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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
先日、埼玉県に住んでいる40代の男性からオンラインで、「離婚した嫁や子供が住んでいるマンションを売却したい。揉めることなく進めるにはどうすればいいか?」と、相談がありました。
一緒にやっている弁護士さんに詳しく聞いたので、その内容をまとめました。
実際、離婚後、住宅ローンの支払いが苦しくなったら、「家を売却して清算したい」と考える男性は本当に沢山います。
ただ、元嫁や子どもが居住していたら、売りにくいので、まずは出ていってもらわねばなりません。
最近の市況では、空き家での売却の方が高く売る事が出来ます。
キチンと売り切り、ローンを完済する為、トラブルなく、家を退去してもうにはどういった手続きを取る事が出来るのか?
今回、一緒にトラブル解決に取り組んでいる弁護士の福谷さんと、離婚後に住宅ローンの支払いが苦しくなったとき、元嫁や子どもを法的に退去させ、有利にマンションを売却する方法を解説します。
>>離婚で悩む方向け、離婚時の不動産対応のチェックリストはこちらのページにまとめておきました。
1.離婚後の住居から元嫁や子どもを退去させる方法
離婚後の住居から元嫁や子どもを問題になることなく、退去させる方法は離婚時に元嫁とどのような合意をしたかで異なります。
1-1.離婚時に居住を許可する約束をした場合
離婚時、住宅ローンはあなたが支払うので「元嫁と子どもは家に住み続けて良い」という約束をした場合、住宅ローンを払えなくなったからといって簡単に退去請求できません。
特に公正証書などの書面で合意した場合、裁判を起こして退去請求しても通らない可能性が濃厚です。
調停や裁判上の和解などで合意した場合も同様です。
口頭合意の場合、証拠がないために退去請求が認められる可能性もあります。しかし、合意を反故にするのはおすすめではありません。
ただ、このように離婚後に居住を許可した場合でも、状況を元嫁に伝えて話し合い、任意で出ていってもらうことは可能です。
離婚成立後は元嫁であっても他人です。
自己都合で簡単にお願いするのは難しいと思います。その為、一旦正直に、「このままでは住宅ローンを払えないので、家が競売にかかり、いずれは退去せざるを得なくなる・・・」と伝えてみて下さい。
元嫁が納得し、子どもを連れて出ていけば、話し合いで穏便に解決できます。
というのも、離婚時に退去請求できる権利はないので、裁判を起こしても意味がないからです。
その為、元嫁に話し合いによって任意で退去してもらう場合、こちらが法律上払わねばならない費用負担はありません。
ただし、解決金や退去費用として、いくらか支払いを提示した方が相手も出ていきやすいと思います。
また、売却によって利益が出る見込みが高い場合、剰余金の一部を払う提案を元嫁にすれば、出て行ってもらうための交渉材料にもできます。
1-2.離婚時に居住を許可せず、別居している場合
離婚時に「元嫁と子どもが居住し続けても良い」という取り決めをしていないのに、元嫁と子どもが勝手に住んでいる場合、法的な退去請求が可能です。
以下で手順をご説明します。
1-2-1.任意での退去を求める
まずは元嫁に任意での退去を求めて下さい。
書面などで取り決めをしていないので、住む権限がないことに加えて、住宅ローンを払えなくなっている状況も伝えて説得してみてください。
1-2-2.調停など今後の為、内容証明郵便で退去請求する
元嫁が納得しない場合、内容証明郵便で退去請求の通知書を送って下さい。
元嫁には家に住む権利がないこと、そして、このままでは住宅ローンを払えないので競売が申し立てられ、いずれにせよ退去せざるを得ないことなどを記載します。
1-2-3.離婚後紛争調整調停を申し立てる
内容証明郵便を送っても明け渡されない場合、裁判所で「離婚後紛争調整調停」を申し立てる方法があります。
離婚後紛争調整調停とは、元夫婦における離婚後のトラブルを話し合いで解決するための手続きです。
裁判所の調停委員が元嫁を説得してくれて、相手が納得して出ていく可能性があります。
お仕事の関係もありますが、もし、時間があれば、代理人を立てずに調停を行う事も可能です。
ただ、細かい部分までキチンと取り決めて後にトラブルを残さないためには、弁護士を代理人にして進めた方が無難だと思います。
1-2-4.建物明け渡し請求訴訟を提起する
調停が不成立になった場合や調停で話し合っても意味がないと考えられる場合、裁判所で建物明け渡し請求訴訟を提起する方法があります。
ここまで来ると穏やかではありませんし、訴訟には時間もお金も掛かります。きちんと主張、立証ができないと負ける可能性もあるので、弁護士のサポートは必須です。
有利な判決を獲得するため、早めにお近くの信用できる弁護士に相談し、準備を進めて下さい。
元嫁が無権利であるにもかかわらず家に住み続けている場合、裁判所から明渡し命令を出してもらえます。
1-2-5.強制執行
判決が出たら、元嫁に明渡しを求めて下さい。
元嫁がどうしても退去しない場合、裁判所で「明渡し断行の強制執行」を申し立てます。
ここまで来ると、執行官のサポートを得て、強制的に出ていかせることができて、荷物も処分できます。
2.元嫁や子どもが出ていかない時、やってはいけないことや注意点
元嫁や子どもに出ていってほしくても、以下のようなことは絶対にしてはいけません。
ぐずぐずしていると、金利の支払いが増え、督促もあり、辛いと思いますが、合法的に進めるのが一番の近道です。
2-1.暴力的な方法で出ていかせる・・・
元妻を脅したり、大声で怒鳴ったり、暴力を振るったりして、無理やり出て行かせてはなりません。
たとえ家があなた名義で元嫁に権利がなくても、暴力的な方法で権利を実現するのは違法です。基本的に、権利の実現は裁判所を通じなければできません。
当たり前ですが、暴力や脅迫的な手段を用いると、暴行罪や傷害罪、脅迫罪や強要罪が成立する可能性もあります。
2-2.勝手に荷物を処分する
マンション内にある元嫁や子どもの荷物を勝手に処分するのもNGです。
裁判所で明渡し命令が出ていない状態ではもちろんのこと、明渡し命令が出ていても勝手に荷物を処分すると違法です。
2-3.正当な荷物の処分方法
明け渡し命令の判決後であっても、住居内の荷物は「明渡し断行の強制執行」の手続内で処分する必要があります。
明渡し断行の強制執行を行うと、荷物を一時保管して、債務者が受け取りに来たら引き渡しますし、受け取りに来なかったら売却などの方法で処分できます。
念のため、私たち、アリネットの口コミはこちらのページにまとめてあります。
3.住宅ローンの返済を止め、競売を行う方法
元嫁や子どもの住んでいる住居のローン返済が苦しくなった場合、最終的には「住宅ローン返済を止め、滞納を続ければ」、元嫁や子どもを競売後、追い出すことができます。
3-1.競売の流れ
通常、住宅ローンを支払わないまま6か月程度が経過すると、保証会社(サービサー)が代位弁済を行います。
保証会社から一括請求されても、対応せずに放置していたら、競売が申し立てられます。
競売が起こると、裁判所が手続きを進めて家を第三者へ売却し、売却代金が保証会社へ支払われます。
第三者がマンションの権利を取得すると、従来の所有者や居住者は家に対する権利を失うので、出ていかねばなりません。
元嫁が居座って出ていかない場合、あなたが強制執行をしなくても家を購入した落札者が強制執行を申し立てて明け渡し手続きをしてくれます。
あなたとしては「住宅ローンを払わない」だけで、元嫁を追い出すことが可能となり、荷物の処分方法についても心配する必要がありません。
3-2.競売後、残ったローンは?
ただし、残ったローンは時間を掛けて、払っていく必要があります。
競売後、自己破産する方法もありますが、個人的にはお勧めしていません。
特に、サラリーマンの方や公務員・一部の資格を基に仕事を行っている人は自己破産の経済的・日常への影響は大きいです。
一方、自営業の方は残った金額が返済出来るレベルの物ではない場合、自己破産をして、早期に再起を図った方が良いと個人的に思います。
と言うのも、一部の方はクレジットカードを使って、仕入を行って、事業をしているからです。
競売後、ブラックリストに掲載されると、クレジットカードの更新ができなくなります。
その場合、事業を継続することができない為、一旦、自己破産を行い、最悪、生活保護を視野に生活を立て直す事をお勧めしています。
4.住宅ローン滞納期間中、元嫁と話し合って売却を進める方法
既述の通り、住宅ローンを滞納しても、すぐに競売が始まるわけではありません。
まずは金融機関から支払いの督促が来ます。
ただ、期間が経過すると、保証会社からの通知や一括返済請求が来ます。
競売が申し立てられてから、落札者が決まるまで10か月くらいかかるケースも多く、すぐに家の権利が失われるわけでもありません。
このように、住宅ローンを滞納してから競売完了までには長い期間がかかります。
その間に元嫁と話し合い、任意での明け渡しを求める方法が最も効果的だと思います。
この期間であれば、競売まで行かずに、自分の都合で退去のスケジュールを定め、任意売却を行う事が可能です。
元嫁に文句を言われると思いますが、最も穏便に引っ越しやご自宅の売却を進めることが出来ると思います。
上記より、「このままでは競売が進んで家が強制的に売却されてしまうので、今のうちに任意売却した方が良い」と説得し、退去を求めて下さい。
以下のような任意売却のメリットを説明すれば、元嫁も納得しやすくなると考えられます。
4-1.元嫁の説得方法~任意売却のメリット
4-1-1.元嫁への支払いをしやすくなる
空き家にして、任意売却を行う場合、競売より高く、一般売却と同レベル価格で売れるケースが多く、住宅ローンをより大きく減らせる可能性が高くなります。
また、残ローンについては長期の分割払いが認められ、月5,000円や月10,000円になるケースが多数です。
このように、あなたの経済的な負担を減らすことによって、売却後の養育費支払いなどもしやすくなり、元嫁や子どもに利益がある、と説得して下さい。
合理的に進めるポイントは、空き家にして、引き渡しを行う任意売却です。
4-1-2.引越し費用を出してもらえるケースが多い
任意売却で自宅を売却する場合、30万円程度の引越し費用を買主様から出してもらえるケースもあります。
受け取った費用を元嫁に渡し、引っ越しの際に使ってもらったらと伝えるのが良いと思います。
一方、競売になってしまったら、引越し費用は出ず、自分たちで負担することになるので、任意売却の方が大きなメリットを得られると説得してみてください。
4-1-3.競売のように全国へ情報公開されないので、プライバシーが守られる
競売になると、債権者を全国から募るため、官報などで物件情報が全国へ公開されてしまいます。
元嫁や子どものプライバシーも害され、学校や勤務先などで噂になってしまう可能性があります。
一方、任意売却であれば通常売却するだけなので、プライバシーも害されず、安心できると伝えてみてください。
5.元嫁への剰余金の分配方法
住宅を売却したとき、アンダーローンであればローンを完済した剰余金を受け取れます。
元嫁に分配しなければならないのか、どうやって分ければ、貴方にとって有利か、ここから説明していきます。
5-1.離婚成立時に財産分与が終わっている場合
離婚時に財産分与の合意をして清算が済んでいる場合、元嫁へ剰余金を分配する必要はありません。全額自分で受け取れます。
ただし、既述のように元嫁に任意で退去してもらうための解決金として、いくらか渡してもかまいません。
剰余金の分配を退去の交渉材料とすると、出て行かせ易くなると思います。もちろん、程度問題なので、あまり強く出ない方が良いと思います。
5-2.財産分与がまだ終わっていない場合
離婚時に財産分与していない場合、基本的には剰余金の半額を渡さねばなりません。
売却代金から経費を差し引いた残りの半額を元嫁に払ってください。
ただし、話し合いによって割合を変更できます。元嫁が納得すれば割合を減らしてもかまいません。
反対に、任意で退去させるため、剰余金を多めに払う方法も検討可能です。
6.元嫁との交渉を弁護士に依頼する方法
住宅ローン返済が苦しい場合や仕事などで忙しい場合、元嫁との交渉は弁護士に任せることも可能です。
弁護士から内容証明郵便を送ったり、代理人として通知が来たりしたら、元嫁もプレッシャーを感じて出ていきやすくなるものです。
特に、財産分与が未了の場合、家以外の財産分与方法を決めなければならない可能性もあって弁護士の必要性が高くなります。
>>離婚で悩む方向け、離婚時の不動産対応のチェックリストはこちらのページにまとめておきました。
有利に交渉しやすくなるメリットもあるので、よかったらお近くの弁護士事務所へ一度相談してみてください。
もし、具体的な弁護士事務所への質問など、対応が難しい場合には、相談後の自宅の売却相談も行える、私たち、アリネットへご連絡ください。
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