住んでいた親が施設に入り、空き家になった実家を放置したら起きたトラブル

こんにちは、不動産で明るい毎日を目指す六本木の不動産屋、(株)リビングインで建物の設備やそれらの改修を担当している、防犯設備士兼宅地建物取引士の相樂です。

今回、アリネットに相談にいらした方は埼玉県にお住いの50代女性の方で、実際に経験したトラブルとその対策をまとめました。

お母様が介護施設に入ることになり、空き家になった実家を倉庫として、使っていました。自宅から離れているものの、特に管理を入れることなく、一年近くほど、訪れることはありませんでした。

1.親が不在となり、空き家になった実家を持て余していたら、トラブルが発生

今回アリネットに相談にいらした方は、50代の独身女性の方でした。お父様が既に亡くなっていらして、お母様がご実家で独り暮らしをしていたのですが、1年ほど前に老人ホームに入ることとなり、実家が実質空き家となっている、という状況でした。

この方には弟さんと妹さんがいらして、ご実家にはご両親の物だけでなく、相談者の方や弟さんと妹さんの私物も保管されていました。そのため、空き家となってしまっても、所有者はお母様のままとして、倉庫のように使おうと思っていたそうです。

しばらくは問題無く、時折家族の誰かが私物を取りに行ったり、邪魔になった物を置きに行ったりしていたそうですが、相談者の方に市から督促状が届いたことを皮切りに、次々にトラブルに襲われたそうです。

1-1.空き家に生える雑草が大変な状態で草刈りをしてほしいと市から督促状が届く

トラブルの皮切りとなったのは、市から届いた督促状でした。ご実家の周りの雑草が大変な状態になっているため草刈りをしてほしい、という書面が市役所から届いたそうです。

「私が長女だったので、私のところに届いたのだと思うのですが、いきなりのことでパニックになってしまいました」

相談者の方はそう言いながら、届いた督促状を見せてくれました。難しい言葉も散りばめられていた書面だったので、相談者の方の気持ちもよく分かりました。いきなりこれが届いたら驚くことでしょう。

「実際、実家の雑草は確かにすごい状態になっていたので、私の手作業じゃどうしようもなく、業者に頼もうと思ったのですが、相場も分からないし、どこに頼んだらいいか分からないし・・・」

結局、この方は督促状に対してどのように対応したらいいか分からず、そのまま書面をアリネットに持ってきました。まだなにも手をつけていないとのことで、「これで罰金とか請求されたらどうしよう・・・」と不安そうにしていらっしゃいました。

1-2.登記総合測量調査事務所から「隣家の住人から境界を明確にしたいという申し出があった」という書面が届く

雑草の手入れについての書面が届いてほどなくして、今度は登記総合測量調査事務所から書面が届きました。

「隣家の住人から境界を明確にしたいという申し出があったため、立ち会ってほしい」という内容だったのですが、これまた難しい言葉が散りばめられていて、この方の不安を煽るような書面となってしまっていました。

「もう、差出人からして聞いたこともないような機関でしたし、私は立ち会うだけでいいのか、何かやらなければならない手続きがあるのか、お金を取られるのか、どうしたらいいのか・・・」

相談者の方は途方に暮れていました。

1-3.住民がいないなら、固定資産税が変わるという通達が届く

そうこうしているうちに、今度はまた市役所から通達が届きました。今度の内容は、相談者の方も黙ってはいられない大事で、ようやく行動に移すきっかけとなったそうです。

それは「空家等対策特別措置法」による固定資産税変更の案内でした。

「私もよく分からなかったのですが、私なりに調べてみたら、どうも空き家を放置していると固定資産税が6倍になるとかいうもので、それは本当に困ると思ったんです」

この方がおっしゃる通り、確かに「空家等対策特別措置法」というものは、条件などによって空き家の固定資産税が最大で6倍になるというものです。

この決まりは、空き家を放置しないために定められたものです。空き家を放置していると、悪臭や害虫の発生で近隣住民に迷惑をかけたり、倒壊の危険性が高まったり、様々なデメリットが生じます。そのため、空き家には高額な固定資産税をかけることで、空き家放置を防ぐ意図でこの特別措置法が制定されました。

1-4.売りに出すにも撤去するにも、実家には色々なものがあり、手をつけられない

立て続けに3つの書面を受け取りパニックになった相談者の方は、ご実家を売り払ってしまえば万事解決するのでは、と考えてアリネットに相談にいらっしゃいました。

「でも、売るにもお母様の意向を確認し、実家には両親や兄弟のものが沢山あって、まずこれをどうにかしなくちゃならないし、そもそも古い戸建て住宅が売れるのか分からないし、売ってしまえば固定資産税とか、維持費とか、かかりませんよね?」

焦りが見えていた相談者の方を一旦落ち着けて、私たちは一旦状況を整理しました。数々の書面が届き、このまま空き家状態で放置するわけにはいかなくなった相談者様。

しかし、ご自身含め弟さんと妹さんの私物がご実家に置いてあるため、まずはそれらをどうにかしなければなりません。ただ、東京と埼玉で普段は離れて暮らしているため、なかなか連絡がつかず、時間を取って話し合う機会を設けられていないとのことでした。

2.トラブルの原因は母親が家を出るタイミングできちんと対策しなかったこと

アリネットとして今回の問題の根本的な原因を分析した結果、お母様が老人ホームに入るタイミングでキチンと対策しなかったことがそもそもの問題であったという結論に至りました。

本来であれば、家に誰も住人が居なくなる時点で、そこを「物置」や「倉庫」として使おうと安易に考えず、どのように扱うかきちんと考えるべきでした。もちろん、住人がいなくなった実家を倉庫として使うことそのものは悪いことではないと思います。ただし、「きちんと管理した上で」という条件がつきます。

人が訪れず、雑草は生え放題、害虫は湧き放題、換気が出来ていない建物の老朽化はどんどん進んでいる・・・、という状態でボロボロの空き家を物置や倉庫として使い続けているとトラブルに進展します。

そのため、住人がいなくなる時点で

  • 誰がどのように管理をするのか
  • 維持費や管理費は誰がどの程度負担するのか
  • 今後、売却するかどうするか

など、家族間できちんと話し合い、方向性を決めるべきなのです。時を遡ることはできませんので、現時点でひとつひとつトラブルを解決していくしかなく、アリネットから具体的なアドバイスをいたしました。

3.まずは書面の送付元に連絡して指示を仰ぐ

まず、取り急ぎですが、今回の相談の場合は市役所と登記総合測量調査事務所から書面が届いてしまっていたので、早急に対応しなければなりませんでした。

「それぞれの送付元に連絡し、どうしたらいいのか指示を仰ぐことから始めましょう」と提案し、一緒に話を聞きました。

3-1.雑草問題について

個人で業者に依頼して、綺麗にしてもらえればいい、ということでしたので、アリネットからも業者紹介をするということで解決の糸口が見えました。

3-2.登記総合測量調査事務所からの書面について

送付元に連絡し確認したところ、ひとまず、予定を伝え、現地で立ち会ってくれれば良いということでしたので、弊社スタッフも同行して立ち会うこととしました。

3-3.固定資産税に関して

決定事項で動かしようがないことでしたので、今後空き家を整理して売却するかどうするかという相談をご家族でしていただくこととなりました。同時に、家を解体する場合には補助金が出る事も教えてもらいました。

4.親族としっかり話す場を設け、空き家問題に協力して向き合う

空き家となったご実家を売却するのか、これからも自分たちの所有物件として活用していくのか、そういった話し合いをしていただくために、相談者の方には弟さんと妹さんに連絡をしていただきました。

お母様は残念ながら認知症も発症しておられて、話し合いには参加できないとの事でしたので、一旦、子どもたちだけで話し合うとのことでした。

ご実家に置いていた各々の私物やご両親の遺品などは、自分で持ち出しや整理ができるものは自分たちでやり、そうでないものに関しては業者に頼むのが望ましいというアドバイスをしました。

相談者ご本人は「今後管理していくこと、維持費がかかることを考えると絶対売ってしまった方がいいですよね・・・」とおっしゃっていたので、ここで弊社はご兄弟を説得するためにも有益な情報と思われる以下の裁判判例をひとつご紹介することとしました。

5.裁判判例、空き家を放置していると、思わぬ事件に巻き込まれるリスクも・・・

ご相談者様に紹介した判例は、2020年2月23日に福岡県で起きた事件で、2020年8月3日に福岡地方裁判所小倉支部で判決が出たものです。判例番号はL07550690として記録されており、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反による非現住建造物等放火被告事件」と題されています。

表題の通り、この事件は放火事件で、端的には「鬱憤晴らしのために空き家に放火した・・・」というものです。

事件のあらましは次の通りです。生活に困窮していた犯人が知人に借金を断られ、鬱憤を晴らすために2020年2月23日23時6分頃から同日23時12分頃までの間に、新聞紙などが入ったビニール袋を空き家の外壁付近に置いてライターで点火して同家を全焼させました。

個人的な鬱憤晴らしという身勝手な動機で犯行に及んだため実刑判決となりましたが、犯人が高齢であったこと、精神遅滞が見られたこと、反省していることなどから、懲役3年という刑期で決定しました。

このように、空き家は犯罪に使われたり巻き込まれたりするリスクを孕んでいます。普段は住人がいないため、犯罪者から目を付けられやすく、放火だけでなく、立てこもりに利用されたり、空き巣に入られて物を盗られたりする可能性があります。

こういった危険があることを考えると、空き家を放置していることがいかにリスキーかということが分かります。アリネットでは、この判例を相談者様に紹介し、ご兄弟への説得材料として活用するようお伝えしました。

6.業者に依頼して家の中の整理をしてから売却という方向で話を進めることに

その後、相談者様は弟さんと妹さんと話し合いの場を設け、市役所などから書面が届いたことや、アリネットに相談に行ったことなどを話し、今後どうしていくか意見を擦り合わせました。

その結果、弟さんも妹さんも、特にご実家に執着しているわけではなく、ただスペースがあるから倉庫や物置として活用していただけだということが明らかになりました。ご実家を売却してしまって全く問題無いということだったので、業者に依頼して家の内外を綺麗にしてもらい、その後売却することで決定しました。これで雑草問題も固定資産税問題も解決の糸口が見えてきました。

その後、アリネットからも清掃業者などを紹介し、庭部分の雑草を綺麗に掃除して、家の中もプロの業者が整理と清掃をおこない、売却できる状態にしました。住宅売却もアリネットにご依頼いただいたので、3カ月経たずに買い手となってくださる方を見つけ、無事に売却しました。

古い家屋だったので、境界や埋蔵物等の調整があり、値段はそれほど高くありませんでした。しかし、ローンは既にご両親が完済されていたため、特に問題になることはなく、売却費用はお子様方で分配されることになったそうです。

「何から何まで頼りきりで、本当にお世話になりました」

と相談者の方から感謝いただき、私たちも山積みの問題が全て解決したことにホッと胸を撫でおろしました。

7.アリネットからのアドバイス

さて、今回の空き家問題は誰の身にも起こり得ることだと思います。ご両親が亡くなられたり、施設に入ったりしてご実家が空き家となり、放置してしまった結果、役所やご近所さんからクレームを受けたり、何らかの書面が届いたりしてトラブルになる事例が相次いでいます。

ここから、このようなトラブルを未然に防ぐため、あるいはトラブルが起きてしまった時の対処法として、3つのアドバイスを紹介します。

7-1.空き家を放置するのはとてもリスキー

ひとつ、覚えておいていただきたいのは、地域にもよりますが、空き家を放置することのリスクの大きさです。

空き家を放置すると、固定資産税が従来の6倍にまで膨れ上がったり、雑草・害虫・異臭・劣化問題などにより近所の方からクレームが入ったり、放火や立てこもりなどの犯罪に巻き込まれたり、様々なリスクが発生します。

特に実際に人が居住していない空き家は管理するのが難しく、リアルタイムで家の状態を把握しづらいため、何かトラブルが発生しても気付かないことが多いです。

気付かずに更に放置した結果、多額の罰金を請求されたり、固定資産税の値上げ通達が届いたり、警察から連絡が来たり、ということになってしまうのです。

7-2.両親が高齢の場合、早めに家をどうするか話し合っておく

実家に住んでいる両親が高齢で、子どもたちと同居していない場合、両親の身に何かあった時に家をどうするか、早めに話し合うことが大切です。

突然亡くなってしまったり、終身入院となってしまったり、施設に入ったり、認知症を発症して話し合いができなくなってしまったり・・・、70才を越え、高齢になるといつ何が起こるか分かりません。

そのため、居住者がいなくなった後の住宅をどうするか、誰が管理するのか、誰が相続するのか、売却するのか否か、など、早めに決めておかなければ、何かあった時に落ち着いて対処できます。

7-3.分からないことがあれば専門家にアドバイスを求める

空き家を持て余してしまい、どうしたらいいか分からない、親の空き家関係で行政から連絡があり困惑している、という場合、パニックにならずに落ち着いて専門家に相談してください。

通達や勧告を無視していると、余計に面倒なことになります。何か連絡があれば、すぐに返事をしてから専門的な機関、あるいは書面の送付元などに「どうしたらいいか?」という指示を求めるのが一番です。

空き家トラブルの解決から売却もしたい場合には、境界トラブルや所有者確認・権利証の再現などを含め、アリネットが相談に乗りますので是非お気軽にお問い合わせください。

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>>マンションの内見後に入居申込をしたが、罰金無しでキャンセルはできますか?

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相樂 喜一郎

この記事を書いた人

相樂 喜一郎

事例を基にトラブルの少ない取引を目指し、2011年以降130件以上の不動産取引を経験。現在はこれまでの経験を活かし、地域の金融機関と一緒に相続に伴う実家の再生や売却、住み替えに注力。不動産鑑定士補、宅地建物取引士、相続アドバイザー、住宅診断士。 >>その他詳しい実績はこちら

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