1.解約引きとは
契約時に支払う保証金のうち、退去時に借主へ返還されないお金のことです。契約時に支払うのが保証金ではなく、敷金の場合は敷引金(シキビキキン)とも言います。解約引きも敷引金も同じ意味と考えて大丈夫です。
たとえば、保証金が25万円で解約引きが10万円の場合、契約時に25万円を払い、退去時には解約引きとして10万円差し引かれて、15万円が返還されます。
この10万円は大家への礼金や、原状回復費用となるのが一般的です。大家は10万円を使って、退去後にお部屋のクリーニングや原状回復を行うので、入居者にとっても安心のシステムでもあります。
ただし、例えば、以下のようなケースなどで極端な原状回復が必要となった場合はあらかじめ決められた解約引き以上の修理費を別に請求される可能性がありますので、気をつけて下さい。ここでトラブルになりやすいのが、解約引き(敷引き)を何にいくら充当したのかを明示しないという悪しき習慣があることです。
1-1.自分で清掃を行った場合に関わらず、清掃業者はオーナー指定の業者で行うため、一切減額や返金はない
居住年数の長短に関わらず、自分で清掃を行った場合に関わらず、清掃業者はオーナー指定の業者で行うため、一切減額や返金はないという特約に、過去の裁判では合理的ではないと判断されるなど否定的な雰囲気があったことで、関西圏では契約者に分かりやすく明示して契約をしてもらえるような敷金制度が広まってきています。
- タバコのヤニ汚れが原因でお部屋中の壁紙を張り替えなければならない
- 家具を引き摺るなど、通常使用以上に傷ができている
- 窓ガラスにヒビが入っている(原因によっては保険の適用が可能ですので、管理会社に確認してみて下さい。)
1-2.解約引きがあることそのものはよほど高額でない限り合法?
解約引きがあることそのものはよほど高額でない限り合法ですが、東日本よりも西日本に多い慣例です。本来、敷金の意味合いとしては返ってくるお金なのですが、西日本では特約によって敷金の一部が返還されないようになっています。
東日本と西日本の慣習によって意味合いが異なるため、転勤などでお引越しをされる場合には、念のため意味合いの確認をしておくことをオススメします。このシステムは東日本の方からすると理解に苦しむかと思いますが、最初から返還されないという意味でいくと「礼金」の感覚と同じです。
解約引きがある分、礼金がないので、もし『解約引き』も『礼金』も請求されていた場合は、その理由や内訳などをしっかり大家や仲介の不動産会社に聞いてください。
よほどの常識はずれな金額でなければ全て合法とみられるため、契約後に「言った」「言わない」問題を防ぐためにも契約内容のチェックはもちろんのこと、契約前に担当の営業マンに質問をするようにしてください。
2.解約時にトラブルになりやすいポイント
後々、トラブルにならないために、契約時に以下のポイントをしっかり確認し、特に返還する金額など大切な部分は契約書に記載してもらうようにしてください。
- 返還されるタイミング
- 返還の金額
- 変換されない可能性やその条件(お部屋内でタバコを吸うなど)
万が一、当社取り扱いのお部屋で、契約にわかりにくい点がありましたら、いつでも私たちにご相談ください。
3.民法改正によって敷金の取り扱い方が変わった
2017年5月26日に民法の債権法の改正法案が成立し、2020年4月に施行されるようになりました。そのため、それ以前の契約と今の契約書とでは条文が大きく異なっている部分や慣習にも大きな変化を与えています。そのため、今までの敷金、保証金、礼金、敷引き金(解約引き)といった制度にもメスが入っていく可能性がありますので、ご紹介しておきます。
改正民法622条の2(敷金)
3-1.賃貸人は、敷金を受け取っている場合
賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
3-2.賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しない場合
賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
これはつまり、“敷金”と“保証金”というように表現が異なっていても、全て“敷金”として定義しますという意味になります。返金についても新民法で規定されていますので、今後はトラブルになりにくい“敷金”や“礼金”が増えていくのではないかと思います。
担当 馬場
▶︎関連用語:原状回復、退去立ち合い、退去費用、保証金、補修費、敷金、鍵交換費
あなたの大切な人生と平穏が守られますように、これからも私たちは引っ越しの失敗談をベースに、賃貸の専門家集団として、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
10年間、ハイツをお借りして、引っ越すのですが、契約当初、保証金30万、解約引30万と記載してあります。解約引きは仕方ないですが、保証金は返金されるのでしょうか?10年間住んでいたので押し入れの、ふすまが木が抜けてます。お教えください?
天野さん、
コメント、ありがとうございます。
今日、明日中にきちんと確認し、回答いたします。
少々お待ちください。
天野様、
お世話になっております。頂いた質問に関して、メンバーと話しました。
1.賃貸マンションで言う保証金とは?
保証金とは、マンションを借りる時に退去時の修繕費として、大家さんに事前に預けておくお金で敷金と似ています。違いは敷金は未払いの家賃や原状回復工事代金を控除し、差額を返金します。一方、保証金は敷引きという方法で精算します。
2.さらに、解約引きの意味は?
解約引きは当初、契約時に貸主に支払った保証金や敷金の内、退去時に返金されない金額を言います。その為、今回解約引きが30万円となっている場合にはその金額は返ってきません。ちなみに、保証金に対して、解約引きがあり、敷金に対して、敷引きがあります。解約引きは西日本で多く、保証金30万円、解約引き30万円の場合は退去時に返金される金額は0円になります。結果、解約引きは礼金のような意味合いもあるようです。ただ、退去後の原状回復工事代に使われるため、10年お住いになった現在のご自宅の状態次第で30万円では足りない部分に関しては別途請求される可能性があります。
念のため、償却金について、こちらのページでまとめてあります。
3.退去後、保証金が返金されるのかどうか?
下記、原状回復費の一部に充当されますが、30万円から工事代金を差し引いた分は戻ってくると思います。ただ、原状回復工事が30万円を超える場合には逆に請求されることになります。
4.押し入れのふすまの木が抜けている事が原状回復工事でどのような扱いになるか?
詳細な状況がどのようなものか分かりませんが、経年劣化以上の物であれば、退去時の負担対象になります。ただ、通常の利用により、ふすまの木が抜けているようであれば、負担の対象にはなりません。
以上です。今後の参考になれば、幸いです。