来なかった管理費や修繕積立金の支払いに苦しむお客様は結構います。しかし、管理費などを滞納を続けていると、差押えを受け、最終的には物件が競売にかけられ、住む家を失ってしまうことも。
そんな結末を避けるため、支払いを滞納する前にやるべきことをお伝えします。ぜひ最後まで読み、大切な自宅に住み続けられるようなるべく早く行動して下さい。
1.マンション管理費・修繕積立金で困っている方は多い
そもそもマンションの管理費や修繕積立金に関するトラブルは、全国でどの程度発生しているのでしょうか?その割合や問題点を具体的に考えていきます。
1−1.マンション管理費の滞納は全体の約25%
引用:「マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状(平成30年度)」3.管理組合の運営等(国土交通省)
まず、マンションの管理費を滞納するトラブルの割合から説明します。国土交通省が発表している「マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状(平成30年度)」によると、直近で管理費の滞納が発生しているマンションの割合は、全体の24.6%でした。
前回調査である平成25年度の滞納率は36.1%だったので、5年の間に10%程度の改善が見られます。しかし、4棟に1棟が管理費トラブルを抱えている状況は正常とは言い難いです。
1−2.マンション修繕積立金額は増加傾向
引用:「マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状(平成30年度)」2.マンション管理の状況(国土交通省)
次に、マンションの修繕積立金額は年々上昇傾向にあります。平成30年度の修繕積立金の平均額は、月11,243円(1戸当たり)。それ以前の調査結果と比較して、ゆるやかに上昇しています。
修繕積立金の未払いによるトラブルが発生しているのはこうした負担の増加も影響していると考えられます。このままでは、マンション一棟としての経営が難しく、大規模修繕だけでなく、日々の修繕も出来なくなる可能性が高くなります。
多くの人が、マンションを購入又は借りる時にその見た目や室内のデザインに拘ります。しかし、あなたが10年、20年とその部屋に住む気で購入する場合、中古のマンションでは年次報告書内の修繕積立金は絶対に確認しないといけない数値です。
※銀行の担当者も築年が古く、リノベーションで飾っているマンションに関してはこの辺りは本当に要注意と話しています。
1−3.管理費・修繕積立金の未払いは、建て替えに大きく影響
これまでの相談から『住宅ローン契約者の収入が大きく減少した場合、住宅ローンよりも先にマンション管理費や修繕積立金の支払いが滞る』ケースが殆どです。「管理組合に何か言われてから支払おう・・・。」と、住宅ローンよりも気が緩みやすいのが原因だと思います。
しかし、管理費等の滞納額が大きくなると、マンション管理が行き届かなくなったり、大規模修繕や建て替えのスケジュールが遅れたりと、将来大きなトラブルにつながります。
さらに、管理費等の未払いに対して、区分所有法第59条 競売が適用され、差押えや訴訟を起こされ、最終的に自宅を失う可能性もあります。
「安易な気持ちで管理費を滞納したら、住む家がなくなった」という事態が起こってはなりません。次の章では滞納が発生したあとの流れを詳しく説明しましょう。
2.マンション管理費・修繕積立金を滞納したらどうなるか?
もしマンションの管理費や修繕積立金を滞納した場合、どのような出来事が起こるか?その流れは次の通りです。
2−1.マンション管理組合の理事会・総会で報告
マンションの管理費等を滞納すると、名指しでマンションの管理組合の理事会で報告されます。理事会にはもちろん住民が参加しているので、この時点であなたの滞納がマンション中に知れ渡ります。
場合によっては理事会に呼び出され、滞納の件について言及されたり、年1回ある管理組合の総会でも取り上げられたりします。近隣住民と関わる際にも気まずい思いをすると思います。もちろん、カゲグチを叩かれている可能性も十分にあります。
2−2.遅延損害金が発生する
マンションの管理費等を滞納すると、住宅ローンやクレジットカード支払いの滞納と同様に、「遅延損害金」というペナルティが発生します。
遅延損害金の割合は、一般的には14%程度。マンションごとに管理組合規定で定められていますので、あなたのマンションでは何%なのか、いち早く確認して下さい。この遅延損害金は延滞する期間や金額が増加するほど大きな負担となります。その為、なるべく早く滞納を解消するのが得策です。
2−3.訴訟・競売等の法的措置も
マンション管理費等の滞納に対しては、区分所有法第59条にて「区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる」と定められています。
つまり、滞納が高額になるほど、マンション管理組合から訴訟を起こされ、あなたのマンションが競売にかけられる可能性が高まるのです。このような事態に陥らないよう、早めに管理組合に連絡し、住宅ローン支払いと合わせて支払い計画を見直すことが大切です。
3.マンション管理費や住宅ローンが支払えないときの手段
マンション管理費や修繕積立金が支払えないということは、同時に住宅ローン支払いも滞っている可能性が高いです。この場合、まず住宅ローンの滞納を防ぐため、改善を図ってください。
これまで説明してきましたが、住宅ローンの負担を軽減する基本的な方法として、次の3つが挙げられます。
3−1.住宅ローンの「リスケジュール」
住宅ローンのリスケジュールとはローンの返済計画を見直すことです。返済期間が長くなり、返済総額は増えます。しかし、毎月の返済額が大きく減り、普段の生活を取り戻すことが容易になります。具体的には、次の2つの方法があります。
・借入期間の延長
(例)借入期間が残り10年の住宅ローンを、5年間延長する
・元本支払いの延長
(例)直近の支払いは利息のみとし、元本の支払いは3年後まで延長する
住宅ローンは本来、返済期間を変更することは認めていません。しかし、どうしても支払いが苦しい場合は交渉可能です。詳しくはこちらの記事をご確認ください。
3−2.住宅ローン金利を下げる
ご存知の通り、住宅ローン金利は高ければ高いほど、利息負担が借主に重くのしかかります。一度契約した住宅ローンの固定金利は基本的に変更できません。しかし、他の金融機関にローンを借り換えることで金利を大きく下げることが可能です。
例えば、固定金利が年4%のローンを契約していた方が年2%の金融機関に変更した場合、その利息負担は単純計算でも半分に抑えられます。住宅ローンの借り換え方法等はこちらの記事で詳しく説明しております。
3−3.住宅ローン以外の負担を減少させる
現在、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の特則、通称「コロナ特例」が施行されています。
これは、コロナ禍での借金苦や経済的な補填のため、2020年2日〜10月30日までに新たな借り入れを起こした方に対して、住宅ローン以外の借り入れを整理できる制度です。
住宅ローン以外の負担が軽減できれば、住宅ローンの支払いを正常化させ、管理費等の支払いも再開できる可能性が高まります。詳しくはこちらのパンフレットでご確認ください。
4.マンションの管理費が払えないなら、最終手段は「任意売却」
ここまでに紹介した手段を講じても、住宅ローンや管理費等の支払いが依然厳しい場合、住み続ける任意売却を検討してみて下さい。
任意売却とは、住宅ローンを借りている金融機関に合意を得た上で、あなたのマンションを売却する方法です。稀に、「どうせマンションを失うなら、競売にかかるまで待っている方がマシだ!」と思う方もいるかもしれません。
しかし、競売と任意売却には大きな違いがあります。
任意売却であれば、競売とは違って市場価格で売買できる、強制的に退去させられることがない等のメリットがあります。任意売却に関する詳しくメリットやデメリットはこちらの記事を参考になさって下さい。マンション管理費や修繕積立金が払えないなら、競売にかけられる前に任意売却を成立させるのが得策です。その理由は主に2つあります。
4−1.市場価格で売買でき、滞納した管理費も精算できる可能性がある
4-1-1.売却価格について
もし債権者から訴訟を起こされ、あなたのマンションが競売にかけられた場合、情報の開示が少なく、期間も決まっていることから市場価格よりもかなり安い値段で売却されるのが一般的です。
しかし、任意売却であれば、時間を掛け、活動することが出来ます。さらに、一般の不動産と同じ流通ルートで売買され、市場価格で取引できます。また、自宅を任意売却していることを近隣住民や会社に知られる可能性も競売と比べ、低いです。
4-1-2.管理費や滞納金の返済について
また、任意売却の場合、その売却益を滞納している管理費等に充当できる可能性もあります。それでも払いきれなかった管理費等は一旦購入者が建て替えた後、あなたに請求される可能性があります。購入者と条件を相談の上、計画的に解消して下さい。
4−2.売却後も同じマンションに住み続けられる可能性がある
任意売却をする際、購入者の許可を得て、あなたのマンションに住み続けられる可能性があります。リースバックと言われる方法です。任意売却後によく問題に挙がるのが、次の家をどうやって探すのか?
一般的に、すでに退職していたり、リストラにあっていたりすると、賃貸物件の審査に落ちてしまう危険性が高まります。しかし、任意売却後も自宅に住めるよう、家賃保証会社を使うことで購入者も安心できます。さらに、あなた自身も引っ越し費用が必要なく、家賃を支払う事で周りの方にバレることなく、これまで通りの生活を送れます。小さな子どもの転校等も必要ありません。
もし、そのまま家に住み続けたい旨を購入者に提案するなら、任意売却に詳しい地域の不動産屋にサポートしてもらうのが成功の秘訣です。私たちはケースにより、任意売却がスムーズに行えるよう、司法書士や弁護士等と連携しながら手続きを進めています。
このように任意売却の成功実績があり、専門家とパイプのある不動産屋を頼りにすると、競売により、強制退去することなく、任意売却が成立し、あなたの希望に沿った売却が叶う可能性が高まります。
5.マンション管理費が払えない相談でよくある質問や注意点
ここからマンション管理費等のトラブルについて、よく受ける相談や質問をご紹介します。
5−1.マンション管理費等はどうやって督促されるの?
マンション管理費等の督促方法は特に決まっていないため、管理組合によって手段が異なります。基本的に普通郵便や内容証明郵便を使った督促や管理組合の委員が来訪し、直接督促されることが多いです。
それでも、管理費等が支払われない場合、再度支払督促が行われ、最終手段として差押え、訴訟や競売が行われます。管理費等は住宅ローンよりも安易に滞納しがちです。
しかし、督促が行われた時点で住宅ローンの借り換えなどの行動を起こし、早期に延滞を解消できる様に動いてください。
5−2.マンション管理費の支払いは拒否できるの?
マンション管理費や修繕積立金は基本的に支払いを拒否できません。管理費等が定められたマンションに居住している以上、その義務を果たすのが当然だからです。ただし、次に説明する「時効」が成立すれば、あなたが管理費等を支払う必要はなくなります。
とはいえ、マンション住民の中であなただけ支払っていないのは問題なので、弁護士から内容証明郵便が送られ、時効を中断される可能性が高いです。個人的には、管理会社からの督促にはきちんと応じた方が良いと思います。
5−3.マンション管理費の滞納に時効はあるの?
管理費等は「定期給付債権」に当たり、時効が存在します。その時効は5年間。滞納から5年を過ぎた管理費等は時効が成立し、以降支払う義務がなくなります。
しかし、管理組合側は時効を成立させないため、一般的に、内容証明郵便を送付し、時効を中断させます。それでも、管理費等が支払われない場合、訴訟や競売、強制立ち退きと、事態が進行していきます。
上記の通り、時効の成立を狙うのは難しいです。その為、早期に管理組合と支払いについて相談し、訴訟や競売が避けられる道を探すのが得策です。
6.マンション管理費滞納時の対策、まとめ
過去の相談を受けた経験からマンションの管理費や修繕積立金の支払いは住宅ローンよりもルーズになりやすい傾向があります。しかし、滞納が続くと訴訟や競売によって自宅を失う危険性があります。その為、ギリギリまで一人で頑張るのではなく、早期に対応するのが鉄則です。以下、この記事の内容を振り返りです。
1.管理費滞納が発生しているマンションは24.6%。意外と多い問題となっている
2.管理費等を滞納すると、管理組合の理事会で報告され督促が開始。最終的には訴訟や競売に至る可能性がある
3.管理費や住宅ローンが払えないなら、住宅ローンの期間延長や借り換え等の手段を使い、管理費が捻出できるようにする
4.最終手段は任意売却。競売と比較して売却額が高くなりやすく、売却後も自宅に住み続けられる可能性がある
5.マンション管理費等の時効は5年。成立まで待つのは得策ではない
マンションの管理費や修繕積立金、そして住宅ローンの滞納が長期化すると滞納金がかさみ、完済が難しくなったり、最終的に差押え、競売にかけられて、家を失ったりと、あなたにとって最悪の方向に事態が進みます。
その為、まずは銀行を含め、不動産屋や弁護士等の専門家に相談し、正確な情報を手に入れて、無駄な時間や費用をかけないよう行動して下さい。相談する際は、お近くの任意売却や借金問題に詳しい専門家に頼るのがおすすめです。他にも、マンションの空き部屋で起きたトラブルを判例などで調べ、まとめました。もし、実家などで空き家や空き部屋にしている物があれば、見てみて下さい。
先日、空き家トラブルに困っているオーナーさんや賃借人の方を踏まえ、現状や対策についてインタビューを行いました。空き家に困っている方向けですが、困りそうな方も是非見てみて下さい。
私たちは、2012年より地域に根付いた不動産屋として、住まいのトラブルに特化し、住宅ローンの返済だけでなく、騒音や隣人、契約トラブル等のトラブルを解決してきました。現在、無料相談を実施しており、住まいの問題解決事例をまとめた冊子も無料で差し上げております。あなたの問題を早期に解決し、明るい毎日を取り戻して下さい。ともかく、ぜひ一人で悩まず、早めにご相談ください。
これまで、8年間300件近い住まいのトラブルの相談を受けた中でもさまざまなケースがありました。ここに記載出来ない内容で困っている方もいると思います。もし、あなたが現在トラブルに悩まされているのであれば、トラブルが大きくなる前にお近くの専門家に相談することをお勧めいたします。信頼できる先がすぐに見つからない場合、弊社の無料相談にご連絡ください。これまで多くの住まいの問題を解決した経験や知識を活かし、あなたの力になれると思います。ぜひ気軽に無料相談までご連絡ください。
私たちは今後もあなたの大切な人生と平穏が守られますよう、4,600件を超える引っ越しの失敗談を基に住まいの問題解決のトップランナーとして、専門家と協力し、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。
念のため、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法をレクチャーしてもらいました。最近流行っているカスタマイズ賃貸についても、こちらにまとめました。不動産トラブル専門の弁護士による、契約直後の事故物件発覚時の告知義務違反等の対応についてはこちらのページにまとめました。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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