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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
不動産で明るい毎日を目指す六本木の不動産屋、(株)リビングインで住まいのトラブル相談・提案を担当している宅地建物取引士兼住宅ローンアドバイザーの大和田です。
2018年、新潟市にお住いの60代の男性から電話で熟年離婚に関して、相談を受けました。
「ようやく、自宅の住宅ローンを完済し、子育てもひと段落したと思ったら、嫁から離婚を切り出され、復縁できそうもない。
で、財産分与や離婚するための手続きはどうすれば、揉めずに進めることが出来るか?」
と、相談がありました。
奥様との婚姻関係解消時に自宅に係る財産分与を行う際、「たとえ、住宅ローンが残っていなくても、自宅に関わる財産分与をどのように行えば、良いのか分からない」と悩んでしまう方は少なくありません。
ほとんどの方が初めての経験のため、分からないのは当たり前だと思います。
そこで、このような住宅ローン完済後の離婚に伴う、財産分与のやり方や注意点について、一緒にトラブル対応をしている弁護士さんに離婚時の財産分与について、詳しく聞いたのでその内容をまとめました。
この男性は、
「離婚・財産分与後も自宅に住み続けたいため、自宅を売却せずに必要な額を妻に分与したい」
と希望しており、自宅を残しながら、財産分与する方法が分からずに困っているという相談でした。
では、実際、自宅を売らずに、離婚時の財産分与はどのように行えば良いか?
離婚時にすでにローンを払い終わった自宅の財産分与を行う際、まず『財産分与に関する詳しい概要』を把握したうえで、あなたの状況に合った方法で相応の財産を妻に渡すことが後で揉めないためにとても重要です。
この記事では、当時、弁護士先生等に聞きながら行った財産分与を参考に、『離婚に伴う財産分与の概要』や『住宅ローンが残っていない自宅の財産分与の方法』について、詳しく解説していきます。
住宅ローンが残っていない(完済した)自宅の財産分与の方法が分からず、困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.離婚に伴う財産分与とは?
財産分与とは、『婚姻中に夫婦が2人で協力して購入し、保有し続けた財産を婚姻解消時に精算する制度』のことです。
例えば、結婚中に得た『自宅(不動産)』・『自動車』・『家財道具』・『仮想通貨』・『美術品』などが財産分与の対象になっており、一般的に婚姻関係中に取得した全ての財産を夫婦2人で半分ずつ分け合う必要があると考えられています。
もちろん、あなたが名義人となる財産であってもです。婚姻中に得た資産であるならば、全て奥様と分与を行う必要があります。
法律上、夫婦どちらか一方の単独名義であっても、『共有財産』という『夫婦で協力して得た・保有し続けた財産』だと考えられているため、あなた名義の財産であっても、奥様が受け取るべき額を渡さなくてはいけません。
なお、こちらの記事で財産分与に関する詳しい概要を詳しく解説しています。
ぜひ、併せて参考にしてみてください。
>>「離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合、財産分与の仕方と注意点は?」も見てみる
1-1.財産分与の種類
奥様に結婚中に得た財産を分与する際、まずは『どのような目的・考え方で妻に財産を渡すのか?』を明確にしておく必要があります。
一口に財産分与と言っても、3つの種類に区分されており、婚姻解消時の夫婦の状況や目的によって、分与時の財産を渡す考え方が異なるためです。
具体的な奥様に婚姻解消時までの財産を渡す際の考え方は、下記の表を参考にしてください。
財産分与の種類 | 考え方 |
・清算的財産分与 | 一般的な財産分与を行う際の考え方になっており、結婚中に夫婦が取得・維持した財産を、それぞれの貢献の度合いに応じて分配する方法 |
・扶養的財産分与 | 離婚後に妻(夫)の新生活が貧困することが予測される場合に、相手方の生活をサポートするために行う方法 |
・慰謝料的財産分与 | 不倫やDVなどの離婚に至った原因を作った側が、慰謝料も含めて財産を分与する際の方法 |
上記のように、財産分与は離婚時の夫婦の状況や目的によって、資産を清算する際の考え方が異なります。
例えば、奥様が不貞行為をはたらいたことが原因で離婚に至り、財産分与を行う際に、慰謝料の意味も含めた財産分与の方法である『慰謝料的財産分与』を選択した場合です。
本来、財産分与を行う際は夫婦それぞれが半分ずつ財産を受け取る権利があります。
しかし、奥様からの慰謝料の意味も込めて財産分与を行うことで、例えば、『あなたの取り分が65%、奥様が35%の割合に変更する』ことができます。
ただし、上記の例を実行する際、必ず奥様の同意を得ることが重要です。
奥様の不貞行為が原因で離婚に至ったとしても、『財産の半分を受け取る権利がなくなる訳ではない』ため、必ず夫婦が納得した形で割合を決める必要があります。
1-1-1.財産分与の割合は半分ずつなの?
婚姻解消時に奥様と財産分与を行う際は、原則『法律上で対象となる資産の2分の1』の割合で分与することが必要です。
例え、夫婦のどちらか一方が専業主婦(夫)であっても、婚姻解消時はこれまで築いてきた財産を双方が公平に受け取れるよう分与を行わなければなりません。
なお、『財産分与の割合』に関する詳しい概要については、下記の記事で解説しているので、こちらの記事も参考にしてみてください。
>>「離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合、財産分与の仕方と注意点は?」も見てみる
1-1-2.協議離婚では財産分与の割合を自由に分けることができる?
一般的に、離婚時は基本的に以下の3種類の内のいずれかの方法で奥様と財産分与などに関する話し合いを行います。
ただ、『協議離婚』を選択することで、夫婦同意の元で奥様に分与する割合を自由に分けることが可能です。
・協議離婚:
夫婦2人で行う話し合いのことであり、一般的に多くの夫婦が利用している方法
・調停離婚:
家庭裁判所で第三者である調停委員に間に入ってもらう話し合いのことで、夫婦間での話し合いが困難な状況の時に利用する方法
・裁判離婚:
『調停離婚』でも双方の意見が同意に至らなかった場合に裁判所に解決に導いてもらう方法
ちなみに、『裁判離婚』で財産分与の割合の取り決めを行った場合、資産額や貢献度などを考慮して裁判所の判断に委ねられてしまいます。
そのため、あなた自身が希望する割合で資産を奥様に分けることができなくなってしまう可能性があります。
もし、「双方が納得でき、円満に財産をどのように分け合うのか決めたい」などと考えている方は、できるだけ『協議離婚』で奥様と割合について話し合いを行うようにしてください。
ただし、2,3カ月話しても条件が決まらない、又は全く話をしようとしていない場合には、調停や裁判に持ち込み、相手にしっかり考えてもらう事も必要だと思います。
1-2.財産分与の対象になる財産と対象外の財産
婚姻解消時の財産分与を行う際、基本的に『結婚中に購入・保有し続けた全ての財産』を奥様に分与する必要があります。
例えば、『貯金(定期預金など)』・『自動車』、『家財道具』、『株式証券や仮想通貨』・『退職金や年金』などです。
上記の財産は、法律上奥様に分与する必要があると考えられている資産になっており、全ての資産の金額を算出したうえで、一般的に半分ずつ奥様と分け合う必要があります。
ただし、必ずしも結婚中に得た財産だからといって、全ての財産を奥様に分ける必要があると言う訳ではありません。
例えば、『あなたの両親から自宅の購入時に援助を受けたお金』や『奥様と入籍する前から所有している貯金や不動産』などの財産を保有している場合は別です。
『これらに該当する財産は特別な事情がない限りは奥様に分与する必要がありません。』
そのため、財産分与を行う際は、『上記の財産を除外した財産』を洗い出したうえで、奥様に分与する資産を算出するようにしてください。
なお、以下の記事で、『財産分与の対象になる財産と対象外の財産』について詳しく解説しています。どの財産を奥様に分与する必要があるのかを見極める際の参考にしてみてください。
>>「離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合、財産分与の仕方と注意点は?」も見てみる
1-2-1.自宅は財産分与の対象なの?
上記でも述べた通り、婚姻解消時は自宅に関わる財産も奥様に分与することが必要です。
もちろん、自宅があなたの単独名義で、これまであなたの収入だけでローンを完済したとしても例外ではありません。
どちらか一方の収入で得た財産や完済した財産であっても、原則『夫婦が協力して得た共有財産だ』と考えられているため、自宅に関わる財産のうちの半分を奥様に渡す必要があることを覚えておいてください。
1-3.財産分与を行う際にかかる税金
原則、財産分与により、奥様に資産を分けた際は税金はかかりません。
というのも、法律上、財産分与は『夫婦それぞれの新生活を保証し、これまでの財産を清算する』ために行うものだと考えられているためです。
ただし、例外もあります。
具体的には、下記の2つに該当した場合です。
・婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮しても多過ぎる場合
・納税を逃れるために偽装離婚を行った場合
上記のケースに該当する場合、あなたから財産の分与を受けた奥様側に『贈与税』が課税される可能性があります。
このため、上記の2つに該当する可能性のある方は、後々元嫁とトラブルに発展するリスクを軽減するため、事前に税理士に相談を行うようにしてください。
1-3-1.自宅を売却した場合は『譲渡所得税』が課税される
『譲渡所得税』とは、『自宅(不動産)を売却したことにより利益が出た際に納める税金』です。
具体的には、『自宅(不動産)を手に入れた金額よりも売却した時の金額の方が高い時』に『自宅を売却した方』にこの税金が課税されます。
ただし、自宅を売却したからと言って、必ずしも『譲渡所得税』が課せられる訳ではありません。
当然ですが、自宅を売却した際に利益が出なければ、『譲渡所得税』が課税されることはありません。
このため、婚姻解消を機に自宅の売却を検討している方は、事前に『売却時に利益ができるのか』を確認したうえで、『どのくらいの税金を納める必要があるのか』を把握しておくようにしてください。
但し、自宅として使っていた不動産には3,000万円特別控除など様々な特例があり、税金を支払うことは一般的にはありません。
>>自宅を売却した場合の特例や控除について、こちらのページにまとめておきました。念のため、ご確認ください。
2.離婚時の財産分与後も自宅に住み続けるべきか見極める方法
婚姻解消時の財産分与後も自宅に住み続けたいと考えている方は、まず『新生活後も自宅に住み続けても問題ないか?』を見極めることが重要です。
事前に、『どのようなケースが新生活後に住み続けても問題ないか?』を把握しておくことで、新しい生活を始めた際に起こり得るトラブルに巻き込まれるリスクを軽減することができます。
ここでは、『離婚後に自宅に住み続けるのが向いているケース』と『自宅の売却が向いているケース』について解説していきます。
誰かに相談する前に、『あなたの状況がどちらに適しているか?』を見極めるべく、参考にしてみてください。
2-1.自宅の売却が向いているケース
私はこれまでの事例から離婚時に自宅の売却が適しているケースは、『夫婦それぞれが公平に財産分与を行いたいと考えている場合』だと思います。
というのも、自宅を売却することで、売却金から諸費用などを差し引いたお金を奥様と分け合うことができるため、お互いが不満を抱くことなく財産分与を完了することができるからです。
ただし、必ずしも奥様と自宅に係る財産を公平に分け合うことを目的としている方が、自宅の売却を行うのが適していると言う訳ではありません。
例えば、自宅の不動産評価額(不動産としての価値のこと)のうち、奥様が受け取るべきお金を貯蓄などの他の財産で分与できる場合は、住み続けることも一つの選択肢です。
自宅を売却しなくても公平に分け合うことができるため、後々奥様に不満を抱かれてしまい「再度財産分与をやり直してほしい」などの要求をされる心配はいりません。
2-2.自宅に住み続けるのが向いているケース
自宅に住み続けるのが向いているケースは、『生活環境を変えずに新生活を開始したいと考えている場合』です。
例えば、あなたが離婚後のお子さんの親権を持つ場合、自宅に住み続けることで学区を変えずに新生活を開始することができます。
そのため、生活環境の変化によりお子さんの精神面が不安定になってしまう等の嫌な可能性を減らすことができます。
ただし、新生活後もあなたが自宅に住み続ける場合、『きちんと奥様の同意を得る』ことが重要です。
あなたが継続して自宅に住み続けることに対して、後々奥様が不満を抱きトラブルに発展する危険性も十分に考えられます。実際に、そのような事例もあります。
そのため、しっかりと話し合いを行ったうえで、自宅に住むか決め、書面を作成するようにしてください。
ただ、この辺り、どうしても協議が進まない場合もあります。
離婚成立までの手続きやご自宅の売却を含め、個別性が強いため、もっと詳しく聞きたい場合、『LINE公式の無料相談』や『電話相談』からお気軽にお問い合わせください。
>>念のため、私たち、アリネットのグーグル上の口コミはこちらのページにまとめてあります。
3.離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う方法
離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際は、以下の2つの方法どちらかを活用することで、奥様に自宅に係る財産を分け合うことができます。
・自宅を売却・現金化して夫婦で分け合う
・自宅の不動産評価額分のお金を他の資産で奥様に分与する
それぞれの方法について、詳しく解説していきますので、自宅に係る財産分与を行う際の参考にしてみてください。
3-1.自宅を売却・現金化して夫婦で分け合う
婚姻解消時に奥様に自宅に係る財産の分与を行う際は、『自宅を売却・現金化して夫婦で分け合う』という方法があります。
具体的には、現在住んでいる自宅を不動産会社などに依頼をして売却活動を行い、買い手が見つかれば、売却金を奥様と半分ずつ分け合うという形です。
通常、新生活後に夫婦のどちらか一方が自宅に住み続ける場合、引っ越しをする側が「本当は相手の方が多く、自宅に係る財産を受け取っているのでは?」などと不満を抱く可能性が高いです。
そのため、このように自宅を現金化し、公平に夫婦で分け合えるのは非常に大きなメリットだと言えます。
3-2.自宅の不動産評価額分のお金を他の資産で奥様に分与する
婚姻解消後も自宅に住み続けたいと考えている方は、『自宅の不動産評価額分のお金を他の資産で奥様に分与する』ことをおすすめします。
自宅に係る財産を他の資産で賄うことで、新生活後も変わらず、自宅に住み続けることが可能です。
今回のご相談のように、ローン完済後の熟年離婚の場合、引っ越しを行うのも大変です。
ただ、地域のコミュニティとは奥様の方が結びつきが強いと思うので、離婚後一人になって、自宅に住み続けるのは生活環境次第では大変だと思います。
よく考えて、決めるようにして下さい。
ただし、この方法を活用できるのは『自宅の不動産評価額と同等の財産を保有している』場合に限ります。
あきらかに自宅の不動産価値よりも低い財産でまかなってしまうと、当然ですが、奥様が不満に抱き、『公平に財産を受け取れるよう、自宅を売却して欲しい』と要求されてしまいかねません。
そのため、新生活後も自宅に住み続けたいと考えている方は、まず『不動産会社に依頼して自宅の不動産評価額を査定』してもらったうえで、『自宅の不動産価値に見合った財産を所有しているのか?』を確認するようにしてください。
3-2-1.自宅の不動産評価額分のお金を他の資産で奥様に分与する際、名義変更が必要になる場合も
自宅の不動産評価額分のお金を他の資産で奥様に分与する際に、自宅が奥様の名義になっている場合は名義変更を行う必要があります。
なぜなら、あなたの名義に変更に変更しないと、自宅の所有者であることを証明することができなくなってしまい、後々さまざまな面で不具合が生じる危険性があるためです。
例えば、住んでいる方と所有者が違う場合、知らない間に自宅を売却され、追い出されてしまうなどのトラブルに発展するかもしれません。
このため、自宅の名義人が奥様になっていたり、奥様の持分を買い取った場合は、財産分与を行う際に、必ず『あなたの単独名義に変更するための手続きを行う』ようにしてください。
なお、こちらの記事で、『自宅を財産分与した場合の名義変更』について詳しく解説しています。ぜひ、併せて参考にしてみてください。
>>「離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合、財産分与の仕方と注意点は?」も見てみる
3-3.離婚時に自宅に関わる財産分与を行う際の流れ
離婚時に自宅に関わる財産分与を行う際の流れは、以下の通りです。
- 夫婦で今後についてよく話し合いを行う
- 現在の自宅の不動産評価額を査定する
- 現在の住宅ローンの残債や債務形態を確認する
- 財産分与にあたるお金を算出する
中でも、『現在の自宅の不動産評価額を査定』は、奥様に自宅に係る財産分与の額を決めるうえで非常に重要な情報になります。
このため、自宅に係る財産分与を行う際は、事前に夫婦で協力して『不動産業者に査定を依頼』を行うようにしてください。
なお、『離婚時に自宅に関わる財産分与を行う際の流れ』について、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
>>「離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合、財産分与の仕方と注意点は?」も見てみる
3-4.離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際に押さえておくべきポイント
離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際は、『特有財産が含まれていないか』を確認する必要があります。
『特有財産』とは、『夫婦が2人で協力して得た資産ではない財産』のことで、例えば、『自宅を購入する際にあなたの両親などに頭金』や『奥様と別居中にあなたが得た財産』などが該当します。
法律上、財産分与の対象外になるため、この財産に当てはまる資産を奥様に渡す必要はありません。
特有財産が含まれる場合は、自宅の不動産評価額から贈与を受けた額を引いて、奥様に分与する財産を算出するようにしてください。
3-5.住宅ローンの残債が残っている場合の財産分与の方法は?
住宅ローンの残債が残っている場合、まず自宅の状況が『アンダーローン』なのか、『オーバーローン』なのかを把握することが重要になります。
どちらのケースに該当するのかによって、財産分与の要否が異なるためです。
『オーバーローン』とは、『自宅の不動産評価額よりも住宅ローンの残債が高い状態(自宅の不動産評価額<住宅ローンの残債)』のことをいいます。
資産よりも負債の方が多く原則自宅の売却ができない状態であるため、このケースに該当する場合は、基本的に奥様に自宅に係る財産分与を行う必要がありません。
一方で、『アンダーローン』とは、『自宅の不動産評価額よりも住宅ローンの残債が低い状態(自宅の不動産評価額>住宅ローンの残債)』のことをいいます。
自宅を売却することでローンの残債を完済でき、諸費用などを引いた売却金を夫婦で分け合うことができるため、奥様に自宅に係る財産を分与する必要があります。
このように、離婚時に住宅ローンの残債が残っている場合は、ローンの債務状況によって財産分与の要否が異なることを覚えておいてください。
なお、こちらの記事では、『住宅ローンの残債が残っている場合の財産分与の方法』について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
>>「離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合、財産分与の仕方と注意点は?」も見てみる
3-6.両親名義の自宅の財産分与は?
奥様と暮らしていた自宅を両親が所有する土地に建てた場合、土地の部分は財産分与の対象になりません。
したがって、『あなたが名義人となる建物のみの財産』を奥様に分与すれば、財産分与を完了することができます。
なお、『あなたが名義人となる建物のみの財産』の不動産評価額は、不動産会社に依頼をすることで現時点の査定額を算出してもらうことが可能です。
このため、両親が所有する土地に建てた自宅を奥様に分与する予定の方は、事前に『あなたが所有している部分のみの査定を不動産会社に依頼』してみてください。
4.自宅を売却して財産分与を行う方法
自宅を売却して奥様に財産分与を行う際は、以下の2つの売却方法のどちらかを不動産会社に依頼することで、売却活動を行うことができます。
・買取
・仲介
それぞれの売却方法の特徴について、詳しく解説していきます。
4-1.できるだけ高い金額で売却したい方は『仲介』がおすすめ
婚姻関係解消を機に、できるだけ高い金額で自宅を売却したいと考えている方は『仲介』がおすすめです。
『仲介』とは、『不動産業者に売却活動を行ってもらい、あなたが所有する自宅を購入したい個人や不動産投資家などとマッチングしてもらう売却方法』のことです。
一般的に、あなたの自宅が属する地域の相場価格に近い金額で売却活動を行うことができるため、買い手が見つかれば希望する金額で自宅を売却することができます。
夫婦どちらも納得できる金額で自宅を売却することができれば、奥様と自宅に係る財産を巡って揉めてしまうなどのトラブルを回避することができます。
そのため、自宅を早急に売却しなければならない事情がない限りは、『仲介』による売却活動を行うことを検討してみてください。
4-2.バレたくない・早く自宅を処分したい方は『買取』がおすすめ
婚姻関係解消時に「バレずに、早く自宅を処分して妻に分与したい」と考えている方は、『買取』の利用を検討してみてください。
『買取』とは、『不動産会社などに直接あなたが所有する自宅を買い取ってもらう方法』です。
そのため、業者が提示した買取金額に納得できれば、すぐに自宅を売却し、自宅に係る財産を奥様と分け合うことができます。
ただし、『買取』を利用する際は、1つ注意しなければならない点があります。
それは、『一般的な市場相場価格よりも安い金額で買い取られる』と言う点です。
基本的に、買取り時の売却価格は、不動産業者が安く買い取るために市場相場よりも約7割程度の価格を提示してくるケースが多いです。
そのため、よほど人気のエリアや物件でない限りは、安い金額で買い取られてしまう可能性があります。
もし、話し合った結果、近所の人に知られず、今すぐに自宅を現金化しなければならない事情がない限りは、『仲介』を選択するのがおすすめです。
4-3.私たちはあなたの手残り最大化のため、買取はしていません。
ただ、私たち、アリネットは売主様のために動くことが多いため、現在、手残りが減る買取は行っていません。
そのため、ご説明の通り、近所にはバレたくない、早く売り、現金を手に入れたい方もいる為、簡単なオークションを取り纏め、高価格での買取を行っています。
具体的には、買取業者を競わせる(非公開のオークション形式)という意味で、3~5社に内見してもらい、買取希望価格を出してもらい、最も良い条件を出した先に売却しています。
実際、このやり方で茨城県日立市や群馬県前橋市、埼玉県和光市でこのやり方でご自宅の売却を行っています。
>>不動産会社による買取のメリット・デメリットはこちらのページにまとめています。
4-4.離婚時の財産分与により自宅を売却する際の注意点
離婚時の財産分与により自宅を売却する場合、『結婚期間中に売却を完了させる』ことをおすすめします。
なぜなら、離婚成立後に自宅に関わる財産を奥様に渡してしまうと、贈与とみなされてしまい、奥様側に『贈与税』がかかる可能性があるためです。
仮に、本当は財産分与なのに奥様に贈与税が課税されてしまった場合、元嫁が不満を抱き、トラブルに発展してしまう可能性があります。
このため、婚姻解消時に奥様とこれまで築いた財産を分け合う方は、『離婚が成立する前に財産分与を完了させる』ようにしてください。
話し合いをしつつ、自宅の財産分与も進めるのは大変ですが、この辺りは経験値が高い、専門家を入れつつ進めた方が後悔や時間がかかり過ぎて、まとまらなくなることを防ぐことが出来、おすすめです。
5.離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際に起こり得るトラブルの事例
離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際は、さまざまなトラブルに巻き込まれてしまう危険性があります。
このため、円満に奥様と財産分与を行うために、事前にどのようなトラブルが起こりやすいのかを把握しておくことが重要です。
ここでは、離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際に起ったトラブルの事例や解決方法を紹介していくので、参考にしてみてください。
5-1.奥様の不貞行為が原因で離婚に至り自宅の分与を拒否したことで揉めた事例
【事例内容】
この夫婦は、結婚中に奥様が不貞行為をはたらいたことが原因で離婚に至りました。
奥様側の原因で離婚に至ることになったことで、夫は「自身には全く非がないのだから自宅に関わる財産を妻に分与したくない」と主張したため、揉めてしまった事例です。
【解決方法】
結論から言うと、離婚に至った原因が奥様にあったとしても、『自宅に関わる財産を奥様に分与する』必要があります。
財産分与は結婚中の資産を清算するために行われるものであり、離婚原因が奥様にあるからと言って、その権利が剥奪される訳ではないためです。
「自身は被害者なのに、不貞行為をはたらいた方まで財産を受け取れるのはおかしい」などと不満を抱く気持ちは理解できます。
しかし、奥様の不倫が原因で離婚に至ったとしても、対象となる財産をきちんと奥様に渡すようにしてください。
5-2.夫の単独名義となる自宅を売却するかで、意見が食い違い揉めた事例
【事例内容】
この夫婦は、夫が単独名義となる住宅ローンを完済したあとに離婚に至ることになりました。
しかし、財産分与について夫婦で協議を行なっている最中に、夫が奥様に許可なく自宅を売却しようとしたため、揉めた事例です。
【解決方法】
自宅の名義人が夫の単独名義の場合、奥様に同意を得なくても売却を行うことができます。
基本的に、自宅の売却は名義人の意思で自由に行うことができるためです。
しかし、上記の事例のように、財産分与についての協議中に自宅が単独名義だからと言って勝手に売却するのはおすすめできません。
上記でも解説した通り、住宅ローンを完済した自宅は財産分与の対象になっており、夫婦どちらか単独名義であっても、双方で分け合う必要があるためです。
仮に、自宅があなたの単独名義で、奥様に同意を得ずに売却を行おうとした場合、奥様に『仮差押の申し立て』という『紛争が解決するまで自宅を売却できなくする法的公力のある方法』を実行されてしまい、自宅に係る財産分与の話し合いがこじれてしまう危険性があります。
このため、自宅の名義人があなたの単独名義で、売却したいと考えているのであれば、必ず奥様に相談・同意を得てから不動産会社に売却を依頼するようにしてください。
>>奥様に内緒で自宅を売却することが出来るのか?についてまとめた記事はこちらです。
5-2-1.実際に夫が奥様の同意を得ず、自身の単独名義の自宅の売却を行おとした際に、奥様に仮差押の申し立てを行われた事例
ここでは、実際に夫が奥様の同意を得ずに、自身の単独名義の自宅の売却を行おうとした際、奥様が仮差押の申し立てを行い、奥様側の要求が認められた判例を紹介します。
この夫婦は、夫が奥様に離婚を切り出しましたが、奥様が要求に応じず、別居することに対しても認めなかったため、別々に暮らすために夫が弁護士に相談を行ったうえで、同居している自身が単独名義の自宅の売却活動を行おうとしました。
しかし、奥様は自身が所有する『財産分与請求権や慰謝料請求権』を『被保全権利(債権やお金を請求する権利のこと)』として、夫が行った自宅の売却活動に対して『仮差押命令申立て』を行ったため、夫が「離婚や別居をする気がないのに、この申し立ては不法行為を構成している」と主張したことで裁判へと発展してしまったのです。
結果的に、奥様が行った『仮差押命令申立て』は、『被保全権利の存在』が認められ、自宅の保全を行う必要があるとして、この仮差押の申し立ての正当性を認めるとの判決が下されました。(東京地方裁判所判決/平成27年(ワ)第13855号)
上記のように、奥様側が離婚の要求に応じなくても、財産分与の請求権を理由に『仮差押命令申立て』が認められるケースがあります。
このため、離婚を機に自身が単独名義となる自宅を売却したいと考えている方は、上記のようなトラブルに陥らないためにも、きちんと奥様に相談し同意を得てから売却活動を行うようにしてください。
この辺り、どうしても協議が進まない場合もあります。
離婚成立までの手続きやご自宅の売却を含め、個別性が強いため、もっと詳しく聞きたい場合、『LINE公式の無料相談』や『電話相談』からお気軽にお問い合わせください。
>>念のため、私たち、アリネットのグーグル上の口コミはこちらのページにまとめてあります。
6.離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際の注意点
離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際は、以下の5点に注意する必要があります。
- 単独名義の自宅を奥様の同意なく売却しようとすると『仮差押』を申し立てられる可能性がある
- 財産分与には2年間の請求期間が設けられている
- 離婚後に不動産の名義人以外が住む場合は、名義変更を行う必要がある
- 本当に住宅ローンが残っていないかの確認を行う
- 離婚協議書等の書面を作成する
重要な内容になっているため、それぞれ詳しく解説していきます。
6-1.単独名義の自宅を奥様の同意なく売却しようとすると『仮差押』を申し立てられる可能性がある
奥様との婚姻解消を機に自宅の売却を検討している方は、必ず『奥様の同意を得てから売却活動を行う』ようにしてください。
上記でも解説した通り、財産分与を行う際に、奥様の同意なく売却しようとすると『仮差押』を申し立てられる可能性があるためです。
仮に、奥様に『仮差押の申し立て』を行われた場合、訴訟に時間を取られてしまううえに、円満な離婚に至らなくなってしまうかも可能性が高まります。
このため、自宅があなたの単独名義であっても、勝手に自宅を売却するなどの行為をしないようにしてください。
6-2.財産分与には、2年間の請求期間が設けられている
奥様に財産分与を行う際は、あなたが所有する資産を全て公開したうえで、夫婦同意のもとで分与する割合を決めることが重要です。
財産分与には、『婚姻関係解消後から2年以内なら相手方に財産の分与を請求できる期限』が設けられているため、元嫁が分与額に納得できなかった場合、離婚後に「再度分与をやり直して欲しい」と要求されてしまう危険性があります。
このため、奥様に財産分与を行う際は、現在所有している資産を全て公開したうえで、資産隠しなどの不正行為をせずに、奥様が受け取るべき額をきちんと渡すようにしてください。
6-3.離婚後に不動産の名義人以外が住む場合は、名義変更を行う必要がある
離婚後に不動産の名義人以外が住む場合は、必ず『名義変更の手続き』を行うようにしてください。
例えば、自宅の名義人が奥様で、あなたが新生活後も継続して住む場合、後々元嫁に勝手に売却されてしまい、住むところを失う危険性があります。
このため、現在自宅の名義人が奥様であったり、夫婦それぞれが名義人となっている場合は、自宅に係る財産を他の財産で奥様に分与したうえで、必ず『あなたの単独名義に変更する手続き』を奥様と行うようにしてください。
6-4.本当に住宅ローンが残っていないかの確認を行う
自宅に関わる財産分与を行う際は、『本当にローンを完済できているのか』の確認を行う必要があります。
非常に稀なケースではありますが、ローンを完済していたつもりが、まだ残っていたなどの事態も実際に存在するためです。
仮に、財産分与時に住宅ローンの残債が残っていることが判明した場合、『どちらがローンの返済をするのか』や『自宅に係る財産をどのように分けるのか?』などと奥様と揉めてしまう可能性があります。
このため、住宅ローンを完済したと過信せずに、住宅ローンの完済時に金融機関から交付される『抵当権抹消に関する書類』があるのか確認を行うようにしてください。
6-5.離婚協議書等の書面を作成する
離婚時に財産分与などについて夫婦で取り決めを行った際は、『離婚協議書』を作成することをおすすめします。
『離婚協議書』とは、『離婚の諸条件を取り決めるために作成する書面』のことで、この書類を作成しておくことで後々「この財産は私(妻)に渡すと言っていた」などの言った・言わないの水掛論に発展するリスクを防止することができ、離婚後の大きな損失を防げます。
実際にあった事例で、財産分与に関する取り決めをきちんと行っても、後々相手方が不服を主張することがありました。
そのため、相談に来られた方には必ず夫婦で決めた内容を『離婚協議書』に残すことを私たちはお勧めしています。
7.離婚時に住宅ローンが残っていない自宅の財産分与の方法についてのまとめ
今回は、新潟市でやった事例を参考に、『離婚時に住宅ローンが残っていない自宅の財産分与の方法』について、『離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際に起こり得るトラブルの事例』や『離婚時に住宅ローンが残っていない自宅の財産分与を行う際の注意点』を含めて詳しく解説してきました。
以下、『離婚時に住宅ローンが残っていない自宅の財産分与の方法について』のまとめです。
- 自宅に関わる財産を奥様に分与する際は、まず『財産分与の概要』を把握しておく必要がある
- 離婚時の財産分与後も自宅に住み続けるべきか、売却するべきかを見極める必要がある
- 自宅を売却して奥様に分与する際は、『仲介』を利用するのがおすすめ
- 『自宅を売却・現金化して夫婦で分け合う方法』か『自宅の不動産評価額分のお金を他の資産で奥様に分与する方法』のどちらか一方で奥様に自宅に関わる財産を分与できる
- 離婚時に住宅ローンの残債が残っていない自宅の財産分与を行う際に5つのポイントを押さえておくことで、後々トラブルに発展するリスクを軽減できる
離婚時に住宅ローンが残っていない自宅の財産分与を行う場合、『自宅を売却・現金化したり』、『奥様に自宅の不動産評価額と同等の財産を分ける』ことで、自宅に係る財産分与を完了することができます。
しかし、住宅ローンの残債が残っていない自宅であっても、奥様に分与する必要がないケースも存在するため、事前に『どのような財産が奥様に分与する必要があるのか』を把握しておくことが必要です。
事前に自宅に係る財産分与の概要を把握しておくことで、「このお金は奥様に分与する必要がなかった」などと不満を抱くリスクを減らすことができます。
これから住宅ローンの残債が残っていない自宅に係る財産を奥様に分与する方は、ぜひこの記事を参考にあなたの状況などを考慮したうえで、双方が納得のいく財産分与を行うようにしてください。
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その情報を基に離婚時のチェックリストをこちらのページにまとめておきました。参考にしてみて下さい。
これまで弁護士さんから聞けたことだけでなく、数多くの離婚時の自宅に関する問題を解決に導いてきた専門的な知識や経験があるため、あなたの状況や希望を考慮したうえで、『どのように自宅に係る財産分与を行うのが最適なのか?』などのアドバイスを行うことが可能です。
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