いつもありがとうございます。麻布十番・賃貸マンション、㈱リビングインの防犯設備士、管理業務主任者兼不動産鑑定士補の相楽です。
コロナウイルスの影響で6、7、8、9月と4ヶ月連続で自殺が増えているニュースも流れていました。2008年の経済危機とは異なり、内需産業が痛んでおり、シングルマザーや学生の方が影響を強く受けています。
さらに、川崎市高津区で交際相手に刺され、自宅のマンションで亡くなられる等つらいニュースも流れていました。実際にはこの二人だけでなく、家族、そして、このマンションに住んで居た人全員が被害者です。このように自殺だけでなく、事件によって事故物件になってしまうケースもあります。本当に嫌な世の中になってしまいました。去年の今頃はすごく楽しかったのに・・・。
さて、ここでは不動産絡みのトラブル案件を主に扱っていた元弁護士先生と一緒に、契約直前にソワソワして不安にならないため、事故物件の告知事項について、事前確認や注意点を考えていきます。ここで言う事故物件とは、『重大な欠陥のある物件や過去に自殺者が出た物件』を言います。最近、書籍やテレビのニュース、SNS・ネットで特集が組まれるようになってきて、知られるようになってきた言葉です。
はじめての東京でマンションを借り、新生活を送るなら、『事故物件』ではないか?そして、何が起きたのか等の確認は安心して暮らすために、絶対に必要だと思います。この言葉自体は以前からありましたが、芸人さんが使ったりすることで、最近急にクローズアップされるようになりました。もし、あなたが入居してから、そのマンションが『事故物件』と気づき、改めて別の物件を探したり、引っ越しするのは本当に大変です。
そのため、引っ越しを急いでいたり、よっぽどのことがない限り、お部屋の選択時・入居時に事故物件を避けるべきと思います。 特に、自分で霊感が強い方だと思っている方などは入居期間中、この事がずっとストレスや不安になり、楽しい毎日が台無しになるのは時間やお金の無駄になる可能性が高いため、注意が必要だと思います。
このページでは、『弁護士先生に聞いたオーナーや管理会社の賃貸人側の『契約時の告知義務(報告義務)』をはじめとして、あなたが事故物件に入居しないための方法を弁護士の立場からご説明しています。
最後に、事故物件かどうか分かりづらい場合など、「日管協短観」の「心理的瑕疵物件(事故物件等)による成約賃料の減額割合」や【建築士監修】内覧時に使える、住んでもトラブルが起こらなそうな事故物件の6つの判断方法はこちらにまとめています。自宅にいる時間が増えた環境下で個人的にはなおさらお勧めしませんが、こういった機会を上手に使い、利便性を生かした生活するのはアリなのかもしれません。
1.事故物件や瑕疵物件とは
賃貸物件を選ぶとき、家賃が異様に安い又は興味本位で『事故物件』は選ぶのは絶対に止めた方が良いと思います。なぜなら、もし、何も起きなくても、事故物件かもしれないという心理的なストレスが入居中にずっと付きまとい、『お引っ越しを通して、楽しい毎日』のいい流れを簡単に作ることが出来ないからです。
事故物件とは、『通常の物件とは異なり、何らかの問題を抱えている物件』を言います。問題のことを法律的には『瑕疵』というケースもあります。
事故物件には、以下のようなパターンがあります。
>>実際に事故物件に遭った3名の方にヒアリンを行いました。告知義務やその対策、隣で事故が起きてしまった時などまとめたページはこちらです。
1-1.物理的瑕疵
物件に物理的な問題があるケースです。
・資材に有害なアスベストなどの物質が使われている
・シロアリ被害が発生している
・部屋の床が傾いており、気分が悪くなる
1-2.心理的瑕疵
物理的には問題がなくても、通常人が『住みたくない』と感じる問題がある物件です。
・過去に自殺者が出た
・過去に殺人が発生した
・過去に孤独死が起こって、死体がずっと放置された
1-3.法律的瑕疵
法律や条令による制限がある場合や違法建築の場合などです。
・建坪率を満たしていない
・容積率が基準を満たしていない
・各種の安全基準、耐震基準を満たしていない
・火災報知器やスプリンクラーなどが機能しない、設置されていない
入居後、マンションの隣人の孤独死が発覚した時の引っ越し等の相談先やその際の注意点について、司法書士に聞いたページはこちらにまとめました。
2.告知義務(報告義務)とは
2-1.賃貸人には告知義務がある
建築基準法違反などの違法建築物を賃貸に出してはなりませんが、過去に自殺者が出たなどの心理的瑕疵のがあったとしても、賃貸に出し、募集すること自体は合法です。その場合、賃貸人はあらかじめ賃借人に瑕疵の内容を告げなければなりません。なぜなら、賃借人が瑕疵の内容を知り、受け入れた上で契約をしないと、賃借人が思わぬ不利益を受けてしまうからです。
賃貸人が賃借人に瑕疵の内容を告げる義務を『告知義務』といいます。基本的には、もしあなたがその事実を知っていたら、契約しなかった事を告知事項と言います。オーナーや不動産屋の告知義務が果たされないまま、あなたが事故物件を契約させられた場合、契約は目的を達成することができないため、合法的に解除でき、損害賠償の請求も可能です。
2-2.心理的瑕疵の告知義務の範囲
物件内で過去に自殺者が出たなどの『心理的瑕疵』のケースでは、基本的には『その部屋、または隣室で事件や事故が起こったとき』に告知義務が発生します。なお、実際の裁判例では、『集合住宅で隣室より遠い部屋で発生した事件や事故は告知義務がない』と判断されたものが多数です。
また、事件や事故の発生後いったん誰かが入居したら、その次の入居者には告知する必要がないとされています。さらに、事件や事故から3年程度が経ち、何も起こらなかった場合、告知義務はないと判断されるケースが多くなっています。
告知義務の有無の基準に関して、国土交通省が先日出したガイドラインを弁護士さんと話し合いました。まだ、案の段階で、これから本決まりですが、こちらのページにまとめておきました。
このように事件の内容によって、告知義務となるか、ならないかを判断できます。同じマンションの別の部屋で事故があった場合は?自然死の場合は?などはこちらです。賃貸マンションの事件・事故、告知義務はどこまで認められるのか?【元弁護士と考える】
3.告知義務を果した契約書の書き方や書面作成方法とは?
もし、あなたが過去の自殺などの瑕疵を知らされないまま契約させられると、この写真の女性のように借りた側には住んでいる間、ずっと大きな不安と不利益が及びます。 ごくまれに、隣人や友人から入居したマンションが事故物件であることを教えられることもあります。
その為、知らぬ内に事故物件を契約させられないために、オーナーや管理会社などの賃貸人側にしっかり告知義務を果たさせましょう。事故物件なのかどうかは契約前に契約書に記載やその他の『書面』を別途作成してもらう方法が一番有効で安心できると思います。
3-1.不動産会社に『物件状況確認書』を契約までに作成してもらう
物件状況報告書とは、『賃貸人が賃借人に対象物件の現状について報告し、互いに確認するための書面』です。以下のような内容を記載させて確認すると安心です。安全に引っ越し、安心して暮らすためにチェックしてほしいリストになります。
・過去に雨漏りが発生していないか
・シロアリ被害はないか
・アスベスト使用に関する調査をしたか
・増改築やリフォームの履歴について
・建物に傾きがないか
・耐震基準を満たしているか
・近隣に騒音や振動、臭気を発生させる原因がないか
・近隣にラブホテルや暴力団事務所などがないか
・これまでに自殺者が出ていないか
・過去に、殺人や火災などの事件が起こっていないか
・最近、孤独死が起こっていないか
物件状況確認書を作成すると、相手が虚偽を述べない限り、確実に事故物件かどうかを把握できるので、知らずに事故物件を契約させられる危険は避けられます。
3-2.事故物件でないことを保障する言葉を契約書に入れてもらう
契約書や重要事項説明書内に、『賃貸人は本物件について、物件状況確認書のとおりであることを保障する』とか、『相違があったときには契約の解除や損害賠償に応じる』などの文を入れてもらうとさらに安心です。
本来、不動産の売買等金額が大きな取引の場合に入れることが多い文言ですが、近年賃貸契約でも問題が大きくならないように、このような条件を入れているケースが目につくようになってきました。
4.事故物件を見極める方法
事故物件には以下のような特徴があるので、物件探しをするときのメルクマールにしてみてください。
4-1.賃料が相場より異様に安い
一般的に、事故物件は賃料が相場より安くなっています。心理的瑕疵の場合でいうと、過去に自然死や孤独死が起こったら1割程度、自殺者が出た場合には2~3割程度、殺人事件が起こったケースでは3~5割程度賃料が割り引かれるのが通常です。
以前、自殺志願者をTWITTERで集め、ニュースになった神奈川県座間市のアパートなどは今頃相当家賃を下げていると思います。他にも、『全入居者が集団服毒自殺を行ったアパートが家賃2.2万円で入居者募集中だから調べてみた』・・・など、色々と出てきます。
困るのは一見普通の物件でも、賃料が割り引かれている場合、過去に事件や事故が発生している可能性があることです。そのため、お部屋の内覧や契約の前には注意が必要だと思います。
>>建築士さんに『内覧時に現場で不快な事故物件かどうかを確認する方法』をまとめてもらいました。
4-2.募集広告に『告知事項がある』と記載されている
賃貸人には告知義務があるので問題のある物件の場合、広告内に正直に『告知事項あり』などと下の方に書かれているケースもあります。
4-3.なぜか一部にリフォームが行われている
室内で火災が起こったり、孤独死が発生して汚物等で汚れたりしたら、一部がリフォームされるケースがあります。内見した時に一部のみリフォームが行われている部屋などは物件を契約する際に、慎重に対応して下さい。
4-4.物件の名称が理由なく変更されている
物件内で事故や事件が起こると印象が悪化するので、イメージを回復するために名称変更されるケースが多くなっています。最近、外装のリフォームなどイメージチェンジもしていないのに、なぜか名称だけ変更されている場合、何らかのトラブルが発生した可能性があります。建物の館銘板が急に新しくなっているケースとか実は要注意です。
>>建築士さんに『内覧時に現場で不快な事故物件かどうかを確認する方法』をまとめてもらいました。
5.事故物件を知らずに借りないために
賃貸物件を借りるときには事故物件の見分け方を正しく知って避けることが本当に大切です。人によっては、家賃が安くなりがちな事故物件を好んで借りる方も中にはいます。ただ、このようなお部屋やマンションは、一度事故があるとそれが知れ渡り、似た様な困った人を集めてしまう可能性があるため、個人的にはお勧めしていません。
もし、同じマンションで再度似た事故が起きた場合、警察官や救急車、興味本位の人が頻繁に来ることでマンション全体の雰囲気が悪くなり、入居中にずっとストレスを抱え、オンもオフも充実した毎日を送りたいあなたの生活に何かしら影響を与える可能性が高いと思います。その為、賃貸契約の際に、担当者にしっかり物件状況報告書を作成してもらうと安心して契約でき、引っ越し後も無用のストレスを抱えることなく、過ごすことが出来ます。
今回、元弁護士の先生から聞いた内容は今後、物件探しや契約をするときの参考にしてみてください。参考に、麻布十番にある事故物件を実際に歩いたレポートはこちらです。他にも、慎重な方向けに、大島てるだけじゃない「事故物件」や「告知事項あり物件」の調べ方についてはこちらのページにまとめました。
最後に、不動産業者のウソではありませんが、報告しなかった告知義務違反について事件・事故物件以外にもあります。例えば、入居直後に気づいた隣人トラブルが告知義務違反になるかどうか、また、騒音トラブルが告知義務違反になるのか、そして、オンライン内見で引っ越しを決めた場合の告知義務について、弁護士に確認しています。この手のトラブルはルールが変わった時や繁忙期などの忙しい時期によく起きています。
例えば、洪水や大雨発生時のハザードマップを用いた説明に関しても2020年8月末から義務化されています。この辺りも今後事件発生時には問題になるかもしれません。念のため、契約前にご自身でキチンと確認しておいてください。
最後に、国土交通省が事故物件の告知義務について、やっとガイドラインを出したので私たちなりの理解を含め、その内容をこちらのページにまとめておきました。よっぽどのことが無いと、契約後のキャンセルは出来ない部屋探しの経験が少ない人など、慎重に進めて下さい。
また、これまでの相談事例を基に、遠方への引っ越しや部屋探しの経験が少ない方向けに、トラブルを未然に防ぐ三つの注意点をこちらにまとめておきました。
なお、6,700件を超える部屋探し・引っ越しの失敗例の中には、事故物件の取り扱い等をあいまいなまま契約してしまう不動産会社の話もいくつもありました。 そのため、貸す側も借りる側も事故物件に関するキチンとした知識を持たないまま契約してしまい、あなたが後悔することがないよう、正しい知識を持った不動産会社で、マンションなどの契約を行うことを私は強くお勧めしています。
【元弁護士と考える】シリーズ、告知義務の必要な事故物件を選ばないための賢い対策他
>>【元弁護士と考える】賃貸契約後に『事故物件』と判明、解約や損害賠償できます?
>>【元弁護士と考える】不動産屋からウソを教えられた時の対応は?
>>【元弁護士と考える】騒音、地震、虫などないと言われたのに、嘘だったら
>>【元弁護士と考える】仲介手数料の支払い無効裁判(2019年夏)
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その他、事故物件に関する記事はこちらです。
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その1)
>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その2)
>>稀に相談される事故物件の夜について、麻布十番エリアにあるものを実際に見に行ってきました。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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