C.解決事例(お客様の声)

告知することなく、借主に1か月分の仲介手数料を払わせ無効になった裁判事例

下記、他の記事でもご説明しましたが、不動産業者が借主に仲介手数料として、宅建業法の上限である「1か月分の仲介手数料(宅建法上の上限)」を負担させる例が多々あります。

今回は、不動産専門でトラブル対応をしている元弁護士の福谷さんと2019年に出た判例を基にその辺り、一緒に考えました。

>>質問:賃貸マンションを契約する時の仲介手数料って、いくらですか?

世間一般では、「不動産賃貸の仲介手数料の相場は賃貸料の1か月分」と思われているケースも少なくありません。

しかし、2019年8月、最大手の一社である東急リバブルが仲介して、借主に1か月分の仲介手数料を負担させたケースにおいて「借主が承諾していない」として、仲介手数料の返金を求める判決が出ているので、今回ご紹介します。

1.仲介手数料の返金を求めた裁判の概要

この事案では、入居者の男性が東急リバブルに不動産賃貸の仲介を依頼し、2013年1月8日頃に入居の申出をしました。東急リバブルの担当者は1月10日に「契約締結日は1月20日です」と連絡を入れました。

その後、入居者は1月15日に敷金などを支払い東急リバブルは借主から「仲介手数料1か月分の負担をする」という承諾をとりました。

問題は「入居者が賃料1か月分の仲介手数料を払うことを承諾していたかどうか」です。国の告示によると、「『入居者からの仲介依頼前に』仲介手数料1か月分の負担をする承諾を得る必要がある」とされています。

そこで、この裁判では『仲介依頼時期』が問題となりました。裁判所は不動産会社の担当者が入居者へ「契約締結日は1月20日です」と伝えた時点(1月10日)に仲介が成立したと認定しました。

ところが、その時点ではまだ入居者は「1か月分の仲介手数料の負担をする」と承諾しておらず、承諾したのは1月15日、入居者が敷金を支払い、東急リバブルが仲介手数料に関する明細書を明示したタイミングと認定されました。

そこで本件では「仲介が成立したとき(1月10日)にまだ入居者が『仲介手数料1か月分を負担する』という承諾をしていなかった」ため、1か月分の仲介手数料が無効となり、東急リバブル側に返金が命じられました。

2.判決が今後の賃貸借契約の現場に与える影響

今後は判決の影響で、借主側に1か月分の仲介手数料を負担させるときには不動産会社は早期に「1か月分の仲介手数料を負担する」という承諾を得るようになると予想されます。また、借主側に仲介手数料の半額を求めないケースも増えてくる可能性があります。

3.仲介手数料ゼロは違法ではないがリスクも

宅建業法は不動産賃貸における仲介手数料の上限額を「国土交通大臣が定める」としており(宅建業法46条)、国土交通省の告示によるとその上限は「1か月分の賃料の1.1倍」とされています。

ただし「一方、当事者が承諾していれば、仲介手数料をそちらの当事者に全負担させてもかまわない」とされているので、貸主が納得して仲介手数料を全負担すれば、借主の負担すべき仲介手数料は0円となります。

よって、仲介手数料0円の物件は違法物件ではなく「仲介手数料ゼロ=詐欺」というわけでもないので、過度に警戒する必要はありません。

ちなみに、仲介手数料がゼロの場合、上記で説明したように物件の賃料等に上乗せされている可能性がありますし、他にも以下のようなリスクがあります。

4.仲介手数料以外の費用が請求される

借主側の仲介手数料ゼロ物件では「出張費」、「事務手数料」などの「仲介手数料以外の費用」を請求されることがあるので要注意です。不動産会社はこれらの費用を余計に受け取ることにより、仲介手数料を0にしているのです。しかし、仲介手数料とは別に名目を変えて費用を払わせることは法律的に認められません。

「仲介手数料0円」と言いながら、別の名目で費用を請求してくる不動産会社は悪質業者の可能性が高いので個人的には注意して、なぜ、仲介手数料ゼロなのかを確認し、納得の上で、利用する方が良いと思います。

ちなみに、よくわからない費用の請求を受けて困ったときにはお近くの消費生活センターや国民生活センター、あるいは弁護士に相談してみてください。

5.借り手がつきにくい問題物件の可能性

合法的な仲介手数料ゼロ物件では、通常大家が1か月分の仲介手数料を負担しています。なぜ大家はわざわざ仲介手数料を全額負担するのでしょうか?

よくあるのは「借り手がつきにくい物件」のケースです。古い、改修せず、傷んでいる、設備が悪い、陽当たりが悪い、利便性が低い、近隣で騒音があるなど悪条件でなかなか借り手がつかない物件の場合、大家は仲介手数料を負担してでも借り手を探そうとするケースがあります。

しかも、仲介手数料をゼロ円にする分、本来低くすべき賃料を下げずに「割高料金」で貸し付けるケースも多いので要注意です。「仲介手数料がタダ」と思って飛びつくと、問題のある物件を割高で掴まされてしまうおそれが高くなります。

その為、物件選びをするときには仲介手数料が安いか高いかだけにとらわれず、「その物件が自分のニーズに適しているか」、「賃料が相場に沿ったものとなっているか」しっかり見極める姿勢をもちましょう。

この辺り、担当者によく聞いて、部屋探しを行って下さい。各々実務で色々見聞きした相場観を持って仕事をしていると思います。

仲介手数料ゼロ円の物件がすべて悪いというわけではありません。中には、大家が不動産屋に「特別な広告料」を支払っており、不動産屋があえて借主には仲介手数料を請求しないケースもあります。

ただ、そういったことは賃借人からは見えないことなので、契約時に判断するのは難しいでしょう。

7.仲介手数料ゼロ物件の賢い利用方法

もしあなたが仲介手数料ゼロ物件に関心を持ったときには、一度不動産会社に「なぜこの物件では仲介手数料がゼロ円なのか?」と聞いてみてください。また、その返事を鵜呑みにせず、自分でも賃料や敷金礼金を近隣の相場と比較してみて、「割高」でないか確認すべきです。

特に、家賃が割高になっていないなら、契約を検討してみても良いと思います。仲介手数料については「今までよく知らなかった」、「言われるままだった」という方は、ぜひ今後の物件探しの参考にしてみてください。

ちなみに、多くの人が間違っていることですが、仲介手数料は家賃の一か月分とその消費税が上限です。管理費や共益費は集会手数料に含まれないことが多いので支払う前に、精算書などをよく確認して下さい。

これまで8年近く賃貸マンションの紹介・仲介を実務でやってきた感想としては、事故物件を気にする又は聞かれることが多くなりました。個人的にもどのような事件や事故があったのか、気になるので選ばないようにしています。

その為、物件名や地域名+事件や事故で検索したり、担当の人に以前のトラブルなどを聞いておくことは凄く大切な事だと思います。最後に、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法を建築士さんにレクチャーしてもらいました。

他にも【元弁護士と考える】シリーズ、告知義務の必要な事故物件を選ばないための賢い対策他以下の通りです。

>>【元弁護士と考える】事故物件を契約する前の告知義務?その確認方法や注意点は?

>>【元弁護士と考える】不動産屋からウソを教えられた時の対応は?

>>【元弁護士と考える】騒音、地震、虫などないと言われたのに、嘘だったら 

>>【元弁護士と考える】仲介手数料の支払い無効裁判(2019年夏)

>>【元弁護士と考える】騒音や悪臭、ナンパ等『隣人トラブル』の対処と引っ越し代は?

その他、事故物件に関する記事はこちらです。

>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その1)

>>麻布十番の事故物件を見に行って、その場で原因分析(その2)

>>事故物件を紹介されたりしないかと不安で・・・

今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して、結果と原因のみ、記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。

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相樂 喜一郎

この記事を書いた人

相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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