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こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す六本木の不動産屋、(株)リビングインで住まいのトラブル相談・提案を担当している管理業務主任者兼宅地建物取引士の相樂です。
今年5月、アリネットに寄せられた相談で、大家さんとの関係が上手くいかずに引っ越しを考えているものの、家賃問題でトラブルになっているというものがありました。同じ物件の上層階に住んでいる大家さんが少しおかしな人で、性格が合わずにストレスが溜まっていったそうです。
1.大家さんが原因で引っ越ししたいという相談者
「大家さんは何かと口うるさく、お節介なタイプですね。頼んでもいないのに夕飯のお裾分けや果物などを押し付けてきて・・・。好き嫌いとかあるじゃないですか。しかも、他人が作った料理とか、今の時期、あんまり積極的に食べたくないんですよ。で、いらないって言ってるのに無理やり押し付けてくるんですよね。お返しとかしなきゃいけないだろうな、とか考えるとただただ煩わしくて。あと、世間話が大好きで、捕まると噂話とか愚痴とかが止まらなくてしんどいし、自分のことを根掘り葉掘り聞いてくるんです。彼女はまだできないのか、とか。もう放っておいてほしいのに、本当にしつこくて・・・欲求不満なんですかね?」
大家さんという立場ということもあり「迷惑なのでやめてください!」とキッパリと拒むこともできず、引っ越してしまえば解放されると考えた相談者様。しかし、すぐに退去したいと不動産会社に伝えると、思いもよらない言葉が返ってきました。
1-1.引っ越したくても簡単に引っ越せない事情とは?
大家さんとの相性が悪く迷惑行為に嫌気がさした相談者様が不動産会社に引っ越したいと伝えると、「契約期間が満了していないので、引っ越しても期間中の家賃は継続して発生してしまいます」と言われてしまいました。
住んでもいないのに家賃だけ支払い続けなければならない、ということです。「そんな話は聞いてない!」と相談者様は憤慨しましたが、契約書を読み返すと確かにそう書いてありました。
1日でも早く家を出たいというのが本音でしたが、貯金が十分にあるわけでもなく、住んでいない家の家賃を払うのはもちろん嫌で、困ってしまった相談者様。周りに不動産業界に詳しい知人や友人などもおらず、たまたまサイトを見て、多くのトラブル事例を紹介しながら解決策も提示していた私たち、アリネットに相談してみたとのことでした。
2.トラブルの原因は契約内容の見方が甘かったこと
今回のトラブルの原因は、大家さんの人となりを事前に見抜けなかったこと・・・ではありません。こういった住宅関連のトラブルは事前にある程度トラブルが起こり得る因子があるかどうか契約書をチェックして未然に防ぐことができます。ほとんどの人がこのチェックを怠ることでトラブルに巻き込まれてしまい、サイトで極力事例を載せ、引っ越し前の契約内容の確認の重要性を主張しています。
しかし、大家さんの人となり、性格に関しては、事前に把握するのは極めて難しいです。引っ越し前に挨拶できれば第一印象でなんとなく雰囲気が分かりますが、第一印象と実際の性格が合致するとは限りません。また、引っ越し前には大家さんと会わず、引っ越してからの挨拶で初めて顔を合わせるというケースも多く、事前にトラブルを予想するのは困難です。そもそも、同じマンションに住んでいないケースも多々あります。
2-1.今回は何がトラブルの原因となったのか?
それは、相談者様が「契約内容についてしっかりと掌握していなかったこと」と「契約期間が満了する前に引っ越す可能性を考えられていなかったこと」です。
引っ越しの際に交わす契約書は、細かい文字がギッチリと並んでいて、正直全て読んで理解するのは面倒です。読み合わせで不動産会社から説明があっても、右から左に聞き流してしまう人は少なくありません。
また、不動産会社によっては、借り主にとって都合の悪い契約内容の部分をわざと割愛して説明することもあります。そのため、自分の目で契約書を隅から隅まで読み、理解することが大切です。
例えば、おかしな内容が書かれていないかどうか、自分だけでなく家族や知人にも読んでもらってからサインするぐらいの慎重さがあれば、多くのトラブルを防ぐことができます。
3.諸機関にアドバイスを聞いてみた
今回のトラブルについて、各機関にアドバイスを求めてみました。契約期間満了までの家賃について、支払わなければならないのか、その必要はないのか、都庁の賃貸ホットラインと宅建協会から回答があったので紹介します。
3-1.都庁の賃貸ホットラインの回答
都庁の賃貸ホットラインからは「大家さんとのトラブルの原因が大家さんにあるのであれば、契約満了までの家賃は支払う必要は無い」との回答が得られました。
ただ、大家さんにトラブルの原因があることを明確に証明できないと難しいとのことでした。大家さんの言動を撮影、録音したり、実際押し付けられた物を取っておいたり写真に収めたりして、迷惑行為の証拠を集めておくと、後々有効だそうです。
3-2.宅建協会の回答
宅建協会からの回答は「大家さんが起因のトラブルで、物的証拠などがある場合、引っ越し費用を請求できる可能性もある」というもので、契約期間満了までの家賃免除のみならず、引っ越し費用まで請求できるかもしれないということでした。
ただ、宅建協会も「大家さんがトラブルの原因である証拠」が必要と言っていますので、証拠集めは必須だということが分かりました。
3-3.アリネットとしての意見
弊社の意見としては、やはり契約内容や期間について、そして家賃についての確認や認識が甘かったのは反省点として今後に生かしていただきたいとお伝えしました。ただ、今回の件については今更どうしようもありません。どうにか残った契約期間の家賃支払いを無しにさせるためにできることを考えました。
3-3-1.まず、証拠をしっかりと確保する
レコーダーや小型カメラなどを準備します。それから、大家さんから押し付けられた「いただきもの」も、写真に撮っておきます。そして、大家さんはしばらく泳がせておいて、何か押し付けられた時や世間話に捕まった時など、その記録を残します。(この時、相談者様はやんわり断るなど、嫌がっているそぶりを見せるのがポイントです)
3-3-2.大家さんにハッキリと迷惑行為をやめるよう伝える
上記の方法で証拠が十分に取れたら、大家さんに書面などを用い、止めるように伝えます。書面や対面でもこの様子もできれば、記録しておきます。
3-3-3.その後も迷惑行為が続くなら、証拠を揃えて不動産会社へ
「引っ越したい理由は大家さんの迷惑行為なので大家さんに非があるのでは?」とかけあってみます。証拠を基に話をされれば、ほとんどの不動産会社が何かしら動くと思います。
これで不動産会社が折れなければ、「でるところにでる」と裁判を匂わせると効果的です。東京都であれば、以下、都庁で不動産取引(売買・賃貸)のうち、宅地建物取引業法の規制対象ついての相談が出来ます。
・電話相談(推奨)
都庁開庁日 9時~17時30分
指導相談担当 03-5320-5071(直通)
・面談による相談 ※要予約(電話による事前予約制)
予約は相談日の1週間前から電話で受付(相談日の1週間前が都庁閉庁日の場合は、直前の開庁日から受付します。)
(電話予約)
都庁開庁日 9時~17時30分
指導相談担当 03-5320-5071(直通)
(相談窓口)新宿区西新宿2-8-1 都庁第2本庁舎3階北側 不動産業課内
(相談時間)都庁開庁日 10時~12時、13時~16時(面談時間は30分)
実際裁判を起こすとなると、民事になりますし、弁護士の費用負担が大きいのでメリットはほとんど無いケースが多いです。しかし、不動産会社からすると、登録・監督所から指導が入ったり、訴えられると、記録に残ってしまい、実務上厄介なのでしっかり対応してくれるはずです。
4.大家さんとのやりとりなどを記録して不動産屋に相談
今回の相談者様は私たちのアドバイス通り、大家さんとのやりとりや無理やり押し付けられた「いただきもの」を写真に収め、不動産屋に相談したそうです。
すると、不動産会社は「それとこれとは話が別。契約書に明記してあるし、大家さんに非があったとしても自己都合の引っ越しだから期間満了までの家賃は払っていただかないと」と渋ったとのこと。
そこで、「裏取りを含め、場合によっては法的手段も厭わない」と少し強気に出てみたら、不動産屋さんから、大家さんに迷惑行為をやめるよう言ってくれるという形で一旦落ち着きました。
それ以降、なんと大家さんからの干渉が無くなったと、相談者様は少し信じられないような顔で教えてくださいました。不動産会社から何を言われたのか分かりませんが、よほどキツく言われたのか、何か脅されたのか、大家さんはすっかり大人しくなったそうです。
相談者様の引っ越したい理由は単純に大家さんの過干渉と迷惑行為だったので、その理由が無くなり、そのまま契約期間満了まで住み続けることにしたと仰っていました。
「ただ、こんな嫌な思いをしたわけですし、大家さん本人はやっぱり好きになれないので、期間満了になったら即引っ越します」とのことで、このトラブルは一旦収束しました。
5.私たち、アリネットから読者へのアドバイス
これから部屋探しをされる方で引っ越し後のトラブルを心配している方にアドバイスをお送りします。前述の通り、トラブルの多くは引っ越し前にしっかりと契約書や条件を確認しておくことで避けられます。騒音、異臭、室温、日当たりなど、部屋の条件や立地による問題の多くは内見をしっかりすることで予想できます。しっかりとポイントを抑えておくことで事前に回避できるのです。
しかし、実際に引っ越してみないと分からないことも沢山あります。今回の大家さんの件もそうですし、特に「人」が絡んでくるトラブルは引っ越して初めて知ったというケースが多いです。また、引っ越した後に近所で工事が始まった、とか、引っ越した後に入居した住人とのトラブルに巻き込まれた、とか、後から発生するトラブルもあります。
そのため、捺印時には、契約期間満了前に引っ越す可能性は十分あると思い、契約内容を確認した方が良いです。
契約期間や家賃の支払いについて、どのような取り決めとなっているのか、退去・解約予告はいつまでにするのか等契約書をしっかりと読み、疑問に思ったことや不明な点は契約前に担当者に確認し、全て解消した方が良いと思います。
これまでの経験から、特に契約を急かしてくる、質問に対して、説明をしたがらない不動産会社や担当には要注意です。契約書をよく読ませず、考えるスキを与えず、早く契約を結ばせ、支払いを済ませようとしてくる担当者は何か後ろめたいことを隠している可能性が本当に高く、トラブルになります。
個人的なおすすめは、面倒くさがらず、当日ロクに契約書を読まない状態で安易にサインすることなく、一度持ち帰り、じっくりと読んでおかしなところが無いか確認する事です。又は、契約日前に契約書をメールやLINE等で送ってもらい、確認してから契約した方が良いと思います。他にも、他の人に確認してもらい、変なところがあれば指摘してもらっても良いです。
住居に関する契約は人生に直接関わってくる重要なものなので、適当に考えず、面倒でもしっかりと隅々までチェックして、安心できる状態で締結してください。
最後に、部屋探しの経験が2回以下の方に特に、読んでほしい4,600件の失敗談を基に作った内見時のチェックリストはこちらのページです。人気のある他社の内見チェックリストも同様にまとめています。事故物件を調べ、見て来ましたが、実際に全てを網羅することはできません。そこで、建築士さんに住んでも良い事故物件の内見時の見分け方を教えてもらいました。念のため、確認し、内見に行ってみて下さい。他にも、今回同様、最近、お客様に聞かれた「内見の申し込み後のキャンセルって、罰金ありますか?」についてはこちらのページにまとめました。
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念のため、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法をレクチャーしてもらいました。最近流行っているカスタマイズ賃貸についても、こちらにまとめました。不動産トラブル専門の弁護士による、契約直後の事故物件発覚時の告知義務違反等の対応についてはこちらのページにまとめました。
>>賃貸マンションの騒音問題を避けたい方向け、内見前の構造や間取り確認と引っ越し後の対策まとめ
>>マンションの内見後に入居申込をしたが、罰金無しでキャンセルはできますか?
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