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こんにちは、住まいのお悩み無料相談、アリネットで住まいのお悩み相談を受けている不動産鑑定士補の相樂です。
これから奥様と婚姻関係を解消しようとされていて、かつご自身が離婚した後に住宅ローンが残っている自宅に住み続けようと考えている方の中には、「奥様に自宅に係る財産分与を行った方が良いの?」などの疑問を抱いている方も少なくありません。
2019年、青森県弘前市にお住いの男性からの相談が正にそうでした。
面談時に、
「住宅ローンの方が自宅の価格より高く、離婚時の財産分与は自宅に関しては無く、その後も自身で住み続けたい。」
と話されていました。
実際に、アリネットでは、離婚後に住宅ローンの残債が残っている自宅に住み続ける予定の男性から「自宅に係る財産分与をどのように奥様に分与すれば良いの?」や「住宅ローンが残っている場合、財産分与を行う必要がないって本当?」などの相談が数多く寄せられています。
では、実際のところはどうなのでしょうか?
離婚成立後も自宅に住み続ける場合の財産分与の要否は、住宅ローンの債務状況などによって異なるため、『どのようなケースが財産分与の対象になるのかを把握しておく』ことが重要です。
そうすることで、自宅に係る財産を奥様に渡す必要があるのかを判断することができます。
今回は『離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合の財産分与の仕方や流れ』、『離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合に財産分与を行う必要があるのかを見極める方法』について、『離婚時に財産分与を行う場合に抑えておくべきポイントや注意点』を含めて詳しく解説していきます。
離婚で悩んでいる方や自宅に住み続けたい方、ぜひ最後まで読んで、参考にしてみてください。
>>離婚時の財産分与後も自宅に住み続けたい男性向け、方法や注意点まとめ
1.離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合、財産分与は必要か?
まず、結婚中に購入した自宅は基本的に財産分与の対象になります。
法律上、結婚中に購入した不動産や株式などは、『夫婦が協力して取得・維持した財産』だとされており、離婚時は公平に分け合う必要があると考えられているためです。
ただし、これまでに説明してきた通り、離婚するからと言って、必ずしも自宅が財産分与の対象になるとは限りません。
住宅ローンの債務状況によっては、自宅が財産分与の対象外になるケースも存在します。
このため、離婚時に住宅ローンが残っており、継続してあなたが住み続けたいと考えているのであれば、事前に『財産分与の概要』や『どのようなケースだと財産分与が必要になるのか』を把握したうえで、自宅に係る財産分与の要否を見極めるようにしてください。
1-1.離婚に伴う財産分与の定義
まず、財産分与とは、『夫婦が離婚をする際に、結婚中の2人で協力して築き・維持した財産を婚姻関係の解消時に分け合う制度』のことです。
例えば、自宅や土地などの『不動産』や『生命保険の返戻金』などが財産分与の対象になっており、一般的にはそれらの半分を奥様に分与する必要があります。
また、財産分与を行う際は、事前にどのような目的や考え方で奥様に分与するのかを知っておくことが必要になります。
一言に財産分与といっても、『清算財産分与』や『扶養的財産分与』などの種類に区分されており、婚姻関係解消時の夫婦の状況などによって分与する際の考え方が異なるためです。
このため、奥様に自宅に関わる財産分与だけでなく、法律上で対象になる財産を分与する際は、事前に『財産分与の種類』を良く理解しておくようにしてください。
この辺り、個別性が強く、面倒なため、無料面談など、御連絡頂ければ、対策をご提案致します。
>>念のため、私たち、アリネットのグーグル上の口コミはこちらのページにまとめてあります。
1-1-1.財産分与の種類
財産分与は、以下の3種類に区分されています。
・清算的財産分与:
結婚中に夫婦が築いた財産を、それぞれの貢献の度合いに応じて分配する方法
・扶養的財産分与:
離婚後に奥様(夫)の生活が貧困することが予想される場合に相手の生活を支えるために行う方法
・慰謝料的財産分与:
不倫やDVなどの婚姻関係解消に至る原因を作った側が、慰謝料の意味を含めて行う財産分与の方法
上記のように、財産分与には離婚時の夫婦の状況によって、分与する際の考え方が異なります。
例えば、現在奥様が専業主婦で離婚後の生活がままならない状況に陥ることで、あなたが奥様の生活をフォローしたいと考えている場合は、一定額を定期的に分割で支払う方法を取れる『扶養的財産分与』を行うことで、奥様が路頭に迷うなどの事態に陥るリスクを減らすことが可能です。
このように、離婚時に財産分与を行う際は、ただ単に結婚中の資産を公平に分け合うだけでなく、「離婚後の奥様の生活をフォローしたい」などの考えや目的によって、分与する性質が異なります。
このため、あなたの状況がどのケースに当てはまるのかを見極めたうえで、目的に合わせて奥様に財産を分与するようにしてください。
1-1-2.財産分与の対象になる資産
結婚中に夫婦が協力して築き維持してきた財産は、名義人に限らず『共有財産』と見なされ、財産分与分与の対象になります。
具体的に、財産分与の対象になる資産は、以下の通りです。
・貯金(現金)
・生命保険(積立金や返戻金など)
・株式
・不動産(自宅や土地)
・自動車
・退職金 など
上記に該当する財産は、『夫婦が協力して形成し維持してきた財産』と見なされるため、全ての資産の金額を算出したうえで、離婚時に奥様の取り分となる額を分与することが必要です。
ただし、結婚中に取得・維持した財産の中にも例外があります。
例えば、『別居後に取得した財産』です。
法律上、財産分与は、原則『入籍から別居時までの財産』が対象になっているため、婚姻関係を解消していなくても、別居後に購入した財産は奥様に分与する必要がありません。
このため、現在奥様と別居中で、離婚により財産分与を行おうと考えている方は、『別居前に購入し維持してきた資産から分与額を算出する』ようにしてください。
1-1-3.財産分与の対象にならない財産
財産分与の中には、結婚中に得た財産であっても財産分与の対象にならない財産が存在します。
『特有財産』と呼ばれる『夫婦の協力以外で得た財産』です。
『夫婦の協力以外で得た財産』は、財産分与の対象外になるため、奥様に分与する必要がありません。
なお、『特有財産』に該当する財産は、以下のようなものが該当します。
・独身時代に貯めた貯金
・両親などが残した遺産
・別居中に築いた資産
など。
ただし、上記に該当する財産でも、分与の対象になるケースもあるので注意が必要です。
『結婚後に夫婦が協力したことによって価値が維持されたといえる場合』や『その資産価値が増加したのは夫婦の貢献があったからだといえるような場合』は、分与の対象とみなされます。
これらに該当する場合は、貢献度に応じて財産分与の対象になることを覚えておいてください。
1-1-4.財産分与の割合は?
婚姻関係の解消時に奥様に分与する際は、原則『対象となる財産の2分の1』の割合を分与することが必要です。
夫婦がそれぞれ働きに出ている場合やどちらか一方が専業主婦(夫)の場合であっても、離婚時は双方が公平に財産を受け取れるように分与を行います。
ただし、上記の割合はあくまでも目安であるため、必ずしもこの限りではありません。
例えば、結婚中に奥様が浪費傾向にあり、夫が倹約に努めていた場合は、夫婦で2分の1ずつ分けるのが公平ではないとされるケースがあります。
このため、財産分与の割合を決める際は、『結婚中にお互いが生活を維持するためにどのように貢献してきたのか』などを考慮したうえで、夫婦で話し合いを行なって決めてみてください。
1-1-5.奥様に同意なく作った借金は財産分与の対象?
ギャンブルなどにより奥様に同意なく作った借金は、財産分与の対象になりません。
個人的な遊興費(遊びに使う費用のこと)やギャンブルは、『日常家事債務の連帯責任』に該当せず、財産分与の対象にはならないと考えられているためです。
ただし、あなた自身が無断で作った借金であっても、奥様が連帯保証人になっている場合は、離婚をしても奥様に保証人としての返済義務が生じます。
このため、無断で作った借金の連帯保証人を奥様にしてしまっている方は、奥様と話し合いを行なったうえで、結婚中に借金を完済するなどの対策を取るようにしてください。
こういった借金は結婚中に無くしてしまわないと、後々元奥様とトラブルに発展しかねません。
一方、夫婦生活に必要だと考えられる『生活費を捻出するための借金』や『子供の教育ローン』、『住宅や車のローン』などの債務の場合は、財産分与の対象になります。
とはいえ、資産より負債が多い場合に、返済を負担させることができるわけではないことを覚えておいてください。
1-1-6.財産分与を行う際に税金が発生するの?
離婚時に財産分与を行う場合、原則『贈与税』は発生しません。
法律上、財産分与は元パートナーから贈与を受けたものではなく、結婚中の夫婦の財産を清算し、離婚後の生活を保証するものだと考えられているためです。
ただし、分与された額が『婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮しても多過ぎる場合』と税務署が判断した場合は、贈与税の対象になる場合があります。
また、財産分与が土地や家屋(建物)などで行われた場合は、分与した人に『譲渡所得税』が課せられるケースもあるため、現金以外で奥様に分与する予定の方は事前にどのような税金がかかるのか、税理士に相談するようにしてください。
1-1-7.慰謝料や養育費は財産分与と別?
基本的に、『養育費や慰謝料は財産分与とは別に考える』必要があります。
財産分与は、夫婦が協力して築いて維持した財産を婚姻関係解消時に清算する制度であり、慰謝料や養育費は別ものだと考えられているためです。
このため、夫婦どちらか一方による不倫やDVなどが理由で離婚に至る場合や、あなたが子供の養育費を支払う場合などは、財産分与とは別に、支払う慰謝料や養育費を算出する必要があることを覚えておいてください。
1-2.離婚後も住宅ローンが残っている自宅にあなたが住み続けるメリットとデメリット
離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合、事前にどのようなメリットやデメリットが生じるのかを把握しておくことが重要です。
これらを把握しておくことで、離婚後に自宅に住み続けても問題ないのかを見極めることができます。
ここでは、離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続けるメリットとデメリットについて解説していくので、参考にしてみてください。
1-2-1.離婚後も住宅ローンが残っている自宅にあなたが住み続けるメリット
離婚後も住宅ローンが残っている自宅にあなたが住み続けるメリットは、『新居を探すために手間や費用をかける必要がない』点です。
離婚後も自宅に住み続けることで、新居を探す必要がないため、新しい家に引越すための費用を捻出したり、内見や契約をするなどの手間を省くことができます。
離婚時に自宅を出る場合、様々な手間がかかるうえに、新居を契約するためにまとまった費用を捻出する必要があるため、スムーズに新生活を始められるのは非常に大きなメリットです。
1-2-2.離婚後も住宅ローンが残っている自宅にあなたが住み続けるデメリット
離婚後も住宅ローンが残っている自宅にあなたが住み続けるデメリットは、住宅ローンの契約形態次第では『強制的に自宅を追い出される危険性がある』ことが挙げられます。
例えば、夫婦それぞれが名義人となる住宅ローンを離婚後も双方が返済すると同意したものの、収入が減ったなどの理由により元妻が返済不能になった場合です。
こういったケースは、一括で残債を請求されてしまい、支払うことができないと、債権者に競売にかけられて自宅を追われてしまう危険性があります。
そのため、もしあなたが離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続けるのであれば、結婚中に夫婦同意のもとで、適切な対策を講じた方が安心です。
たとえば、協議書への捺印だけでなく、公正証書を作る等、法的に認められる方法が必要になります。
この辺りは経験している先に相談し、進めた方が良いと思います。お近くの離婚問題を扱っている先、又は私たちの様に、無料相談を設け、専門的に対応している所が良いと思います。
2.離婚後も住宅ローンが残っている自宅にあなたが住み続ける場合に財産分与を行う必要があるのかを見極める方法
離婚後も住宅ローンが残っている自宅にあなたが住み続ける場合、以下の2つの債務状況によって財産分与の要否が異なります。
・アンダーローンの場合
・オーバーローンの場合
それぞれについて、解説していきます。
2-1.アンダーローンで夫が継続して住み続ける場合
アンダーローンとは、『自宅の価値(不動産評価額)が住宅ローンの残債よりも高い状態』のことです。
通常の売却方法で自宅を処分することができ、負債を無くすことができるため、財産分与の対象になります。
このため、現在自宅がアンダーローンで、離婚後にあなたが継続して住む場合は、自宅に係る資産を現金などで奥様に渡すようにしてください。
2-1-1.アンダーローンの場合の財産分与
離婚後も自宅にあなたが住み続ける予定で、アンダーローンの自宅に関わる財産分与を行う際は、『自宅の不動産評価額から住宅ローンの残債額を差し引いた金額のうち、奥様が受け取るべき額と同等の資産』を渡すことで分与を完了することが可能です。
例えば、自宅の評価額額が2,500万円で、住宅ローンの残債が1,000万残っている状態で奥様に半分の額を渡す場合、自身の預貯金などから750万円を奥様に渡すことで分与を完了することができます。
とはいえ、750万円もの大金を現金で渡せる方はそう多くはありません。
このため、自宅がアンダーローン状態で離婚後も自宅に住み続けるのであれば、『離婚時の住宅ローン問題に詳しい方』に相談を行なってみてください。
こういった方に相談を行うことで、『自宅の売却せずに奥様に財産を分与する場合、どのように行えばいいのか』について、あなたの状況を精査したうえで適切な助言を行なってくれます。
2-2.オーバーローンで夫が継続して住み続ける場合
オーバーローンとは、『自宅の価値(不動産評価額)が住宅ローンの残債よりも低い状態』のことです。
原則自宅を売却できない状態であるため、財産分与の対象外になります。
ただし、必ずしも財産分与が不要という訳ではありません。
例えば、住宅ローンの残債を貯蓄や株式などを売却したお金などで賄える場合は、財産分与の対象になることを覚えておいてください。
2-2-1.オーバーローンの場合の財産分与
離婚時にオーバーローンの場合、上記でも記述した通り、財産分与の対象外になるため、自宅以外の資産を奥様に分与することで手続きが完了になります。
しかし、オーバーローンの住宅ローンを抱えたまま離婚に至る場合は、婚姻関係を解消する前に夫婦で適切な対策を講じておくことがおすすめです。
例えば、ペアローンを契約中に離婚に至る場合、契約内容によっては、奥様が自宅から引越しをしてしまうと契約違反にあたり、一括で返済するように要求される危険性があります。
このため、オーバーローンの住宅ローンを抱えたまま離婚に至る際は、事前に夫婦で協力して住宅ローン問題を解決するようにしてください。
そうすることで、離婚後に起こり得るトラブルを回避できます。
2-3.奥様が自宅や住宅ローンの名義人になっている場合は?
住宅ローンの名義人ではないあなたが自宅を取得する場合、『不動産(自宅)と住宅ローンの名義人を夫に変更する』ことで財産分与を完了することができます。
ただし、住宅ローンの残債が残っている状態で名義変更をするのは容易ではありません。
ほとんどの債権者(住宅ローンの借り入れ先)は、ローンの残債が残っている状態で名義人を変更することに対して消極的な考えを持っているため、要求を拒否される可能性が高いです。
このため、離婚時に住宅ローンの名義変更を行う際は、債権者に同意してもらえるような提案・交渉を行うことが必要になります。
例えば、奥様よりも十分な収入を得ているなどをアピールすることができれば、名義変更に応じてもらえるかもしれません。
2-4.離婚を機に自宅を売却する場合は?
離婚後に自宅を売却することも検討しているのであれば、『離婚が成立する前に売却を進める』ことをおすすめします。
婚姻期間中に自宅を処分することで、トラブルを避けることができるためです。
例えば、奥様が連帯保証人となる住宅ローンが残っている場合でも、ローン自体を無くすことで、奥様に迷惑を掛ける可能性がなくなります。
また、夫婦が共同名義人となる住宅ローンを組んでいる場合も同様に、返済義務をなくせるうえに、スムーズに売却手続きを進めることが可能です。
離婚後に自宅を売却する場合、住宅ローンの契約形態によっては、奥様の同意や協力が必要になるケースもあるため、婚姻期間中に売却することを検討してください。
>>離婚時、どのタイミングで自宅を売却すれば良いかこちらのページにまとめておきました。
2-4-1.住宅ローンを滞納している場合は任意売却を利用できる
住宅ローンを滞納している場合は、『任意売却』という方法を活用して、自宅を処分することができます。
任意売却とは、『債権者の同意を得て通常の売却方法で自宅を処分する方法』のことで、この方法を活用することで、オーバーローンの場合でも自宅を売却することが可能です。
ただし、任意売却には様々なデメリットが存在するため、利用を検討する際は、事前に『どのようなリスクがあるのか』を把握しておく必要があります。
例えば、任意売却を利用できるという事は、住宅ローンを長期間滞納している状態であり、『個人信用情報機関(滞納した履歴を管理している機関)』に記録が残ってしまうなどです。
上記の機関に滞納した記録が残っていると、新生活を開始した際にクレジットカードを作成できなかったり、再度自宅を購入する際に住宅ローンを組めなくなってしまいます。
このため、現在住宅ローンを滞納していないのであれば、別の方法を検討する方が賢明だと言えます。
>>離婚時の財産分与後も自宅に住み続けたい男性向け、方法や注意点まとめ
3.離婚時に自宅に関わる財産分与を行う際の流れ
離婚時に自宅に関わる財産分与を行う際の流れは、以下の通りです。
- 自宅に関わる財産分与について話し合う
- 住宅ローンの名義人が誰なのかを確認する
- 住宅ローンの残債がいくら残っているのか確認する
- 自宅の不動産評価額を査定してもらう
それぞれついて、解説していきます。
3-1.夫婦で自宅に関わる財産分与について話し合う
離婚をする際は、まず『夫婦で自宅に関わる財産分与について話し合い』を行うようにしてください。
例えば、離婚時に住宅ローンの残債を完済できず、夫が継続して住み続ける場合、『返済をどのように行なっていくのか』や『住宅ローンの債務形態を変更する必要があるのか』などを話し合うことが重要です。
これらの内容を結婚中に話し合い取り決めを行っておくことで、後々住宅ローンや自宅を巡って元夫婦間でトラブルに発展するリスクを大幅に軽減することができます。
3-2.住宅ローンの名義人が誰なのかを確認する
離婚時に自宅に関わる財産分与を行う際は、まず『住宅ローンの名義人が誰なのか』を確認する必要があります。
名義人が誰なのかによって、離婚後の自宅の取り扱い方や財産分与の内訳が異なるためです。
例えば、夫婦が共同名義人になる『ペアローン』を組んでいる場合、離婚後も住宅ローンの残債が残っているのであれば、奥様も継続して返済義務を負う必要があります。
また、契約内容によっては、奥様が自宅を出てしまうと契約違反と見なされ、残債を一括で返済するように要求される可能性があります。
そのため、大変ですが、引越しをする前に夫側の単独名義の住宅ローンに乗り換えるなどの対策を講じなければなりません。
他にも、離婚時に自宅に関わる財産分与を行う際は、借り入れ先となる金融機関や契約書を確認するなどして、現在の住宅ローンの名義人が誰なのかを明確に把握するようにしてください。
3-3.住宅ローンの残債がいくら残っているのか確認する
離婚時に自宅に関わる財産分与の要否を判断するためには、『現在住宅ローンの残債がいくら残っているのか』を確認する必要があります。
自宅がオーバーローンなのかアンダーローンなのか見極める際に、必要な情報になるためです。
正確な住宅ローンの残債を把握するために、金融機関に確認を行うようにしてください。
3-4.自宅の不動産評価額を査定してもらう
自宅がオーバーローンなのかアンダーローンなのか見極めるためには、上記の住宅ローンの残債とは別に、『自宅の不動産評価額』を把握する必要があります。
現在住んでいる家にどれくらいの価値があるのかを把握しておかないと、当然ですが、オーバーローンなのかアンダーローン判断することができないためです。
離婚時に自宅に関わる財産分与の要否を判断するためにも、事前に『不動産会社に査定を依頼する』ようにしてください。
不動産会社に査定を依頼することで、現在の自宅の不動産としての価値がどのくらいなのか把握することができます。
4.離婚時に財産分与を行う場合に押さえておくべきポイント
離婚時に奥様に財産分与を行う場合に押さえておくべきポイントは、以下の2点です。
・離婚後に住宅ローンの残債をどのように支払っていくのか話し合う
・離婚後に元妻とトラブルに発展しないように対策を講じる
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1.離婚後に住宅ローンの残債をどのように支払っていくのか話し合う
離婚後も住宅ローンの返済を継続する場合、『どのように支払っていくのかについて夫婦で話し合いを行う』必要があります。
例えば、夫婦が共同名義となる住宅ローンを組んでいる場合は、離婚成立後も双方に返済義務が生じます。
そのため、しっかりと話し合いを行っておかないと、どちらか一方が返済不能になった際に、双方に悪影響を及ぼしかねません。
このため、離婚後も住宅ローンの返済を継続する際は、事前に取り決めを行ったうえで、『取り決めた内容を公正証書に残す』などの対策を講じるようにしてください。
公正証書は『法的な効力を持つ書類』になっているため、取り決めた内容を公正証書に残すことで、万が一、元妻が返済を拒否した際に、給与や財産を差し押さえるなどの対処を施すことができます。
4-2.離婚後に元妻とトラブルに発展しないように対策を講じる
財産分与を行った後に、元妻と財産を巡ってトラブルになるケースは珍しくありません。
例えば、離婚後にペアローンで契約した住宅ローンを完済したため、自宅を売却しようとしたが、元妻に売却することを拒否されてしまい、揉めてしまったというケースが実際にありました。
また、単独名義の住宅ローンを完済して自宅を処分しようとした際、元妻から売却金を請求されたというケースもあります。
したがって、離婚後に自宅を手放す予定がある方は、事前に奥様に自宅を処分する可能性があることを伝えてください。
そのうえで、『実際に売却を進める際にどのように売却手続きを行うのか?』などを話し合い、取り決めを行うなどの対策を講じておくようにしてください。
5.離婚時に自宅に係る財産分与を行う際、夫婦間で起こり得るトラブルの事例と解決方法
自宅に係る財産分与を行う際に、夫婦間で揉めてしまうケースは珍しくありません。
夫婦間で揉めないためにも、事前にどのようなトラブルが起こりやすいのかを把握しておくようにしてください。
ここでは、離婚時に自宅に係る財産分与を行う際に夫婦間で起こり得るトラブルの事例と解決方法を解説していきます。
5-1.離婚後に継続して夫が住み続けることで奥様側が自身の両親が購入した家具を自身に渡すように要求したことで揉めた事例
【事例内容】
この夫婦は、離婚後に夫が住み続けることになりました。
しかし、奥様は継続して夫側が自宅に住み続けることに不満を抱き、結婚時に奥様側の両親が購入した家財を財産分与として自身に全て渡すように要求したため、揉めてしまったそうです。
【解決方法】
原則、奥様側の両親が購入した家財は『特有財産』に該当するため、財産分与の対象外になります。
したがって、原則夫の許可を得なくても持ち出すことが可能です。
ただし、例外もあるので注意が必要です。
このケースでは該当するか不明ですが、両親が夫婦の生活を援助するために家財を贈与した場合です。
こういった場合は、『夫婦共同財産』と見なされ、財産分与の対象になるため、夫婦でよく話し合いを行ったうえで、どちらが持ち出すのかを決める必要があります。
5-2.奥様名義の住宅ローンや自宅の所有権を変更することを希望したことで揉めた事例
【事例内容】
この夫婦は、奥様が単独名義人となっている住宅ローンの返済中に離婚に至ることになりました。
最初は売却することを検討していましたが、購入から2年程度しか経過しておらず、自宅はオーバーローン状態であったため、売却することができなかったそうです。
そのため、夫が自宅の所有権や住宅ローンの名義を自身に変更して継続して住むことを希望しました。
そのことに奥様が反対して揉めてしまった事例です。
【解決方法】
住宅ローンの名義人を変更したい場合、当然ですが『名義人の同意』を得る必要があります。
名義人の同意がなければ、金融機関は勝手に契約内容を変更することができないためです。
このため、仮に同様の事態に陥った場合、あなた自身の名義に変更したいのであれば、奥様を説得して同意を得るしかありません。
例えば、弁護士に相談を行い、奥様が納得のいくような条件を提案するなどが有効です。
第三者に間に入ってもらうことで、奥様も感情的になりにくく、同意してもらいやすくなります。
6.離婚後も住宅ローンが残っている家に住み続ける前提で財産分与を行う際の注意点
離婚後も住宅ローンが残っている家に住み続けるとして財産分与を行う際は、以下の5点に注意する必要があります。
- 財産分与には2年間の請求期限が設けられている
- 分与する額を分割で支払う場合は短期間で済ませる
- 基本的に住宅ローンの名義変更や連帯保証人の解除は簡単に行うことができない
- 夫婦で取り決めを行った際は公正証書を作成する
- 夫婦が住宅ローンの共同名義になっていたり、奥様が単独名義になっている場合は離婚成立前に対策を講じる必要がある
それぞれ解説していきます。
6-1.財産分与には2年間の請求期限が設けられている
奥様に財産分与を行う際は、夫婦同意のもとで分与する割合を決めることが重要になります。
財産分与には、『離婚成立後から2年間の請求期限』が設けられているため、元妻が分与額に納得ができなかった場合、離婚後に再度分与するように要求される危険性があるためです。
仮に、あなたが財産を隠して奥様に分与する額を減らすなどの悪質な行動を取ってしまうと、不法行為と見なされ損害賠償を請求されてしまう危険性すらあり得ます。
このため、奥様に財産分与を行う際は、対象となる財産を全て公開したうえで、夫婦どちらも納得できるように分与を行うようにしてください。
6-2.分与する財産を分割で支払う場合は短期間で済ませる
奥様に分与する財産を分割で支払う場合は、できるだけ『短期間で完済する』ことをおすすめします。
支払い期間を長期間にしてしまうと、後々あなたの新生活に影響を及ぼすうえに、収入の減少などにより支払いが困難な状況に陥る可能性があるためです。
また、財産分与で分与する額を無期限で将来支払うと合意したとしても、元妻からまとめて支払うように要求され、請求が認められた判例もあるため注意が必要になります。
このため、分割で財産分与を行いたいと考えている方は、無理のない範囲で短期間のうちに完済できるように、『ライフプランと照らし合わせながら支払い計画を立てる』ようにしてください。
綿密な計画を立てることで、『毎月いくらなら生活に支障をきたさずに支払うことができるのか』や『明確な支払い期間』を見極めることが可能です。
6-2-1.財産分与で分与する額を無期限で支払うと合意していたが、収入が安定したことで元妻からまとめて支払うように要求された判例
ここでは、実際に財産分与で分与する額を無期限で支払うと合意していた。
しかし、夫側の収入が安定したことで、元妻からまとめて支払うように要求された判例を紹介します。
この夫婦は、離婚時に元妻に500万円を財産分与として支払うことで合意しましたが、元夫は500万円を一括で支払うことができませんでした。
そのため、先に元妻に300万円を支払い、夫婦それぞれが同意したうえで、残りの200万円を無期限・無利息の条件で将来支払うことになったそうです。
しかし、元夫の給与所得が600万円を超える水準になっても残りの分与額を支払わなかったため、元妻が財産分与200万円と遅延損害金を支払うように要求した裁判です。
結果的に、支払い期限は到達したと考えられ、元夫に残りの財産分与額である200万円と支払期限が到達したとされる時期から換算し遅延損害金を支払うようにという判決が下されました。(東京地方裁判所判決/平成28年(ワ)第8904号)
上記のように、財産分与を無期限・無利息で支払うことで合意していても、元妻に遅延金や一括で分与額を支払う必要があると認められるケースもあります。
このため、分与額を分割で支払う場合は、こういったトラブルに発展しないためにも、できるだけ早い期間で支払いを済ませるようにしてください。
6-3.基本的に住宅ローンの名義変更や連帯保証人の解除は簡単に行うことができない
奥様の単独名義や共同名義人となる住宅ローンなどの名義変更や連帯保証人の立場を解除することは、基本的に行うことができません。
住宅ローンは、名義人の信用力や経済力、勤務状況などを考慮して、融資を行なっていることから、ほとんどの金融機関は名義人を変更することを認めていないためです。
このため、離婚時に住宅ローンの名義変更や奥様の連帯保証人の立場を解除したいのであれば、『離婚時の住宅ローン問題に詳しい方』に相談を行うことをおすすめします。
こういった方に相談を行うことで、『金融機関に名義変更・連帯保証人の解除を要求する際の効果的な対策方法』を教えてもらうことができます。
6-4.夫婦で取り決めを行った際は公正証書を作成する
離婚後も住宅ローンの返済を、夫婦それぞれで継続する場合、奥様と話し合いを行ったうえで、『取り決めた内容を公正証書』に残すことをおすすめします。
公正証書とは、『法務大臣に認められた公証人が作成する強制執行の機能を兼ね備えている書類』になっており、夫婦で決めた内容をこの書面に残しておくことで、万が一、元妻がローンの返済を拒否しても、裁判所を通さずに給与や車などの財産を差し押さえることが可能になるためです。
実際、結婚中に夫婦が納得したうえで取り決めを行なっても、再婚などを理由に返済を拒否するケースは少なくありません。
このため、後々住宅ローンの返済を巡って元妻とトラブルにならないためにも、話し合いで決めた内容を公正証書に残しておくようにしてください。
6-5.夫婦が住宅ローンの共同名義になっていたり、奥様が単独名義になっている場合は離婚成立前に対策を講じる必要がある
離婚時に夫婦それぞれが住宅ローンの共同名義になっていたり、奥様が単独名義になっている場合は、婚姻関係を解消する前に対策を講じる必要があります。
例えば、上記の2つに該当する住宅ローンを契約中に、奥様が自宅から引越しをする場合、債権者と交わした契約内容によっては、契約違反に該当してしまうかもしれません。
仮に、契約違反だと判断されてしまうと、ローンを分割で支払う権利を剥奪されてしまい、残りの残債を一括で支払うように要求されてしまう可能性があります。
このため、上記に該当する住宅ローンを契約中で、名義人が自宅から引越しをする場合は、結婚中に『あなたの単独名義となる住宅ローンに乗り換える』などの対策を講じるようにしてください。
>>離婚時の財産分与後も自宅に住み続けたい男性向け、方法や注意点まとめ
7.離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合は財産分与を行う必要があるのかについてのまとめ
今回は、『離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合は財産分与を行う必要があるのか』について、『財産分与の要否を判断する際のポイントや注意点』を含めて詳しく解説してきました。
以下、『離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続ける場合は財産分与を行う必要があるのか』についてのまとめです。
- 離婚後も住宅ローンが残っている自宅に夫が住み続ける際の財産分与は、オーバーローンかアンダーローンなのかで異なる
- 財産分与の概要を知っておくことで、スムーズに奥様に分与することができる
- 離婚後も住宅ローンが残っている自宅に夫が住み続けることで、新居を探す手間や費用の負担を無くすことができる
- 離婚後も住宅ローンが残っている自宅に夫が住み続ける場合、後々強制的に自宅を追われる可能性がある
- 『不動産評価額』と『住宅ローンの残債』の情報を把握しておくことで、自宅に係る財産分与の要否を見極めることができる
- 離婚時に財産分与を行う際は、2つのポイントを押さえておく必要がある
- 離婚時に財産分与を行う際の5つの注意点を把握しておくことで、トラブルに発展するリスクを軽減できる
離婚後も住宅ローンが残っている自宅に住み続けるとして、自宅に係る財産分与が必要なのか見極める際は、『自宅がオーバーローンなのか、アンダーローンなのか』を正確に把握することが重要です。
例えば、自宅がオーバーローンの場合は、財産分与の対象外になっているため、「それ以外の資産を奥様に分与することで、公平に財産分与を完了できる」と判断することができます。
しかし、自宅に係る財産分与の要否を明確に判断するだけでは、安心するには不十分です。
離婚後も自宅の住宅ローンが残っている場合、契約形態によっては、婚姻関係を解消した後に元夫婦間でトラブルに発展する危険性があります。
実際に、住宅ローン問題を解決せずに離婚に至った方の中には、「元妻が返済不能になり、債権者から一括で返済するように要求された」といった事態に陥った方も存在するため、事前に『適切な対処を施してから離婚を成立させる』ようにしてください。
とはいえ、「自身の状況に適した対策方法を見極められない」と悩んでしまう方は少なくありません。
奥様に早く離婚を成立するように要求されてしまい、対策を講じないまま離婚に至ってしまう夫婦も多いです。
仮に、上記のように、「離婚時に適切な対策を施してから離婚を成立させたい」と考えている方や奥様に早く離婚するように急かされており、迅速に住宅ローン問題を解決に繋げたいと考えている方は、アリネットまでご相談ください。
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