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こんにちは、防犯設備士兼宅地建物取引士の馬場です。
賃貸マンションのお部屋を借りる時に発生する初期費用の一つに『鍵交換費用』があります。東京都内で賃貸マンションを借りるとなると、初期費用の総額は家賃の4〜5ヶ月分ほど必要になることも多く、少しでも抑えたいのが本音だと思います。
とはいえ、敷金や前家賃、保証料等を抑えるというのは難しく、手っ取り早くコストカットできそうなのが鍵交換費用と目をつけるかもしれません。以前、サイトに『コロナウイルスの影響でいつまで住むか分からないので、鍵交換はしなくても良いか?』と聞かれたことがあります。
結論から言うと、鍵交換はした方が良いと思います。あなたの身の安全、防犯を考えたら交換必須です。この記事では、失敗談や口コミを参考に賃貸マンションの鍵交換に関する、お客様から寄せられた質問に答えていきます。
1.鍵交換はなぜ必要? 鍵交換のメリット・デメリット
1-1.鍵交換が必要な理由
鍵交換をした方が良い理由は冒頭でも言った通り、防犯のためです。通常、賃貸マンションの入居者は退去する時に鍵は返却しなければなりませんが、中には勝手に合鍵を作っていることがあります。
たとえ前入居者本人が合鍵を作っていなかったとしても、家族や交際相手、ストーカーなどが作っているリスクがゼロではありません。そのまま入居すると、不法侵入や盗難に遭う可能性があります。だから、鍵交換が必要なのです。
1-2.鍵交換のメリット・デメリット
鍵交換のメリットは何と言っても安全性、安心感の確保です。誰が自宅の合鍵を持っているかわからない状態で生活するのは誰だって嫌だと思います。精神面の問題だけでなく、それで本当に犯罪にでも遭ったら大変です。
鍵交換のデメリットは費用がかかることです。鍵の種類にもよりますが、シリンダーキーであれば、1.5万円程度だと思います。費用を抑えるために自分で交換したいという場合もあるかもしれませんが、賃貸マンションなので貸主(もしくは管理を任された管理会社)の許可なしにすることはできません。
万が一、許可されたとしても、最近の鍵には複雑な作りや特殊な機能を持った物も多く、壊したりすれば、かえってお金がかかることになります。ですので、基本的には管理会社が定めたルールに従って、鍵交換をしてもらった方が良いと思います。
1-3.鍵交換費用は誰が負担するのか
鍵交換費用の負担を誰がするかについて法律では定められていません。ただし、国土交通省が出している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にヒントがあります。
実はガイドラインには「賃貸人(貸主)が負担することが妥当」とあり、ガイドラインを用いて貸主と交渉すること自体は可能です。しかし、あくまでガイドラインであるため、あまり強気に出ると面倒な借り主と思われ、審査で落とされ、お部屋を借りられなくなるリスクもあります。
こうしたことから鍵交換費用は借主が負担しているケースがほとんどです。逆を言えば、空室期間が長いお部屋や不人気のエリアや物件なら交渉の余地があると言えそうです。一度管理会社に相談してみる価値はあります。
2.ディンプルキーとは?
ディンプルキーは、防犯性能の高さから急速に普及が進んでいる鍵です。従来よく使われて来たシリンダーキーは端が山のようにギザギザになっていますが、ディンプルキーは上の写真のように表面に複数のくぼみがランダムに配置されています。
そのためディンプルキーは、シリンダーキーまたその他の鍵と比べて以下のような良い点、悪い点があります。
2-1.ディンプルキーの良い点
・構造上、ピッキング対策になるため空き巣に入られるリスクが少なくなる。
・複製が難しいため、ストーカーや侵入対策になる。
・シリンダーキーのように長期使用によって山が削れて鍵が使えなくなることがない。
・シリンダーキーよりも一般的に厚みがあるので折れにくい。
2-2.ディンプルキーの悪い点
・シリンダーキーより交換費用が高い。
・複製しにくい分、失くしたら大変。開錠や鍵交換にかかる費用が高い。
・くぼみにほこりが溜ると鍵が開かなくなったり、故障することがある。
ディンプルキーのくぼみにほこりが溜まると鍵が開かなくなる可能性があります。つまようじや先の尖ったものでほこりを取り除くと傷がつき、鍵が使えなくなる、鍵が壊れてしまうことがあるのでやめた方が良いです。
対策としては、パソコンのゴミを取り除くエアダスターでほこりを吹き飛ばすのが良いです。また、実は鍵ではなく、鍵穴側に問題があるケースもあるので、鍵穴に掃除機をあててほこりを吸い取ったり、専用の潤滑剤を使うなどすると解決することもあります。
とはいえ、慣れない作業で壊してしまうと余計なお金がかかるので、一度不動産管理会社に連絡することをお勧めします。
3.鍵交換、種類ごとの費用
3-1.鍵交換費用、一般的にはいくらくらい?
賃貸入居時の鍵交換費用は鍵の種類によりますが、概ね1万円〜3万円くらいです。鍵の数によって、値段が異なります。以下に鍵の種類ごとの交換費用の相場をまとめましたので、目安にしてください。
・シリンダーキー:1万円~3万円
・ディンプルキー:2万円~5万円
・カードキー:2万円~5万円
3-2.鍵交換費用を安く済ますためには?
鍵交換費用を安く済ますには、自分で交換するか交換業者を自分で手配する方法があります。しかし結論から言うと、自分で交換する方法はお勧めしません。というより、入居者自身での交換は禁止されている可能性があります。
賃貸物件ではお部屋の構造に関わるものはオーナーの所有物であり、許可なく借主が交換や修理等をすることができません。また原状回復の義務があり、入居時と同じ状態に戻して返すという決まりからも、入居者が勝手に鍵交換をすることはできないのです。
仮に入居者自身での鍵交換が許可されたとしても、鍵交換に関係する仕事をしているなどよほど慣れている場合でなければ、壊すこともあり得るため専門業者に任せるのが安心です。また自分で交換業者を手配する場合でも、管理会社の許可を取る必要があるので、ご注意ください。
3-3.1ドア1ロックとは?
1ドア1ロックとは、1つのドアに1つの鍵穴が付いている仕組みのことで、昔からある鍵のイメージです。もっともシンプルな仕組みなので費用が安く済み、ドアの素材や取り付け場所などにも制限が少ないです。当然鍵の交換費用も抑えられ、上記で示した相場の下限値に近い金額となります。
3-4.1ドア2ロックとは?
1ドア2ロックとは、1つのドアに2つの鍵穴が付いているタイプで、鍵自体は一つで済みます。一方で、鍵穴が2つ付くことでピッキングの時間も2倍かかることから空き巣に狙われにくくする効果があります。
警視庁発表の「令和元年中の住宅対象侵入窃盗の発生状況(2020年)」によると、住居侵入の36.4%は玄関等の出入口からだそうです。東京都内の賃貸マンションの多くがが該当すると考えられる「中高層(4階建て以上)住宅」に限ると33.1%が「施錠開け」という開錠して侵入する手口となっています。
ちなみに、無施錠による侵入が51.4%なので、ピッキングされにくい鍵で戸締りさえしておけば、このデータの85%近い侵入は防げたのかもしれません。
また、都市防犯研究センターが発表した「JUSRIリポート」によると、開場に5分かかると70%近い空き巣が侵入を諦め、10分以上かかるなら90%以上の空き巣が諦めるそうです。
ですので、単純に2つに鍵穴を増やすだけでも空き巣や侵入の被害を防ぐ大きな役割を果たすと言えます。確かに1ドア1ロックよりも1ドア2ロックの方が鍵交換費用も1.5倍くらいかかりますが、個人的には防犯性能の高さ、身の安全を考えると断然1ドア2ロックをお勧めします。
4.鍵を失くした場合
もし、鍵を失くしてしまったら、まずはすぐに管理会社に連絡してください。同時に警察にも届け出てください。交番に行って相談すれば大丈夫です。合鍵を持っているからと安易に考えてはいけません。
たった一本でも鍵を失くせば、常に空き巣や不法侵入の危険に晒されます。また退去時には鍵の返却もしなければならないので、その時に報告となるとトラブルに発展する可能性があります。鍵交換や原状回復費用に加えて余計な出費とならないよう、正直に報告してください。
なお、紛失時の費用負担は契約時の重要事項説明で特別な条件がなければ基本的に入居者の負担となります。しかし、保険や安心サポートなどでカバーされる可能性もあるので、焦らず契約内容を確認してください。
他にも、駆けつけサービスだと玄関の開錠まではやってくれますが交換はしてくれません。室内にスペアの鍵があることが前提になっています。
5.複数人で住む場合など合鍵の追加は出来るのか?
入居時に借りられる鍵の数は基本的にお部屋ごとに決まっています。一般的には、2本借りられるケースが多いです。重要事項説明時などに何本借りられるのか、きちんと確認しておいてください。
家族での引越しなど合鍵を作りたい場合は、必ず管理会社に相談してください。勝手に作った場合は契約違反となり、トラブルとなる可能性があります。
また許可を得て合鍵を作る場合は、鍵交換をした後の純正の鍵を使ってすぐに作ってください。合鍵は純正の鍵と微妙なズレがあるため、鍵穴を傷つけたり、作った合鍵が使えないといったことがあります。
純正でも使い込んで傷がついた後に合鍵を作ると同じく鍵穴を壊したり、合鍵が使えない可能性があるので注意してください。なお、許可を得て合鍵を作った場合でも退去時には純正の鍵と合鍵の両方を返却する必要があります。
6.賃貸マンションの鍵交換に関するまとめ
鍵に関しては部屋探しの中では優先順位が低いと思います。お部屋の希望条件で治安や防犯と言っても、オートロックや防犯カメラを条件に挙げる人が一般的です。個人的には、鍵の種類も同じくらい大切だと思います。ぜひ、「1ドア2ロックのディンプルキーのお部屋はありませんか?」と聞いてみて下さい。最近のマンションはこの作りになっています。以下、この記事のまとめです。
・引っ越しの際は防犯のために鍵交換をした方が良い。東京都内の賃貸マンションではほぼ当たり前となっている。
・鍵交換の費用負担に関する法律はないが借主が払っているケースが多いのが現状。空室期間が長かったり、不人気のお部屋ならオーナー負担の交渉をしてみるのもあり。
・ディンプルキーは鍵の表面にくぼみがあるタイプで、従来のシリンダーキーよりピッキング対策効果がある。
・空き巣や侵入のリスクを減らすには1ドア2ロックが良い。
・防犯性能、交換費用など踏まて総合的に考えると【ディンプルキー+1ドア2ロック】がお勧め。
・鍵を失くしたらすぐに管理会社と警察に相談する。
・合鍵が必要な場合は管理会社の許可を得て作成。退去時には合鍵も返却する。
内覧でいかに真剣に部屋と自分と向き合ったかということが部屋に住み始めてから後悔するかしないかを決定づけます。是非、是非、失敗や後悔の無い部屋探しをしてください。今回ご紹介した内容が貴方の失敗を防ぐ一助となれば幸いです。あなたの大切な人生と平穏が守られますようにこれからも私たちは4,500件を超える引っ越しの失敗談を基に、住まいのトラブル解消の専門家として、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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