1.住宅ローンにおける連帯債務者についての基礎知識
住宅ローンでの連帯債務者の定義について解説します。
1-1.住宅ローンでの連帯債務、連帯債務者とは
住宅ローンでの連帯債務とは、1つの住宅ローンの借入に対して、1人が主債務者、もう一人が連帯債務者となることです。
住宅ローンを組む場合、通常は夫婦のどちらかが主債務者、もう一方が連帯債務者となります。
連帯債務者は出資割合に応じて自宅の所有権を持ちますが、債務に関しては主債務者と同等に負います。
例えば、連帯債務者の出資割合が4割の場合、自宅の持分は4割です。しかし、金融機関は連帯債務者にも住宅ローンの全額返済を求めることができます。
夫婦で持ち分は少ないのに責任は全部負うことになるのでよく考えて、ローンを組むようにしてください。
1-2.どんな時に連帯債務型住宅ローンを利用するのか?
夫婦一方の収入だけでは希望の借入額に届かない場合に、連帯債務という方法を取るケースが多いです。
ただしこの場合、債務者2人とも安定した収入があることが前提です。
なお、連帯債務型住宅ローンは夫婦だけでなく、親子で利用することもできます。
>>住宅ローンの連帯債務に関する詳細はこちらのページにまとめておきました。
1-3.連帯債務型住宅ローンを利用できる条件
連帯債務型住宅ローンが利用できる条件について、住宅金融支援機構のフラット35で下記のように定められています。
収入を合算し、いわゆる連帯債務型住宅ローンを利用するには次の4つの全ての条件に当てはまる必要があります。
・申込みご本人の親、子、配偶者等
・申込時の年齢が70歳未満の方
・申込みご本人と同居される方
・連帯債務者となる方(1名のみ)
親族が住むための住宅、セカンドハウス、親子リレー返済の場合はやや条件が異なるケースがあります。
2.連帯債務、連帯保証、ペアローンの違い
似ている連帯債務、連帯保証、ペアローンの違いについて解説します。わかりやすくするために、全て1つの住宅を夫婦で購入する事例とします。
2-1.連帯債務とは
連帯債務の場合は、夫婦の一方が主債務者、もう一方が連帯債務者となります。
連帯債務では両者ともにローンの返済義務を負いますが、出資額(住宅の持ち分)に応じて住宅ローン控除(減税)を受けることが可能です。
団信は原則、主債務者のみの加入となります。連帯債務者に万が一のことがあっても、主債務者は返済を続けなければなりません。
連帯債務者の万が一に備えたい場合は「夫婦連生型」の団信に加入する必要があります。
2-2.連帯保証とは
連帯保証とは、夫婦のどちらかが借りた住宅ローンについて一方が債務者、もう一人が保証人となる形式です。
もし債務者が返済できなくなった場合、保証人が返済義務を負います。
保証人は債務者でないため、住宅ローン控除(減税)を受けたり、団信に加入することができません。
2-3.ペアローンとは
ペアローンは夫婦それぞれが債務者となって住宅ローンを組み、それぞれお互いの住宅ローンの連帯保証人となる形式です。
それぞれ住宅ローン控除(減税)、団信加入ができます。
3.連帯債務型住宅ローンを利用する3つのメリット
連帯債務型住宅ローンを利用する3つのメリットは以下の通りです。
3-1.借入額を増やせる
連帯債務型ローンを利用すれば、収入を合算できます。
そのため、一人の収入だけでは希望の借入額に届かない場合に有効です。
3-2.事務手数料を軽減できる
住宅ローンを利用する場合、事務手数料や印紙代などがかかります。
住宅ローンは融資額が大きいだけに、事務手数料や印紙代だけで数万円単位になります。
連帯債務型ローンは1つの契約なので、それらの手数料等の1回分で済むのがメリットです。
3-3.2人とも住宅ローン控除(減税)やすまい給付金を受けられる
連帯債務型ローンでは、主債務者、連帯債務者それぞれの出資割合に応じて、住宅ローン控除(減税)、すまい給付金を受けることができます。
4.連帯債務型住宅ローンを利用する5つのデメリット
連帯債務型住宅ローンを利用する5つのデメリットは以下の通りです。
4-1.連帯債務者に万が一があっても返済は免除されない
連帯債務者が死亡、重度障害になるなど、万が一があっても主債務者の返済は免除されません。
収入が減っても住宅ローン返済が続くため、生活を圧迫する可能性があります。
また命に関わる事態でなくても、例えば連帯債務者である妻が妊娠や出産により退職や育休で収入が減ることも考えられます。
4-2.一方は団信に加入できない可能性がある
連帯債務型住宅ローンの場合、原則として団体信用生命保険は、主債務者のみが加入します。
しかし、連帯債務者に万が一があった時も返済義務は免れません。
そのため、連帯債務者にもそれなりの生命保険の加入を考えておく必要があります。
「夫婦連生型」の団信もあります。
しかし、住宅金融支援機構からしか住宅ローンを借りられないなど、制限が大きいです。
4-3.ローンの借り換えが難しくなる
連帯債務型住宅ローンでは夫婦や親子など2人の収入を合算することで、大きな融資額を引き出しています。
そのため、住宅ローンの借り換えを行うことが難しくなります。
4-4.離婚後も連帯債務者の返済義務は続く
夫婦で連帯債務型住宅ローンを組んだ場合、夫婦2人共に返済義務が生じます。
もし離婚をしても、住宅ローン返済義務は続きます。
返済義務を免れるには家の共有名義から外れ、連帯債務者から外してもらうしかありません。
当然、金銭のやりとりを伴う事務手続きが発生するため、大変です。
4-5.贈与税が発生する場合がある
主債務者が返済しなければならない住宅ローンを連帯債務者が負担した場合、「連帯債務者が主債務者に贈与した」と見なされ、贈与税が発生する場合があります。
例えば、主債務者である夫が病気のため収入が減り、妻の収入で代わりに住宅ローンを返済するといったパターンです。
年間110万円まで贈与税は控除されるものの、継続的に行なっている場合は控除が認められない可能性もあります。
このようなケースでは、事前に所轄の税務署や税理士に確認しておいた方がいいと思います。
>>離婚したら、ペアローンで購入した自宅や住宅ローンはどうすれば良いか?
有名私立大学卒業後、部品商社を経て、2011年より西東京、立川や吉祥寺エリアを中心に建物の工事・改修を行う。2013年より、同代表の相樂と共に不動産の売買、管理・賃貸仲介を始め、現在に至る。
2019年は茨城県の戸建てや板橋区の共同住宅などを仲介。同時に、東京渋谷区の民泊や麻布十番のシェアオフィス向けリノベーションやコンバージョン工事を行う。最近は、台風15号や19号に伴う火災保険の申請サポートやその後の改修工事を積極的に行う。
保有資格:宅地建物取引士、FP二級、防犯設備士、住宅ローンアドバイザー
馬場 紘司
株式会社リビングイン 共同代表
▶関連用語:保険会社の代位弁済通知、期限の利益の損失、競売、
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