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こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す六本木の不動産屋、(株)リビングインで建物の管理と数字周りを見ているファイナンシャルプランナー兼住宅ローンアドバイザーの相樂です。
同じくファイナンシャルプランナー兼住宅ローンアドバイザーの相樂と共に住宅ローンの借り換えについて、過去の相談を参考に考えていきます。
去年12月、埼玉県にお住いの55歳の男性が住宅ローンの返済相談に六本木の事務所に来店されました。結婚・育児を機に築15年のマンションを購入し、これまで15年間、きっちりと住宅ローンを払い続けていました。
しかし、2020年のコロナウイルスの影響を受け、会社の業績が悪化し、月給やボーナスが減少。それだけでなく、マンションの修繕積立金や管理費用が上がり、毎月のローン返済が厳しくなりそうだと言うのです。
>>リモートワークが増え、残業代やボーナスが無くなり、住宅ローンの返済に困った方のご相談はこちらのページにまとめておきました。
まず、返済の滞納が無く、住宅ローンの返済が厳しくなっただけなら、取れる手段はいくつもあります。そのひとつが銀行と相談し、住宅ローンの借り換えにより、金利を下げ、毎月の返済負担を軽減する方法です。
というのも、このまま住宅ローンが払えなくなって滞納を続ければ、半年後には大切なご自宅は競売にかけられ、退去を命じられる事態になりかねません。他にも、個人信用情報に傷がつけば、新たにカードの利用や新規のローンが組めないといった弊害も発生します。最悪の場合、自己破産を申請する必要も出てきます。
そんな暗い未来を避けるため、この記事は『住宅ローンの返済が苦しくなった時、ローンを借り換える方法やその際の注意点』をお伝えします。ぜひ事態が悪化する前に適切な行動を起こしてください。
1.住宅ローンを返せなくなるとどうなる?
住宅ローンを返せない状態が続くと、最終的に住宅は差し押さえられ、競売にかけられます。競売とは、裁判所を通じて強制的に物件が売りに出されること。競売のデメリットはその価格、手元にお金が残らない、強制退去で住み続けることが出来ない事です。そのため、安易な競売は避けたほうが賢明です。
なぜなら、「競売で住宅ローンの返済義務がなくなるわけではない」からです。誤解している方が多いので、詳しく見ていきます。
1-1.自宅の競売を避けるべき3つの理由
住宅ローンを返せずに半年ほど滞納を続けると、住宅は競売にかけられ、手紙が届きます。なぜ競売を避けたほうがいいのでしょうか?理由は、以下の3つです。
1.競売価格が住宅ローン残額より少なければ、不足する金額を一括返済しなければならない
2.一般的に、競売価格は流動性の欠如から市場価格の60%~70%で売却される
3.売却が決まれば、住宅の権利は他人に渡るため、強制退去を命じられ、住み続けられない
つまり、マイホームを他人に安売りして失った挙句、ローンが残ればその金額は一括返済しなければならないのです。一般の市場価格より安値で売りに出すのですから、ローンは残ってしまう方が本当に多いです。
もしローン残額を一括返済できなければ、結局、自己破産しかない、なんてことになりかねません。そこで、大切なマイホームを安易に投げ売りしてしまう前に他にできる手段がないか考えることが大切です。
2.住宅ローンを返せない場合の3手段
住宅ローンを返せなくなり、競売にかけられる前に取るべき手段は、以下の3つです。
1.借入れ先の金融機関に相談する
2.住宅ローンを借り換える
3.自宅の売却でローンを完済する
ここからそれぞれ順を追って解説していきます。
2-1.住宅ローンの借入れ先金融機関に条件緩和の相談する
「住宅ローンの返済が厳しい」
「今の収入、家計では返せそうにない」
そんなときはまず金融機関に一度相談してみて下さい。現在、多くの金融機関で住宅ローン返済相談専用の窓口を設けています。返済が苦しい旨、条件の変更について相談すれば、以下のような方法を提案してもらえます。
- 返済期間の延長
- ボーナス返済の停止
- (一部金融機関のみ)一定期間だけ返済額を減額する
いずれかを利用できれば、毎月の返済額を数千円~数万円安くできる可能性があります。全ての方が条件変更できるわけではありません。しかし、自身の場合はどのような選択肢があるのかを知っておくことが今後、どのような対応をしていくかを知るため、大切だと思います。返済期間の延長など、住宅ローン条件の変更についてはこちらの記事もご覧ください。
2-2.金利の低い住宅ローンに借り換える
「借入れ先の金融機関に相談したものの、住宅ローン条件の変更が認められなかった・・・」
「思ったほど毎月の返済額を軽減できなかった・・・」
そんなときは、思い切って住宅ローン自体を借り換える方法もあります。住宅ローンの借り換えとは、『ローン契約している金融機関を切り替えること』です。金利や団信といった契約条件そのものを見直せるため、同時に毎月の返済額も減らせる可能性があります。
例えば、ご相談者の男性が借入れした2005年、15年前の住宅ローンは固定金利だと年2%~3%台が相場でした。しかし、15年たった2021年時点の日本では、変動金利なら年0%台、固定金利でも年1%台で借入れ可能です。借り換えで金利を1%引き下げできれば、毎月の返済額を数千円~数万円減らせる可能性があります。
『住宅ローン条件を根本から見直し、返済額を大きく軽減したい』のであれば、借り換えを検討することをおすすめしています。詳しいシミュレーションについては、後ほど「3−3.実際に借り換えた場合のシミュレーション」で紹介します。
2-3.自宅を売却してローンの残債を一括で返す
「金融機関に相談して、借り換えも検討した。あらゆる手をつくしたけど、やっぱり返せそうにない」という方は、自宅を売却してローンを完済する方法も考えて下さい。
返せず、滞納が続き、競売にかけられて強制的に売却するより、自ら売却を選んだほうが少しでも高値で売却しやすいです。なぜなら、競売と比較して、任意売却という方法を用いると、購入者にも条件を含めた、検討の時間があり、室内の様子を実際に確認することが出来るからです。もし売却価格がローン残額以上にあれば、売却するだけでローンを完済できます。
ただし、売却価格がローン残額を下回る場合、不足する金額をまとめて金融機関に支払う必要があります。まとまった預貯金がなければ、通常の売却ではなく「任意売却」になり、事前に金融機関と交渉して、売却活動を進めていく必要があります。任意売却など、ローンが残っているマンションを売却する方法はこちらの記事もご覧ください。
そもそも、売却とは『一般的に住み慣れた自宅を手放し、住み替えをする』ことです。住む場所が変わるため、家族から反対される方やご近所から噂されたり、子供が転校をする必要が出てくる場合もあります。そのため、自宅を売却するのは他に方法がないときの最終手段だと思ってください。
ご存知の通り、住まいを変えることは人生に大きな影響を与えます。その為、安易にこの方法を選ばない方が良いです。まず、金融機関に相談するか、借り換えを検討し、返済負担を軽減する方法を模索してください。
3.住宅ローンを返せないとき、先ずは借り換えの検討を
借入れしている住宅ローンの状況次第では、借り換えで毎月の返済額を大幅に軽減できる可能性があります。借り換えとは何か?借り換えが返済額軽減に有効な理由を定量的に見ていきます。
3-1.住宅ローンの借り換えとは
今の住宅に住みながら、ローン返済する金融機関を違う金融機関に変え、毎月の返済を減らす方法が借り換えです。なお、住宅ローンの借り換えには、法的な制限はありません。借り換え先の金融機関での審査に通れば、何度でも借り換えすることは可能です。
そのため、今契約している住宅ローンを返せないとき、「借り換えによって今より良い条件のローンに見直す」ことを先ずは考えて下さい。
今回のご相談者のように、15年以上前の住宅ローンを契約している方は本当に借り換えのチャンスだと思います。なぜなら、15年以上前と今とでは、住宅ローンの金利情勢が大きく変わっているからです。借り換えで金利を低くできれば、その分、毎月の返済額を安くして負担を軽減できるかもしれません。
3-2.ローンの借り換えが有効な理由
住宅ローンを返せなくなる前に借り換えが有効な理由は、以下のようなメリットがあるからです。
- 金利の引き下げで返済額を軽減できる
- 団信や契約者サービスを最新のものに変えられる
- 金利面以外の契約条件も同時に見直しできる
多くの専門家は借り換えと言えば、経済的なメリットばかり語られがちです。しかし、不動産会社として、言えることは団信や引っ越し料金や提携ショップでの買い物割引といった独自の契約者向けサービスの内容を一新できる点も魅力です。
金融機関によっては、借り換えで保証面をさらに充実させることも可能です。一度、金融機関の担当に条件の交渉をしてみるのが本当に良いと思います。
3-3.実際に借り換えた場合のシミュレーション
今回のご相談者様を例にして、実際に借り換えたらいくら返済額を軽減できるのかを計算しました。ご相談者様が現在契約している住宅ローンは、15年前の固定金利・年2.5%の借入金利です。
この場合、借り換えによって毎月の返済額を約1万円~1万6,000円減額できる計算になります。
<例:15年前に借りた住宅ローンを借り換えする場合>
*計算方法や諸費用金融機関によって異なるため、参考値として記載。
*変動金利については、借り換え後の金利上昇を考慮する必要あり。
上記の計算では、借り換えにかかる諸費用60万円(参考値)を借り換え金額に含め、計算しました。ただ、金利の引き下げ幅が大きいため、諸費用分を含めても返済額を軽減できています。
注意点として、『諸費用を借り換え金額に含められる』かどうかは、金融機関によって異なります。『借り換えしたいけど、まとまった預貯金がなく、諸費用の支払いも難しい』方は、諸費用を含め、借り換えできるかどうかを念頭に、金融機関を選ぶようにしてください。
4.住宅ローンを借り換える際の注意点
これまで住宅ローンの借り換えによる利点を中心にお伝えしてきました。一方で、これまで相談してきた方のケースからローンの借り換えには、以下のような注意点があります。
- 条件によっては審査に通らない
- 諸費用がかかる
- 同じ銀行では借り換えできない
- 借入期間の延長はできない
つまり、借り換えは誰もが簡単にできるわけではないのです。出来ないケースを詳しく見ていきます。
4−1.条件によって、審査が通らない
もっとも注意しておきたいポイントは、『銀行の審査に通るかどうかはわからない』ということです。借り換えとは、住宅ローン契約自体を変えることなので新しい金融機関で審査に通らなければ利用できません。また、一般的に借り換えする物件は中古で担保評価が低くなっているため、審査が厳しくなる傾向があります。
他にも、収入が著しく下がっていれば、審査に通らないことも考えられます。金融機関によっては配偶者の収入を合算して申し込めるケースもあるものの、審査に通るとは限らないので注意が必要です。
4−2.借り換え実行時に諸費用がかかる
住宅ローンの借り換えには諸費用がかかります。そのため、借り換えの際は「諸費用の金額を差し引いたうえで返済額がお得になるかどうか」を見ておかなければなりません。
諸費用は金融機関や借入条件によっても異なりますが、物件価格の1.5%~3%程度になるのが一般的です。例えば借り換え金額が2,500万円の場合、必要となる諸費用の目安は50万円~75万円程度です。
金融機関によっては、この「借り換え金額」に諸費用を含めて、すべてローンで支払うことができます。諸費用を支払える現金がない場合、諸費用を借り換え金額に含められる金融機関を選んで下さい。
4−3.同じ銀行では借り換えできない
原則として、同じ金融機関・銀行での住宅ローン借り換えはできません。その為、どうしても同じ銀行で借り換えがしたい場合、現在の住宅ローンがフラット35であれば借り換えできる可能性はあります。
その際、借入れ中の銀行に「今借りているフラット35から最新のフラット35に借り換えできないか?」を確認してみてください。場合によっては同一銀行内での借り換えを認めてもらえるかもしれません。
ただし、フラット35以外の民間住宅ローンについては基本的に同一銀行内での借り換えはできないので覚えておきましょう。
4−4.返済期間の延長はできない
ほとんどの金融機関では借り換えの際に返済期間の延長はできません。例えば、元々30年返済で借りた住宅ローンの残存年数が20年だとします。この場合、借り換えで設定できる返済期間は「20年まで」となり、25年や30年に延長することはできません。ただし、最近は所定の条件を満たせば、返済期間の延長を認めている金融機関もあります。
また、金融機関に交渉して延長(リスケジュール)が認められる可能性もあるため、どうしても返済期間を延長したい方は相談してみるのも返済減額に向け、効果的です。住宅ローンのリスケジュールについて詳しくはこちらもご確認ください。
5.家族で協力し、ローンを返済する手段も
金融機関に相談したり、住宅ローンの契約を見直したりする他にも、家族で協力してローン完済を目指す方法があります。
- 配偶者がパート・アルバイトで収入を増やす
- 車を売却し、カーシェアリングに切り替えるなど、支出を見直しする
- 他にも、生命保険や医療保険等保険料の改善によって、支出を見直すこともできます
こうした収支の見直しによって家計を改善できれば、今の住宅ローンを無理なく継続できるかもしれません。もし、本当に厳しいときは契約者だけで悩むのではなく、家族全体でローンを返せない苦しい状況を認識し、家計を根本から見直してみるのが一番です。
6.住宅ローン返済が苦しいと思ったら、専門家に相談
「滞納したわけではないけど、今のままでは住宅ローンを返せなくなりそう」
少しでも不安を感じたら、金融機関に行く前に専門家に相談し、シミュレーションを行い、対策を準備して下さい。なぜなら、金融機関でも返済の相談窓口はあるものの、お客様の状況によっては金融機関に連絡する前に問題解決すべき内容があるからです。
貴方にとって有利な条件で返済額の負担軽減を交渉したいのなら、専門家に相談してから行動を起こす方が絶対的に改善するポイントが分かり、スムーズに交渉できます。
弊社のような住宅ローンに詳しいファイナンシャル・プランナーや住宅ローンアドバイザー等ローンに詳しい担当がいる不動産会社を探し、住宅ローン返済の負担とその軽減について相談してみてください。
万が一、住宅ローンを返せない理由が新型コロナウィルスによるものであれば、「コロナ版ローン減免制度」によって住宅ローン以外のローンを減免する方法もあります。
ちなみに、弊社でもオンライン上で気軽に無料相談を受け付けているほか、六本木又は富ヶ谷の事務所で対面相談も無料で受け付けております。2000年以降、4,600件超の引っ越し失敗談を分析して得たノウハウを基に住まいの問題を解決案を提案し、実行してきました。
住宅を売却して新たに引っ越し先を検討する際は引っ越し先の現地調査から査定もふまえ、トラブルの少ない物件探しのお手伝いが可能です。住宅ローンも住む場所のお悩みも住まいに関することならお任せください。
7.賢い住宅ローンの借り換え方法まとめ
これまで説明してきたように、住宅ローンを返せないときでも、安易に住宅を競売にかけ、返済や完済を行うのはおすすめしません。事前にローン自体の借り換えも含め、まずは大切なマイホームに住み続ける方法はないかを検討してみて下さい。簡単な計算ならご自身でもできると思います。
この記事で重要なポイントをおさらいします。
1.競売にかけると売却価格は安くなりがちなので、競売にかけられる前に行動すること
2.返せなさそうなときはまず金融機関に相談し、条件変更できるか確認。条件があわなければ借り換えや売却を検討する
3.借り換えは返済額を軽減できるほか、団信や疾病保障といったサービス・契約条件を見直しできるメリットもある
4.借り換えには審査が必要で諸費用もかかるため、誰でも簡単に利用できるわけではない
5.金融機関へ行く前に専門家に相談しておくと、無駄のない交渉をしやすい
住宅ローンの契約は何十年にも及びます。今回のご相談者様のように、契約期間中に収入が減少し、住宅ローンを返せない状態になるのは本当に珍しいことではありません。みな、こうなるとは考えてもいなかったと言われます。
ただ、返せない状態になった時、本当に大切なのは、正しい情報を手に入れ、適切な行動・相談を迅速に取ることです。相談の連絡をされる方は一人でずっと悩み、本当にギリギリになってから連絡をしている人が本当に多いのが現実です。
住宅ローンは契約するまでの情報ばかりが世にあふれています。しかし、契約後の疑問や不安についての正しい情報を得るためには、ファイナンシャルプランナーや弊社のようなローンに詳しい担当がいる不動産管理会社といった専門家への相談が不可欠です。なお、よく聞かれる、自己破産後どうなるのか?そのメリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
今回もサクッと読み切れるように、私たちなりにポイントを整理して記載しました。最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※なお、これまで聞かれることが多かった質問に関して、サイト移動を機に、もっと参考になるよう一部内容を修正・追記し、投稿しています。
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