リースバックは、『不動産売買と賃貸借契約をひとまとめにしたサービス』のこと

こんにちは、住まいのお悩み無料相談、アリネットで住まいのお悩み相談を受けている宅地建物取引士兼住宅ローンアドバイザーの大和田です。

大和田面談男性

1.リースバックについての基礎知識

ローン破綻時の面談

リースバックの基礎知識について解説します。

1-1.リースバックとは

リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約をひとまとめにしたサービス(取引形態)のことを言います。「セール・アンド・リースバック」と呼ぶこともあります。

その結果、自宅を売却して売却金を得ながら、引き続き賃貸物件として今の家に住み続けることが可能です。

自宅の売却先は主にリースバック運営会社で、売買契約と同時に賃貸借契約も結ぶことになります。不動産会社や投資家の時もあります。

一般的に、売買契約に比べると契約がまとまるスピードが早いため、以下のようなニーズを持った人から注目を浴びています。

・短期間でまとまったお金が欲しい
・住む環境を変えたくない
・自宅を手放したくない
・自宅を売却したことを他人に知られたくない

また売却時の契約内容によっては、将来的に自宅を買い戻すこともできます。

そのため、今は金銭的に住宅ローンの支払いが難しいけれど、また自宅の所有権を得たいといった時にも使える取引形態です。

1-2.リースバックが注目を浴びている理由

リースバックは近年注目を浴びており、実際、利用者が増えています。

国土交通省が2021年12月10日に報道資料として発表した「リースバックについて」によると、リースバックの取引件数は下記のように増加しています。

・2016年:買取256件、仲介10件
・2018年:買取745件、仲介175件

わずか2年で買取件数は約3倍、仲介に至っては17倍以上の増加です。

このような背景から、今後もしばらくはリースバックという取引形態は増えていくと思います。

リースバックが増えている理由は、下記のようなものが考えられます。

・住宅ローンの支払いが厳しい人が増えている。
・住宅ローン借入時の高齢化等で十分な資金を用意できない人が増えている。
・医療費や老後資金としてまとまったお金が必要な人が増えている。
・終活や相続に向けての整理として、リースバックを活用する人が増えている。
・メディア等で「リースバック」が取り上げられることが増え、認知が高まってきている。

1-3.リースバックができないケースとは

リースバックは、戸建てや土地、マンションなど一般的な不動産ならば全て対象になります。

しかし、状況や条件によってリースバックできないケースがあるので、例を下記にまとめました。

・住宅ローンがオーバーローン状態で、住宅売却後も残債が出る可能性が高い。
・収入が安定しておらず、賃貸契約を結ぶのが難しい。
・不動産が共有名義になっており、名義人全ての同意を得るのが難しい、もしくは手間がかかる。
・不動産にニーズ(流動性)がない。
・土地に借地権がついている。
・土地が市街化調整区域にある。
・建物が既存不適格物件(現行の建築基準法違反、再建築不可)である。
・建物に瑕疵(造成や設備等の欠陥、耐震強度不足、シロアリが発生しているなど)がある。

1-4.リースバック3つのステップ

リーズバックを行う際、具体的には下記の3ステップで進みます。

1-4-1.自宅の売却

物件を査定してもらい、売却額に納得したら売買契約を交わして売却します。所有権はリースバック運営会社に渡ります。

1-4-2.賃貸借契約の締結

リースバック運営会社と賃貸借契約を結びます。基本的には期間を決めて住むことになる、定期借家契約となると思います。

長く住みたい場合は、契約更新や再契約可能な契約をしておいてください。

また将来的に買い戻しの希望がある場合も、この時点で「再売買予約権」を契約事項に含めておくことが重要です。

1-4-3.引き続き今の家に住める&買い戻しを希望する場合は買い戻し

売却と賃貸借契約の手続きが終われば、引き続き今の家に住むことができます。

所有権はありませんが、生活環境を変えずに住み続けることができるのです。

なお、買い戻しを希望する場合は、契約時の条件にしたがって買い戻し(売買契約)をすることができます。

2.リースバック3つのメリット

破綻解消で家族と過ごす日常

リースバックをする3つのメリットは次の通りです。

2-1.まとまった現金が手に入る

リースバックのメリットは、自宅の売却によりまとまった現金が手に入ることです。

しかも住宅を買い取ってくれる人を見つける等のステップがないため、一般的な売買契約よりもスムーズに進みやすいです。

そのため、より早く現金を手にすることができます。

お金の使い道も自由で、子どもの教育資金、生活費など使途に制限はありません。

この仕組みを利用して、人気の高齢者施設を予約。

リースバックして申し込み費用をまかないながら、施設に空きが出るまで、賃貸借契約で自宅に住み続けるといったケースが増えています。

2-2.住宅ローン、固定資産税、リフォーム費用等が不要になる

住宅ローン、固定資産税、リフォーム費用など、住宅を所有することにより発生するコストが不要になります。

その分家賃が発生しますが、住宅ローンのように高額な借金を抱えるわけではないので、精神的にも余裕が出ると思います。

2-3.住み慣れた家、環境で生活を続けられる

リースバックであれば、住み慣れた家、環境で生活を続けられるのがメリットです。

引っ越しのコストや負担もありません。

特に子どもの学校や近所の人との関係も、そのまま続けられるのは重要ではないでしょうか。

また、こちらから言わなければ基本的に自宅を売却したこともバレないので、ストレスも少ないと思います。

3.リースバック5つのデメリット

老後に生活・ローン破綻

リースバックをする5つのデメリットは次の通りです。

3-1.売却額が市場価格よりも安くなりがち

リースバックは一般的な不動産売買よりもスピーディーに進みやすい反面、売却価格が市場価格よりも安くなる傾向があります。

なぜならば、自宅は売却後市場に流通させるわけでなく、競争原理が働かないからです。

また全てのケースではないにしても、リースバック運営会社は、自宅を売却せざるを得ない経済状況の人と賃貸借契約を結ぶリスクも負います。

とはいえ、リースバックではそのまま住宅に住み続けられるので、普通の不動産売買で必要な引っ越し費用や賃貸契約に関わる初期費用や手間が大きくかかりません。

こうした点も踏まえて、リースバックを検討すると良いと思います。

3-2.家賃の支払い負担がある

リースバックを利用すれば、住宅ローンの支払いや固定資産税の負担等はなくなりますが、家賃の支払いが発生します。

家賃の金額や住む期間によっては、将来的に大きな負担となる可能性もあるので、資金計画は慎重に行いたいところです。

特に注意したいのは、賃貸契約を数年ごとに更新する契約の場合です。

更新時に家賃が引き上げられるケースもあり、更新時に家賃が支払えなくなって引っ越しという事例も出ています。

こうしたことを避けるには、リースバックの契約時に更新頻度や更新料についてあらかじめ決めておくことです。

3-3.住み続けられない可能性がある

リースバックの賃貸借契約に期限が設けられ、ずっと住み続けられないケースもあります。

契約時に定期借家契約を結んで、再契約をするつもりが断られるといった経験をしている人がいます。

定期借家契約の場合、貸主側の都合で再契約を拒否しても問題ないので、借主は諦めるしかありません。

もっと大変なケースでは、不動産会社が勝手に売却を決めて、賃貸借契約の更新ができないということもあります。

こうしたことを防ぐには最初のリースバック契約時に、賃貸借契約の期間、再契約や更新の条件について取り決めをして、契約書に明記してもらうことが重要です。

3-4.相続人と揉める可能性がある

リースバックすると自宅の所有権を手放すことになるので、本来自宅を相続予定だった相続人と揉める可能性もあります。

相続人が自分の配偶者や子どものみでよく話ができている場合は大丈夫かもしれません。

しかし、子どもが自立してあまり関係性が良くなかったり、家族以外の親族が相続人だったりすると、揉めやすいです。

リースバックは現在の所有者の権利(推定相続人の同意は不要)とはいえ、面倒なトラブルを起こさないことに越したことはありません。

よって、相続人との関係が複雑な場合は特に、事前に相談、報告しておくことをお勧めします。

3-5.諸費用、修繕費の負担で揉めることがある

リースバック後も今の家に引き続き住むことができるものの、その所有権はリースバック運営会社(不動産会社、投資家等)にあります。

家の借り手という立場になるので、通常の賃貸住宅と同じような義務を負います。

例えば、修繕費や原状回復費用がその一つで、住んでいる間につけてしまった傷や汚れ、破損等は、元の状態に戻さなければなりません。

ただ、ここで非常に厄介なのが、元々所有者として住んでいたため、どこまで原状回復義務を負わないといけないかという線引きです。

そこを曖昧にリースバック契約をしてしまったがために、後で高額な修繕費や原状回復費用を請求されて揉めることがあります。

またリースバックで賃貸借契約を結ぶ際に、測量や耐震補強費用、各手数料等を請求されるケースもあるので、事前に必要な費用は全て出してもらって確認するようにしてください。

なお、印紙税、抵当権抹消手続き(住宅ローンを組んでいる場合)費用は、リースバックで一般的に必要な経費なので、請求されても問題ありません。

いずれにしても、リースバック契約を結ぶ前に、必要な諸費用、原状回復の責任や負担の線引きをあらかじめ明確にしてもらうようにして欲しいです。

原状回復費用について線引きが難しい場合は、特約をつけてもらう手もあると思います。

4.リースバックで失敗やトラブルを避ける3つのポイント

相楽 面談

リースバックで失敗やトラブルを避けるには、次の3つは最低限確認してください。

4-1.契約内容をよく確認する

兎にも角にも、最初の契約内容をよく確認することが重要です。特に下記の点を明確にしておいてください。

・自宅の売却価格(市場価格と大きな乖離はないか?)
・契約期間と再契約や更新に関する条件
・家賃(再契約や更新後も確認する)
・売却時の諸費用(内容、金額は適正か?)
・買い戻し可能か(希望する場合)
・修繕費、原状回復費の責任範囲、金額(線引きが難しい場合は特約をつけてもらう検討をする)

4-2.家賃負担をシビアに考える

リースバック後の家賃が負担にならないかを、シビアに考えて欲しいです。

リースバックでの賃貸借契約では、市場価格よりも家賃が高めに設定される傾向にあります。

リースバックの家賃は、下記の計算式を使って目安を出してください。

【家賃=自宅の売却額×7~13%/12ヶ月】

本当にその家賃を払い続けられるか、思いの外長期間支払うことになっても問題ないか。

更新後の家賃も含めて検討してください。

また、将来的に買い戻したいのであれば、家賃を支払いながら買い戻し資金を用意できるかも考えないといけません。

4-3.実績豊富で信頼できる不動産会社を見つける

リースバック契約について実績豊富で、信頼できる不動産会社を見つけることが何より大切だと思います。

リースバックで必要な契約は一般的な不動産売買契約と同じと言えども、その後の賃貸借契約など特殊な面もあるからです。

不慣れな不動産会社や不親切なところだと、後出しで必要な諸経費が出てきたり、諸費用を請求される可能性もあります。

そうしたリスクを少しでも減らすために、よく調べて不動産会社を見つけるようにして欲しいです。

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相樂 喜一郎

この記事を書いた人

相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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