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失敗例を参考に人気のリノベーション物件に住む際の注意点3選

こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す六本木の不動産屋、(株)リビングインで建物の管理や住まいのトラブル解消を担当している不動産鑑定士補兼管理業務主任者の相樂です。同じく、不動産鑑定士兼マンション管理士の平野さんと一緒に失敗例を基に人気のリノベーション物件の注意点について、考えました。

30代、40代等生活にある程度余裕が出来た人にデザイナーズやリノベーションマンションが本当に人気になっています。リノベる等が手掛けるリノベーション物件も明らかに人気になっており、値段が高騰し、売却時にトラブルになっています。

というのも、先日、個人の方が持っているリノベーション物件の売却を手掛けた時、購入価格と周辺相場との乖離が激しく、驚きました。リノベーションされた中古のマンションなのですが、新築のマンション同様中古になった時に大きな価格の下落がありました。

リノベーションはこれまでのリフォームとは大きく異なり、同じものが一つとなく、その独特なデザインやお洒落さから、男女問わず感度の高い人から圧倒的な人気を誇っています。

そのため、リノベーション物件を選ぶ際には新築の購入や賃借を検討する際に気をつけなければならない点とは異なる注意点が複数あります。ここでは購入検討者が限られるものの、高いで値段が付きやすいリノベーション物件について、将来大きく損をしないため、その注意点をまとめました。

これを知らないと、「ただお洒落だから」という安直な理由で、「しかも安いし!」とリノベーション物件を購入(または賃借)してしまい、後で様々な苦労をする可能性がグンと高くなります。

ここでは、リノベーション物件を選ぶ際に参考していただきたい、新築マンションとは異なるメリットやデメリットと、実際にあった失敗や後悔、それらを事前回避するための注意点をまとめました。この記事を読み、入居期間中にトラブルに遭ったり、売却時に損をしたりせず、明るい毎日を過ごしてもらいたいと思っています。

1.リノベーション物件のイメージ

リノベーション物件と聞いた時に、世間一般的にはどのようなイメージを抱くのかというと、大体下記の3つのどれかに相当します。

1-1.家賃(値段)が安くて綺麗

リノベーションは、もともとあった住宅に手を入れているため、家賃(購入の場合は値段)が安いのに内装は新築のように綺麗というイメージが大きいです。

特に、購入の場合は新築と中古では大きく値段が変わるため、リノベーションは非常に人気です。その為、中古物件は辛気臭くて嫌だけどお金が無い、という人にとってリノベーションは願ったり叶ったりの物件と言えます。

1-2.建物そのものは古いため老朽化が心配

ネガティブサイドのイメージとしては、そうはいっても建物そのものは古いままだから老朽化は大丈夫?というものです。

耐震面で不安があったり、壁や土台がもろくなっているのでは、という不安があったり、何かと生活していく上では不便なのでは?という不安の声も多く聞かれます。

実際のところ、建物そのものについてはどうなっているのか?この後、詳しく解説します。住宅ローン実行の可否もありますが、ここを見逃すと後々大失敗することになるのでしっかり最後まで読んでください。

1-3.お洒落な物件が多い

「リノベーション」という響きだけでお洒落と感じる人もいます。中には、「なんだかよく分かんないけどお洒落っぽい」といった完全にイメージだけが先行している人もいますが、実際、リノベーションマンションの内装はお洒落なものが多いです。

この後解説しますが、ただのリフォームと違って「造り変える」という作業が入っているリノベーションは時代の最先端を行くデザインを取り入れやすいのが特徴です。

2.そもそもリノベーションって何?

近年「リノベる」という言葉が流行ってきて、これを中心にリノベーションされたマンションでお洒落に暮らしたい人が増加しています。しかし、そもそもリノベーションとは何なのでしょうか?

新築マンションとの違い、やリフォームとの違いについて解説します。

2-1.新築マンションとの違い

新築マンションは文字通り「新しく建てたマンション」です。土台から全て、ゼロから建てたもので、誰も先住者がおらず、住人第一号として入るマンションです。

賃貸で「新築」というのはあまり聞きません。しかし、購入の場合は新築マンションがかなりの人気です。買って自分のものにする、資産にするとなると、中古よりも新築の方が魅力的に見えるのかもしれません。

一方で、リノベーションは、もともとある建物の(主に)内装を丸々リニューアルしたものです。リフォームとの違いを後で述べますが、リノベーションの場合は、内装に関しては「新築同様」と表現されることが多いです。

これは、内装に関しては、一度全て崩して造り変えているからです。ただし、建物そのものは取り壊して造り変えることはありません。あくまでも「内装のみ」というのがポイントです。

ちなみに、「建て替え」は「新築」と同様になります。土地は同じでも、建物自体を解体してゼロから建て直しているため、新築と同じ扱いになるのです。

2-2.リフォームとの違い

リノベーションとリフォームの違いは、ひと言で言えば以下のようなイメージです。

・リノベーション→造り変え、価値を上げる

・リフォーム→修復(原状回復)し、依然と同じ価値にする

リフォームは、老朽化が進んだ部分を取り替えたり、ヒビが入った部分を修復したり、ボロボロになった壁を貼り変えたり、といった作業を指します。

もちろん、リフォームする際に「これまではクリーム色の壁だったけど、良い機会だから気分を変えて明るいグレーにしたい」という変更が生じる可能性はあります。この程度ではリノベーションとは言わず、リフォームになります。

リノベーションは、「造り変える」ことなので、内装の一部を一度取り壊してから、また造り上げます。

そのため、間取りの変更や、収納スペースの変更も可能です。ただし、建物そのものを建て替えるわけではないため、配管や電気の配線などについては変えることができません。あくまでも「内装を一新させる」のがリノベーションです。

4.不動産屋が言えないリノベーション物件のメリット・デメリット

リノベーション物件のイメージは「安いのに綺麗」や「建物の老朽化が心配」といったものでしたが、実はもっと沢山のメリットとデメリットがあります。

この部分をしっかり頭に入れておかないと、リノベーション物件で失敗したり後悔したりすることになります。

4-1.リノベーション物件のメリット

リノベーション物件のメリットは「安くて綺麗」だけではありません。リノベーションする際には現代の暮らしに合わせた快適な住まいを実現できるよう、様々な工夫が凝らされます。こういった点もメリットとなっています。

4-1-1.家賃(値段)が比較的安い

リノベーション物件最大のメリットは、デザイナーズ等の新築時の家賃(購入の場合は値段)と比べ、比較的安いことです。どのぐらい安いかというと、具体的な金額はエリアやリノベーションの程度によるため提示できませんが、同じエリアの新築物件よりは確実に安くなります。

同じエリアの同築年数の物件と新築物件の間くらいになる、と言えばイメージし易いかと思います。「間」といっても、「ちょうど真ん中」というわけではないので、その点はエリアの物件相場をよく調べてみてください。

比較的安い物件で内装は新築同様の綺麗さなので、お得だと感じられます。ただ、リノベーションにお金をかけている物件はそれほど安くないこともあるので、「リノベーション=安い」と思うのは少しリスキーです。

4-1-2.住みやすさを考慮した造りになっている

最近は古民家のリノベーションが話題となっています。古民家とは、築年数が50年以上の古い民家を指し、中には戦前(明治、大正、昭和初期)の民家も含まれます。

50年も時を遡るとなると、その生活は現代とはまるで違います。今は色々と便利になっており、当時の生活導線では暮らしにくいということもままあります。

古民家でなくても、築年数が結構経っている家であれば、現代の暮らしには即さない「不便さ」が随所に見られると容易に想像できます。これらの「住みにくさ」や「不便さ」を解決できるのもリノベーションのメリットです。

リノベーションにより、間取りを大きく変更した住居は、例えばキッチンとリビングが別れていたものをLDKタイプのひと続きの間取りに変えるなど、現代の暮らしに即した造りに生まれ変わります。

古い建物でも間取りや内装などは住みやすさを考慮したものにできるというのが、リノベーションの魅力のひとつです。

4-1-3.お洒落な内装になっている部屋もある

リノベーション物件の中には、ただ機能性を求めただけではなく高いデザイン性を追求したものも多く見られます。まるでデザイナーズマンションのようなお洒落な内装で、美的感覚が鋭い人にとっては興味深く理想的なデザインという物件もあります。

逆にお洒落さを追求した結果、機能面で劣る物件も少なからずありますので、この点については口述の注意点を参考にしてください。

4-1-4.新築同然の部屋に契約後するに入居できる

この記事では「既にリノベーションされている物件」を対象としているため、例えば古い物件を購入してリノベーションを業者に委託するというケースは含まれません。すなわち、リノベーション”済み”物件ということになります。

この場合、既にできあがっているリノベーション物件を検討するため、賃貸契約、あるいは購入が確定したら、すぐに入居できます。

新築購入の場合は、完成前のモデルルーム見学から始まり、場合によっては抽選や先着という熾烈な戦いを潜り抜けてようやく購入できるという流れになりますが、購入が決定してから入居日まで日が開くことが多いです。

施工が完了してからの引き渡しとなり、暫くは引っ越し前の家で暮らさなければなりません。もちろん、新築でも完成後の物件を購入した場合はすぐに入居できることもあります。

4-2.リノベーション物件のデメリット

リノベーション物件のデメリットというか、心配事といえば、やはり「老朽化」や「建物そのもの」となります。その心配の通り、リノベーション物件で起こるトラブルの大多数は建物そのものの老朽化によるものです。

実際に、どのようなデメリットがあるのかまとめました。築年数が古いため、住宅ローン実行の審査も厳しくなります。

4-2-1.旧耐震基準の物件が多い

リノベーション物件で最も気をつけなければならないのは、1981年以前の物件です。今から40年以上前の物件です。50年以上経っている「古民家」は全て当てはまります。

この年は何なのかというと、旧耐震基準から新耐震基準に変わった年で、1981年以前の物件は旧耐震基準の建物になります。旧耐震基準の物件は、震度5強程度まで耐えられればクリアとなっています。しかし、新耐震基準の物件は震度6強~7程度まで耐えられなければなりません。

この違いは大きいです。

先日も東日本大震災の余震がかなり大きくニュースになりましたが、一部地域では震度6を計測しました。旧耐震基準の建物だと、これで倒壊の可能性がかなり濃厚となります。地震大国日本だからこそ、耐震基準にはシビアになった方があなたのためです。

とはいえ、建物そのものは立て替えられないリノベーション物件なのでこの問題はどうしようもありません。

どうしても住みたいリノベーション物件が1981年以前の物件だった場合、必ず地盤を確認し、断層の上にマンションが乗っていないか、そして、建物の構造計算を専門家に見てもらい、安全かどうかチェックしてください。どのようなマンションにも住宅ローンの承認が下りるわけではありません。その為、古いマンションはどんなに見た目が良くても売れない可能性が高いです。その辺り、こちらのページにまとめてきました。

4-2-2.配管交換されていない物件は水漏れや臭いのトラブル可能性あり

リノベーション物件は、一般的に内装を造り変えた物件です。あくまでも「内装」だけですので、見えない配管などは取り替えていない可能性が高いです。

配管は古くなると水漏れを起こしやすくなりますし、臭いが漏れ出てきます。見た目は綺麗でも、暮らしてみたらしょっちゅう水漏れしたり、臭いが気になったりするということはリノベーション物件あるあるです。

配管を交換できるケースと、建物の構造上配管交換ができないケースがあるので、交換できない物件に住んでしまうと大失敗となります。

購入する場合には建物が古くてもメンテナンスが行われている。そして、建て替えを含め、積み立てと修繕計画がしっかりしており、それに向けた積み立てが行われているかキチンと確認して下さい。

積み立てが行われていないマンションでは住宅ローンの実行承認だけでなく、将来修繕費や管理費が確実に上がり、一般的に生活が苦しくなります。売却時もその部分がネックになります。その為、契約後等手遅れになる前に現在どのくらい積み立てが行われて、今後の積み立て計画等は購入時に確認して下さい。

4-2-3.建物の電気容量は変えられないため不便な物件も

21世紀、いや、令和となったこの時代、身の回りには電化製品が溢れています。スマートフォンやパソコンを筆頭に、家電はもちろん、家具までも電気を使うものが増えてきています。電気が無ければ何もできない現代の暮らしでは、昔よりも電気の消費量が格段に上がっています。

一方で、建物の電気容量は基本的に変えることができません。物件によってはすぐにブレーカーが落ちたりヒューズが飛んだりしてしまうことがあり、沢山電力を消費する人には向かないケースがあります。

一般的な電力の消費量は一人暮らしで月平均185kWh、2人暮らしで320kWh、4人暮らしで400kWhと言われています。(参照:)

この数字はあくまでも平均なので、仕事や生活、趣味などで電気を沢山使う方は物件の電気容量について確認しておくのが吉です。

4-2-4.建物そのものの構造が古く、隙間風や虫などが入ってくることも

建物そのものが古い弊害はまだあります。耐震構造や配管だけでなく、サッシや換気扇、排気口なども古いタイプのものをそのまま使っている物件が多く、これらが劣化していたり、そもそも昔のもので防虫対策が不十分であったりして、虫が湧いたり侵入してきたりすることがあります。

虫は何も玄関や窓から入ってくるだけではありません。意外と多いのが換気扇や排気口で、これに気付かない人が多いので「どっから入ってきたの!?」と盛大に叫ぶことになります。

現代の建築ではしっかりと防虫対策されているので、虫、あるいはネズミなども入り込む余地がないものがほとんどですが、昔のものだと虫はおろかネズミなども侵入してくる危険性があります。

この辺りはリノベーションがどこまでやられているかを実際に現地で確認した方が良いと思います。サッシ周りも二重サッシなどキチンとやっているのか、そうでないのか?サッシ周りの改修は値段が張るため、リノベーションではなく、リフォームで済ませている場合もあります。

以前とは異なり、建物や室内の断熱性をウリに快適性を目指している時代なので、内覧時にここは見ておいた方が良いと思います。

4-2-5.リノベーションを騙る悪徳業者の存在

リノベーションのデメリットを挙げてきましたが、ここまででも相当なウィークポイントが出ています。ただし、これらのデメリットについてもしっかりと考えて対策を打っている建築業者、不動産業者も少なくありません。

配管が取り替えられる物件はきちんと取り替えていたり、換気扇や排気口、サッシなどもしっかり最新のものにしていたり、機能面でも新築物件と比べて大きく劣らないように工夫してあるリノベーション物件は沢山あります。

一方で、ここまで挙げたデメリットの全てがギッシリ詰まったリノベーション物件もあります。もっと言えば、リビングだけは一見綺麗に造り変えているように見せかけて、風呂場やトイレ、廊下、物置など、あまり目立たない箇所についてはリノベーションすらされていないような、そんな粗悪な物件もあります。

こんなことをするのは間違いなく悪徳業者であり、口先だけでは「リノベーションしているので新築と変わりませんよ」などと言っておいて、実際変わっているのはパッと見の見てくれだけで、ハリボテ同様の造りになっている、ということが実際にあります。

このような悪徳業者の罠に引っかからないように、この後ご紹介するトラブル事例や注意点をしっかり読んで対策を取ってください。

4.実際に、リノベーション物件に引っ越した5人のトラブルや失敗

ここまで色々と説明してきましたが、リノベーション物件にトラブルはつきもの、と思ってください。一見しただけでは分からない「住みにくさ」や「デメリット」、それから「問題」まで、色々と後から出てきやすいからです。

そのため、リノベーション物件は特に管理・メンテナンス・アフターサービスを重視して、購入を考えて下さい。大手や大規模にやっている会社の方が個人的には安心できると思いますが、購入時の条件をキチンと確認し、契約して下さい。

私たちは様々な物件に引っ越したお客様にアンケートを実施して、実際のトラブル事例を集計しています。その中から、リノベーション物件に関する失敗や後悔、トラブルなどについてのアンケート結果をまとめました。

4-1.事例1:配管が古く排水が流れない

1つめの事例は「デメリット」でも紹介した配管の劣化です。

東向きで日当たりが悪く、明るいのは朝のみで、午前10時になるとすでに室内は電気が必要なくらいでした。また、築20年以上の建物を室内のみリノベーションした家であったため、一見きれいです。

しかし、配管が古くお風呂の排水が全然流れませんでした。入居後すぐ業者を呼ぶも、建物全体の配管が古いのが原因であり、排水の悪さは直せないとのことで諦めました(弊社アンケートより引用)

>>建物全体の配管が古い場合は、交換や修繕ができないことが多く、諦めるか引っ越すかしかないという選択を迫られます。配管の劣化に伴う水漏れや水流れの悪さに関しては、その原因となっているのが配管のどの部分なのかによって、交換が可能か否か分かれます。リノベーション物件を検討する際には配管問題は無視できないため、不動産屋にしっかり確認を取った方が良さそうです。

4-2.事例2:換気扇の力が弱い

2つめの事例は換気扇の劣化です。

古いマンションをリノベーションした物件に住んだのですが、換気扇の力が弱いのが誤算でした。24時間換気扇を回しておかないとすぐにカビが生えてしまい掃除が大変です(弊社アンケートより引用)

>>換気扇の力が弱く、回しっぱなしにしておかないとすぐにカビが生えるとのことです。しかし、もしかしたら換気扇だけの問題ではなく、建物全体が古く傷んでいて、カビが生えやすい状態になっていたことも一因だったかもしれません。

4-3.事例3:リノベーションが不十分な箇所があった

3つめの事例はリノベーションによる様々な不具合や不便についてです。

住み始めた時の2年前にフルリノベーションをした物件だったので、内装はかなり綺麗で満足していましたが、部屋の内部に大きな梁であった部分があり、照明が部屋の中でも梁に遮られることに気づきませんでした。また、窓サッシの状態をよく確認しておらず、結露がひどく、ゴムパッキンも劣化しておりリノベーションが不十分な箇所が見つかりました(弊社アンケートより引用)

>>リノベーション物件とはいえ、梁を取り外して内装を一新させることはできません。梁はそのまま残ります。古い建築だと、この梁が現代の間取りに合わず邪魔になる可能性が高いです。

サッシの状態の悪さやゴムパッキンの劣化など、細かいところでも老朽化を実感したとのことで、まさにリノベーション物件のトラブルをそのまま体験したようなケースとなりました。

4-4.事例4:建物そのものの古さを実感しストレスに

4つめの事例は建物そのものの古さによるものです。

家賃の問題で、少し古めの物件にしてしまいました。内見に行った時はそれなりの古さだったがリノベーション済みだったので大丈夫と思ったが住んでみると、寒かったり押入れが古かったりとなんだかんだでストレスになる部分が出てきたので、そこを後悔しています(弊社アンケートより引用)

>>寒い、押入れが古い、などちょっとしたことで建物の古さを実感することとなったケースです。このように、内見の時には気付かなかったり「まぁ大丈夫だろう」と気楽に構えていたりしたことが、実際に住んでみてからストレスになることはよくあります。

4-5.事例5:夏の暑さと冬の寒さ

5つめの事例は古い建物ならではの寒暖差の問題です。

内見した時季では分かりませんでしたが、夏は灼熱・冬は極寒とも思える部屋でした。リノベーション済みで部屋の中はきれいでしたが、建物そのものは古いマンションのデメリットがでるのだなと思いました(弊社アンケートより引用)

>>夏は灼熱、冬は極寒という、想像しただけでも気分が沈んでしまいそうな体験をされたこの方は、綺麗にリノベーションされたものの建物そのものは古いマンションのデメリットをそのまま引き継いだことを実感したそうです。内装を新しくしただけではカバーしきれない建物そのものの特性や特徴があることがよく分かります。

4-6.リノベーション物件のトラブルや後悔で多かったのは配管問題

リノベーション物件の後悔や失敗のアンケート結果は他にも多数ありました。その内、最も多かったものは「配管問題」でした。トイレが詰まる、お風呂の水の流れが悪い、といった「詰まる」系の失敗から、しょっちゅう水漏れする、気付かないうちに水道代が上がっていた、といった「漏れる」系の失敗まで様々です。

配管トラブルは建物全体が関わるものであることが多いため、リノベーション物件を探す際には十分気をつけなければいけません。

4-7.リノベーション物件のトラブルで泣き寝入りしないために

これだけトラブルの多いリノベーション物件ですが、万一、引っ越し後、住み始めてから配管トラブルや建物の老朽化などに気付いたら、「仕方ない」と諦めるのではなく然るべき機関に相談するべきです。

公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理センター

0570-0160-100

リフォネット相談センター

03-3356-5147

有限責任中間法人日本増改築産業協会ジェルコ

03-5541-6050

マンションリフォーム推進協議会

03-3265-4899

このように、トラブルの多いリフォームやリノベーションに関する相談を受け付けている機関は沢山あります。公式サイトを見てみて、相談できそうな機関に連絡を入れてみてください。

5.リノベーション物件を選ぶときの注意点

リノベーション物件を選ぶ際に最も陥りやすい勘違いと早とちりは「室内が綺麗だから大丈夫っしょ」というものです。リノベーションは内装を一新した物件なので、室内は綺麗で当たり前です。

当たり前のことに感動したり安心を覚えたりしているようでは、失敗するのは目に見えています。

建物の管理状態はどうなのか、入居者の質はどうなのか、廊下やゴミ、ポスト、自転車置き場などの共通部分の管理はどうなっているのか、など、注視しなければならない部分は山ほどあります。その中でも、特に注意して確認すべきことを以下の通り、まとめました。

5-1.築年数は必ず確認する

建物の築年数は必ず確認してください。デメリットの部分で言及したように、1981年以前の物件は旧耐震基準が適用されています。震度5強までしか耐えられず、大地震には心配な耐震強度の建物です。

それを知った上で、その建物にするか否か判断するようにしてください。

築年数は変えられませんので、どうしようもありません。どうしてもその物件に住みたいならば、地震が起きた際の自身の行動を事前シミュレーションする、防災グッズは常に揃えておく、などの対策を十分に取らなければ心配です。避難場所や避難経路も確認しておくことを忘れないでください。

5-2.建物そのもののリフォームの有無を確認する

リノベーション物件の中には建物共用部分を中心に老朽化を修復したリフォーム物件もあります。

壁や床の耐震強度を増したり、排水管を交換したり、場合によっては必要な部分を取り壊してリフォームしていることもあります。特に築年数が経っている物件に関して、大規模修繕の有無やその内容、計画を必ず確認してください。

また、いつリフォームをしたのかも聞いてください。「リフォーム済み」と謳っていても、それが10年以上前におこなわれたものだとしたら、ほぼ無意味です。数年以内にリフォームされていれば比較的安心です。

5-3.一見内装が綺麗でも騙されてはいけない

先に述べたように、リノベーション物件は内装が綺麗で当たり前です。内装が綺麗だからといって決して騙されてはいけません。

パッと見た時に目に入る範囲だけでなく、本当に必要なリノベーションが全て成されているかどうか、その眼でよく確かめてください。

5-4.配管が交換されているか確認する

先ほどから何度も述べているように配管トラブルは非常に重大です。配管の劣化や不具合で詰まりや水漏れが起こると、かなりのストレスになります。配管が古い物件はできることなら避けるのが賢明です。

リノベーション物件を借りる、または購入する場合、配管の状態について必ず確認してください。

きちんと確認し、「問題無い」と言われたにも関わらず、何かトラブルが起きた際には業者側を相手取って訴えることもできます。この確認を怠ると「リノベーションとはそういうものです」などと返されて泣き寝入りするしかなくなります。

5-5.電気容量やコンセントの数なども確認する

デメリットの部分で電気容量・アンペアについて述べましたが、電気をよく使う仕事、趣味、生活がある方は、念のため建物(自分の部屋)の電気容量を確認してください。

内見の際にはコンセントの位置や数についてもしっかりと確認しておくのがおすすめです。

5-6.室内だけでなく部屋の外、共用部分の状態も確認する

室内がいくら綺麗で新築同然だったとしても、廊下や外装、ゴミ置き場や駐車場、駐輪場などの共通部分がボロボロで、明らかに「古いオンボロ感」が出てしまっている場合は、おすすめしません。

築年数が経っていることは分かっても、それなりに綺麗さを保っていて、清潔でしっかりと管理されていることが分かるレベルは最低でもほしいところです。

外はボロボロだけど中は素敵、という物件は、結局建物そのものの管理がずさんで、配管トラブルをはじめとする様々なトラブルが頻発する可能性が高いです。

5-7.物件そのものは古いということを忘れずに

リノベーション物件を検討する際に絶対に忘れてはならないのは、物件(建物)そのものは古いということです。綺麗な内装に心が躍るかもしれません。内装の素晴らしさに比べ、家賃や値段が安いのも魅力的です。

しかし、安いのには理由があります。建物そのものが古いという「理由あり物件」を選ぶかどうするか、よく考える必要があります。

6.リノベーション物件で起きた判例は?

不動産適正取引推進機構の公式サイトには、不動産会社向けに不動産関係の判例が保管されています。その中のリノベーション物件絡みの裁判の例を1つ紹介します。

===
平成30年7月20日 東京地裁

売主業者が築後50年以上経過した土地建物を購入し、大規模なリノベーション工事を行って買主に売却したところ、建物に隠れた瑕疵があったとして損害賠償を求めた事案。

建物の屋根庇の軒先から軒裏にかけての部分の腐食について瑕疵と認め、その他については瑕疵を否定し、損害賠償額について調停委員会の算定額をもって認めた。

===

この「隠れた瑕疵」というのが、リノベーション物件について回るトラブルの大きな原因です。

この判例では建物の一部の腐食を黙っていたことが問題となりましたが、それだけでなく、配管問題やサッシや換気扇などの老朽化、壁などの劣化といった様々な「瑕疵」が考えられます。ちなみに、瑕疵とは、一般的に備わっているべきものが欠落していること、欠陥を言います。

売買時に出てくる説明責任と瑕疵担保責任については、こちらのページにまとめておきました。

7.どんなリノベーション物件ならいいのか?

リノベーション物件のデメリットや、注意点、トラブル事例などについて解説してきました。ここまで読むと「じゃあリノベーション物件はやめた方が良いのかな?」と思う方も出てくるかもしれません。

しかし、リノベーション物件には確かにメリットや魅力もあります。そこで、失敗しないために「どんなリノベーション物件なら安心して住めるのか」という点について掘り下げていきます。

7-1.できれば新耐震基準をクリアしている方が安心

「安心」という意味では、やはり地震への備えは大切です。リノベーション物件を選ぶ際には1981年以降に建てられた、新耐震基準をクリアした物件を選んだ方が良いです。

1981年は40年も前のことですので、それよりも後に建てられた物件でも十分古い建築です。築10年以上になれば「築浅」とは言えないレベルになります。

値段を押さえて安心できるリノベーション物件に住みたければ、狙い目は築20~30年あたりの物件となります。2000年頃~2010年頃に建てられた物件から探すと良いです。

7-2.配管は交換済みの物件

リノベーション物件で最も多い配管トラブルを回避するためには、建物全体で配管を交換している物件や、配管の管理が行き届いていて状態が非常に良い物件を選ぶのがコツです。この点に関しては不動産屋にしっかりと確認するしかないのでしつこいぐらいに聞いてください。

「配管は大丈夫ですか?」や「配管は交換済みですか?」といった聞き方ではなく「リノベーション物件では配管トラブルが多いと聞きますが、そういったトラブルの可能性はどれくらいありますか?」や「配管トラブルが多いと聞きますが、トイレやお風呂の詰まりや水漏れのリスクはどれくらいありますか?」と具体的に聞くのがおすすめです。

ここで「ありません」と断言されたら、しっかりと証拠を残しておいて、万一何かあった時にはそのことを伝えて賠償金を請求することができるかもしれません。

7-3.デザインだけでなく、サッシなどの改修・交換がしてある物件が理想

リノベーション物件の魅力は内装の美しさやデザイン性ですが、それだけでなく、サッシや収納スペース、換気扇などの細かい部分に関してもしっかりとリフォームしてあり「住みやすさ」や機能性を追求した物件がおすすめです。

多少の不便さなら耐えられると思っても、実際住んでみて、それが日常となるとストレスが膨らんでいきます。旅行先で感じる一時的な不便のストレスとは、ものが違うということをよく覚えておいてください。

念のため、リノベーション物件だからと、高値掴みしてしまい、毎月の返済が厳しくなった場合、先ず、金融機関に金利の引き下げや返済期間の延長を相談するのが良いと思います。詳しくはこちらのページにまとめてきました。

8.ストレスなく、リノベーション物件に住むポイントまとめ

リノベーション物件について、様々な観点から分析、解説をおこないました。最後にストレスなくリノベーション物件に住むポイントをまとめます。

8-1.分析を踏まえた上でリノベーション物件をおすすめしたい人

リノベーション物件をおすすめしたい人は、ひと言で「物件について、しっかり下調べや確認ができ、トラブルを避けられる人」です。

・資金があまりないけれどお洒落な部屋に住みたい

・新築を買う(借りる)ほど余裕は無いけれど新築みたいな部屋に住みたい

普通の記事では、「このような人におすすめです」と書かれるのが予想できますが、そんなに甘いものではありません。内装の綺麗さや、業者の言葉を全て鵜呑みにして「こんなに素敵な部屋なら問題無い!!」といって決めてしまうと失敗や後悔に繋がります。

リノベーション物件は、築年数(耐震基準)や配管、建物の老朽化などについて、きちんと細かく確認して、冷静に検討できる人におすすめしたいです。

8-2.どんなリノベーション物件なら住んでいいか?

前述の通り、ストレスなく快適な暮らしができるリノベーション物件は

・新耐震基準をクリアしている

・配管が老朽化していない(交換されている)

・サッシや換気扇などのリフォームもされている

など、暮らしやすさや機能性、そして安全性に優れている物件です。

「・・・古いけど、綺麗だから、まあいいか」

という考えは非常に危険です。住居は、あくまでも「住まい」であって、そこに安心安全快適は必須です。このどれかが欠けると大きなストレスを感じることになります。

ここまで、リノベーション物件について書いてきましたが、部屋探しのポイントは忘れないようにお部屋を探してください。リノベーション物件同様、価格が高騰しているデザイナーズ物件について、部屋内だけでなく、建物を確認して、進めて下さい。この辺りは失敗例や判例と共にこちらのページにまとめてきました。4600件の引っ越しから分かった、失敗し易い部屋の特徴はこちらのページにまとめてありますので、こちらもチェックしてみてください。

これまで、8年間300件近い住まいのトラブルの相談を受けた中でもさまざまなケースがありました。リノベーション物件だけなく、記載していない内容で困っている方もいると思います。もし、あなたが現在トラブルに悩まされているのであれば、トラブルが大きくなる前にお近くの専門家に相談することをお勧めいたします。

もちろん、弊社の無料相談も利用できます。信頼できる先がすぐに見つからない場合にはご連絡ください。これまで多くの住まいの問題を解決した経験や知識を活かし、あなたの力になれると思います。ぜひ気軽に無料相談までご連絡ください。

私たちは今後もあなたの大切な人生と平穏が守られますよう、4,600件を超える引っ越しの失敗談を基に住まいの問題解決のトップランナーとして、専門家と協力し、地域や建物の情報を中心に提供、検証していきます。念のため、【建築士と考える】住んでもいい事故物件の見分け方、内覧時に使える方法をレクチャーしてもらいました。最近流行っているカスタマイズ賃貸についても、こちらにまとめました。

今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。

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相樂 喜一郎

この記事を書いた人

相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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